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二. ニーナの章
17. 威圧
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「お、ついにか」
アッシュはまずお茶をひとのみ。次にまるで手ぐすね引いて待っていたかのように、腕を鳴らした。
背筋を正し、オホンと咳払い。
もう彼の人と成りは何となくわかっている。彼の行動や言動から、怪しいものでもなければ敵対する輩でもないだろう。ただ、その素性が分からないだけで。
どうしてあの晩あそこにいたのか。アッシュもそうだが、そのローブの男は何なのだとか。彼らはこれからどうするのかとか、聞きたい事はたくさんあるのだ。
「まずは自己紹介からか?」
しかし身を乗り出しそうなアッシュを制して、意外にも団長が先に口を開いた。
「いや、まずはオレの質問に答えてもらいたい」
先程の会議とは打って変わって、神妙な目つきをしている。
団長は何か思う所があるのか、いきなりその態度を変化させた。
「お主たちは、《中央》の…ギルドの連中だろう?」
「え?」
「ええ?」
団長の目は据わっている。和やかとは言い難い会議ではあったが、それまではいつもの団長だったのだ。
しかも口にした台詞がギルドであった。
団長が大嫌いで、その存在を完全否定する《中央》の組織、ギルド。
彼らが何者なのかは分からなかったが、その戦闘に慣れた様子といい、これまでの会話の口調と言い、団長は薄々と気付いていたようである。
ずばり言い当てられて面食らったのか、アッシュが口元をもごもごさせている。
「否定しないと言うことは、正しいという事だな。お主たちには悪いが、はっきり言って俺はギルドが好かん。お主らがあそこで何をしていたのか、すぐに言うが良い」
夜中にローブの男がくれた威圧感とはまた違った圧を団長は発している。
こんな和やかに飯を食い、滞りなく会議をしている中、ずっと腹の底に団長はこれを隠していたのか。脳筋だけが取り柄だと思っていたが、大した役者だと思った。
団長は、私達に嫌いなギルドを語るときのような口調で喋っている。
そのバカでかい体躯にその口調だ。普通の人間は気圧されてしまうだろう。
しかし、アッシュは諦めたように椅子に深く座りなおして腕を組み、ローブの男はいまだ黒い干しブドウを弄るのに夢中だった。
団長の圧など、何とも思っていない様子で驚いてしまう。
「どこのギルドだ。まさか騎士団ではあるまいな!」
私たちは喋れない。口を挟む余地がないのだ。
団長は自分で言いながらどんどん怒気を孕む口調に変わりつつある。
「貴様らが何処の誰で、何の目的でここにやってきたか、誰の差し金か言うがいい!」
彼のギルド嫌いは筋金入りだ。理由は分からないけれど、お高くとまった感が大嫌いなのだと言っていた。
あのローブの男は出会ってからまともに私達と口をきいていない。喋っているのは従者であろうアッシュだけだ。
私達と喋る口すら持っていないのか、この男は。
その不愛想な態度をいい加減にしてほしい。
私も団長に同調してしまう。アドリアン達の顔も、なんだか不服そうに歪んでいる。
この団は、団長が思うが儘に運営してきた。考えも団長に似通る。
団長がギルドはいけ好かない存在で、私たちを利用するだけ利用するハイエナのような汚い存在だと言うならば、そうなのだろうとも思っていた。
その本質を、一切知ろうとしないまま。
その時であった。
今ままでむっつりと黙るだけ黙り込んでいた件の男が、ようやく顔を上げたのだ。
今迄手に持っていた黒いシワシワの石をピンと弾き、それは転げて机の下に落ちる。
豪奢な絨毯に音もなく落ちた石をアッシュが目線で追うのを、ロロも釣られて見た時だった。
「それがどうした」
短い一言だった。
だが、その短い中に含まれる蔑みは、団長を激高させるに充分だった。
「貴様っ!!こちらが相応に黙っていればいい気になりおって!!!どうせ貴様らも騎士団の回し者だろう、俺はその手には載らぬぞ!!」
一体何の事を言っているのか、団長は立ち上がり今にもローブの男に突進する勢いだった。
慌ててアドリアンとコルトの二人が団長を止める。
「だからそれがどうしたと言っている。俺達がギルドの回し者で、お前たちを利用しに来たと言えばこの場で切り捨てるか」
しかしローブの男は留まらない。
あれだけだんまりだったのに、急に饒舌となって団長に冷たく言い放つ。
「お前の一存で、ギルドを退ける事がどれだけの犠牲を孕むか知りもしないくせに、たかが兄弟喧嘩に巻き込まれる町や団はたまったものではないな」
ああ、だからガキはいつまでもガキのままか。
そう言って鼻で笑った瞬間、もはやこめかみにしっかりと青筋を立てた団長が抑える二人を力づくで跳ねのけ、その勢いでローブの男を殴り飛ばしたのはほぼ同時であった。
「旦那!!」
ガタンと大きな音を立てて、ローブの華奢な身体は椅子ごと吹っ飛んだ。
慌ててアッシュがその身を起こす。団長の前に立ちふさがり、両手を広げた。
団長はわなわなと拳を握りしめ、顔は真っ赤で明らかに激怒している。
団長は大らかに笑い、大げさに喋り、筋肉ダルマだけれど怒る事は滅多にない。嫌いなギルドを語る時すら、嫌そうな顔をしているだけで、怒りはしなかったのだ。
もしかすると、団長のこんな表情は初めて見たかもしれない。
私とギャバンとアインは固まってしまって動けない。純粋なロロは団長の怒りに脅え、殴られたローブの男に同情して泣きそうになっている。
「それを言うなああああ!!!!」
今、彼は何を言った?
一存?
犠牲?
兄弟喧嘩?
何の話だ。この男は何を言おうとして、そして団長は何を指摘されて怒っている。
「散々世話になっておいて、手前の自由にできないから出奔か。ガキにガキと言って何が悪い」
「き、きさま、これ以上言ってみろお!!!命の恩人とはいえ、容赦せんぞお!!」
ローブの男は思い切り団長に殴られたのだろう。
赤い血液交じりの唾を吐いて、アッシュの助けを借りて立ち上がった。
アッシュは心配そうな顔をして、ローブの男を支えている。
「どういう、ことなの…」
話が全く見えない。
ローブの男が挑発し、それに団長が乗ったのは分かる。
男の口調は多少偉そうではあるものの、言っている意味は私には分からない。
するとアッシュが睨み合う二人の代わりに口を開いた。
「あんたら知らなかったのか?知らないなら教えてやるよ。このおっさんは、《中央》の4大ギルド筆頭、”騎士ギルド”の総帥の弟だ」
「ええええ!!!!?」
「はあ?」
「なんだ、それ!!」
「……」
団長は悔しそうに唇を噛んでいる。
団長が《中央》の出身であるのは皆知っている。学校の臨時の先生として、災厄の一年前にこの町にやってきた。
彼は頑なにギルドを嫌っていたが、そのギルドに身内がいるとは知らなかった。
総帥と言えば、ギルドの前身である宮廷騎士団の騎士団長に他ならない。
かなり偉いお方だ。偉いどころではない。王の次、評議会も貴族も総帥には手を出せないと聞く。
そんな雲の上の存在の、弟?
「俺も良く分かんねえけど、災厄の前に大喧嘩しちまって家出したんだってよ。なんか、騎士兵団を一個任されるはずが反故されて…とかなんとか」
「家、出?」
のそりと一歩前に足を踏み出したローブの男からは血が滴り落ちている。その血はサメの口の部分を汚し、さもサメ自体が血を流しているようだ。
一見笑える恰好を男はしているのに、ちっとも笑えない。
男は面白がって団長を挑発しているようにも見えた。彼の言葉に冷たさはあるが、怖さは無い。あの晩に私だけを見捨てようとした無関心さを今の彼には感じない。
「旦那、喧嘩をしに来た訳じゃねえだろ!」
ついにアッシュが男を咎める。
「喧嘩じゃない。事実を言っているまでだ。あの作戦とやらを聴いたか?子供の冒険ごっこでもあるまいし、ぬくぬくと影でギルドの恩恵に肖ってる者の、くだらん絵空事だ」
容赦なく口捨てる男の台詞に、私たちは愕然とした。
私達の行動を、子供じみた稚拙な作戦だと言っているのだ。
これは私も心外である。団長も私達も、この町を第一に考えて一番被害の出ない方法を取っているのだ。
団の事も町の事も知らない余所者に何が分かると言うの。
だが、気になることも言っている。ギルドに肖っているとはどういう意味だ。
「あんた、いい加減にしろよ。余所者の分際で何を偉そうに言ってんだ」
ついにアドリアンまでも参戦する。
しかしそれすらも想定内だったのか、男は臆する事なく口を開いた。
「余所者?それがそもそも間違ってる」
「はあ?なにいって…」
「俺らが守ってんだよ!」
アッシュが口を挟んできた。
「は?」
「だから!あんたらは知らないだろうけど!俺らが!守ってんの!俺というより、ギルド!」
「何を守っているというのだ」
一回一回区切りながらはっきり言うアッシュだったが、いまいち的を得ない。業を煮やしたコルトが目を顰めてそう問うと、今度はローブの男の方が反応した。
「この町を、ここの住人を。仕事も市場も相場も何もかもをだ」
「くっ!!」
団長が膝をついた。
噛みしめた唇からは血が流れている。思い切りローブの男から目を逸らし、膝をついたその背は大きいはずなのに小さく見えた。
「そこにいるガキと《中央》は取引したんだよ。貿易都市の遺物を全て《中央》に卸す代わりに、その生活のすべてをギルドが面倒みるとな」
「…!!!」
「なんだって!!」
「このおっさんは…あんま言いたくねえけど、横領の容疑が掛かってるんだ。ここ近年の実りが少ねえって事で、騎士ギルドが動き出した。そもそもこの自警団も、後ろ盾は騎士団だ。俺らは騎士団のメンバーじゃねえけど、一応絡んでるから無関係じゃねえ」
「団長、マジっすか…」
「うそだろ、横領ってなんだよお」
「その、言いにくいけど、あんたらの町は他力本願がすげえんだ。自分の力でどうこうしようできる次元を超えてる。ギルドが後ろで出張ってなきゃ、あんたらは災厄から一年も持たずに貿易都市の二の舞になってただろうって、騎士団長が俺達に言ってた。そんでそれを俺もこの一日で感じた。俺の村とは違う意味で、自分本位だ…」
アッシュの最後の台詞はもはや呟きで殆ど聞こえなかったが、その悲しそうな顔はこの話が真実であると物語っていた。
「俺らは本当は別の目的であの廃墟にいたんだ。で、たまたまオタクらと会った。なし崩しで一緒に来ちまったけど、なぁ、あんたら。一個大事な事を忘れてねえか?」
「どういう事だ…」
肩の力が抜けた団長の言葉に、もはや覇気はない。
これは私達に絶対に知られてはいけない事実だったのだろう。
団長がギルドを嫌うのは、ギルドのトップに君臨する兄と喧嘩別れをした為。
ここ一年ほど頻繁にギルドの使者が来ていたのは、あれは騎士ギルドの人間で、恐らくは横領か何かを諭す為か、ギルドの指示を仰ぐ為だと考えると、辻褄が合わない訳でもない。
私達が呑気に団を構えているのも、「探索」で換金するのも、平和に今の生活を満喫できるのも、全てギルドが後ろ盾していた結果だとするならば、私たちの存在意義はどうなる。
「あの晩、死人の他に何がいたよ。もっとヤベエ奴がいただろ」
そうだ。何故私達はそれを議題に出さなかった。
死人よりも何よりも恐ろしいものがあの場にいたのだ。
ふしゅふしゅと緑色のねっとりした汁を口から垂れ流す、白いモヤの化け物。
「怒れる神…」
忘れていたのではないが、何故思い出さなかったのだろう。
死人だけならば私達でも何とかなる。
だが、グレフは別だ。あれと戦える手段を私たちは持っていない。
そうだ。グレフは死人を使っていたのだ。
言葉は無かったが、グレフの動きに死人達は呼応した。集団で襲いかかったのも、あの時私達の逃げ場を塞いだのも、全てグレフが死人を操っていたとするならば。
死人がどうやって再びこの世に舞い降りたかは分からない。
だがその原因の一端に、グレフが絡んでいるとするならば、何も解決していない。むしろ謎だらけではないか。
残った死人をせん滅するだけで終わりではない。昼間は危険じゃないなんて、一体誰が確かめた。
グレフには昼も夜もないのだ。
あの大蛇のグレフはローブの男が殺した。そのグレフが一匹だけだとは限らない。
先程、団長を挑発する言葉の中にあった稚拙な作戦とは、まさにこのことなのではないだろうか。
何も終わってはいない。
何故そこにグレフがいて、どうやって死人を操り、どのように死人を生むのか。
理解して弾かれたように頭を上げると、ローブの男と目が合ったような気がした。男は私を見て、一瞬だけ笑った。その顔はサメのローブに隠されて見えなかったけれど、確かに笑ったのだ。
「俺達は廃墟に出るグレフを殺しに来た、《中央》のギルドが一つ〝紡ぎの塔“の人間だ。グレフの目的は狡猾かつ残忍だ。恐らくはまだ終わってはいないだろう。その原因はあの廃墟か、あるいは別の場所か。いずれにせよ活動するのに死人は邪魔だ。だからお前たちを利用させてもらった」
――これがお望みの質問の答えだよ。
そう言ってローブの男は椅子にふんぞり返り、未だ項垂れる団長を見据えた。
その視線はとても冷たく、とても平坦で、まるで何の感情も持ち合わせていないようだったが、何となくどこか寂しさも感じ取られて、この怒涛の空間に混乱してしまった頭ではこれ以上何も考える事は出来なくなってしまった。
アドリアンはポカンと口を開けていて。
コルトはわなわなと拳を震えさせていて。
アインは男と団長を交互に見てはおろおろとしていて。
ロロは机に突っ伏して泣いていて。
ギャバンは黙り込んだまま、ひたすら黒いシワシワの石を見つめていた。
私は団長を信じたいのにどうにも言葉が出ずに絶句していて。
アッシュはやっちまったと言わんばかりに顔面を抑え、天井を仰ぐ。
団長はその大きな体躯を丸めて震えていて。
唯一、ローブ男が何事も無かったかのように椅子にふんぞり返っている。
すぐにでも家に帰りたい気持ちに襲われて、私は出てくる溜息を無理やり抑え込むしかなかったのだった。
私達は、団長不在の執務室で、まるで葬式でも行われているかのように俯いて、どんよりと暗い表情を床に落としている。
あれからロルフ団長は、ローブの男に連れられて何処かへ行ってしまった。
男にしては華奢で痩せていて、その背も決して高くはない。筋肉隆々で二メートルほどもある体格には恵まれた団長と比べると、まさに大人と子供ほどの差がある。
現に団長はあの男を殴った際、男は軽く吹っ飛んだのだ。
しかし団長は一切の抵抗をしなかった。あの暴露話からすでに肩は落ちていたが、何やらローブの男に耳打ちで囁かれた途端に従順となったのだ。
団長がいなくなって、残された私たちは呆然とするしかなかった。
碌な説明もなく放置されているのだ。
そしてそんな私達の落ち込んだ態度に、その一端を担ったであろうアッシュが居心地悪くなったのか、自分が知っている程度であればと前置きして、ことの真相を語ってくれたのである。
アッシュはまずお茶をひとのみ。次にまるで手ぐすね引いて待っていたかのように、腕を鳴らした。
背筋を正し、オホンと咳払い。
もう彼の人と成りは何となくわかっている。彼の行動や言動から、怪しいものでもなければ敵対する輩でもないだろう。ただ、その素性が分からないだけで。
どうしてあの晩あそこにいたのか。アッシュもそうだが、そのローブの男は何なのだとか。彼らはこれからどうするのかとか、聞きたい事はたくさんあるのだ。
「まずは自己紹介からか?」
しかし身を乗り出しそうなアッシュを制して、意外にも団長が先に口を開いた。
「いや、まずはオレの質問に答えてもらいたい」
先程の会議とは打って変わって、神妙な目つきをしている。
団長は何か思う所があるのか、いきなりその態度を変化させた。
「お主たちは、《中央》の…ギルドの連中だろう?」
「え?」
「ええ?」
団長の目は据わっている。和やかとは言い難い会議ではあったが、それまではいつもの団長だったのだ。
しかも口にした台詞がギルドであった。
団長が大嫌いで、その存在を完全否定する《中央》の組織、ギルド。
彼らが何者なのかは分からなかったが、その戦闘に慣れた様子といい、これまでの会話の口調と言い、団長は薄々と気付いていたようである。
ずばり言い当てられて面食らったのか、アッシュが口元をもごもごさせている。
「否定しないと言うことは、正しいという事だな。お主たちには悪いが、はっきり言って俺はギルドが好かん。お主らがあそこで何をしていたのか、すぐに言うが良い」
夜中にローブの男がくれた威圧感とはまた違った圧を団長は発している。
こんな和やかに飯を食い、滞りなく会議をしている中、ずっと腹の底に団長はこれを隠していたのか。脳筋だけが取り柄だと思っていたが、大した役者だと思った。
団長は、私達に嫌いなギルドを語るときのような口調で喋っている。
そのバカでかい体躯にその口調だ。普通の人間は気圧されてしまうだろう。
しかし、アッシュは諦めたように椅子に深く座りなおして腕を組み、ローブの男はいまだ黒い干しブドウを弄るのに夢中だった。
団長の圧など、何とも思っていない様子で驚いてしまう。
「どこのギルドだ。まさか騎士団ではあるまいな!」
私たちは喋れない。口を挟む余地がないのだ。
団長は自分で言いながらどんどん怒気を孕む口調に変わりつつある。
「貴様らが何処の誰で、何の目的でここにやってきたか、誰の差し金か言うがいい!」
彼のギルド嫌いは筋金入りだ。理由は分からないけれど、お高くとまった感が大嫌いなのだと言っていた。
あのローブの男は出会ってからまともに私達と口をきいていない。喋っているのは従者であろうアッシュだけだ。
私達と喋る口すら持っていないのか、この男は。
その不愛想な態度をいい加減にしてほしい。
私も団長に同調してしまう。アドリアン達の顔も、なんだか不服そうに歪んでいる。
この団は、団長が思うが儘に運営してきた。考えも団長に似通る。
団長がギルドはいけ好かない存在で、私たちを利用するだけ利用するハイエナのような汚い存在だと言うならば、そうなのだろうとも思っていた。
その本質を、一切知ろうとしないまま。
その時であった。
今ままでむっつりと黙るだけ黙り込んでいた件の男が、ようやく顔を上げたのだ。
今迄手に持っていた黒いシワシワの石をピンと弾き、それは転げて机の下に落ちる。
豪奢な絨毯に音もなく落ちた石をアッシュが目線で追うのを、ロロも釣られて見た時だった。
「それがどうした」
短い一言だった。
だが、その短い中に含まれる蔑みは、団長を激高させるに充分だった。
「貴様っ!!こちらが相応に黙っていればいい気になりおって!!!どうせ貴様らも騎士団の回し者だろう、俺はその手には載らぬぞ!!」
一体何の事を言っているのか、団長は立ち上がり今にもローブの男に突進する勢いだった。
慌ててアドリアンとコルトの二人が団長を止める。
「だからそれがどうしたと言っている。俺達がギルドの回し者で、お前たちを利用しに来たと言えばこの場で切り捨てるか」
しかしローブの男は留まらない。
あれだけだんまりだったのに、急に饒舌となって団長に冷たく言い放つ。
「お前の一存で、ギルドを退ける事がどれだけの犠牲を孕むか知りもしないくせに、たかが兄弟喧嘩に巻き込まれる町や団はたまったものではないな」
ああ、だからガキはいつまでもガキのままか。
そう言って鼻で笑った瞬間、もはやこめかみにしっかりと青筋を立てた団長が抑える二人を力づくで跳ねのけ、その勢いでローブの男を殴り飛ばしたのはほぼ同時であった。
「旦那!!」
ガタンと大きな音を立てて、ローブの華奢な身体は椅子ごと吹っ飛んだ。
慌ててアッシュがその身を起こす。団長の前に立ちふさがり、両手を広げた。
団長はわなわなと拳を握りしめ、顔は真っ赤で明らかに激怒している。
団長は大らかに笑い、大げさに喋り、筋肉ダルマだけれど怒る事は滅多にない。嫌いなギルドを語る時すら、嫌そうな顔をしているだけで、怒りはしなかったのだ。
もしかすると、団長のこんな表情は初めて見たかもしれない。
私とギャバンとアインは固まってしまって動けない。純粋なロロは団長の怒りに脅え、殴られたローブの男に同情して泣きそうになっている。
「それを言うなああああ!!!!」
今、彼は何を言った?
一存?
犠牲?
兄弟喧嘩?
何の話だ。この男は何を言おうとして、そして団長は何を指摘されて怒っている。
「散々世話になっておいて、手前の自由にできないから出奔か。ガキにガキと言って何が悪い」
「き、きさま、これ以上言ってみろお!!!命の恩人とはいえ、容赦せんぞお!!」
ローブの男は思い切り団長に殴られたのだろう。
赤い血液交じりの唾を吐いて、アッシュの助けを借りて立ち上がった。
アッシュは心配そうな顔をして、ローブの男を支えている。
「どういう、ことなの…」
話が全く見えない。
ローブの男が挑発し、それに団長が乗ったのは分かる。
男の口調は多少偉そうではあるものの、言っている意味は私には分からない。
するとアッシュが睨み合う二人の代わりに口を開いた。
「あんたら知らなかったのか?知らないなら教えてやるよ。このおっさんは、《中央》の4大ギルド筆頭、”騎士ギルド”の総帥の弟だ」
「ええええ!!!!?」
「はあ?」
「なんだ、それ!!」
「……」
団長は悔しそうに唇を噛んでいる。
団長が《中央》の出身であるのは皆知っている。学校の臨時の先生として、災厄の一年前にこの町にやってきた。
彼は頑なにギルドを嫌っていたが、そのギルドに身内がいるとは知らなかった。
総帥と言えば、ギルドの前身である宮廷騎士団の騎士団長に他ならない。
かなり偉いお方だ。偉いどころではない。王の次、評議会も貴族も総帥には手を出せないと聞く。
そんな雲の上の存在の、弟?
「俺も良く分かんねえけど、災厄の前に大喧嘩しちまって家出したんだってよ。なんか、騎士兵団を一個任されるはずが反故されて…とかなんとか」
「家、出?」
のそりと一歩前に足を踏み出したローブの男からは血が滴り落ちている。その血はサメの口の部分を汚し、さもサメ自体が血を流しているようだ。
一見笑える恰好を男はしているのに、ちっとも笑えない。
男は面白がって団長を挑発しているようにも見えた。彼の言葉に冷たさはあるが、怖さは無い。あの晩に私だけを見捨てようとした無関心さを今の彼には感じない。
「旦那、喧嘩をしに来た訳じゃねえだろ!」
ついにアッシュが男を咎める。
「喧嘩じゃない。事実を言っているまでだ。あの作戦とやらを聴いたか?子供の冒険ごっこでもあるまいし、ぬくぬくと影でギルドの恩恵に肖ってる者の、くだらん絵空事だ」
容赦なく口捨てる男の台詞に、私たちは愕然とした。
私達の行動を、子供じみた稚拙な作戦だと言っているのだ。
これは私も心外である。団長も私達も、この町を第一に考えて一番被害の出ない方法を取っているのだ。
団の事も町の事も知らない余所者に何が分かると言うの。
だが、気になることも言っている。ギルドに肖っているとはどういう意味だ。
「あんた、いい加減にしろよ。余所者の分際で何を偉そうに言ってんだ」
ついにアドリアンまでも参戦する。
しかしそれすらも想定内だったのか、男は臆する事なく口を開いた。
「余所者?それがそもそも間違ってる」
「はあ?なにいって…」
「俺らが守ってんだよ!」
アッシュが口を挟んできた。
「は?」
「だから!あんたらは知らないだろうけど!俺らが!守ってんの!俺というより、ギルド!」
「何を守っているというのだ」
一回一回区切りながらはっきり言うアッシュだったが、いまいち的を得ない。業を煮やしたコルトが目を顰めてそう問うと、今度はローブの男の方が反応した。
「この町を、ここの住人を。仕事も市場も相場も何もかもをだ」
「くっ!!」
団長が膝をついた。
噛みしめた唇からは血が流れている。思い切りローブの男から目を逸らし、膝をついたその背は大きいはずなのに小さく見えた。
「そこにいるガキと《中央》は取引したんだよ。貿易都市の遺物を全て《中央》に卸す代わりに、その生活のすべてをギルドが面倒みるとな」
「…!!!」
「なんだって!!」
「このおっさんは…あんま言いたくねえけど、横領の容疑が掛かってるんだ。ここ近年の実りが少ねえって事で、騎士ギルドが動き出した。そもそもこの自警団も、後ろ盾は騎士団だ。俺らは騎士団のメンバーじゃねえけど、一応絡んでるから無関係じゃねえ」
「団長、マジっすか…」
「うそだろ、横領ってなんだよお」
「その、言いにくいけど、あんたらの町は他力本願がすげえんだ。自分の力でどうこうしようできる次元を超えてる。ギルドが後ろで出張ってなきゃ、あんたらは災厄から一年も持たずに貿易都市の二の舞になってただろうって、騎士団長が俺達に言ってた。そんでそれを俺もこの一日で感じた。俺の村とは違う意味で、自分本位だ…」
アッシュの最後の台詞はもはや呟きで殆ど聞こえなかったが、その悲しそうな顔はこの話が真実であると物語っていた。
「俺らは本当は別の目的であの廃墟にいたんだ。で、たまたまオタクらと会った。なし崩しで一緒に来ちまったけど、なぁ、あんたら。一個大事な事を忘れてねえか?」
「どういう事だ…」
肩の力が抜けた団長の言葉に、もはや覇気はない。
これは私達に絶対に知られてはいけない事実だったのだろう。
団長がギルドを嫌うのは、ギルドのトップに君臨する兄と喧嘩別れをした為。
ここ一年ほど頻繁にギルドの使者が来ていたのは、あれは騎士ギルドの人間で、恐らくは横領か何かを諭す為か、ギルドの指示を仰ぐ為だと考えると、辻褄が合わない訳でもない。
私達が呑気に団を構えているのも、「探索」で換金するのも、平和に今の生活を満喫できるのも、全てギルドが後ろ盾していた結果だとするならば、私たちの存在意義はどうなる。
「あの晩、死人の他に何がいたよ。もっとヤベエ奴がいただろ」
そうだ。何故私達はそれを議題に出さなかった。
死人よりも何よりも恐ろしいものがあの場にいたのだ。
ふしゅふしゅと緑色のねっとりした汁を口から垂れ流す、白いモヤの化け物。
「怒れる神…」
忘れていたのではないが、何故思い出さなかったのだろう。
死人だけならば私達でも何とかなる。
だが、グレフは別だ。あれと戦える手段を私たちは持っていない。
そうだ。グレフは死人を使っていたのだ。
言葉は無かったが、グレフの動きに死人達は呼応した。集団で襲いかかったのも、あの時私達の逃げ場を塞いだのも、全てグレフが死人を操っていたとするならば。
死人がどうやって再びこの世に舞い降りたかは分からない。
だがその原因の一端に、グレフが絡んでいるとするならば、何も解決していない。むしろ謎だらけではないか。
残った死人をせん滅するだけで終わりではない。昼間は危険じゃないなんて、一体誰が確かめた。
グレフには昼も夜もないのだ。
あの大蛇のグレフはローブの男が殺した。そのグレフが一匹だけだとは限らない。
先程、団長を挑発する言葉の中にあった稚拙な作戦とは、まさにこのことなのではないだろうか。
何も終わってはいない。
何故そこにグレフがいて、どうやって死人を操り、どのように死人を生むのか。
理解して弾かれたように頭を上げると、ローブの男と目が合ったような気がした。男は私を見て、一瞬だけ笑った。その顔はサメのローブに隠されて見えなかったけれど、確かに笑ったのだ。
「俺達は廃墟に出るグレフを殺しに来た、《中央》のギルドが一つ〝紡ぎの塔“の人間だ。グレフの目的は狡猾かつ残忍だ。恐らくはまだ終わってはいないだろう。その原因はあの廃墟か、あるいは別の場所か。いずれにせよ活動するのに死人は邪魔だ。だからお前たちを利用させてもらった」
――これがお望みの質問の答えだよ。
そう言ってローブの男は椅子にふんぞり返り、未だ項垂れる団長を見据えた。
その視線はとても冷たく、とても平坦で、まるで何の感情も持ち合わせていないようだったが、何となくどこか寂しさも感じ取られて、この怒涛の空間に混乱してしまった頭ではこれ以上何も考える事は出来なくなってしまった。
アドリアンはポカンと口を開けていて。
コルトはわなわなと拳を震えさせていて。
アインは男と団長を交互に見てはおろおろとしていて。
ロロは机に突っ伏して泣いていて。
ギャバンは黙り込んだまま、ひたすら黒いシワシワの石を見つめていた。
私は団長を信じたいのにどうにも言葉が出ずに絶句していて。
アッシュはやっちまったと言わんばかりに顔面を抑え、天井を仰ぐ。
団長はその大きな体躯を丸めて震えていて。
唯一、ローブ男が何事も無かったかのように椅子にふんぞり返っている。
すぐにでも家に帰りたい気持ちに襲われて、私は出てくる溜息を無理やり抑え込むしかなかったのだった。
私達は、団長不在の執務室で、まるで葬式でも行われているかのように俯いて、どんよりと暗い表情を床に落としている。
あれからロルフ団長は、ローブの男に連れられて何処かへ行ってしまった。
男にしては華奢で痩せていて、その背も決して高くはない。筋肉隆々で二メートルほどもある体格には恵まれた団長と比べると、まさに大人と子供ほどの差がある。
現に団長はあの男を殴った際、男は軽く吹っ飛んだのだ。
しかし団長は一切の抵抗をしなかった。あの暴露話からすでに肩は落ちていたが、何やらローブの男に耳打ちで囁かれた途端に従順となったのだ。
団長がいなくなって、残された私たちは呆然とするしかなかった。
碌な説明もなく放置されているのだ。
そしてそんな私達の落ち込んだ態度に、その一端を担ったであろうアッシュが居心地悪くなったのか、自分が知っている程度であればと前置きして、ことの真相を語ってくれたのである。
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彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
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彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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