国王親子に迫られているんだが

クリム

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二十五章 魔法省の地下の

168 レーダー公の意外な最後

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 カモンは悩んだ末に、重そうな黒塗りの扉を開いた。レーダー公の捕獲をしなくてはならない。

 少しばかり緊張するのは捕獲の方ではなく、祖父と孫のやり取りを方だ。

「お祖父様」

 カモンが低い声でレーダー公を呼ぶ。レーダー公は蝋面をさらに白くして、開かない地下廊下側の扉を背にしていた。護衛騎士はたった二人。ずいぶん削ったなと、しみじみ思う。

「……なぜ、お前はそいつらといるのだ。こちらに来なさい」

 レーダー公の言葉に、カモンが首を横に振る。

「俺は王の子ではないと、父上から聞きました。王家の銀杯に俺の名前がない。それこそが証拠だと。俺は王と母上の子ではないなら、何者なのですかっ?」

 思わず俺は眉をしかめた。オーガスタだった時に悩んだこともある。何故魔の森にいるのか、父や母はどうしたのか。身につけているものにも何も情報がなく、魔の森の巨人に保護され、獣人の冒険者に可愛がられ、小人の師匠に魔法を習った。それはそれで幸せだったのだ。

 するとレーダー公が、

「ーーアーネストの子ではない」

と渇いた声で呟いた。

「しかし、王になれるのだ。ならせてやるのだ、このわしが。何を考える必要がある?カモンよ。こちらに来なさい」

 レーダー公がカモンに手招きをする。はっきりと簒奪を告げたレーダー公は、ふらふらとレーダー公に向かって歩いて行くカモンに満足そうな顔をしている。

 力無い歩みだが、手がゆらりと動く。

 レーダー公の首に剣がかかる前に、護衛騎士がカモンの剣を鈍い音と共に受け止めて、跳ね除ける。

「血迷われましたか!」

「俺は誰だっ?誰なんだっ?」

 いつもの自信満々のカモンの様子ではない。怯え恐れ自信をなくし、ただがむしゃらに剣を振るう。護衛騎士が二人がかりでカモンを床に引き倒し、剣を蹴り落として、床の隅に転がした。

「わしに反目か。カモン、馬鹿な奴だ」

 レーダー公は深いため息を付き、カモンへ指を向け

「爆ぜろ」

と小さな魔法を見せた。

 爆ぜろ?

 何が?

「ーーぐぅっ」

 ――その声が出た瞬間、カモンが胸を押さえて悶える。押さえつけていた護衛騎士も呻き出す。室内の空気が、どろりとしたものに塗り変えられた。

 ビクビクッと床に倒れ込んだカモンと護衛騎士の身体の揺れが止まった。しかし、唐突にレーダー公が腹を抱え、押さえた口から黒い吐瀉物をこぼした。

「なぜーーっ」

 レーダー公の口端からドラゴン・ブラッドが垂れる。

 何故だ?

 そう思って見下ろしたカモンの顔は蝋長けた血色の良くない細面の顔になり、

「だっ、で、お、お祖父様、も、仲間な、の、だ、かーー」

と開いた瞳孔で跪く祖父を見つめて、口から黒い唾液を吐いた。カモンの奴、ドラゴン・ブラッドカプセルをレーダー公にも飲ませたのか。

 俺とアーネストは多分呆然としていたんだと思う。背後から入ってきたスバルに全く気づかなかったんだから。

「ーーねぇ、コボルトの職人さんたちとお姉さんたちも、セネカさんが確保したよ。あ、れ、うわっ!ドラゴン・ブラッドじゃん。もー、危ないなあ」

 スバルが瓶を開けると吸い込まれるドラゴン・ブラッドに、アーネストが先に我に返った。

「おい、スバル、レーダー公が死んだとなると、かなりやばいぞ。レーダー公からカプセルを飲まされた奴らのドラゴン・ブラッドを回収しないといかん」

 スバルはにこにこしながら、飛び込んでくるドラゴン・ブラッドに対して、

「俺がここにいるから、大丈夫じゃない?だってさあ、勝手に来るんだもんさあ」

と話してから、集め終わった瓶の蓋を閉める。

「いや、違う!レグルス王国だ!奴の従兄弟一派も飲んでいるだろうが!」

 アーネストの言葉に、

「あ、そうか!」

と、俺はアーネストに目を戻した。うち扉が開いて、ホープとシャルスがレーンと近衛隊に守られながら待っていてくれた。魔法省は制圧済みのようだった。

「兄上っ!そのお姿はーー」

「オ、オーガスタ!」

 ああ、二人とも分かったから、ちょっと待ってくれないか。

「なぁ、ホープ。お前の記憶を使わせてくれ」

 見上げないですむ頭を掴むと、勢い額をぶつける。レグルス王国の王城の間取りと、乱雑になっているホープの部屋が見えて、

 飛べる

と確信た。

「スバル、来い!」

 ホープを捕まえたままスバルを呼ぶと、

「え、なになに?あ、もしかして、レグルスに行くつもりなの?了解、了解、そっちも父さんに頼まれてるし。全毒回収ミッション、クリアできちゃうじゃん?」

 あー、うるっさ……、あ?腕?アーネストか?

「あ、アーネストはダメだ。事態の処理をしろって」

「帰ってくるのか?」

「当たり前だろーが!」

 ああ、くそっ。心配されてる。そりゃそうかと、アーネストの腕を引っ張ってから顔を近づけて、頬に軽く唇を寄せた。

「心配するな」

 アーネストを突き放すと、レンとアズールが人知れず俺の影に溶け、俺はホープとスバルを連れて、

「転移陣、展開、発動!」

と、久々の大魔法陣を展開して国を飛んだ。
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