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第1章 6 レッサーデーモンとの戦いは欧米文化との戦い
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街の外をしばらく歩いた俺たちは、とある山の入り口にきていた。
「で、その借金を一括で返せるクエストってなんなんだ?」
まさかいつものゴブリン退治……ってことはないよな。
「はい。なぜかこの山に住み着いてしまった、レッサーデーモン二匹の盗伐です。この辺にはゴブリンしかいないはずなのに、不思議なんですよ」
「レッサーデーモン? それって強いのか?」
「はい。ゴブリンロードよりもはるかに強い魔物です」
「さーて。帰って昼寝でもすっかなぁ」
慌てて引き返そうとする俺の手をつかんで引き留めるミライ。
「どうして逃げるんですか。私たちの借金を返せるチャンスなんですよ」
「私たちじゃねぇ。お前が作った借金だろ。だから俺は帰る」
「帰らせません」
「そもそもそんな強い魔物に俺が勝てるはずないだろ。せめて聖ちゃんを連れてくるならわかるけど」
あいにく今、聖ちゃんは別のクエストを受注していて遠くの街にいっている。
「また聖さんの名前を」
ミライが拗ねたように頬を膨らませる。
「私じゃだめなんですか? そんなにも聖さんと一緒に行動したいんですか?」
「そうに決まってるだろ! じゃあなんだ? ミライがいたらレッサーデーモンに勝てるって言うのか?」
「違いますけど……見返したくないんですか?」
ミライの真剣な声が俺の胸を貫く。
急に真面目な顔をするなよ。
「見返したいって……誰を?」
「このレッサーデーモンの討伐クエスト、実は、大度出さんたちが失敗したクエストなんです」
――大度出。
ミライがその言葉を発した瞬間、俺の体が硬直した。
一瞬にして頭が真っ白になり、体が謎の痛みを放ちはじめ、体温がすぅっと下がっていく。
あいつらから受けた暴力を、恐怖を、俺の体はまだしっかりと覚えていやがるらしい。
「へ、へぇ、大度出が、し、失敗したから、なんだってんだよ」
「そのクエストを誠道さんが成功させれば、レッサーデーモンを討伐できれば、大度出さんたちを見返せる。誠道さん自身の成長にもつながる。やられっぱなしだった過去と決別して、現状から一歩踏み出せるのです」
ミライよ、そこまで俺のことを考えてくれていたのか。
「だから私は、誠道さんにレッサーデーモンを討伐してほしいのです。もし誠道さんが討伐してくれなかったら、先にこのクエストを受けようとした方に大金を積んでまで譲ってもらった意味がなくなります」
「そこでも借金してるのかよ!」
くそぉ、感動的な話かと思ったのに最後で全部ぱーじゃねぇか。
――でも。
大度出たちを、この俺が見返せる。
威張りちらすだけのあいつらに、一泡吹かせてやれる。
「わかった。俺、やるよ。レッサーデーモン倒すよ」
怖いけれど、やっぱり大度出たちを見返したい。
弱虫な自分から、卒業したい。
「誠道さん」
ミライがうっとりとした目で俺を見つめている。
「そんな感動のまなざしで俺を見るなよ。このままじゃだめだって思っただけだ」
「私、嬉しいです。誠道さんはやっぱり強いお方です。信じていました」
ミライは俺の手を両手で包み込むように握ってくれた。
しかも涙ぐんでいる。
「おい泣くなって。それに、俺が決意できたのはミライがいるからなんだ」
「え? ……私、が?」
「だって、ゴブリンロードと出会ったときに、『すぐ逃げろ!』って叫んだミライがこのクエストを受けたってことは、俺がレッサーデーモンを倒せる作戦を考えついているからなんだろ? だからこそ、大金を積んでまでクエストを譲ってもらったんだろ?」
俺はくいっとサムズアップして、白い歯をのぞかせた。
「ミライが俺を信じているように、俺もミライを信じているんだ」
「あ、あの……誠道さん」
しかしミライはなぜか顔を引きつらせて、ばつが悪そうに俺から目を逸らした。
「あ……えっ……と、それ、は、その……」
え? なにその反応。
まさかミライお前……もしかして。
「私は、その、えっと……つまりは…………そ、そうなんですよ! 私のことを信じていただけて本当に嬉しいです! 私も誠道さんに一生ついていきます! 信じています!」
「話を逸らすな! え? じゃあなに? なんの作戦も立ててないってこと?」
まさかそんなこと、あるはずないよね。
「それはその……ままま、まさかそんなわけないじゃないですか。私は誠道さんを支援するメイド。作戦も立てずに無謀な勝負に挑ませるほど、バカではありません」
「じゃあどうやって倒すんだよ? 言ってみろ」
「それは…………気合でなんとかしましょう。気合があればなんでもできるっ!」
「やっぱりなんにも考えてないじゃんか!」
レスリングだったら気合でなんとかできたかもしれないけどね!
「だって借金が完済できるんですよ? 受けないという選択肢はありませんでした。そしたらその後で、大度出さんたちがそのクエストに失敗したっていう情報を知って」
「俺の成長云々は後づけだったってことかよ!」
なんでこんなやつのこと信じちゃったのかなぁ。
「もういい! 俺は帰る! 勝ち目ゼロの戦いに挑むほどバカじゃないんだよ」
俺が踵を返して走って逃げようとした、そのときだった。
絶望は、いきなり襲い掛かってくる。
「オマエら、オレたちのスミカの前デ、なに騒いデンダ?」
「変なシュウキョウの勧誘ナラ、お断りデスト、言いましタヨネ」
真っ赤な体の大きな生物が二体、俺たちの目の前に降り立った。
「で、その借金を一括で返せるクエストってなんなんだ?」
まさかいつものゴブリン退治……ってことはないよな。
「はい。なぜかこの山に住み着いてしまった、レッサーデーモン二匹の盗伐です。この辺にはゴブリンしかいないはずなのに、不思議なんですよ」
「レッサーデーモン? それって強いのか?」
「はい。ゴブリンロードよりもはるかに強い魔物です」
「さーて。帰って昼寝でもすっかなぁ」
慌てて引き返そうとする俺の手をつかんで引き留めるミライ。
「どうして逃げるんですか。私たちの借金を返せるチャンスなんですよ」
「私たちじゃねぇ。お前が作った借金だろ。だから俺は帰る」
「帰らせません」
「そもそもそんな強い魔物に俺が勝てるはずないだろ。せめて聖ちゃんを連れてくるならわかるけど」
あいにく今、聖ちゃんは別のクエストを受注していて遠くの街にいっている。
「また聖さんの名前を」
ミライが拗ねたように頬を膨らませる。
「私じゃだめなんですか? そんなにも聖さんと一緒に行動したいんですか?」
「そうに決まってるだろ! じゃあなんだ? ミライがいたらレッサーデーモンに勝てるって言うのか?」
「違いますけど……見返したくないんですか?」
ミライの真剣な声が俺の胸を貫く。
急に真面目な顔をするなよ。
「見返したいって……誰を?」
「このレッサーデーモンの討伐クエスト、実は、大度出さんたちが失敗したクエストなんです」
――大度出。
ミライがその言葉を発した瞬間、俺の体が硬直した。
一瞬にして頭が真っ白になり、体が謎の痛みを放ちはじめ、体温がすぅっと下がっていく。
あいつらから受けた暴力を、恐怖を、俺の体はまだしっかりと覚えていやがるらしい。
「へ、へぇ、大度出が、し、失敗したから、なんだってんだよ」
「そのクエストを誠道さんが成功させれば、レッサーデーモンを討伐できれば、大度出さんたちを見返せる。誠道さん自身の成長にもつながる。やられっぱなしだった過去と決別して、現状から一歩踏み出せるのです」
ミライよ、そこまで俺のことを考えてくれていたのか。
「だから私は、誠道さんにレッサーデーモンを討伐してほしいのです。もし誠道さんが討伐してくれなかったら、先にこのクエストを受けようとした方に大金を積んでまで譲ってもらった意味がなくなります」
「そこでも借金してるのかよ!」
くそぉ、感動的な話かと思ったのに最後で全部ぱーじゃねぇか。
――でも。
大度出たちを、この俺が見返せる。
威張りちらすだけのあいつらに、一泡吹かせてやれる。
「わかった。俺、やるよ。レッサーデーモン倒すよ」
怖いけれど、やっぱり大度出たちを見返したい。
弱虫な自分から、卒業したい。
「誠道さん」
ミライがうっとりとした目で俺を見つめている。
「そんな感動のまなざしで俺を見るなよ。このままじゃだめだって思っただけだ」
「私、嬉しいです。誠道さんはやっぱり強いお方です。信じていました」
ミライは俺の手を両手で包み込むように握ってくれた。
しかも涙ぐんでいる。
「おい泣くなって。それに、俺が決意できたのはミライがいるからなんだ」
「え? ……私、が?」
「だって、ゴブリンロードと出会ったときに、『すぐ逃げろ!』って叫んだミライがこのクエストを受けたってことは、俺がレッサーデーモンを倒せる作戦を考えついているからなんだろ? だからこそ、大金を積んでまでクエストを譲ってもらったんだろ?」
俺はくいっとサムズアップして、白い歯をのぞかせた。
「ミライが俺を信じているように、俺もミライを信じているんだ」
「あ、あの……誠道さん」
しかしミライはなぜか顔を引きつらせて、ばつが悪そうに俺から目を逸らした。
「あ……えっ……と、それ、は、その……」
え? なにその反応。
まさかミライお前……もしかして。
「私は、その、えっと……つまりは…………そ、そうなんですよ! 私のことを信じていただけて本当に嬉しいです! 私も誠道さんに一生ついていきます! 信じています!」
「話を逸らすな! え? じゃあなに? なんの作戦も立ててないってこと?」
まさかそんなこと、あるはずないよね。
「それはその……ままま、まさかそんなわけないじゃないですか。私は誠道さんを支援するメイド。作戦も立てずに無謀な勝負に挑ませるほど、バカではありません」
「じゃあどうやって倒すんだよ? 言ってみろ」
「それは…………気合でなんとかしましょう。気合があればなんでもできるっ!」
「やっぱりなんにも考えてないじゃんか!」
レスリングだったら気合でなんとかできたかもしれないけどね!
「だって借金が完済できるんですよ? 受けないという選択肢はありませんでした。そしたらその後で、大度出さんたちがそのクエストに失敗したっていう情報を知って」
「俺の成長云々は後づけだったってことかよ!」
なんでこんなやつのこと信じちゃったのかなぁ。
「もういい! 俺は帰る! 勝ち目ゼロの戦いに挑むほどバカじゃないんだよ」
俺が踵を返して走って逃げようとした、そのときだった。
絶望は、いきなり襲い掛かってくる。
「オマエら、オレたちのスミカの前デ、なに騒いデンダ?」
「変なシュウキョウの勧誘ナラ、お断りデスト、言いましタヨネ」
真っ赤な体の大きな生物が二体、俺たちの目の前に降り立った。
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