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終章 芽吹き
26 繋がって行く未来
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僕は王城でお義母さんからこの世界のことや、文字の読み書きを習うことにななった。ちょうど魔の森って言われている森での魔法学舎での学びが終わったところらしく、王城にいるからだとかで、お義母さんと一緒にいることが多かったんだけど、そんな席には必ず義理兄姉やラメタル王族の人たちの誰かかれかがいた。
初めは監視されているのかなと思ったけれど単純に興味津々らしくて、特にナファさんは地球のことをたくさん聞いてきた。
「エネルギーによる温暖化ガスですか……こちらでは魔石燃料ですのであまり影響はないとは思いますが気をつけましょう」
「私の作ったデバイスが普及すると、デバイスの要になる精霊石が唯一取れる妖精国に盗掘者が出るかもしれない」
ジーンのお兄さんナファさんとジーンは兄弟中ですごく仲良しっていうか、二人とも科学者目線で話し込み始めると、僕はお義母さんと苦笑いをしてしまう。ジーンがお母さんっ子の甘えん坊はどうやら本当みたいで、いつもジーンは僕とお義母さんに挟まれたがるから。
腹実の赤ちゃんのことはすごく心配してくれたサリオンさんが、腹実と宿り木の違いを説明してくれて、背の高い妖精族のソニンティアムさんと息子さんのライリストゥクルさんを紹介してくれた。妖精族の名前は長いのでソニンとライリで良いですよと、まるで女の人みたいに綺麗なソニンさんが優しく話してくれる。ライリさん……先生も綺麗だけれどしっかりと男の人だ。
「腹実の点滅はまだ一日に数回ですが、それが定期的になるとマナの道が出来て腹実が下がってきますが、アキラ様の場合は道が出来ません。そこで腹実摘出開腹手術を行います」
そう話してくれるのはライリ先生で、この世界で唯一外科手術ができる先生だ。腹実という赤ちゃんがお腹にできるタイプの人の中にも魔法が使える人ばかりじゃないから、出す方法を考えていたところ、異世界から来たお医者さんの手記にたどり着いたらしい。
それまでは腹実が出るための道が作られず腹実が死んでしまったり、その死んでしまった腹実が元で亡くなる人もいたらしいから、どこの世界でもお産は大変だ。赤ちゃんを産むのはやっぱり少し怖い。
「あの糞医者の遺物が役に立つのはほんとーーに忌々しいですね。日本でも帝王切開術がありますがそれとは違いマナを通す道を開けて、ジーンのマナを流し込み道を作ります。つまり会陰と肛門の間を横二、三センチ切るのですよ。そこへジーンのマナを通し道を作ります」
お義母さんが出してくれた絵を見て血の気が引いていくのが分かる。だってこれ、絶対に痛い。僕の表情に気づいてライリ先生が励ましてくれた。
「大丈夫ですよ、アキラ様。私の父ソニンが神夢陣を発動させ、深く眠りについてから行います。ご安心ください」
こちらの世界の薬が何も効かない僕へは、ジーンからマナを得ているからなんとか陣は使えるらしい。
「アキラさん心配だと思いますが、心静かに過ごしてください」
同じようにお腹で赤ちゃんを育てている物静かなサリオンさんも久しぶりの出産らしく、僕の少し後になるらしい。サリオンさんはマナもオドも豊富で、僕のように切ったりはしないらしい。
「ありがとうございます、サリオンさん」
アキラの腹実の点滅が始まったのはそれから四日だった。予定通りアキラには神夢(しんむ)で深く眠ってもらい、それから切開術になる。腹実は早い間隔で点滅し猶予がない。
ジーンはライリストゥクルの横に立ち診療台の中のアキラを見下ろす。
「若輩者ですがよろしくお願いします、殿下」
「……信頼しているよ」
ジーンの後ろにはタークとタークの侍女のフェンナがいる。腹実を取り出した後の羊膜切開をするためで、タークは万が一のために控えている。
厄介なのはアキラの再生能力だ。切ったはいいがすぐに再生する傷との勝負になる。ジーンのマナが力負けすれば、更に切ることになるからそれは避けたかった。
「意識が神夢領域に到達しました。どうぞ」
ソニンティアムの声に、両膝を立てて固定してある、ドレスシャツを半分捲り上げたアキラの会陰を慎重に切る。血が溢れ受け皿に溜まり、ジーンはマナを指先に載せて放出した。腹実からも金の光が溢れジーンのマナと繋がるが、アキラの再生が始まって来るのが分かった。マナの道が狭まり始めたからで、かなりの抵抗を感じている。
「……ぐうっ……。早く降りてきたらどうかな。アキラの中は気持ちいいかもしれないけれどね」
ジーンの揶揄に腹実がゆっくりと動き初め最後には傷の再生に押し出されるようにして拳大の腹実が出てきた。
「頼むよ」
フェンナが恭しく腹実を手にして、台の上で金に光る腹実に軽く刃を当てると羊水が溢れ、腹実の中のマナとオドが満ちる。人型が形成されタークを含めジーンも息を呑んだ。
「髪が……黒い。どうしてーーまさか、毒の?」
ジーンが赤子を見ると赤子はアキラの瞳と同じ黒目がちの目を開いて、んぎゃあ……と一声を上げる。
「毒の気配は感じませんので、色素が沈澱してしまったのかもしれません。私の神癒(しんゆ)の力不足でした」
神夢(しんむ)を解除したソニンティアムがジーンに頭を下げて詫びる。だがジーンは嬉しく思っていた。
「将来は私そっくりになるかもしれないが、黒髪黒目でアキラの要素もある。こんなに嬉しいことはないと思う。アキラへは毒の影響は伏せよう。心配するからね」
アキラの瞳がぽかりと開きジーンはアキラの手を握る。
「痛いところはないかな」
しかしアキラは夢見心地で、
「父と妹と……誰か男の人がいて、妹が女の子の手を引いていました……」
と呟く。
「神が見せてくれた未来かもしれませんね、アキラ様。神夢には稀に予知夢があるそうです」
ソニンティアムの声はアキラには届かなかったかもしれない。アキラは再び眠りに落ちてしまい、泣き止まない赤子がフェンナの手で包まれていた。
「ジーン、この子……乳みたいですね。父の初乳をどうぞ。多分アキラくんには初乳くらいしか出ないでしょう。本来腹実ではありませんし。頑張って父乳(ちち)を出してくださいね」
とタークに言われてジーンは眉を顰めながら、自分にそっくりになるであろう赤子を受け取り、胸に唇を押し当ててやる。ツキン……とした微かな痛みと嚥下する喉元に、望んでいたことながら伴侶との子育てが始まったことを感じて苦笑した。
「お手伝いいたします、殿下」
「……いや、二人でやってみようと思う。皆の力も借りてね」
そして赤子のマナが大陸同士を更に安定させ、この日二つの大陸を結ぶ列車がついに走ったのだった。
ーーーー数年後……
行方不明だった友のマナが確認出来たからレグルス王国に行きたいとジーンの弟分のセネカ殿下がジーンに話を持ちかけてきた。
「レガリア連邦王国のレグルス王国には国交がないからだめだからね。それにその友人のマナか分からないじゃないか」
ジーンはセネカ殿下がバンバン叩く机の上でタブレット端末にサインをしている。紙決済が随分減ったなぁ……僕はデータ入力をしていてちらっと盗み見た。
「ジーンの馬鹿!ジーンだってオーガスタには世話になったでしょ。魔の森の地図がどうしてまだ来ないのか、気にしていたよね?それに僕は獣人族の子供だよ?マナくらい判別出来る。どうして親友の僕の前から消えたのか知りたいんだよ」
オーガスタさんって赤い髪の男の人だったと思う。セネカ殿下がたまにパールバルト王国に連れて来ていた人だ。おっとりとしていて、僕とお義母さんの畑を手伝ってくれたこともある。
「あ!ーーそういえば、レガリア連邦王国のアリシア王国ならパールバルトの前王は王族交流があるはすだよね。レガリア連邦王国の情報は欲しいところだよ、ジーン?」
セネカ殿下が言うことはもっともで、ジーンは眉を顰めて考え込んでいる。そこへスバルが政務室の扉を勢いよく開けて飛び込んできて、
「あ、セネカさんじゃん。こんにちは、今日はどうしたの?あ、闇の商人するなら俺も連れてってよ。今日はお出かけ服じゃないから違うかあ。ねえねえ、母さん聞いてよ聞いて、あのさあ」
と一度口を開いたら止まらないお喋りを繰り出す。ジーンそっくりな容姿でお喋り好きなんだから、なんだか笑えてしまって僕は面白いんだけどジーンはすごく嫌そう。ジーンに言わせると獣人のお義父さんに性格がよく似ているそうだ。僕似の黒髪黒目だからか王族に見えないからすごく親しみやすいみたいで、みんなから好かれている。でもジーンの跡目を継いで欲しくはない感じ。
貴族の一部は黒髪黒目で金髪金目の国王の子供?って言う人もいるけれど、この無駄なくらいのお喋りに気圧されて大抵は黙ってしまい、僕もジーンも笑いながら肩を竦めてしまう。王族だから、スバルには少し落ち着いてほしいかも。
「ーースバル、アリシア王国の貴族学舎に遊学しておいでよ、これは命令だ」
ジーンの言葉に振り向いたスバルはにこにこしながら、
「アリシア王国ね、はいはーい……ええええっ!レガリア連邦王国の?」
とジーンに顔を向ける。
「セネカが連絡を繋いでくれるから、アリシア王国を皮切りに私の製品を紹介して来るといいよ。デバイスとタブレットを含む生活魔具を持って行きなさい。魔動車もいいね」
「……セネカさんがいつもみたいに密入国すればいいじゃんか。俺、今更学舎なんか……」
スバルがごね始めるとセネカくんがスバルに詰め寄る。
「闇の商人だと長居は出来ないんだよ。今回は王族の息子スバルの御用伺いとしてアリシア王宮に潜入したい。オーガスタはアリシア国の市民権を得ていたから、そこから調べていきたいんだ。頼むよスバル」
僕は特に何も言わなかった。だってスバルの夢はジーンの作った物を世界中で売ることなんだから。
「まじかよ……母さんは、反対してくれないよな……あああ、貴族嫌ーーい」
「ちゃんとパールバルト王族として行くといい」
「父さん?俺、パールバルトのことって、名所とか名物しか知らないんだよ。貴族的なこと突っ込まれたら俺、何も言えないよ?ーーまじかよ」
僕の大事な一人っ子スバルの旅立ちが近いなあ、少し寂しいなって思った。
でもいってらっしゃい、この世界は悪いところではないよ。
~終~
⭐︎⭐︎
アキラ中心のお話はこれで終わりになります。
続きというか、繋がりのお話はスバルの遊学先アリシア王国に移ります。
題名は『国王親子に迫られてるんだが』となります。主人公はノリンです。(2021.10.13.PM8:00~連載開始)
『巨人族の花嫁』
『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』
『召喚先は腕の中』
の縦軸世界観の中で、アキラの息子スバルとその友人達の話になります。基本的にはセネカとスバル以外は脇キャラクターですが、複数出てきますので併せて楽しんで頂ければ幸いです。タークは必ず出てきます笑
初めは監視されているのかなと思ったけれど単純に興味津々らしくて、特にナファさんは地球のことをたくさん聞いてきた。
「エネルギーによる温暖化ガスですか……こちらでは魔石燃料ですのであまり影響はないとは思いますが気をつけましょう」
「私の作ったデバイスが普及すると、デバイスの要になる精霊石が唯一取れる妖精国に盗掘者が出るかもしれない」
ジーンのお兄さんナファさんとジーンは兄弟中ですごく仲良しっていうか、二人とも科学者目線で話し込み始めると、僕はお義母さんと苦笑いをしてしまう。ジーンがお母さんっ子の甘えん坊はどうやら本当みたいで、いつもジーンは僕とお義母さんに挟まれたがるから。
腹実の赤ちゃんのことはすごく心配してくれたサリオンさんが、腹実と宿り木の違いを説明してくれて、背の高い妖精族のソニンティアムさんと息子さんのライリストゥクルさんを紹介してくれた。妖精族の名前は長いのでソニンとライリで良いですよと、まるで女の人みたいに綺麗なソニンさんが優しく話してくれる。ライリさん……先生も綺麗だけれどしっかりと男の人だ。
「腹実の点滅はまだ一日に数回ですが、それが定期的になるとマナの道が出来て腹実が下がってきますが、アキラ様の場合は道が出来ません。そこで腹実摘出開腹手術を行います」
そう話してくれるのはライリ先生で、この世界で唯一外科手術ができる先生だ。腹実という赤ちゃんがお腹にできるタイプの人の中にも魔法が使える人ばかりじゃないから、出す方法を考えていたところ、異世界から来たお医者さんの手記にたどり着いたらしい。
それまでは腹実が出るための道が作られず腹実が死んでしまったり、その死んでしまった腹実が元で亡くなる人もいたらしいから、どこの世界でもお産は大変だ。赤ちゃんを産むのはやっぱり少し怖い。
「あの糞医者の遺物が役に立つのはほんとーーに忌々しいですね。日本でも帝王切開術がありますがそれとは違いマナを通す道を開けて、ジーンのマナを流し込み道を作ります。つまり会陰と肛門の間を横二、三センチ切るのですよ。そこへジーンのマナを通し道を作ります」
お義母さんが出してくれた絵を見て血の気が引いていくのが分かる。だってこれ、絶対に痛い。僕の表情に気づいてライリ先生が励ましてくれた。
「大丈夫ですよ、アキラ様。私の父ソニンが神夢陣を発動させ、深く眠りについてから行います。ご安心ください」
こちらの世界の薬が何も効かない僕へは、ジーンからマナを得ているからなんとか陣は使えるらしい。
「アキラさん心配だと思いますが、心静かに過ごしてください」
同じようにお腹で赤ちゃんを育てている物静かなサリオンさんも久しぶりの出産らしく、僕の少し後になるらしい。サリオンさんはマナもオドも豊富で、僕のように切ったりはしないらしい。
「ありがとうございます、サリオンさん」
アキラの腹実の点滅が始まったのはそれから四日だった。予定通りアキラには神夢(しんむ)で深く眠ってもらい、それから切開術になる。腹実は早い間隔で点滅し猶予がない。
ジーンはライリストゥクルの横に立ち診療台の中のアキラを見下ろす。
「若輩者ですがよろしくお願いします、殿下」
「……信頼しているよ」
ジーンの後ろにはタークとタークの侍女のフェンナがいる。腹実を取り出した後の羊膜切開をするためで、タークは万が一のために控えている。
厄介なのはアキラの再生能力だ。切ったはいいがすぐに再生する傷との勝負になる。ジーンのマナが力負けすれば、更に切ることになるからそれは避けたかった。
「意識が神夢領域に到達しました。どうぞ」
ソニンティアムの声に、両膝を立てて固定してある、ドレスシャツを半分捲り上げたアキラの会陰を慎重に切る。血が溢れ受け皿に溜まり、ジーンはマナを指先に載せて放出した。腹実からも金の光が溢れジーンのマナと繋がるが、アキラの再生が始まって来るのが分かった。マナの道が狭まり始めたからで、かなりの抵抗を感じている。
「……ぐうっ……。早く降りてきたらどうかな。アキラの中は気持ちいいかもしれないけれどね」
ジーンの揶揄に腹実がゆっくりと動き初め最後には傷の再生に押し出されるようにして拳大の腹実が出てきた。
「頼むよ」
フェンナが恭しく腹実を手にして、台の上で金に光る腹実に軽く刃を当てると羊水が溢れ、腹実の中のマナとオドが満ちる。人型が形成されタークを含めジーンも息を呑んだ。
「髪が……黒い。どうしてーーまさか、毒の?」
ジーンが赤子を見ると赤子はアキラの瞳と同じ黒目がちの目を開いて、んぎゃあ……と一声を上げる。
「毒の気配は感じませんので、色素が沈澱してしまったのかもしれません。私の神癒(しんゆ)の力不足でした」
神夢(しんむ)を解除したソニンティアムがジーンに頭を下げて詫びる。だがジーンは嬉しく思っていた。
「将来は私そっくりになるかもしれないが、黒髪黒目でアキラの要素もある。こんなに嬉しいことはないと思う。アキラへは毒の影響は伏せよう。心配するからね」
アキラの瞳がぽかりと開きジーンはアキラの手を握る。
「痛いところはないかな」
しかしアキラは夢見心地で、
「父と妹と……誰か男の人がいて、妹が女の子の手を引いていました……」
と呟く。
「神が見せてくれた未来かもしれませんね、アキラ様。神夢には稀に予知夢があるそうです」
ソニンティアムの声はアキラには届かなかったかもしれない。アキラは再び眠りに落ちてしまい、泣き止まない赤子がフェンナの手で包まれていた。
「ジーン、この子……乳みたいですね。父の初乳をどうぞ。多分アキラくんには初乳くらいしか出ないでしょう。本来腹実ではありませんし。頑張って父乳(ちち)を出してくださいね」
とタークに言われてジーンは眉を顰めながら、自分にそっくりになるであろう赤子を受け取り、胸に唇を押し当ててやる。ツキン……とした微かな痛みと嚥下する喉元に、望んでいたことながら伴侶との子育てが始まったことを感じて苦笑した。
「お手伝いいたします、殿下」
「……いや、二人でやってみようと思う。皆の力も借りてね」
そして赤子のマナが大陸同士を更に安定させ、この日二つの大陸を結ぶ列車がついに走ったのだった。
ーーーー数年後……
行方不明だった友のマナが確認出来たからレグルス王国に行きたいとジーンの弟分のセネカ殿下がジーンに話を持ちかけてきた。
「レガリア連邦王国のレグルス王国には国交がないからだめだからね。それにその友人のマナか分からないじゃないか」
ジーンはセネカ殿下がバンバン叩く机の上でタブレット端末にサインをしている。紙決済が随分減ったなぁ……僕はデータ入力をしていてちらっと盗み見た。
「ジーンの馬鹿!ジーンだってオーガスタには世話になったでしょ。魔の森の地図がどうしてまだ来ないのか、気にしていたよね?それに僕は獣人族の子供だよ?マナくらい判別出来る。どうして親友の僕の前から消えたのか知りたいんだよ」
オーガスタさんって赤い髪の男の人だったと思う。セネカ殿下がたまにパールバルト王国に連れて来ていた人だ。おっとりとしていて、僕とお義母さんの畑を手伝ってくれたこともある。
「あ!ーーそういえば、レガリア連邦王国のアリシア王国ならパールバルトの前王は王族交流があるはすだよね。レガリア連邦王国の情報は欲しいところだよ、ジーン?」
セネカ殿下が言うことはもっともで、ジーンは眉を顰めて考え込んでいる。そこへスバルが政務室の扉を勢いよく開けて飛び込んできて、
「あ、セネカさんじゃん。こんにちは、今日はどうしたの?あ、闇の商人するなら俺も連れてってよ。今日はお出かけ服じゃないから違うかあ。ねえねえ、母さん聞いてよ聞いて、あのさあ」
と一度口を開いたら止まらないお喋りを繰り出す。ジーンそっくりな容姿でお喋り好きなんだから、なんだか笑えてしまって僕は面白いんだけどジーンはすごく嫌そう。ジーンに言わせると獣人のお義父さんに性格がよく似ているそうだ。僕似の黒髪黒目だからか王族に見えないからすごく親しみやすいみたいで、みんなから好かれている。でもジーンの跡目を継いで欲しくはない感じ。
貴族の一部は黒髪黒目で金髪金目の国王の子供?って言う人もいるけれど、この無駄なくらいのお喋りに気圧されて大抵は黙ってしまい、僕もジーンも笑いながら肩を竦めてしまう。王族だから、スバルには少し落ち着いてほしいかも。
「ーースバル、アリシア王国の貴族学舎に遊学しておいでよ、これは命令だ」
ジーンの言葉に振り向いたスバルはにこにこしながら、
「アリシア王国ね、はいはーい……ええええっ!レガリア連邦王国の?」
とジーンに顔を向ける。
「セネカが連絡を繋いでくれるから、アリシア王国を皮切りに私の製品を紹介して来るといいよ。デバイスとタブレットを含む生活魔具を持って行きなさい。魔動車もいいね」
「……セネカさんがいつもみたいに密入国すればいいじゃんか。俺、今更学舎なんか……」
スバルがごね始めるとセネカくんがスバルに詰め寄る。
「闇の商人だと長居は出来ないんだよ。今回は王族の息子スバルの御用伺いとしてアリシア王宮に潜入したい。オーガスタはアリシア国の市民権を得ていたから、そこから調べていきたいんだ。頼むよスバル」
僕は特に何も言わなかった。だってスバルの夢はジーンの作った物を世界中で売ることなんだから。
「まじかよ……母さんは、反対してくれないよな……あああ、貴族嫌ーーい」
「ちゃんとパールバルト王族として行くといい」
「父さん?俺、パールバルトのことって、名所とか名物しか知らないんだよ。貴族的なこと突っ込まれたら俺、何も言えないよ?ーーまじかよ」
僕の大事な一人っ子スバルの旅立ちが近いなあ、少し寂しいなって思った。
でもいってらっしゃい、この世界は悪いところではないよ。
~終~
⭐︎⭐︎
アキラ中心のお話はこれで終わりになります。
続きというか、繋がりのお話はスバルの遊学先アリシア王国に移ります。
題名は『国王親子に迫られてるんだが』となります。主人公はノリンです。(2021.10.13.PM8:00~連載開始)
『巨人族の花嫁』
『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』
『召喚先は腕の中』
の縦軸世界観の中で、アキラの息子スバルとその友人達の話になります。基本的にはセネカとスバル以外は脇キャラクターですが、複数出てきますので併せて楽しんで頂ければ幸いです。タークは必ず出てきます笑
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この作品は感想を受け付けておりません。
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