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第二章
想い人
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スチュアート家の自宅へ戻った後、すぐに、父と色々相談した。
父が妹をすぐに勘当したとはいっても、結局はそれは、書類等の上での事だけで、過去まで変えられるわけではなく、社交界では相変わらず犯罪者の娘を出した家という目で見られた。
その犯罪を取り締まるのには、私も我が家も協力したのだが、世間は人の不幸の方を喜ぶ人が多いのだ。
そしてそれによって、私は、あれほど想っていた相手と、一緒になる事は出来なくなってしまった。
まあその前に、彼女の気持ちはそこまで定まってはいなかったとも思うが。
彼女はまだ幼かったし。
私は、我が家に問題があり、身を引かなくてはならなくなってしまった。
しかしマスターソン公爵家も、表向きは傷ものとなってしまった彼女への婚約の申し出を、その傷ものという理由から、引かざるを得なくなってしまった。
跡取りではないとはいえ、公爵家の嫁に、伯爵家のしかも傷ものというわけにはいかなかったらしい。
彼女は、その後、マスターソン公爵家が動いて、隣国の公爵家へ養女として入った。
その際に、彼女の実家である伯爵家とは、きっちり縁を切らせたらしい。
実家から離れたがっていた彼女が、その部分だけでも願い通りになって、良かったと安堵した。
そして私にも、父は、彼女の居る国からは更に離れてしまうが、我が国を挟んで反対側の隣国に居る、母方の祖父母を頼って、行ってみないかと持ち掛けてきました。
私自身、とにかく何かしなくては、動かなくては、このままではいけないと分かっていたので、先のことはともかく、母方祖父母に会いに行くことになりました。
その際に父からは、もしどうしてもリーナの事が諦められないのであれば、母方の叔父か誰かの養子に入る事もと言われました。
正直に言うと、非常に心惹かれたが、そうなると弟にあの悪評の付いてしまった家を背負わせてしまうことになる。
それで私が幸せを掴むことが出来ても、きっとずっと引きずる事になる。
だから父には、もしもどこか親戚の家へ養子に出すなら、弟にしてあげてくれと頼んだ。
数日後、再び父に呼ばれ、今度は弟も呼ばれ、母も揃って家族会議をすることになった。
弟には、先日、父に話した通り、養子に出すなら弟をと言った。
「今までずっと跡取りは私で、アンドリューは次男という扱いだったのに、家の評判がこんなことになってしまったからと、私が逃げ出して、アンドリューにその責を押し付けるわけにはいきません。
家の名前から離れて幸せになるなら、最もその権利があるのはアンドリューです。」
「しかし兄上、兄上にだって非があるわけではない。
私は自分だけが逃げ出すつもりはありません。」
兄弟で自分よりも相手をと言っていると、目の前の両親が溜息をつき、改めて頭を下げた。
「はぁ…本当に申し訳ない…。
最もその責があるのは、お前たちではなく、私たち親だろう…。
唯一の女の子だからと甘やかしてしまい、結果、あのように育ててしまった…。
本来だったら爵位を下げられるか取り上げられても不思議は無かったのだが、お前たちに救われ、本当に親として謝罪しても謝罪しきれない。
本当はお前たちのためなら、お前たち二人ともどこかの家へ養子に出して、爵位を返上しても構わないのだが、我が家は侯爵家であり、それをやると、今度は家門の家々にも迷惑を掛けてしまう故、それも出来ず…。」
結局のところ、嵐が過ぎるのを待つしかないのだ…。
「父上…取り敢えず私を、母上の郷里へ行かせてもらえませんか?
少なくとも今、この国に留まるよりは、得られるものがあると思います。
その上でアンドリューが15歳になったら、私と入れ替えでアンドリューを母上の郷里の、どこか母上の実家の家門へ養子に出すことは可能でしょうか?」
「兄上!私は自分だけ逃げるつもりはありません!」
「違うよ…今、逃げるのはお前ではなく、私だ。
しかし行った先で、何か領地の為になるようなことを学んでくるつもりだ。
そして私の人生は、領地に捧げるよ。
でもたとえ領地や家の為でも、私は望まぬ結婚はもう出来ない。
私が再び誰か一緒になりたいと思えるほどの相手に出会えることが無かったら、その時はお前に継いで欲しい…。
そのためにお前には、私と入れ替わりで他家へ養子に出て、幸せな結婚をして欲しいんだ…。」
私が侯爵家を継ぎ、そして更にその後の世代になるころには、今回の醜聞もかなり薄れている事だろう。
だからその時は、スチュアート家から離れていたアンドリュー若しくはアンドリューの子供がスチュアート家を継いでも、肩身の狭い思いをすることはないだろうと考えた。
「兄上…それでは結局兄上だけが家の犠牲になってしまうではありませんか…。」
「…それが長男というものだよ…。」
結局、私の決意は固く、両親も弟も、私の提案に従ってくれることになった。
母が母方の祖父母へ連絡を取り、私は3年間、母の実家の世話になり、留学する事になった。
アンドリューの元へは、リーナから手紙が来ていたが、アンドリューや家族には、私からはリーナへ返事は返さないから、何か聞かれても、私は旅に出ていて、居場所は分からないが、元気にやっていると、時々手紙が一方的に届いているとだけ答えてくれと頼んだ。
やがてはリーナからの手紙も途絶えるだろう。
私の心からリーナが消える事は、きっと無い。
彼女はきっと、ずっと私の想い人のままだろうと思う。
でもリーナには過去は忘れて幸せになって欲しいと願った。
そして私は母の郷里へ旅立った。
父が妹をすぐに勘当したとはいっても、結局はそれは、書類等の上での事だけで、過去まで変えられるわけではなく、社交界では相変わらず犯罪者の娘を出した家という目で見られた。
その犯罪を取り締まるのには、私も我が家も協力したのだが、世間は人の不幸の方を喜ぶ人が多いのだ。
そしてそれによって、私は、あれほど想っていた相手と、一緒になる事は出来なくなってしまった。
まあその前に、彼女の気持ちはそこまで定まってはいなかったとも思うが。
彼女はまだ幼かったし。
私は、我が家に問題があり、身を引かなくてはならなくなってしまった。
しかしマスターソン公爵家も、表向きは傷ものとなってしまった彼女への婚約の申し出を、その傷ものという理由から、引かざるを得なくなってしまった。
跡取りではないとはいえ、公爵家の嫁に、伯爵家のしかも傷ものというわけにはいかなかったらしい。
彼女は、その後、マスターソン公爵家が動いて、隣国の公爵家へ養女として入った。
その際に、彼女の実家である伯爵家とは、きっちり縁を切らせたらしい。
実家から離れたがっていた彼女が、その部分だけでも願い通りになって、良かったと安堵した。
そして私にも、父は、彼女の居る国からは更に離れてしまうが、我が国を挟んで反対側の隣国に居る、母方の祖父母を頼って、行ってみないかと持ち掛けてきました。
私自身、とにかく何かしなくては、動かなくては、このままではいけないと分かっていたので、先のことはともかく、母方祖父母に会いに行くことになりました。
その際に父からは、もしどうしてもリーナの事が諦められないのであれば、母方の叔父か誰かの養子に入る事もと言われました。
正直に言うと、非常に心惹かれたが、そうなると弟にあの悪評の付いてしまった家を背負わせてしまうことになる。
それで私が幸せを掴むことが出来ても、きっとずっと引きずる事になる。
だから父には、もしもどこか親戚の家へ養子に出すなら、弟にしてあげてくれと頼んだ。
数日後、再び父に呼ばれ、今度は弟も呼ばれ、母も揃って家族会議をすることになった。
弟には、先日、父に話した通り、養子に出すなら弟をと言った。
「今までずっと跡取りは私で、アンドリューは次男という扱いだったのに、家の評判がこんなことになってしまったからと、私が逃げ出して、アンドリューにその責を押し付けるわけにはいきません。
家の名前から離れて幸せになるなら、最もその権利があるのはアンドリューです。」
「しかし兄上、兄上にだって非があるわけではない。
私は自分だけが逃げ出すつもりはありません。」
兄弟で自分よりも相手をと言っていると、目の前の両親が溜息をつき、改めて頭を下げた。
「はぁ…本当に申し訳ない…。
最もその責があるのは、お前たちではなく、私たち親だろう…。
唯一の女の子だからと甘やかしてしまい、結果、あのように育ててしまった…。
本来だったら爵位を下げられるか取り上げられても不思議は無かったのだが、お前たちに救われ、本当に親として謝罪しても謝罪しきれない。
本当はお前たちのためなら、お前たち二人ともどこかの家へ養子に出して、爵位を返上しても構わないのだが、我が家は侯爵家であり、それをやると、今度は家門の家々にも迷惑を掛けてしまう故、それも出来ず…。」
結局のところ、嵐が過ぎるのを待つしかないのだ…。
「父上…取り敢えず私を、母上の郷里へ行かせてもらえませんか?
少なくとも今、この国に留まるよりは、得られるものがあると思います。
その上でアンドリューが15歳になったら、私と入れ替えでアンドリューを母上の郷里の、どこか母上の実家の家門へ養子に出すことは可能でしょうか?」
「兄上!私は自分だけ逃げるつもりはありません!」
「違うよ…今、逃げるのはお前ではなく、私だ。
しかし行った先で、何か領地の為になるようなことを学んでくるつもりだ。
そして私の人生は、領地に捧げるよ。
でもたとえ領地や家の為でも、私は望まぬ結婚はもう出来ない。
私が再び誰か一緒になりたいと思えるほどの相手に出会えることが無かったら、その時はお前に継いで欲しい…。
そのためにお前には、私と入れ替わりで他家へ養子に出て、幸せな結婚をして欲しいんだ…。」
私が侯爵家を継ぎ、そして更にその後の世代になるころには、今回の醜聞もかなり薄れている事だろう。
だからその時は、スチュアート家から離れていたアンドリュー若しくはアンドリューの子供がスチュアート家を継いでも、肩身の狭い思いをすることはないだろうと考えた。
「兄上…それでは結局兄上だけが家の犠牲になってしまうではありませんか…。」
「…それが長男というものだよ…。」
結局、私の決意は固く、両親も弟も、私の提案に従ってくれることになった。
母が母方の祖父母へ連絡を取り、私は3年間、母の実家の世話になり、留学する事になった。
アンドリューの元へは、リーナから手紙が来ていたが、アンドリューや家族には、私からはリーナへ返事は返さないから、何か聞かれても、私は旅に出ていて、居場所は分からないが、元気にやっていると、時々手紙が一方的に届いているとだけ答えてくれと頼んだ。
やがてはリーナからの手紙も途絶えるだろう。
私の心からリーナが消える事は、きっと無い。
彼女はきっと、ずっと私の想い人のままだろうと思う。
でもリーナには過去は忘れて幸せになって欲しいと願った。
そして私は母の郷里へ旅立った。
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