39 / 360
第1章 4 魔本には男子の夢が詰まっている
一件落着?
しおりを挟む
「でも、不思議ですね。盗まれて、しかも壊れていたはずなのに、どうして目の前に落ちていたんでしょうか」
聖ちゃんが持っている聖剣ジャンヌダルクをいぶかしげに見つめている。
「それは、そういう決まりじゃからのう」
……んん? この声は、もしかして。
聞き覚えのある声に、俺は後ろを振り返る。
「よう、おぬしら。元気にしておったか?」
そこにいたのは巫女服姿の女性、女神様リスズだ。
ちょうどいい。
俺はこいつに言いたいことが山ほどあるんだ。
「おいてめぇ、俺は【探索】なんてシステム知らなかったぞ!」
「おぬしのサポートアイテムは自我のある人形。プライベートは大事じゃから、言う必要はないと思っていたのじゃが」
「なんか正論っぽく聞こえるのが悔しいな」
「でもまあ……わかったのじゃ。おぬしがミライのやることなすことをすべて知りたいストーカーなら」
「ストーカーじゃねぇわ」
「それならミライの意志で【探索】を拒絶できるようにしようかのう。通常時は【探索】できるようにしておいて、おぬしに知られたくない場所にいくときは【探索】を拒絶できる。名づけて【探索スイッチ】じゃ。後でミライに教えておこう」
「適度にダサいネーミングをありがとう! その勢いでもうひとつ、俺の【新偉人】を有能なステータスに変えてくれると助か」
「それは無理じゃ」
「即答やめろ」
「もうステータスの再取得はできんのじゃ。その聖剣ジャンヌダルクのような、サポートアイテムと違っての」
「えっ?」
聖ちゃんが驚きの声を上げる。
「つまりそれは、女神様がジャンヌダルクを新しく作り直してくれたってことですか?」
「そういうことになるのう。わらわに感謝するのじゃ」
聖ちゃんには優しく受け答えをする女神様。
俺にはその優しさをいつになったら見せてくれるの?
「なにを不満げな顔をしておる。当然であろう。おぬしらに与えたサポートアイテムは、この世界の現段階の技術に見合ってないものが多い。盗まれて解析、複製などされるわけにはいかんからの。所有権が他の者に渡ったとわらわが判断した時点でそのサポートアイテムは自壊、わらわが新たなサポートアイテムを作成して、再度手渡すことになっておる」
聖剣ジャンヌダルクの場合、柄の部分はこの世界の現段階の技術でぎりぎり作れるから、刃の部分だけが壊れる仕様になっていた、と女神リスズはつづけた。
「そんな面倒ことせずに取り返してくれたらいいじゃん。神なんだから」
俺が疑問に思ったことを聞くと、頭をぺしっとたたかれる。
「神だからこそじゃ。神は管理する世界への過度な干渉を禁じられておる。取り返そうとすれば戦闘が発生する可能性だってあるし、場合によっては相手の命を奪ってしまうやもしれぬ。そもそも、なんでもかんでも手助けするほど、わらわも暇ではないからの」
「でも、だったら盗まれたときにすぐに新しいのを渡してほしかった、です」
控えめに主張した聖ちゃんの頭を、女神様は優しく撫でる。
やっぱり特別扱い!
「こんなすごいアイテムをぽんぽんぽんぽん作れるわけがなかろう。何度も言うが、わらわも暇ではないのじゃ。間に合ったからいいではないか」
まあ、そりゃそうだけど。
ってかこの女神様、異世界転生者のことを少しは考えていたんですね。
びっくりだよ。
「さて、用は済んだ。わらわはこれで失礼する。もう失くすことのないようにな」
その言葉を残して、神様は俺が瞬きする一瞬の間に、その姿を消した。
まあ、なにはともあれこれで一件落着。
金の亡者お姉ちゃんは今度会ったらただではおかないけれど、この異世界にきて、はじめて綺麗に物事が解決できたような気がする。
聖ちゃんが持っている聖剣ジャンヌダルクをいぶかしげに見つめている。
「それは、そういう決まりじゃからのう」
……んん? この声は、もしかして。
聞き覚えのある声に、俺は後ろを振り返る。
「よう、おぬしら。元気にしておったか?」
そこにいたのは巫女服姿の女性、女神様リスズだ。
ちょうどいい。
俺はこいつに言いたいことが山ほどあるんだ。
「おいてめぇ、俺は【探索】なんてシステム知らなかったぞ!」
「おぬしのサポートアイテムは自我のある人形。プライベートは大事じゃから、言う必要はないと思っていたのじゃが」
「なんか正論っぽく聞こえるのが悔しいな」
「でもまあ……わかったのじゃ。おぬしがミライのやることなすことをすべて知りたいストーカーなら」
「ストーカーじゃねぇわ」
「それならミライの意志で【探索】を拒絶できるようにしようかのう。通常時は【探索】できるようにしておいて、おぬしに知られたくない場所にいくときは【探索】を拒絶できる。名づけて【探索スイッチ】じゃ。後でミライに教えておこう」
「適度にダサいネーミングをありがとう! その勢いでもうひとつ、俺の【新偉人】を有能なステータスに変えてくれると助か」
「それは無理じゃ」
「即答やめろ」
「もうステータスの再取得はできんのじゃ。その聖剣ジャンヌダルクのような、サポートアイテムと違っての」
「えっ?」
聖ちゃんが驚きの声を上げる。
「つまりそれは、女神様がジャンヌダルクを新しく作り直してくれたってことですか?」
「そういうことになるのう。わらわに感謝するのじゃ」
聖ちゃんには優しく受け答えをする女神様。
俺にはその優しさをいつになったら見せてくれるの?
「なにを不満げな顔をしておる。当然であろう。おぬしらに与えたサポートアイテムは、この世界の現段階の技術に見合ってないものが多い。盗まれて解析、複製などされるわけにはいかんからの。所有権が他の者に渡ったとわらわが判断した時点でそのサポートアイテムは自壊、わらわが新たなサポートアイテムを作成して、再度手渡すことになっておる」
聖剣ジャンヌダルクの場合、柄の部分はこの世界の現段階の技術でぎりぎり作れるから、刃の部分だけが壊れる仕様になっていた、と女神リスズはつづけた。
「そんな面倒ことせずに取り返してくれたらいいじゃん。神なんだから」
俺が疑問に思ったことを聞くと、頭をぺしっとたたかれる。
「神だからこそじゃ。神は管理する世界への過度な干渉を禁じられておる。取り返そうとすれば戦闘が発生する可能性だってあるし、場合によっては相手の命を奪ってしまうやもしれぬ。そもそも、なんでもかんでも手助けするほど、わらわも暇ではないからの」
「でも、だったら盗まれたときにすぐに新しいのを渡してほしかった、です」
控えめに主張した聖ちゃんの頭を、女神様は優しく撫でる。
やっぱり特別扱い!
「こんなすごいアイテムをぽんぽんぽんぽん作れるわけがなかろう。何度も言うが、わらわも暇ではないのじゃ。間に合ったからいいではないか」
まあ、そりゃそうだけど。
ってかこの女神様、異世界転生者のことを少しは考えていたんですね。
びっくりだよ。
「さて、用は済んだ。わらわはこれで失礼する。もう失くすことのないようにな」
その言葉を残して、神様は俺が瞬きする一瞬の間に、その姿を消した。
まあ、なにはともあれこれで一件落着。
金の亡者お姉ちゃんは今度会ったらただではおかないけれど、この異世界にきて、はじめて綺麗に物事が解決できたような気がする。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる