うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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第1章 4 魔本には男子の夢が詰まっている

思考回路の引きこもり

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「誠道さん」

 聖ちゃんに呼ばれて振り返ると、聖ちゃんは深々と一礼していた。

「改めて、今日は本当にありがとうございました。もし誠道さんがいなかったら、私は今ごろ大人の女性が大好きな男の人に落札されて、隙をついてその人の睾丸をむしり……あれ、その方がよかったような」

「なに言ってるんだよ聖ちゃん。大人の女性が好きな人は聖ちゃんに目もくれないよ」

「え? なんですか? な・る・み・ち・サン?」

 しまった。

 聖ちゃんがおかしなことを言うもんだから思わずツッコんじゃったよ。

 なんとかしないと俺の睾丸が危ない!

 なんせ相手は【愉悦の睾丸女帝】だ!

「ででででも、その、これで、ほら、俺は聖ちゃんをいつでも助けるっていうか、今日だっていくらつぎ込んでも聖ちゃんを救おうとしてたっていうか」

 睾丸を取られてしまうという恐怖でなんか変なことを口走っている気がするが、なんとかごまかさないと本当にヤバいから!

「だからその、聖ちゃんにはいつまでも俺と友達でいてほしいっていうか。ほ、ほら俺はそそそそのこうやって聖ちゃんを助けたわけだし、俺といると聖ちゃんにとっても得っていうか、メリットがあるから、その……」

「なんですか、その恩着せがましさ」

 聖ちゃんは慌てる俺を見て、邪気のない朗らかな笑みを浮かべている。

「え、だって友達でいるためには、なにかしら提供できるものがないとダメだから」

「誠道さんって、本当にバカですよね。考え方が変なところで卑屈というか、思考回路が引きこもっているというか」

 なんか満面の笑みですごいバカにされたんですけどぉ。

 思考回路が引きこもってるってどういう意味ですかねぇ。

「別に関係をつづけるのにメリットとかいりませんよ」

 聖ちゃんはいったん言葉を止め、俺に背中を向ける。

 顔だけ振り返りながら、肩越しに親指で自分の背中を指さした。

「さっき互いが互いの背中を預けたじゃないですか。一緒に戦おうとしてくれたじゃないですか。それがすでに信頼し合っている証じゃなくてなんだって言うんですか。メリットとか得とか、そんなの気にしなくても大丈夫ですよ」

「聖ちゃん……」

 メリットなんかいらない。

 友達って、そういうものなんだな。

 体が熱くなるのを感じながら、俺は聖ちゃんの背中を見つめつづける。

 自分より背が低いのに、その背中はものすごく大きくてものすごく広かった。

「ありがとう。俺、人づき合いとかよくわかんないままここまできちゃったから。友達とかそういうの、よくわかんなくて」

「ま、そうじゃないと引きこもりになりませんもんね」

 笑顔の聖ちゃんは、それから色っぽく目を伏せて、胸の前で左右の人差し指の先をツンツンさせる。

「なに、どうしたのいきなり?」

 尋ねると、聖ちゃんは覚悟を決めたように顔をがばっと上げる。

 眼鏡の奥にある大きな瞳は見事にサンシャインしていた。

「でももしっ! もしどうしても誠道さんがなにかメリットを提供したいのなら、ぜひ誠道さんの睾丸を」

「ごめんなさいやっぱり友達やめます」

「ちょっと! 手のひら返しがひどすぎます!」

「聖ちゃんの性癖の方がひどすぎます!」

 ああ、どうしてこうなるかなぁ。

 なにがなんでも睾丸に話を持っていく聖ちゃんの執念にはある意味で畏敬の念を抱く…………ってか、あれっ?

 俺、なにか重要なことを忘れているような気が。

 嫌な予感が。

「あっ! 誠道さん!」

 背後から声がして振り返る。

 俺の引きこもり生活をサポートする美少女メイドのミライが、手を振りながら駆け寄ってきていた。
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