うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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第1章 4 魔本には男子の夢が詰まっている

私の二つ名は

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「……は?」

 目が点になるとは今の俺のことを言うのだろう。

 いや、だって聖剣ジャンヌダルクはまだジツハフくんが持っていた。そもそも壊れていたはずでは?

「まあいい。聖ちゃん! とにかくこれでこいつらを!」

「はい!」

 聖ちゃんが聖剣ジャンヌダルクを拾い上げ、ごろつきのリーダーに向かって構える。

 しかし、ごろつきのリーダーは余裕しゃくしゃくの態度を崩さない。

「へっ、ちょっと驚いちまったが、こんな小娘が、しかもこの大勢相手になにができるってんだ」

「クラスキおやびん!」

 ごろつきのリーダーの言葉を遮って、手下のひとりが慌てたような声を出す。

「なんだよ。チャック」

「この幼く見える外見と白く光る大剣。こいつ、あの【愉悦の睾丸女帝】です!」

「な……に」

 チャックの言葉を聞いたクラスキおやびんは、聖剣ジャンヌダルクを構えた聖ちゃんをじろりと見て。

「たしかに! ひぃいいいい!」

 それまでの威厳が嘘のような情けない悲鳴を上げた。

「……いや【愉悦の睾丸女帝】ってなんだよ! 急展開の最後が睾丸かよ!」

「そうだ。私があの【愉悦の睾丸女帝】だ」

「聖ちゃんはまんざらでもない感じで名乗らないで。二つ名として受け入れないで」

「いいかお前ら。人を襲っていいのはな、人から睾丸をむしり取られる覚悟をしている者だけだ」

 ごろつきどもを鋭い目で睨みつける聖ちゃん。

 いや、あなたはいったいなにを言っているんですか。

 決め台詞なんだろうけど、格好いいと思えないのはなんでなんだよぉ!

「ひっぃいいいっ」

「すみませんでしたっ」

「おい! お前は顔がちょっとだけ中性的だから、取られたっていいだろ!」

「は? ふざけんな! お前こそゲイになってもいいかもなぁって言ってたじゃねぇか! 手術代浮くぞ!」

 クラスキおやびん以外のごろつきたちが慌てふためきながら、我先にと逃げはじめる。

「おいお前ら! 俺を置いて逃げるなぁ!」

 クラスキおやびんが逃げていく仲間を一瞥したそのとき。

「お前は、どっちからむしり取られたい?」

 聖ちゃんは、すでに彼の首元に剣先を向けていた。

「ひっぃぃいっ。どうか、どうか右側だけは、右側だけはぁぁぁぁああ」

 クラスキおやびんも顔を涙でぐじゃぐじゃにしながら逃げていく。

 あの……クラスキおやびん。

 そこはさ、右側だけはじゃなくて命だけは、ね。

「……ふぅ。とにかく、なんとか危機は脱したな」

 俺は安堵の息を吐く。過程はどうあれ、【愉悦の睾丸女帝】心菜聖のおかげで、殺されずにすんだ。

「ありがとう聖ちゃん。まさか脅しただけで逃げてくような連中だとは思わなかったよ」

「脅し……?」

 聖ちゃんはぽかんと首を傾げた後。

「まあでも、襲ってくれば正当防衛でいろいろできるチャンスでしたね」

 ニッコリ笑顔でそう言った聖ちゃんを見て、背筋が震えあがる。

 今失言したら【愉悦の睾丸女帝】になにされるかわからないので、俺は黙ることにしますね。
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