ふしぎっぎ!!

蔵之介

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土砂降りの散歩道 編

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 僕は、特別な用事がない限り、いつも決まった日常を過ごしている。

 毎朝6時30分に起きて、妻の弁当を作る事から僕の一日は始まる。

 7時、夢うつつで寝ぼけまなこの娘を抱いて、妻が起きてくる。
 娘のオムツを妻が替えている間に、僕は僕たちの朝食と娘の朝ごはんを用意する。

 娘の朝ごはんの前に、妻が出勤する。
 僕の作った弁当を持って、僕と娘を食わす為に妻は働く。

 娘の朝ごはんが終わると、娘をしばし教育テレビにお任せして、僕は掃除、洗濯、昼食作りとあくせく動く。

 それから娘が眠くなるまで少し遊ぶ。
 寝相の悪い娘が大人ベッドでゴロゴロするのを横目に見ながら、僕は資格の勉強をする。

 娘が起きると、昼食まで少し遊ぶ。
 元気に歩き回る娘は、もうすぐ走り出しそうだ。

 上の歯が生えてしっかりもぐもぐ食べる娘はことさら唐揚げがお気に入りだ。溢し放題の床を掃除して、ようやく僕が昼ごはんを食べる番。

 ゴムのボールを追いかけている娘に、幼児向けのDVDを見せている間に、スマホ片手に昼ごはんを食べる。

 見ているのは、主に巨大掲示板のまとめサイト。
 ジャンルは問わない。
 事件、事故、ゲーム、アニメ、政治、生活。
 目に付いたもの、片っ端から読む。
 最近はツイッターというものにも手を出した。

 この一時間にも満たないほんの僅かな外との繋がりこそが、家に引きこもって育児に明け暮れる僕の唯一の息抜きだった。
 行儀が悪いといつも妻に怒られるけれど、なかなかやめられない。

 ふと、とある記事に目が止まった。



 ■■■




『夜中散歩してたら職質にあったけど質問ある?』

 とあるまとめサイトの、面白おかしく体験談を綴ったスレだ。
 シンと静まり返った夜中に自分しかいないという状況は、その人にとってはこの上ないストレス発散法だったらしいのだが、マスクに眼鏡、分厚い半纏とヨレヨレのステテコズボンという恰好に目を付けられ、警察の職務質問で散々な目に遭ったという話だった。
 そんな変な恰好で出歩いて、道行く人は驚くか怖かっただろうな。
 夜は不穏なモノも現れるのだから…。



 ふと、思い出す。

 僕の話を聞いて貰えないだろうか。
 娘がボール遊びに夢中になっている間に。

 僕の体験した、ちっとも怖くはないけれど、ほんの少し日常から外れたお話を。
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