86 / 170
三. セトの章
2. 愚か者の住まう町ヴァレリ ー回想ー
しおりを挟む
今より11年前。
僕が9歳だった頃の話をしようかな。
あの日、世界の全てが終わろうとしていた時、ひょんな事から我が町に訪れた転機を。
世界が破滅に導かれていく条理の波に逆らって、幸せになっていくこの町を。
誰もが羨む贅沢な生活を、快楽を、僕らはありのままに受け入れ、世界にただ一つの『選ばれた民』だと信じていた能天気な人間達の事を。
僕の名はセト。
セト・ルシエンテス。
生まれながらに伯の爵位を持つ子供だ。
はっきり言って僕は、年齢相応に純真無垢な子どもではない。
物心付いた頃には既に何人もの部下を扱き下ろしていたし、妾と称した愛人が沢山いた。
精通もまともに始まっていない子供に、いずれ必要だからと父が与えた女達。
僕は訳も分からぬまま翻弄され、僕の意思とは無関係に女の肢体と男の性を知った。
結婚もしていないのに妾という表現は可笑しいと思うけど、僕にはまだ見ぬ花嫁がいるらしい。
それは存在すらしていなくて、父がここぞという時、重要な繋ぎを必要とする時に、政略結婚による保身の為に大事にとってある。
僕に与えられた妾は、後に全て父のお下がりであると教えられた時は荒れたものだ。
親子ではなく穴兄弟ではないか。
いや、こんなピチピチの僕に中古品を宛がうなんてどうにかしている。確かに夜の秘技は筆舌に尽くしがたいが、僕だって選ぶ権利ぐらいは欲しい。
そう告げると愛人の数が倍になった。
父に捨てられる女の「取替時期」が頻繁になっただけだった。
僕はほんの小さな頃から父の膝の上に抱かれ、日々謁見や商談に訪れる者達を見ていた。
父なりの帝王学だったのか。偶に大事な商談の合否を僕に委ねる事もあった。
そういう時、僕はとても偉そうに踏ん反り返って彼らの運命を決定付けていたものだ。実際に偉かったし、優越を感じる事が何より楽しかったからやっていたのだけど。
今となっては黒歴史に近い。
敢えて踏ん反り返らずとも、相手が遜るのだから僕は動く必要がなかったのだ。
この町で、僕に意見する人間は父を入れても誰一人として存在しない。
何と言っても、僕の血筋は王家に連なる者だからである。
母方の遠い親戚筋ではあるが、王家の系図に僕の名前も記されてある。
父は婿に来た立場だけど、母と結婚したと同時に伯爵の位を王家から与えられ、名字を名乗る事を許された。
「ルシエンテス」は母の名字。美しく、か細く、しかし芯から強さを戴く有難い名だ。
僕は産まれた時から僕であり、僕こそ世界に認められた子どもであり、こんな僕の元に暮らせる民は世界で一番幸せだと思った。
勿論、僕自身もね。
■■■
ズガガガガガガッガゴゴッガガ!!!!!
ある日、かつてない地震が世界を襲った。
もうすぐ昼という時間帯。
僕はその時部屋に缶詰めされていて、家庭教師から出された宿題に四苦八苦中であった。
「な、何!?」
机ごと宙に浮いた。
それから縦に激しく揺らされ、僕は椅子から転げ落ちてしまう。
僕は慌ててベッドに行き、頭から羽根布団を被って揺れの恐怖をやり過ごしていた。
地震は滅多にないから流石に驚いた。
女たちに激しくバウンドされるより強い揺れだったのだ。上下の震動は思った以上に長く続き、聴いた事もない恐ろしい地鳴りが完全に聞こえなくなるまで僕は全く動けなかった。
僕の部屋は殺風景で、女と睦む為のベッドと、勉強する為の机と椅子しかない。余計な調度品は余計な思想を招くとやらで、父が省いたのだ。
いつもは退屈すぎる自室も、それが功を成して震動に倒れるものが椅子以外無く、僕は怪我一つ負わずに済んだ。
地震は本震よりも余震に注意せよと家庭教師が言っていたのを思い出す。
暫くベッドに身を潜めた状態で次の揺れに備えていたが、一向に来ない―――というより外が余りにも静かだったから、僕は決心して部屋を出た。
殺風景なのは僕の部屋だけで、屋敷には至る所に過度な調度品が飾られている。
金に困った事はない。慈善家じゃないから寄付もしない。
余り余る金は全て己が欲を満たす為だけに使われる。
そんな父の偏った美意識で集め尽くされた世界中の芸術作品のそのどれもが無残に倒れ、殆どが壊れている。
「ぼ、ぼっちゃ…」
「!!」
ガラスの散乱した廊下を注意深く歩いて行くと、僕の妾の一人が大人二人分程もある大きな壺に押しつぶされていた。
普段は綺麗にしている髪が床にざんばらに落ち、顔中をガラス塗れにして赤い血を流している。
震える手が僕の足を掴み、僕は咄嗟にその縋る手を踏みつけてしまった。
「……!ぼっちゃ…」
「汚いんだけど」
血塗れの手が僕の足を穢す。
僕の足は毎日薔薇の風呂で、徹底的にケアしているのに。そんな汚い手で触られたらばい菌が付くじゃないか。
僕は掠れた声で助けを求める女を無視し、屋敷内を進んだ。
いや、僕が冷たいとか、そういう問題じゃないよ。
なんせ僕は9歳。非力な少年だ。
あんな大きな壺を、こんな子供が一人で動かせると思っているのかい?
合理的じゃないのは嫌いなんだ。
それに、汚いものも。
女の替えくらい、幾らでもいるのだし。
屋敷の中は父の悪趣味な調度品や芸術品の所為で、多くの使用人がその下敷きとなっていた。
もう動かない者もいる。
大怪我を負ってフラフラ歩いている者も、力無く壁に寄り掛かっている者など様々だ。
子どもながら地震の影響に恐怖を覚え、父の姿を探す。
父の生死については興味が無い。
世界にとって、僕が至高の存在だからだ。
父が生きれいればそれで良し。死んでいても構わない。どうせ僕が跡目を継ぐだけだからだ。
「セト!無事か!!」
何人かの屍を越えた頃、父がひょっこり現れた。
「父さん…」
生きていた。それも無傷で。
その後ろには2人の裸の女が抱き寄せ合って泣いている。
一人は体中が傷だらけ。
もう一人は頭を打ったのか、血が顔を伝ってポタポタと絨毯に染みを作っている。
「良かった!お前に何かあったらワシはっ!」
父が大袈裟に僕に駆け寄り、おいおいと泣く。
ぎゅうと抱きしめられた力は強く、僕は少し面食らってしまう。
父にとって王家の崇高な血を受け継ぐ僕は、父が親戚筋として利用するのに得難い存在であるという、ただそれだけだったと思っていたのだけど。
僕を産んだ母は、僕を産んですぐに出奔していなくなってしまったから、僕しか王家の血を持っていないのだ。
父がこの町に君臨するのは、まさにその血のお陰である。
爵位を賜ったのも、《王都》や《中央》が口出ししてこないのも、こうやって複数の裸の女を抱けるのも高々に威張れるのも全部。僕に流れるこの薄い薄い血が在る為。
「ああ、良かった!お前が無事で!!」
「父さん…苦しいよ」
「よくぞご無事で、坊ちゃま…」
「うう…」
頭から血を流した女が倒れる。
傷だらけの女は割れた花瓶の下に敷いていた布を素早く身に着け、僕と父を外へと誘導する。
「怪我人よりも、まずはあなた方です」
「頼もしいな」
満足げに頷く父に手を引かれ、僕らはようやく外に出る。
「これは…」
「酷い状態だな」
開け放たれた玄関口を抜けるとすぐに広い庭がある。
色とりどりの花壇に、飛沫を上げる噴水。
腕の良い職人が日々手入れを怠らない立派な庭園に、領民が大量に押し掛けていた。彼らは僕らの姿を見た途端に口々に被害状況を述べ、救助や支援、要望や悪口を叫んだ。
僕らだって無傷じゃないのに。
いや、僕と父は無傷だけど、屋敷の中はめちゃくちゃだ。
まだこの地震が何だったのか、何も分かっていないというのに。
なんて身勝手な連中なんだと思った。
「あいや、皆の者待たれい!」
しかし父は興奮する領民たちを制するように両手を挙げ、声を張る。
「我らは無事であるが、その他の被害は分からぬ。そう一度に責められても動きようがない。まずは建物から離れ安全な場所にて、被害状況と今後の対策を話し合おうではないか!」
父は為政者としては有能な方だ。
野心家で生まれ故郷に燻るのを是とせず、若い頃から政治家としての手腕を《王都》で学んだ。この町に至るまでは《王都》の執政官補佐という立場で、多くの話を見聞きしたという経歴の持ち主だ。
ただ、金目のものと権力と女に弱いというだけで。
あの手この手で母を口説き落としたのも、その上手く回る口のお陰か。
まあ、母は僕を産み落としていなくなってしまったから、父を本当に愛した訳ではなかったのだろう。
僕という存在すら捨てたのだから。
「領主様の云う通りだ!」
「まずは話し合いだ!」
この町の領民は、よく父に飼い慣らされている。
王の名の下、僕さえ保護していれば厚い加護が受けられる。
父は《王都》や、教会の総本山がある《中央》とも上手く立ち回るから、いわゆる甘い汁というものを、この町は様々な事で受けてきたのだ。
例えば、税金。
この町の領主に払うべき税金は、他の町や村に比べて遥かに少ない。
その代わり、町を訪れる旅人から摂取する金は高いけれどね。
更に、結婚制度。
町の成り行きは後で説明するけど、僕らの町はこの国唯一の『一夫多妻制』だ。
他にもまだまだあるけど、父は町の住人をことさら贔屓した政策で、彼らの信頼を勝ち取った。
だからこそ、このような状況下でも領民は父の意に従うのである。
これこそ、我が町――《ヴァレリ》
王家の薄い血を擁するだけで、この世界の中心と勘違いした愚か者たちの住まう町であった。
僕が9歳だった頃の話をしようかな。
あの日、世界の全てが終わろうとしていた時、ひょんな事から我が町に訪れた転機を。
世界が破滅に導かれていく条理の波に逆らって、幸せになっていくこの町を。
誰もが羨む贅沢な生活を、快楽を、僕らはありのままに受け入れ、世界にただ一つの『選ばれた民』だと信じていた能天気な人間達の事を。
僕の名はセト。
セト・ルシエンテス。
生まれながらに伯の爵位を持つ子供だ。
はっきり言って僕は、年齢相応に純真無垢な子どもではない。
物心付いた頃には既に何人もの部下を扱き下ろしていたし、妾と称した愛人が沢山いた。
精通もまともに始まっていない子供に、いずれ必要だからと父が与えた女達。
僕は訳も分からぬまま翻弄され、僕の意思とは無関係に女の肢体と男の性を知った。
結婚もしていないのに妾という表現は可笑しいと思うけど、僕にはまだ見ぬ花嫁がいるらしい。
それは存在すらしていなくて、父がここぞという時、重要な繋ぎを必要とする時に、政略結婚による保身の為に大事にとってある。
僕に与えられた妾は、後に全て父のお下がりであると教えられた時は荒れたものだ。
親子ではなく穴兄弟ではないか。
いや、こんなピチピチの僕に中古品を宛がうなんてどうにかしている。確かに夜の秘技は筆舌に尽くしがたいが、僕だって選ぶ権利ぐらいは欲しい。
そう告げると愛人の数が倍になった。
父に捨てられる女の「取替時期」が頻繁になっただけだった。
僕はほんの小さな頃から父の膝の上に抱かれ、日々謁見や商談に訪れる者達を見ていた。
父なりの帝王学だったのか。偶に大事な商談の合否を僕に委ねる事もあった。
そういう時、僕はとても偉そうに踏ん反り返って彼らの運命を決定付けていたものだ。実際に偉かったし、優越を感じる事が何より楽しかったからやっていたのだけど。
今となっては黒歴史に近い。
敢えて踏ん反り返らずとも、相手が遜るのだから僕は動く必要がなかったのだ。
この町で、僕に意見する人間は父を入れても誰一人として存在しない。
何と言っても、僕の血筋は王家に連なる者だからである。
母方の遠い親戚筋ではあるが、王家の系図に僕の名前も記されてある。
父は婿に来た立場だけど、母と結婚したと同時に伯爵の位を王家から与えられ、名字を名乗る事を許された。
「ルシエンテス」は母の名字。美しく、か細く、しかし芯から強さを戴く有難い名だ。
僕は産まれた時から僕であり、僕こそ世界に認められた子どもであり、こんな僕の元に暮らせる民は世界で一番幸せだと思った。
勿論、僕自身もね。
■■■
ズガガガガガガッガゴゴッガガ!!!!!
ある日、かつてない地震が世界を襲った。
もうすぐ昼という時間帯。
僕はその時部屋に缶詰めされていて、家庭教師から出された宿題に四苦八苦中であった。
「な、何!?」
机ごと宙に浮いた。
それから縦に激しく揺らされ、僕は椅子から転げ落ちてしまう。
僕は慌ててベッドに行き、頭から羽根布団を被って揺れの恐怖をやり過ごしていた。
地震は滅多にないから流石に驚いた。
女たちに激しくバウンドされるより強い揺れだったのだ。上下の震動は思った以上に長く続き、聴いた事もない恐ろしい地鳴りが完全に聞こえなくなるまで僕は全く動けなかった。
僕の部屋は殺風景で、女と睦む為のベッドと、勉強する為の机と椅子しかない。余計な調度品は余計な思想を招くとやらで、父が省いたのだ。
いつもは退屈すぎる自室も、それが功を成して震動に倒れるものが椅子以外無く、僕は怪我一つ負わずに済んだ。
地震は本震よりも余震に注意せよと家庭教師が言っていたのを思い出す。
暫くベッドに身を潜めた状態で次の揺れに備えていたが、一向に来ない―――というより外が余りにも静かだったから、僕は決心して部屋を出た。
殺風景なのは僕の部屋だけで、屋敷には至る所に過度な調度品が飾られている。
金に困った事はない。慈善家じゃないから寄付もしない。
余り余る金は全て己が欲を満たす為だけに使われる。
そんな父の偏った美意識で集め尽くされた世界中の芸術作品のそのどれもが無残に倒れ、殆どが壊れている。
「ぼ、ぼっちゃ…」
「!!」
ガラスの散乱した廊下を注意深く歩いて行くと、僕の妾の一人が大人二人分程もある大きな壺に押しつぶされていた。
普段は綺麗にしている髪が床にざんばらに落ち、顔中をガラス塗れにして赤い血を流している。
震える手が僕の足を掴み、僕は咄嗟にその縋る手を踏みつけてしまった。
「……!ぼっちゃ…」
「汚いんだけど」
血塗れの手が僕の足を穢す。
僕の足は毎日薔薇の風呂で、徹底的にケアしているのに。そんな汚い手で触られたらばい菌が付くじゃないか。
僕は掠れた声で助けを求める女を無視し、屋敷内を進んだ。
いや、僕が冷たいとか、そういう問題じゃないよ。
なんせ僕は9歳。非力な少年だ。
あんな大きな壺を、こんな子供が一人で動かせると思っているのかい?
合理的じゃないのは嫌いなんだ。
それに、汚いものも。
女の替えくらい、幾らでもいるのだし。
屋敷の中は父の悪趣味な調度品や芸術品の所為で、多くの使用人がその下敷きとなっていた。
もう動かない者もいる。
大怪我を負ってフラフラ歩いている者も、力無く壁に寄り掛かっている者など様々だ。
子どもながら地震の影響に恐怖を覚え、父の姿を探す。
父の生死については興味が無い。
世界にとって、僕が至高の存在だからだ。
父が生きれいればそれで良し。死んでいても構わない。どうせ僕が跡目を継ぐだけだからだ。
「セト!無事か!!」
何人かの屍を越えた頃、父がひょっこり現れた。
「父さん…」
生きていた。それも無傷で。
その後ろには2人の裸の女が抱き寄せ合って泣いている。
一人は体中が傷だらけ。
もう一人は頭を打ったのか、血が顔を伝ってポタポタと絨毯に染みを作っている。
「良かった!お前に何かあったらワシはっ!」
父が大袈裟に僕に駆け寄り、おいおいと泣く。
ぎゅうと抱きしめられた力は強く、僕は少し面食らってしまう。
父にとって王家の崇高な血を受け継ぐ僕は、父が親戚筋として利用するのに得難い存在であるという、ただそれだけだったと思っていたのだけど。
僕を産んだ母は、僕を産んですぐに出奔していなくなってしまったから、僕しか王家の血を持っていないのだ。
父がこの町に君臨するのは、まさにその血のお陰である。
爵位を賜ったのも、《王都》や《中央》が口出ししてこないのも、こうやって複数の裸の女を抱けるのも高々に威張れるのも全部。僕に流れるこの薄い薄い血が在る為。
「ああ、良かった!お前が無事で!!」
「父さん…苦しいよ」
「よくぞご無事で、坊ちゃま…」
「うう…」
頭から血を流した女が倒れる。
傷だらけの女は割れた花瓶の下に敷いていた布を素早く身に着け、僕と父を外へと誘導する。
「怪我人よりも、まずはあなた方です」
「頼もしいな」
満足げに頷く父に手を引かれ、僕らはようやく外に出る。
「これは…」
「酷い状態だな」
開け放たれた玄関口を抜けるとすぐに広い庭がある。
色とりどりの花壇に、飛沫を上げる噴水。
腕の良い職人が日々手入れを怠らない立派な庭園に、領民が大量に押し掛けていた。彼らは僕らの姿を見た途端に口々に被害状況を述べ、救助や支援、要望や悪口を叫んだ。
僕らだって無傷じゃないのに。
いや、僕と父は無傷だけど、屋敷の中はめちゃくちゃだ。
まだこの地震が何だったのか、何も分かっていないというのに。
なんて身勝手な連中なんだと思った。
「あいや、皆の者待たれい!」
しかし父は興奮する領民たちを制するように両手を挙げ、声を張る。
「我らは無事であるが、その他の被害は分からぬ。そう一度に責められても動きようがない。まずは建物から離れ安全な場所にて、被害状況と今後の対策を話し合おうではないか!」
父は為政者としては有能な方だ。
野心家で生まれ故郷に燻るのを是とせず、若い頃から政治家としての手腕を《王都》で学んだ。この町に至るまでは《王都》の執政官補佐という立場で、多くの話を見聞きしたという経歴の持ち主だ。
ただ、金目のものと権力と女に弱いというだけで。
あの手この手で母を口説き落としたのも、その上手く回る口のお陰か。
まあ、母は僕を産み落としていなくなってしまったから、父を本当に愛した訳ではなかったのだろう。
僕という存在すら捨てたのだから。
「領主様の云う通りだ!」
「まずは話し合いだ!」
この町の領民は、よく父に飼い慣らされている。
王の名の下、僕さえ保護していれば厚い加護が受けられる。
父は《王都》や、教会の総本山がある《中央》とも上手く立ち回るから、いわゆる甘い汁というものを、この町は様々な事で受けてきたのだ。
例えば、税金。
この町の領主に払うべき税金は、他の町や村に比べて遥かに少ない。
その代わり、町を訪れる旅人から摂取する金は高いけれどね。
更に、結婚制度。
町の成り行きは後で説明するけど、僕らの町はこの国唯一の『一夫多妻制』だ。
他にもまだまだあるけど、父は町の住人をことさら贔屓した政策で、彼らの信頼を勝ち取った。
だからこそ、このような状況下でも領民は父の意に従うのである。
これこそ、我が町――《ヴァレリ》
王家の薄い血を擁するだけで、この世界の中心と勘違いした愚か者たちの住まう町であった。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る
がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。
その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。
爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。
爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。
『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』
人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。
『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』
諸事情により不定期更新になります。
完結まで頑張る!
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる