赤ちゃんに異世界召喚されちゃった俺!子育てに奮闘しながら聖女様とその巫女たちと、赤ん坊連れて魔王を倒しに行ってきます!

蔵之介

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第一章 異世界召喚

25. 究極魔法を発動したのにコレかよ ①

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「あはははは!見て、リア様の顔っ!すっごい事になってる」

 急にフアナが笑いだした。
 今、すげーシリアスな話をしていた筈なんだが、その重苦しい雰囲気は明るい笑い声によってぶち壊された。
 何事と思い彼女の視線の先を辿ると、俺にゲップをさせられる為に変な恰好で持ち上げられたリアにぶつかる。

「ぷ!本当です!皺が…皺が凄いです!」

 どっかの遠慮ないオバハンみたいに俺の背をバンバンと叩きながら、エリザが釣られて笑った。

「痛い痛い痛いって!」

「はわ~…まるでお猿さんだね。あはは、これがあのリア様だなんて、面白すぎるや!」

 エミールもそしてパルメラやオッサン連中も大笑いだ。
 俺も腕をひっくり返してリアを見る。

 俺の掌の上で死んだ蛙のようにぐてっと身体を投げ出して、ゲップをさせるのに軽く背を叩かれるとビクンと顔を反射的に上げるのだ。
 その顔が、赤ん坊特有のシワシワの顔が更に歪み、額に深い皺を何本も作って垂れ下がり、開いてんのか閉じてんのか良く分からない細い目だけが飛び出して見えて、滑稽というよりもめちゃくちゃ不気味だった。

「おいおい…仮にもあんたらのご主人様じゃねえのかよ」

 俺はそもそもこいつらを知らないから内輪ネタで笑っている理由についていけない。
 それに一体何が爆笑するほど可笑しいのかも分からない。一人蚊帳の外で、ぽかんとするのみだ。

 っつか、前から思っていたが、こいつらのリアに対する態度はひでえ。
 話を聞く限り、リアは人間の救世主的な存在である。にもかかわらず不幸にも望まずこんな姿になった訳でもあるまいし、それ以前にも人としての対応がなっちゃいない。

「いい加減、話進めてくれないか」

「ごめん…我慢できなくて」

 苛々が募る。
 ずっと我慢してきたモヤモヤ感が、徐々に怒りを伴ってくる。
 こいつらの人を小馬鹿にするような態度と口調が、何も見えてこないこの真っ暗な現状と重なってやけに癪に障るのだ。

「噂だとね、せっかく見出した勇者が敵前逃亡したらしいのよね」

 笑ってしまうからと、大袈裟に顔を逸らしてフアナは言う。
 しかしなかなかゲップが出ないのも不安になる。やり方がまずかったのか。

「逃亡?」

 急に話が元に戻って混乱する。
 ええと確か、勇者と一緒に魔族側に戦争を仕掛けたが、どっちも戦いに不慣れでなあなあになった――んだっけか。

「王はこれまで多大な援助を勇者様ご一行に惜しみなく行ったのよ。恩恵を取り戻す為だと、それを国民にも強いたの」

 勇者は遠慮なく援助を受け入れたという。
 身勝手で我儘、自分本位で他力本願。思う存分に贅沢を享受し、その仲間達もそうだった。
 本当にどうしようもない奴だったのだ。
 それでも使命を果たしてくれるのならと、人々は快く勇者らをもてなしたのだそうだ。

「リア様は必死で勇者達を奮い立たせ、ついに一週間前、魔王との最終決戦だと連絡ハトが届いたんですよ」

 伝書鳩はこの世界のポピュラーな連絡手段なのだそうだ。

 それからひと時の後、遠き魔族の地では暗黒の雲が渦巻き、雷柱がいくつもほとばしった。
 不安定な天候は世界アゼルのマナを淀ませ、それはまさに天変地異の前触れを予感させた。

 怯える国民に王は言った。
 これは勇者がついに魔王を倒す瞬間の、マナの流れが変わる時の前兆。恐れる必要はない。むしろ喜ぶべき現象であると。

 そして、一際大きな雷が、轟いた。


「でも、なぁんにも変わらなかったんですよねぇ…」

「てっきり魔王が倒されて、マナは人間側こっちに移ったと思ったのに。

 聖女はその刹那に、もう一羽の鳩を飛ばしていた。
 最後の伝書鳩である。

「鳩が王様の元に届く頃、ようやく厚い雲の隙間から太陽が顔を覗かせて光を届けてくれた時だったよ。鳴り止んだ雷とは違う音が、神殿の外から聞こえてきたんだ」

 聴こえてきたのは、聴き慣れない甲高い泣き声。
 神殿に待機して作戦の成功を祈っていたフアナらは、一斉にその音の出所を探した。

「……で、そこにいた、と」

「そう。産まれて間もない赤ん坊。へその緒が付いたままのリア様が、神殿の前門に打ち捨てられていた」

 王様に届いた最後のてがみの内容は、間際にリアが残した想定外の惨状を報告するものだった。
 まず、勇者とその仲間たちが逃亡した。勇者を導く聖女としては、この時点でお役目大失敗である。
 だがリアは、勇者がいなくなった後も、魔王城を一人で攻略したそうなのだ。

「この際、どうでもいいから早く目的を果たしたかったんじゃないでしょうか」

「分かる。リア様の性格なら、やりそうだ」

 クスクスと笑い合う双子。
 紫の濃淡だけが違う同じ顔が、頬をくっつけ合って笑っている。

 そして文にはもう一つ、記されていた。
 これが最も大事な文言だったのだ。

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