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三章 王宮学舎控えの間
18 お相手を考える
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「僕、思うんですけど、リュトさんはマスターの伴侶に相応しくないです。リュトさんは平民でマナが少ないし、マナが同等かそれ以上の方がオドも含め、バランスが取れます。やっぱり貴族の誰かですよ」
そう話しながら裸のレーンの身体を黒い闇が包み、メイド服に変わっていく。どこで見たんだ?その服ーーあ、ラメタル王国の天才針子のテレサか!魔の森の親友も女装したりしていたっけ。
妖魔であるアズールとレーンは服をマナで纏うことが出来る。服そのものが皮膚に近い。アズールはすでに執事服を身に纏っていて、僕はアズールにドレスシャツを着せられていた。
レーンが
「ねえ、アズールはどう思う?」
と言って視線を向ける。
おいおいおい~。妖魔で従魔でバトラーとメイドが主人の伴侶を考えるの?それは父様と母様の役目だよ。確かに貴族学舎に行く大半は伴侶探しだ。成人年齢に達したした僕ら貴族の子供には義務がある。でも、次男の僕はツェッペリン男爵家を継げるわけではないから、別のところに行くことになるって感じで。
アリシア国では腹実は爵位を持つ家では妾人あたりになるだろう。腹実の女性が跡目をとる爵位持ちの家に行けば爵配となり夫と呼ばることもあるだろうけど……。
「マスターが好きになった人なら、私は構いません。平民であれ貴族であれ、私がマスターから離れることはありません。それが私の答えですよ。魂の底辺から愛し合う淫気程美味な晩餐はあり得ませんから」
「アズールって美食家だよね。僕もそっちのが好きだけど、マスターが気持ちよかったら何でもいいよ。だからマスターとマナで全ての快楽器官を繋いでいるんだから」
なんとなく察していたから訊かなかったけれど、レーンはわざわざ繋げていたんだ。妖魔は自分が気持ちいいのではなく、相手の気持ちよさを喰う魔獣類だ。アズールより悪食なレーンは僕の気持ちよさを完全に体感することで、より快楽を拾い喰いしている。多分アズールが僕を喰ってる時もおこぼれにありついているんだ。
アズールが楽しげに肩をすくめ
「レーンは大食漢だから」
と口を挟んだ。
「そういえば、今日、誰かと戦いましたよね?マスターのオドが高まりました」
レーンが寝台に座った僕のグラスに酒を注ぎながら、話しをしてくる。
途端、僕は思い出してムッとした。レーンが寄越してくれたグラスに口をつけ、
「アーネストの奴がふっかけてきたの!ああ、アズールとレーンは知らないかな?一度影に入れて王都に入ってでしょ、オーガスタ時代に、アリシア王国の国王アーネストに斬りかかられたんだよ」
とぼやく。全くなんだよ、あれ。ずっごくやばかったんだぞ。
「僕らが捥がれてすぐくらいですよね。僕らまだ魔水晶の蓄積魔力に耐えられなくて、マスターの影から出て行けなくて、なんです?そいつがマスターに斬りかかったんですか?敵ですか?今なら実体として僕戦えますよ」
レーンが僕の髪を梳かしながら戦闘宣言するのに慌てた。
「ううん、敵じゃない、アーネストはオーガスタ時代の親友なんだ。でも、奴が分別なしに斬りかかるなんてね、それになんか少し変わったのかな?ぼんやりしていたし、気に触ることを僕がしたのかも」
うーんと考えてみたが、別に何もなかった気がするんだけど。
「年数を経て彼の本質が垣間見えたのでしょうか?いえ、こればかりは……マスターが本気になられていたら私たちも駆けつけていましたが、遊ばれているようでしたから。ーー楽しまれましたか?」
楽しくなんかねえよ。ーーん、まあ、久々に真剣になったかも?なんて思ったり思わなかったりかな?
「ふふ、その満足した顔は、僕ら?それとも国王陛下?おやすみなさい、マスター。僕は腹ごなしに狩りをしてきますね」
レーンはふわりとメイド服の裾を掴んで開いて挨拶をすると、影に消えていく。僕はアズールの腕の中で僕は眠りにつく。
「おやすみなさい、マスター。今宵は私がお守りします。あなたもこの家も」
僕は二人に守られている。二人を捥いだ頃とは違う。
あれからずいぶん経った。
アーネストどうしてあんな風に?
前は元気で明るく、
「次に会ったら魔の森で狩りをしよう」
と話していただろう?
オーガスタはそのまま魔の森で地図作りに入ったが、お前は国を整備してシャルスと国を守るんじゃなかったのか?王の役目は何でも屋と笑っていたじゃないか。あんな風に怠そうに笑う奴じゃなかったはずだ。
「ねえ、アズール……」
「はい、マスター」
アズールは執事服のまま寝転んでいる僕の横に座っている。繋いでいるのは手だけ。レーンは僕をぎゅっと抱きしめて寝るけれど、アズールは少しだけ触れている。アズールの好きな距離感だった。
「死んで生まれ変わって成人年齢は長いねよ」
この間に何があった?
「私たち妖魔にとっても長かったですよ、マスター。さあ、おやすみなさい」
アズールやレーンたち、僕ら人族よりも長く生きる彼らにとっても長かったんだ。
僕はなんとなくなんとなくあの時何があったのか分からずに、それを知りたいと初めて思い悲しくなった。
そう話しながら裸のレーンの身体を黒い闇が包み、メイド服に変わっていく。どこで見たんだ?その服ーーあ、ラメタル王国の天才針子のテレサか!魔の森の親友も女装したりしていたっけ。
妖魔であるアズールとレーンは服をマナで纏うことが出来る。服そのものが皮膚に近い。アズールはすでに執事服を身に纏っていて、僕はアズールにドレスシャツを着せられていた。
レーンが
「ねえ、アズールはどう思う?」
と言って視線を向ける。
おいおいおい~。妖魔で従魔でバトラーとメイドが主人の伴侶を考えるの?それは父様と母様の役目だよ。確かに貴族学舎に行く大半は伴侶探しだ。成人年齢に達したした僕ら貴族の子供には義務がある。でも、次男の僕はツェッペリン男爵家を継げるわけではないから、別のところに行くことになるって感じで。
アリシア国では腹実は爵位を持つ家では妾人あたりになるだろう。腹実の女性が跡目をとる爵位持ちの家に行けば爵配となり夫と呼ばることもあるだろうけど……。
「マスターが好きになった人なら、私は構いません。平民であれ貴族であれ、私がマスターから離れることはありません。それが私の答えですよ。魂の底辺から愛し合う淫気程美味な晩餐はあり得ませんから」
「アズールって美食家だよね。僕もそっちのが好きだけど、マスターが気持ちよかったら何でもいいよ。だからマスターとマナで全ての快楽器官を繋いでいるんだから」
なんとなく察していたから訊かなかったけれど、レーンはわざわざ繋げていたんだ。妖魔は自分が気持ちいいのではなく、相手の気持ちよさを喰う魔獣類だ。アズールより悪食なレーンは僕の気持ちよさを完全に体感することで、より快楽を拾い喰いしている。多分アズールが僕を喰ってる時もおこぼれにありついているんだ。
アズールが楽しげに肩をすくめ
「レーンは大食漢だから」
と口を挟んだ。
「そういえば、今日、誰かと戦いましたよね?マスターのオドが高まりました」
レーンが寝台に座った僕のグラスに酒を注ぎながら、話しをしてくる。
途端、僕は思い出してムッとした。レーンが寄越してくれたグラスに口をつけ、
「アーネストの奴がふっかけてきたの!ああ、アズールとレーンは知らないかな?一度影に入れて王都に入ってでしょ、オーガスタ時代に、アリシア王国の国王アーネストに斬りかかられたんだよ」
とぼやく。全くなんだよ、あれ。ずっごくやばかったんだぞ。
「僕らが捥がれてすぐくらいですよね。僕らまだ魔水晶の蓄積魔力に耐えられなくて、マスターの影から出て行けなくて、なんです?そいつがマスターに斬りかかったんですか?敵ですか?今なら実体として僕戦えますよ」
レーンが僕の髪を梳かしながら戦闘宣言するのに慌てた。
「ううん、敵じゃない、アーネストはオーガスタ時代の親友なんだ。でも、奴が分別なしに斬りかかるなんてね、それになんか少し変わったのかな?ぼんやりしていたし、気に触ることを僕がしたのかも」
うーんと考えてみたが、別に何もなかった気がするんだけど。
「年数を経て彼の本質が垣間見えたのでしょうか?いえ、こればかりは……マスターが本気になられていたら私たちも駆けつけていましたが、遊ばれているようでしたから。ーー楽しまれましたか?」
楽しくなんかねえよ。ーーん、まあ、久々に真剣になったかも?なんて思ったり思わなかったりかな?
「ふふ、その満足した顔は、僕ら?それとも国王陛下?おやすみなさい、マスター。僕は腹ごなしに狩りをしてきますね」
レーンはふわりとメイド服の裾を掴んで開いて挨拶をすると、影に消えていく。僕はアズールの腕の中で僕は眠りにつく。
「おやすみなさい、マスター。今宵は私がお守りします。あなたもこの家も」
僕は二人に守られている。二人を捥いだ頃とは違う。
あれからずいぶん経った。
アーネストどうしてあんな風に?
前は元気で明るく、
「次に会ったら魔の森で狩りをしよう」
と話していただろう?
オーガスタはそのまま魔の森で地図作りに入ったが、お前は国を整備してシャルスと国を守るんじゃなかったのか?王の役目は何でも屋と笑っていたじゃないか。あんな風に怠そうに笑う奴じゃなかったはずだ。
「ねえ、アズール……」
「はい、マスター」
アズールは執事服のまま寝転んでいる僕の横に座っている。繋いでいるのは手だけ。レーンは僕をぎゅっと抱きしめて寝るけれど、アズールは少しだけ触れている。アズールの好きな距離感だった。
「死んで生まれ変わって成人年齢は長いねよ」
この間に何があった?
「私たち妖魔にとっても長かったですよ、マスター。さあ、おやすみなさい」
アズールやレーンたち、僕ら人族よりも長く生きる彼らにとっても長かったんだ。
僕はなんとなくなんとなくあの時何があったのか分からずに、それを知りたいと初めて思い悲しくなった。
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