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第1章 6 レッサーデーモンとの戦いは欧米文化との戦い
ミライの提案
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ベッドの上でごろごろしていると、ミライが俺の部屋に入ってきた。
「誠道さん。私、頭を冷やして考えてみたのですが」
彼女の深刻な表情になにかを感じ取った俺は、ベッドの上に座って背筋を伸ばす。ごくりと生唾を飲んで、不安を覚えながら彼女の発言を待った。
「やっぱり引きこもりはよくないと思うのです」
「それお前の存在意義を前提から否定してんぞ。俺の快適な引きこもり生活を支援するのがお前の役割だろ」
緊張して損したわ。
一緒に引きこもりを極めましょうって言ったのはどこのどいつだったかな?
「だって普通に考えてみてください」
しかし、ミライの顔は真剣そのものだ。
「実際、引きこもりを肯定する理由なんかひとつもありませんよね?」
「そりゃそうだけどさ」
「でしたら早く外に出ましょう。引きこもっていてもいいことなんかありません」
「ミライが本当に俺の引きこもり生活を支援する気があるのか、不安になってきたなぁ」
俺は、いきなり変なことを言い出したミライを不審に思いつつ――いやいつものことだったな、この展開は。
「それにさ、俺にとって引きこもるのはいいことなんだろ? だって俺はそうしないと経験値を稼げないんだから」
「あんな固有ステータスの持ち主が努力しても無駄ですよ」
「こいつ今言っちゃいけないことを口にしやがった!」
俺はお前に言われた通り、毎日家で腹筋やらスクワットやら腕立てやらやってんだぞ。
その努力すらも全否定するのか。
まあ俺もうすうす無駄なんじゃないかと思いはじめているけれども。
どうせ俺は、なにやったって俺だし。
「はぁ。どうしてこう、誠道さんは反抗ばかりするのでしょうか」
「お前の提案がまともだったことがないからだよ」
「ほらまた言い返す。……って、待ってください。相手が言ったことをすべて拒絶する。これってヤンキーの特徴じゃないですか!」
ミライのテンションが爆上がりする。
え? なに?
よくわからないが、ミライの思考がまともではないことだけはわかる。
「もう。ヤンキーを目指しているなら早くそう言ってください。だったらどんどん否定してくださってかまいません」
「え、あの……俺、別にヤンキーなんか目指してないですけど」
「あっ! また否定しましたね! それまでヤンキーを目指していたにもかかわらず、私がヤンキーをすすめた瞬間ヤンキーにはなりたくないって言いました! それはもう立派なヤンキーです!」
「ああもう面倒くせぇなこれ」
ヤンキーを目指しているからこそ、ヤンキーを目指していないと言うことが、実はヤンキーを目指しているということである。
なんか、意味わかんなくなってきたよ。
「ってか、俺は本当にヤンキーを目指してないんだよ」
「また否定をっ! 誠道さんがどんどんヤンキーになっていきます!」
「わかったよ。俺はお前の言う通りヤンキーを目指してるよ」
「やっぱりそうだったんですね!」
「八方ふさがりじゃねぇか。誠道がヤンキーになる道編のスタートってか。そんなダジャレもストーリーも誰ひとり望んじゃいねぇんだよ」
「私は望んでいますが? そして、誠道さんも心の底では望んでいるのでしょう」
「だからちげぇよ!」
「あっ、また否定を」
「いい加減にしろっ」
それから、長い時間をかけてようやく、俺はミライを説得することに成功した。
「だから、俺は本当の本当にヤンキーになるつもりはないんだって」
「そうですか。残念です」
しゅんとうなだれるミライ。
唇を尖らせて拗ねている姿は完全に鹿目さんなのになぁ。
「いや、そこまで落ち込まれても困るんだけど。でも、どうしていきなりヤンキーを推してきたんだよ」
「だってヤンキーって基本、夜になっても家に帰ってこないじゃないですか。だからヤンキーになれば自然と引きこもりを卒業できるって理論です」
「自信満々に説明してるとこ悪いんだけど、むしろ普通に生活してる人は夜になったら家に帰ってくるんだが」
「また私の意見に否定を? もう、誠道さんはとんだツンデレさんですね。やっぱりヤンキーになりたいんじゃないですか」
「お前の理論が謎すぎるからだよ!」
もはや俺に否定をさせるために、謎理論を言っているまである。
「とにかく、ヤンキーを目指すかどうかは別にして、ヤンキーとはなにかを考えてみませんか?」
「まあ、それくらいなら」
「えっ! 今度は否定しなかった! 私の計算が狂わされたっ?」
「俺をバカにしすぎたろ! 考えねえよって言ったらまた面倒になることくらい予想できるわ!」
過剰にショックを受けるミライを横目に、俺は俺なりのヤンキーを考えてみる。
「でもそうだなぁ……。ヤンキーってことは、悪ぶってるやつらのことだよな。ヤンキー、悪ぶる、ヤンキー。俺なりのヤンキー……あ」
ひらめいた! と手をポンとたたく。
「つまりあれだな。ゴミをポイ捨てしたり、怖い先生がいない日だけ髪にワックスつけたり、彼氏彼女のペアがある日突然シャッフルされていたり」
「すみません誠道さん。まことに申し上げにくいのですが、それはヤンキー未満陰キャ以上、ただの悪ぶってるだけの中学生ですね。悪いことのレベルがしょうもないです。もっと他人に害を与えるようなことを考えてみてはいかがですか?」
「害、か……。じゃあ黒板消し落とししたり、誰かの靴紐をもほどいたり、寝てるやつの背中に付箋はったり」
「誠道さん。もう結構です」
俺の熱弁を、ミライがため息で遮る。
「今度は思考が小学生レベルに退化しました。誠道さんにヤンキーの素質はない。もう諦めます」
「それはそれで悲しいな!」
「どうしましょう。これでは誠道さんを外に連れ出せません。せっかくこれまでの借金を一括で返せるようなクエストを取ってきたというのに」
「それを先に言えー。それなら出かけるに決まってるだろ」
「そんなにもやる気に満ちていたなんて……ありがとうございます。誠道さん」
ミライは感極まったような顔を浮かべる。
え、俺が外に出るだけで、そんなに喜んでくれるの?
「よかったです。これで私が新たにギャンブルで作った分の借金も併せて返済できます」
「そのクエストいく前に依存症のカウンセリング受けてこいよー」
「誠道さん。私、頭を冷やして考えてみたのですが」
彼女の深刻な表情になにかを感じ取った俺は、ベッドの上に座って背筋を伸ばす。ごくりと生唾を飲んで、不安を覚えながら彼女の発言を待った。
「やっぱり引きこもりはよくないと思うのです」
「それお前の存在意義を前提から否定してんぞ。俺の快適な引きこもり生活を支援するのがお前の役割だろ」
緊張して損したわ。
一緒に引きこもりを極めましょうって言ったのはどこのどいつだったかな?
「だって普通に考えてみてください」
しかし、ミライの顔は真剣そのものだ。
「実際、引きこもりを肯定する理由なんかひとつもありませんよね?」
「そりゃそうだけどさ」
「でしたら早く外に出ましょう。引きこもっていてもいいことなんかありません」
「ミライが本当に俺の引きこもり生活を支援する気があるのか、不安になってきたなぁ」
俺は、いきなり変なことを言い出したミライを不審に思いつつ――いやいつものことだったな、この展開は。
「それにさ、俺にとって引きこもるのはいいことなんだろ? だって俺はそうしないと経験値を稼げないんだから」
「あんな固有ステータスの持ち主が努力しても無駄ですよ」
「こいつ今言っちゃいけないことを口にしやがった!」
俺はお前に言われた通り、毎日家で腹筋やらスクワットやら腕立てやらやってんだぞ。
その努力すらも全否定するのか。
まあ俺もうすうす無駄なんじゃないかと思いはじめているけれども。
どうせ俺は、なにやったって俺だし。
「はぁ。どうしてこう、誠道さんは反抗ばかりするのでしょうか」
「お前の提案がまともだったことがないからだよ」
「ほらまた言い返す。……って、待ってください。相手が言ったことをすべて拒絶する。これってヤンキーの特徴じゃないですか!」
ミライのテンションが爆上がりする。
え? なに?
よくわからないが、ミライの思考がまともではないことだけはわかる。
「もう。ヤンキーを目指しているなら早くそう言ってください。だったらどんどん否定してくださってかまいません」
「え、あの……俺、別にヤンキーなんか目指してないですけど」
「あっ! また否定しましたね! それまでヤンキーを目指していたにもかかわらず、私がヤンキーをすすめた瞬間ヤンキーにはなりたくないって言いました! それはもう立派なヤンキーです!」
「ああもう面倒くせぇなこれ」
ヤンキーを目指しているからこそ、ヤンキーを目指していないと言うことが、実はヤンキーを目指しているということである。
なんか、意味わかんなくなってきたよ。
「ってか、俺は本当にヤンキーを目指してないんだよ」
「また否定をっ! 誠道さんがどんどんヤンキーになっていきます!」
「わかったよ。俺はお前の言う通りヤンキーを目指してるよ」
「やっぱりそうだったんですね!」
「八方ふさがりじゃねぇか。誠道がヤンキーになる道編のスタートってか。そんなダジャレもストーリーも誰ひとり望んじゃいねぇんだよ」
「私は望んでいますが? そして、誠道さんも心の底では望んでいるのでしょう」
「だからちげぇよ!」
「あっ、また否定を」
「いい加減にしろっ」
それから、長い時間をかけてようやく、俺はミライを説得することに成功した。
「だから、俺は本当の本当にヤンキーになるつもりはないんだって」
「そうですか。残念です」
しゅんとうなだれるミライ。
唇を尖らせて拗ねている姿は完全に鹿目さんなのになぁ。
「いや、そこまで落ち込まれても困るんだけど。でも、どうしていきなりヤンキーを推してきたんだよ」
「だってヤンキーって基本、夜になっても家に帰ってこないじゃないですか。だからヤンキーになれば自然と引きこもりを卒業できるって理論です」
「自信満々に説明してるとこ悪いんだけど、むしろ普通に生活してる人は夜になったら家に帰ってくるんだが」
「また私の意見に否定を? もう、誠道さんはとんだツンデレさんですね。やっぱりヤンキーになりたいんじゃないですか」
「お前の理論が謎すぎるからだよ!」
もはや俺に否定をさせるために、謎理論を言っているまである。
「とにかく、ヤンキーを目指すかどうかは別にして、ヤンキーとはなにかを考えてみませんか?」
「まあ、それくらいなら」
「えっ! 今度は否定しなかった! 私の計算が狂わされたっ?」
「俺をバカにしすぎたろ! 考えねえよって言ったらまた面倒になることくらい予想できるわ!」
過剰にショックを受けるミライを横目に、俺は俺なりのヤンキーを考えてみる。
「でもそうだなぁ……。ヤンキーってことは、悪ぶってるやつらのことだよな。ヤンキー、悪ぶる、ヤンキー。俺なりのヤンキー……あ」
ひらめいた! と手をポンとたたく。
「つまりあれだな。ゴミをポイ捨てしたり、怖い先生がいない日だけ髪にワックスつけたり、彼氏彼女のペアがある日突然シャッフルされていたり」
「すみません誠道さん。まことに申し上げにくいのですが、それはヤンキー未満陰キャ以上、ただの悪ぶってるだけの中学生ですね。悪いことのレベルがしょうもないです。もっと他人に害を与えるようなことを考えてみてはいかがですか?」
「害、か……。じゃあ黒板消し落とししたり、誰かの靴紐をもほどいたり、寝てるやつの背中に付箋はったり」
「誠道さん。もう結構です」
俺の熱弁を、ミライがため息で遮る。
「今度は思考が小学生レベルに退化しました。誠道さんにヤンキーの素質はない。もう諦めます」
「それはそれで悲しいな!」
「どうしましょう。これでは誠道さんを外に連れ出せません。せっかくこれまでの借金を一括で返せるようなクエストを取ってきたというのに」
「それを先に言えー。それなら出かけるに決まってるだろ」
「そんなにもやる気に満ちていたなんて……ありがとうございます。誠道さん」
ミライは感極まったような顔を浮かべる。
え、俺が外に出るだけで、そんなに喜んでくれるの?
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