蒼淵の独奏譚 ~どこか壊れた孤高で最強の魔法使いがその一生を終えるまでの独奏物語~

蔵之介

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四. ルーベンスの章

2. 楽園

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 確約された平和など、実は存在しないと思い知らされた11年間であった。

 我らが長年築き上げた文明も、豊かな大地の農耕も、匠の技の芸術も、たった一日で全て滅ぶとは一体誰が予想出来たというのだ。
 甘んじて受けていた平和に浸りきっていた事は認めざるを得ないが、まさか我々の真の敵が遺伝子レベルで争っていた宿敵ではなく、突然空から堕ちてきた珍客とは非常に恐れ入る。

 我らは失った。

 そう、全てを喪った。

 誇り高き我らが魔族はその矜持すら踏みにじられて、ゴミ箱にすら捨てて貰えずにその辺で野垂れ死ぬ運命を強いられた。

 ああ、悔しい。
 悔しいが、手も足も出ないのが現状だ。

 この世界で輝かしい栄華を誇っていた我らは惨めに地べたに這い蹲って、心の底から軽蔑していた下等生物の援けを借りなければならないとは。

 悔しい、悔しい、くやし―――――

「ルーベンスさん!彼らの仮宿はこれでいいですかね?」

 半獣人のクロテッドが、両手いっぱいに藁を抱え、どこもかしこも藁に塗れてやってきた。
 与えられた仕事をやり切った顔をしているが、それはどう見てもただの藁の塊であり、俺の意図とは全く違う。

「やり直しだ、クロテッド。仮宿ではなく、宿だ。これでは雨風も凌げないぞ」
「ええ~…どうせあいつら、掘っ立て小屋で寝泊まりしてる下種げすでしょ?わざわざ家を用意しなくたって」
「だめだ、クロテッド。彼らは貴賓扱いだと長老が言ったであろう。貴様の気持ちも分からんでもないが、長の顔を潰す訳にもいかん」
「ちぇ…面倒くさいですねぇ!」

 若いクロテッドは悪態を吐き、空き家を探しに行ってしまった。私の前に大量の藁を放置したままでだ。
 慌てて彼を呼び戻すも、災厄で耳を失った彼は聴力の殆どが機能していない。今も私の唇の動きを読んで、言葉を理解しているのだ。その背に声を掛けても無駄なので、藁の始末は別の者に頼むとしよう。

「ルーベンスさん、見張りの数を確認したいのですが…」
「区画長、料理のメニューはこんな感じでいいですかね?」
「おいおいルーさんよ、遠征のメンバーが決まってねぇぞ!?」

 クロテッドを皮切りに、私を待っていた者達から次々に質問される。
 私の耳は大きく尖っているが、一度に全ての声を聴き分ける能力は持っていないのだ。

「はあ…」

 残念だが、私の毎朝の日課はここで打ち切りである。
 全てを恨み、憎み、その責任を下等生物に押し付けてようやく一日が始まる。
 朝は忌々しい崖が影を作ってその先端を私の寝床に突き刺してくるから、怒りを発散させないと一日中機嫌が悪くなる。
 まだ恨みつらみを言い足りないが、私には仕事が待っている。私の指示を待つ同士達は、列を成して待機している。

「ルーベンスさん?顔が怖いですよ」
「あ、ああ…寝起きでね、すまないな」

 憎むべき崖に登り、その頂上で石を蹴飛ばして踏み潰して唾を引っ掛けて日課は終了なのであるが、最近はいつも朝から呼ばれている私は消化不良に苛立ちを隠せないでいる。

「長も突然言い出しましたからね。滅多にない事だし、みんな浮ついているんですよ」
「人間と連絡を取り合っている事は私も知っていたが…本当に呼び寄せるとはな」
「それだけ切羽詰まってるって事ですよね、例の事件」
「長の決定には我々も逆らえん。長がそう判断したならばそうなのだろう。さあ、仕事に戻ろう。はじきにやってくる」

 朝は嫌いだ。忌々しい影がずっと我々を嘲笑っている気がするからだ。
 滅ぶべきなのに足掻いて藻掻いて、どうしようもなくなっても生きようとする我らを、崖は見下しているに違いない。
 闇雲に働いていればそのうち時間は経つ。影はいつの間にか消えてくれるが、また夜が来て朝を迎えて、またこの影と対面だ。
 毎日毎日同じ事の繰り返し。毎日毎日、同じ日々が巡る。

 約束された未来が潰えた我々には似合いの日々だ。こうして自堕落に時を過ごし、昔の栄華を思い起こしながら惨めに死ぬ日々は、これからも一生続いていくのだろう。

「なんだか楽しくなりそうでさぁ!」
「こう言っちゃ不謹慎だが、新しい風を期待しそうだな!」
「ああ、なんて、前代未聞もいいところだ!!」

 私の憂いなど露知らず、人間と魔族との戦争を知らない若者は呑気なものだ。
 しかし彼らの言葉が的外れと思いたくない私もいて、私自身もこの現状を打破したい一人なのだと思いを馳せるのである。





 私の名前はルーベンス。
 ここ、“アアル集合体”を治める長老一派の区画長であり、筆頭だ。

 種族は竜人族、齢は150年ほどとなる。
 竜の翼と逞しい尾を持ち、耳は長く瞳は光彩のある金色で髪は黒。姿はどちらかというと人間寄りだが、れっきとした誇り高き魔族である。
 自家製の葉巻を嗜む以外に趣味は何も無く、家族も妻もいない寂しい人生を送っている私だが、その高い魔力と戦闘力、そして『魔王の系譜』に連なる者として抜擢され、この集落の総責任者を務めている次第だ。

 “アアル集合体”の名は、「永遠に暮らせる平和の土地」として古代書から引用されて付けられ、その名の如く我が魔族のそのものの縮図であり、11年前の災厄を生き延びた魔族で構成される最期の楽園ユートピアとして存在する。
 私の住まうファースト・ワン区画からナイン区画までの集落があり、それぞれ約100人程度が協力し合って暮らしている。

 場所はこの大陸の中央に位置する。
 11年前の災厄によって生まれた忌々しい崖の麓に、大陸を横断するように9つの集落がある。
 わざわざこの地を選んだのは、反り立つ崖を背にする事で後方の警戒をせずに済み、尚且つ数々の自然災害からも守られ、降った雨が崖を伝って集落まで水を届けてくれ、生活の基盤が整う環境を得たからである。

 総勢千人の大所帯。裏を返せば、たった千人しかいないという事。
 かつて最高の栄華と繁栄を誇った我が魔族は、その総数を千まで減らした。
 人間社会を遥かに凌駕していた文明はついえ、まるで原始時代に逆戻りした不便な生活を強いられ、日々の飯にありつくのもままならない惨めな暮らしは、圧倒的な少子化をもたらした。

「言っている意味が解るか?少々端折り過ぎかもしれないな。あまり説明が得意でないのでな、悪かった」

 私の目の前に6つの小さな頭がある。ひと時も静止していられないそれらは、忙しくも愛おしく思う。
 今、私は午前の仕事を終え、慎ましい昼食を取りながら、集落の子供達にこの世界の歴史を語っているところである。
 学校が無いのだ。紡がれた歴史を語り継げるのは、それを直に体験した大人しかいない。
 参考になる書物が無いので、言伝でしか伝えられないのがもどかしい。

「るーさま、ここはどこにあるの?上はどうなっているのかな?」
「大陸の中央、反り立つ崖のはじまりにある。上は岩しかない不毛な大地。危険だから子供は近付いてはならないよ」

 半魚族の女の子が無邪気な顔で私に問いかけてくるのを、優しく語り掛ける。

「ゆーとぴあってなあに?」
「この世の楽園、最期の楽園の事だ」

 木人族の男の子が首を傾げている。
 私はその子の口端についたパン屑を取ってやりながら、指に水を付け、机に簡単な地図を描く。

「この世界に、二つの大陸があるのは知っているね?一つは人間の支配する大陸、もう一つが我々魔族が住まう地だ」
「知ってる!!ゆーとぴあって、あたしたちの住んでるとこって、ママが言ってた!」

 集落の食堂に私と子供たちが6人。一番大きなテーブルを陣取って勉強会である。
 そしてこの6人こそ、災厄からの11年間で産まれた貴重な子供達である。数百万人もいた魔族の繁栄を取り戻すには、後何千万年必要とするだろうか。

 女神イシュタリアが創造したこの世界には、三つの種族と二種の獣がいる。
 魔族、人間―――そして人外族。
 魔物とただの動物。
 この世界は、その五種の生き物で構成されている。

 魔族は女神の従者を模して創られたとされ、姿は獣に近く、強大な力と孤高の強さを持ち合わせる最強の生物である。
 一方人間は女神の姿を模して創られた。魔族と違って非力だが、代わりに組織力を構築する柔軟さに長けている。
 人外族はそのどれにも属さない、第三者的存在である。マナを操る力に長け、間接的に我々に関与する。

 魔物は厄介な敵だ。基本的に人に慣れる事はなく、様々な被害をもたらす退治すべきものだ。
 そして動物は、自然物そのものと考えて良い。食料にも働き手にも癒しにもなれる動物は、人類が生きるに於いて無くてはならない存在である。

 女神はこの世界を存続させる為に、非情な役目を魔族と人間に与えた。
 世界の共通エネルギーであるマナは有限だった。人や動物、自然に与えるマナの量には限界があり、無限に供給されている訳ではない。
 使えば使うほどエネルギーは消費され、枯渇していく。同時にそれは世界を衰退に導くものであったが、女神はその対処法として画期的な方法を編み出した。

 非効率で暴虐な、という死の制度。
 つまり、エネルギーの再利用をしたのである。

 簡単に云えば、互いに互いを争わせたのだ。
 一方にマナの恩恵を与え、同時にそれマナを餌とした。
 マナを与えられず飢えたもう一方は、潤沢な餌場を横取りしようと争う。マナの争奪戦争の始まりだ。
 こうして女神の目論見通りに戦い、傷付き、殺し殺される事でマナエネルギーを搔き乱し、この世界が成り立つだけのマナの循環させた。

 死んだ者は『魂の輪廻』に取り込まれ、新たな命として生まれ変わる。
 次も魔族に生まれるとは限らない。動物かもしれないし、ただの草木や虫かもしれない。
 私の魂も、もっと前は誰かの物だった。その前もその前も、創世から続く魂の系譜。

 魔族も人間も同じ女神から創造された、女神の玩具おもちゃ
 この世界に生きる以上、闘いは避けられない。我々は遺伝子から人間を憎むように創られた。逆も然りであるがね。

「しかし、この絶対なる世界の掟が、私たちの根底を覆す事件が起こった」
「あ、ぼく知ってるよ!さいやくがおちてきたんだよね!」

 鉱人族の少年が元気に挙手する。
 彼が腕を上げると、固い岩がぶつかり合って砂が食卓に落ちてしまうのはいただけない。
 私は飛び跳ねる彼を制し、椅子に座らせる。多少の砂が入っても、食感を無視すればまだまだ食べられる。食料はこの集落で、人に次いで大事なものだ。

「あたちがうまれるまえ…」
「そうだ。お前たちが生まれる前、まだ子種すら出来ていない頃、この世界を襲った災厄が全てを変えたのだ」

 11年前、災厄が起こった。
 我が母なる大地のど真ん中に、空から未知なる侵略者が堕ちてきたのである。

 空から岩が降ってくること自体は珍しくない事象だ。
 隕石は大抵が海に落ちていたし、大多数は大気圏で燃やされて、ほんの小さな欠片は被害もさほど与えなかった。
 しかし、災厄はその規模が違った。
 全世界に、甚大なる被害を与えたのだ。

 あの日の事は思い出したくもないのに、脳裏に焼き付いて離れない。
 目も鼻も口も、五感全てが災厄を覚えている。未だに悪夢を見るほどに、やけに鮮明に記憶されている。

 この世界の大陸は、元々一つの楕円形だった。女神はそれを縦に真っ二つに割り、海を間に敷いて魔族と人間の住処を分け隔てた。
 大陸はどちらも縦長い。いずれもその首都を、最北部に据えている。
 下に行けば行くほど田舎となり、真ん中に貿易都市を備えている事まで人間と同じだ。
 我々がいがみ合う仲だが、こと貿易関係は種族を超えた交流がある。この文化交流は互いの文明を発展させる大きな目的に繋がる為、誰もが暗黙の了解で盛んな交流を黙認していた。

 災厄は、その貿易の要所の真上に堕ちた。
 そこに住まう、300万人の住民を巻き込んで。

 瞬時に都市が消し飛んだ。
 その周辺の町々は、衝撃波に吹き飛ばされた。
 一切の塵さえ残さず、人も建物も動物も海も山も何もかもが無と化した。
 1分にも満たない刹那、魔族はその数を三分の一まで減らした。死を意識する事すらなく、生きたまま女神の元へ還された。祈る暇もなく、輪廻の輪に組み込まれた。

 ある意味、この時点で死んだ同士は幸せだったと私は思う。
 何故なら、この後の生き地獄を味わなくて済んだからである。
 女神は生きていたから、彼らはギリギリ輪廻の理に入る事さえ出来た。
 羨ましいと思う。もうどんなに望んでも祈っても、私たちは安寧を得る事など不可能だというのに。

 次に襲ってきたのは地震である。
 震源地は大陸の中央だった為、被害は全土に及んだ。海を越え、人間大陸も崩壊させたほどの激震だった。
 衝撃波を免れた大陸の端にある街や村は、ただただ揺らされ、壊され、崩された。
 人々は揺れに翻弄され、壊れた建物の下敷きになり、崩れた隙間から発生した火災に焼かれ、割れた大地の穴に落ちて死んだ。
 それから程なくしてやってきた大津波に呑み込まれ、瓦礫も死体も何処かへ持っていかれた。

 我々は呆然と立ち尽くすしかなかった。
 誰もが怪我をして、誰もが救いを求めた。それほどどうしようもなかったのだ。

 第一の生き地獄はここである。
 最初の衝撃波は死の感覚すらなく一瞬であの世に逝けたが、これははっきりと死を自覚している。
 生きながらきっちり死の恐怖を味わって、それから死んだ。

「まだまだ終わりではないぞ」

 子供達の食事の手が止んでいる。
 中には怯えている子もいる。
 だが、しっかりと伝えなくてはならない事実だ。我が同胞が今も苦しめられる悔恨、これから一生引き摺りながら生きていく。
 この歴史の真実を途絶えさせてはならない。いつか本当の終わりが来るまで、我ら魔族が生きた証を遺さねば、死んでいった者達はただの無駄死にである。

 地震後、それでも生き残った我々に追い打ちをかけるが如く、その訃報が知れ渡ったのは数時間も経たない時だった。

「後に詳しく語るが、我ら魔族は同種族と『魂の系譜』で連なっている事は知っているな?」
「ええっと…たましいのつながり、だっけ?」
「おじさんは竜人族でしょ?ぼくは鉱人族だからつながりはないんだよね」
「そうだ。だがかつて我らを統べ、世界に君臨していた魔王様は、全ての魔族と連なっていたのだよ」
「ぜったいくんしゅ、まおうさま。にころされた、あたしたちのおとうさん」

 第二の生き地獄は痛烈だった。
 我らの力の源である、魔王様が死んだのだ。
 大陸の北部で拠点となる城にいた魔王様は、その堕ちてきた未知なる侵略者に殺されてしまったのである。

『魂の系譜』で連なる我々は、魔王様の命が事切れた瞬間にその事実を把握し、愕然となった。
 心にぽっかりと穴が空いたような感覚になり、虚無感が襲ってきた。全身を包み込むオーラのような魔王様の保護が消え、半身を失ったかのように身動きが取れなくなってしまった。

 私は力の大部分を喪った。魔王様の系譜の末端に、私の先祖がいたからである。
 しかしもっと魔王様に近しい者達は、魔王様の死の道連れとなって死んでいる。

「難しいよぉ!」
「こんがらがっちゃう」
「魂の系譜は、魔族だとしても正確に把握している者は少ない。無理に覚える必要はない。お前は父と母と心で繋がっているだろう?それを感じておればいいのだよ」

 私が何を言いたいのか、それは魔王様が崩御なさった事により、また莫大な数の魔族が死んだという事実だ。
 更に悪い事は続き、我々の魂を巡らせる創造神めがみをも侵略者は殺した。その結果、新たな魔王が今後二度と魔族に生まれる事はなく、こうして世界の摂理が歪んだ為に、世界の存続すら危ぶまれている。

 それは魔族の未来が喪われた瞬間でもあった。

 最大の栄華を誇った我ら魔族は、たった一日で絶滅が確定したのである。

 数百万人いた人口は数を一気に減らして数万となり、災厄の二次災害を耐えきれず数千となり、飢えと労働と悲観で坂道を転がり落ちるようにどんどん弱った我々は、11年を経た今、最終的に1000人となった。

 災厄は魔族を致命傷に至らしめたが、当然人間の大陸にも影響は及んでいる。
 人間も数を半分喪い、未知なる侵略者の直接的な攻撃を受けているようだ。
 我々は朽ちるしか道はないが、生きたくともそうさせぬ侵略者の陰にいつも怯えなければならない日々も耐え難い。
 いずれにせよ、人間も魔族も生き地獄を味わっている。

 終わりなき地獄を―――。




「ルーベンスさん、ちょっとよろしいですか?郊外者が謁見を求めておりますが…」
「ああ、そういえばそのような約束をしていたな。済まないが子供たちの後を任せても構わないかね?」
「ええ、勿論です」

 従者が紙とペンを携えて私を迎えにやってきた。
 食器を手早く片付け、立ち上がる。一人一人に文具を渡して、文字を書く練習だよと告げた。
 子供達の目線に合わせて腰を屈めていたから、外に出て思い切り翼を伸ばしたかった。
 私の翼は有能で、狭い室内ではコンパクトに身体の内部に収納できる。同じく尾も引っ込ませようと思えば自由に出来るので、座る時に邪魔を感じたりはしない。

「さあ、みんなお礼を言って」
「ルーベンスさま、ありがとう!」
「おはなし、こわかったけど、たくさん学んだよ!」
「ユートピアの事まで語ろうと思っていたが済まないな。また今度にしよう」

 手を振り、食堂を出る。
 子供達の見送る声が、いつまでも背中を追い駆けてくる。
 悪くない心地だ。

 私は強面で近付き難い印象があるようなのだが、これでも人が好きな性分なのだ。特に純真な子供と関わると、荒んだ心が洗われる気がする。
 災厄前は町の用心棒を買って出ていたし、それを天職と思っていた。だが意外と教師の途も満更ではなかったかもしれない。

 その夢を叶えられる未来なんて、億が一でも有り得ないのであるが。
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