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七章 ガルドバルド大陸の王子
38 つまらないです
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馬車に戻ると兄様とリュトがまんまるの瞳をしていて、どこからか現れたレーンがふわりと馬車の中に入る。
にっこり笑うと僕の横に座り、僕にだけ聞こえるように俯きながら、
「……つまらないです」
と小さくため息をついた。つまらないってね、あ、そう。
「お腹空いたの?」
頷くレーンの心の声が聞こえてきそうだ。あのまま野外で抱かれろって?いやなこった。
レーンから不平の言葉が漏れたけれど、兄様とリュトは僕がアーネストに抱っこされて連れてこられだことに驚いていたようだ。アーネストが王様に見えたかはどうかとして、貴族ジャケットを羽織っていたから、王城に来た貴族の誰かだと思ってくれ。多分死角でキスは見えていないはず。
「あ、えーと、ぬかるみに足を取られそうになったから、助けてくれたのです」
成人にもなりそんな言い訳が通じるかよと思いながら話すと
「それはありがたいことだね」
と、兄上。え?えーっと、僕はもう成人していて……
「ノリン様、小さいからぬかるみに埋まってしまいそうですもんね」
と、リュト。リュトよ、僕は確かに小さいが幼児じゃない。あとできっちりシメるからな、この野郎。
馬車に揺られているとリュトがにこにこ顔で、
「ノリン様、アッシュ様ってすごいんですよ。計算機をあっという間に使いこなしているんです。さすがはノリン様のお兄様ですね」
リュトは城内の食堂のメニューが美味しかったのだとか、省員にお菓子をたくさんもらった話をしていて、ああ、そういえばそんなメニューあったなあと苦笑いをしていると、兄様がどことなく遠くを見ているのに気づいた。
どうしたんだろう。
「ノリン様の勉学はどうですか?」
「えっ?あ、うん、リュト、面白いよ。学ぶって人を豊かにするからね」
僕はまさか不審死について一考察していたなんて話せないから、とりあえず出任せで話しておいた。今日は確か国史と王族系譜についてだったな。
兄様がふと思い出したように僕に目を向け、レーンが手にしている僕の教科書を見て少しばかり眉を潜めた。
そういえば兄様は帳簿の再計算をしてきたはずだ。グレゴリー直々に過去から遡って計算していると聞いている。すごく大変なんだろうなあ。
その報告はグレゴリー直に届くようになっている。兄様はグレゴリー直属の臨時諮問監査官みたいな立場になっちゃっていて、リュトは政務宮の各省と兄様の橋渡しをするペイジになっているみたいだった。
兄様の渋い顔はうちに帰っても続き、母様や父様には気付かれていないようだった。
「兄様、大丈夫ですか?」
お風呂へ向かう前に兄様の部屋に戻ろうとする兄様を呼び止めると、兄様は少し笑ってから、
「確証が掴めるまでは話さないでおくよ。大切なお役目だからね」
と僕の頭を撫でてから、アズールにお茶を頼んで部屋に入っていく。まだ仕事をするみたいだ。
「巻き込んじゃったかなあ」
バスタブの中で顎に拳を当てて唸っていると、
「お背中をお流しします」
と頼んでもないのにレーンが入ってきた。
「僕、お腹が空きすぎて部屋まで待てないので、ここでいただきますね」
と裸になってバスタブにそろりと入って、ピタリと背中に貼り付いた。相当空腹だったみたいで、僕はアーネストの手管の如く追い詰められて出せずにイカされ続け、お腹の奥がぐちゃぐちゃになってからアズールに救出された。
「マスター、大丈夫ですか?」
「ん……アズールも空腹だろ?」
「はい」
そのアズールにもベッドでたっぷりと揺さぶられ、腰からお腹の熱がすっかり抜けてから解放される。そんな熱を舐めとるように舌を伸ばしていたレーンが、ふと思い出したように顔を上げた。
「はあ、ご馳走様でした。今日も美味しかったです。マスターは出さない方が気持ちいいみたいですね」
そんなとこ舐めながら話すな。
「それから、明日はアズールも僕もご一緒出来ませんが大丈夫ですか?」
アズールの身体が離れてひやりとしたシーツが気持ちいい。レーンは魔法で表面の汗を拭い取ってくれ、下着とドレスシャツを着せてくれる。淫魔の体液は身体に染み込んで疲労回復へ繋がっている た。従獣関係である僕でなければ、多分淫液に悶えてずっと二人を狂ったように欲しがるだろう。
「うん、シャルスのとこに行くだけだから」
「殿下は害がないとして、陛下に会うとマスター、犯されますよ」
「ーーうっ」
アズールにしてもレーンは少しだけだけだが、金曜日以外はアーネストを回避する努力をしてもらっていた。
まあ、なんとかなるだろ。
僕は魔の森の魔獣調整のために、今日は狩りに行かない日にした二人に挟まれて眠りについた。
毎日の日課になった兄様とリュトと別れて、貴族学舎北門から歩いて中庭の渡り廊下を歩き、王宮回廊に入ろうとした。王宮はメイドすらまばらで、隣の政務宮の方が人が多い。魔法省の入った宮には行ったことがないけれど、賑やかいんだろうなあ。
あれ?と思い、僕は足を止めた。
まだ貴族子息子女は来ない時間帯に、黒髪黒目の上背のある男は嫌でも目を引いた。
真っ黒な髪ってのは実は二人目で、オーガスタ時代パールバルト王国でちらっと見たことがある。親友の兄格ジーン宰相の伴侶だったかで、師匠同様に異世界から来たらしい。つまり、ガルド神の世界調整の『犠牲者』とオーガスタの師匠が話していた。
見事に漆黒の髪の男は、レガリア連邦王国の貴族式ジャケットでもないし、パールバルトやラメタルやレムリカント王国のものとも違う、見慣れない紋様を縫い込んだ長衣を腰ベルトで留めて着ていた。
背が高いなあ。二メートルはあるんじゃないのか?細いのに歩き方がしなやかで、多分武術の稽古をしたことのある動きに感じる。
にっこり笑うと僕の横に座り、僕にだけ聞こえるように俯きながら、
「……つまらないです」
と小さくため息をついた。つまらないってね、あ、そう。
「お腹空いたの?」
頷くレーンの心の声が聞こえてきそうだ。あのまま野外で抱かれろって?いやなこった。
レーンから不平の言葉が漏れたけれど、兄様とリュトは僕がアーネストに抱っこされて連れてこられだことに驚いていたようだ。アーネストが王様に見えたかはどうかとして、貴族ジャケットを羽織っていたから、王城に来た貴族の誰かだと思ってくれ。多分死角でキスは見えていないはず。
「あ、えーと、ぬかるみに足を取られそうになったから、助けてくれたのです」
成人にもなりそんな言い訳が通じるかよと思いながら話すと
「それはありがたいことだね」
と、兄上。え?えーっと、僕はもう成人していて……
「ノリン様、小さいからぬかるみに埋まってしまいそうですもんね」
と、リュト。リュトよ、僕は確かに小さいが幼児じゃない。あとできっちりシメるからな、この野郎。
馬車に揺られているとリュトがにこにこ顔で、
「ノリン様、アッシュ様ってすごいんですよ。計算機をあっという間に使いこなしているんです。さすがはノリン様のお兄様ですね」
リュトは城内の食堂のメニューが美味しかったのだとか、省員にお菓子をたくさんもらった話をしていて、ああ、そういえばそんなメニューあったなあと苦笑いをしていると、兄様がどことなく遠くを見ているのに気づいた。
どうしたんだろう。
「ノリン様の勉学はどうですか?」
「えっ?あ、うん、リュト、面白いよ。学ぶって人を豊かにするからね」
僕はまさか不審死について一考察していたなんて話せないから、とりあえず出任せで話しておいた。今日は確か国史と王族系譜についてだったな。
兄様がふと思い出したように僕に目を向け、レーンが手にしている僕の教科書を見て少しばかり眉を潜めた。
そういえば兄様は帳簿の再計算をしてきたはずだ。グレゴリー直々に過去から遡って計算していると聞いている。すごく大変なんだろうなあ。
その報告はグレゴリー直に届くようになっている。兄様はグレゴリー直属の臨時諮問監査官みたいな立場になっちゃっていて、リュトは政務宮の各省と兄様の橋渡しをするペイジになっているみたいだった。
兄様の渋い顔はうちに帰っても続き、母様や父様には気付かれていないようだった。
「兄様、大丈夫ですか?」
お風呂へ向かう前に兄様の部屋に戻ろうとする兄様を呼び止めると、兄様は少し笑ってから、
「確証が掴めるまでは話さないでおくよ。大切なお役目だからね」
と僕の頭を撫でてから、アズールにお茶を頼んで部屋に入っていく。まだ仕事をするみたいだ。
「巻き込んじゃったかなあ」
バスタブの中で顎に拳を当てて唸っていると、
「お背中をお流しします」
と頼んでもないのにレーンが入ってきた。
「僕、お腹が空きすぎて部屋まで待てないので、ここでいただきますね」
と裸になってバスタブにそろりと入って、ピタリと背中に貼り付いた。相当空腹だったみたいで、僕はアーネストの手管の如く追い詰められて出せずにイカされ続け、お腹の奥がぐちゃぐちゃになってからアズールに救出された。
「マスター、大丈夫ですか?」
「ん……アズールも空腹だろ?」
「はい」
そのアズールにもベッドでたっぷりと揺さぶられ、腰からお腹の熱がすっかり抜けてから解放される。そんな熱を舐めとるように舌を伸ばしていたレーンが、ふと思い出したように顔を上げた。
「はあ、ご馳走様でした。今日も美味しかったです。マスターは出さない方が気持ちいいみたいですね」
そんなとこ舐めながら話すな。
「それから、明日はアズールも僕もご一緒出来ませんが大丈夫ですか?」
アズールの身体が離れてひやりとしたシーツが気持ちいい。レーンは魔法で表面の汗を拭い取ってくれ、下着とドレスシャツを着せてくれる。淫魔の体液は身体に染み込んで疲労回復へ繋がっている た。従獣関係である僕でなければ、多分淫液に悶えてずっと二人を狂ったように欲しがるだろう。
「うん、シャルスのとこに行くだけだから」
「殿下は害がないとして、陛下に会うとマスター、犯されますよ」
「ーーうっ」
アズールにしてもレーンは少しだけだけだが、金曜日以外はアーネストを回避する努力をしてもらっていた。
まあ、なんとかなるだろ。
僕は魔の森の魔獣調整のために、今日は狩りに行かない日にした二人に挟まれて眠りについた。
毎日の日課になった兄様とリュトと別れて、貴族学舎北門から歩いて中庭の渡り廊下を歩き、王宮回廊に入ろうとした。王宮はメイドすらまばらで、隣の政務宮の方が人が多い。魔法省の入った宮には行ったことがないけれど、賑やかいんだろうなあ。
あれ?と思い、僕は足を止めた。
まだ貴族子息子女は来ない時間帯に、黒髪黒目の上背のある男は嫌でも目を引いた。
真っ黒な髪ってのは実は二人目で、オーガスタ時代パールバルト王国でちらっと見たことがある。親友の兄格ジーン宰相の伴侶だったかで、師匠同様に異世界から来たらしい。つまり、ガルド神の世界調整の『犠牲者』とオーガスタの師匠が話していた。
見事に漆黒の髪の男は、レガリア連邦王国の貴族式ジャケットでもないし、パールバルトやラメタルやレムリカント王国のものとも違う、見慣れない紋様を縫い込んだ長衣を腰ベルトで留めて着ていた。
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