うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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第1章 7 異世界でも俺は引きこもりたい

ミライのために

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「ミライを傷つけたこと、後悔しても遅いからな」

 誠道さんがそう言った瞬間、彼のまとう空気が変わった。

 目が鋭すぎて、少し怖い。

 彼の体から放出されているすべての怒りが、一心に大度出へと注がれている。

 傷だらけの体から真っ赤な蒸気が立ち上っている。

 普通じゃない。

 誠道さんの中で、なにかが起こったのだということだけはわかる。

「ステータス【新偉人ニート】保有者の『大切な人が傷つけられ、怒りが頂点に』達しました。特殊条件を満たしたため、【無敵の人間インヴィジブルパーソン】が発動します」

 そして、誠道さんは一瞬だけ私を見て、優しく微笑んでくれた。



 ――見捨てるわけ、ないだろ。



 そう言われた気がした。

「今さらなにやったっておせぇんだよ!」

 大度出が誠道さんに向かって叫ぶ――瞬間、大度出の拳が鋼色に変わった。

 固有ステータスで得た必殺技のひとつだろう。

 これまで彼は本気を出していなかったのだ。

 

 ――でも、そんなんじゃ、誠道さんには敵わない。



 私は謎の安心感に包まれていた。

 誠道さんが私を助けにきてくれて、見捨てないでいてくれて、私のために怒ってくれて、私のために何度も立ち上がってくれて、戦ってくれる。

 それがなにより嬉しくて。

 幸せで。

 あなたに出会えてよかったと思うことができて。

「ありがとう。誠道さん」

「いいかげんくたばれぇ! 【粉砕衝撃拳ジャイロボール】ッ!」

 大度出の鋼色の拳が誠道さんに襲いかかる。

 しかし、誠道さんは暖簾でも払うかのように、拳を簡単に弾き飛ばした。

 つづけて大度出の顔を目がけて回し蹴り。

 大度出は「ぐっあっ」と情けない声を上げながら、長椅子を巻き込んで横に吹っ飛んだ。

「なんだいったい――ぐっ」

 誠道さんが大度出の胸ぐらをつかんで持ち上げる。

 腹に一発拳をお見舞いすると、また大度出は吹っ飛んだ。

「……て、めぇ、い、ったいなに、がっ」

 横たわる大度出の腹に、誠道さんの蹴りが襲い掛かる。

「おい! 鶏真、勅使、五升! なにやってる! はや、く俺……を…………」

 わずかに持ち上げた顔をきょろきょろとさせている大度出の声が、震えながら止まる。

 彼の仲間だったはずの三人からの返事は……当然ない。

 だって彼らは、すでに誠道さんに恐れをなして逃げ出した後なのだから。

「な、んで」

 彼らのつながりなんて、そんなもんだ。

 恐怖による支配なんて、そんなもんだ。

 少しは私のご主人様を見習え。

 誠道さんは、どれだけ惨めに殴られつづけようと、私のために逃げずに立ち向かってくれる。

 あんたたちが霞むほどの強さと優しさを持っているのだ。

 大度出さん。

 あなたはずっと、独りぼっちだったんですよ。

「くそがぁあああ!」

 喚きながら大度出が立ち上がるも、すぐに誠道さんに足を払われ、額を床にぶつけた。

 誠道さんが左手で大度出の髪の毛をつかんで、強引に上半身を持ち上げる。

 右手の握り拳は、真っ赤に発光していた。

「石川ぁ、てめぇ、ふざ、けんなよ」

 誠道さんの拳に宿った光が炎に、龍の形に変わっていく。

 前歯が二本とも折れている大度出は、この期に及んでもなお上から目線で。

「お、い。お前……こんなことしてただで済むと思ってんのか」

「ミライを傷つけやがって、お前の顔なんか、もう見たくもねぇ」

 しかし、誠道さんが睨みを利かせた瞬間、すぐにその強がりは怯えに変わった。

「わ、悪かったって。ゆ、赦せよ。もうしない。おまえらにも近づかねぇ、から。だから、赦してくだ――」

「【炎鬼殺燃龍奥義ひきこもりゅうおうぎ炎上翔砲ゲヘナフレイム】」

 大度出の顔に、真っ赤な龍を宿した誠道さんの拳がめり込み、そこから巨大な炎が四方八方に広がっていく。

 深紅の炎に包まれた大度出の体は、廃教会の壁をぶち破って外へ飛び出し、木々を何本もなぎ倒しながらはるか遠くへ消えていった。

 私の顔にも誠道さんの炎の熱が伝わってきて、それ以上の熱が体の内側からあふれてきて。

 教会内はしんと静まり返っていた。

 私は幸せを感じていた。

「誠道、さん」

 私がそう呼びかけると、誠道さんはこちらを振り返り、片側だけにえくぼのできる、私の大好きな笑顔を見せてくれた。

「ミライ、大丈夫――かっ……」

 誠道さんの体がぐらりと傾く。

 倒れるっ! と思った私は急いで彼のもとに駆け寄ってその体を支える。

「ありがとうございます。誠道さん」

 私が誠道さんの手をぎゅっと握ると、彼はわずかに目を開けて、私の手をぎゅっと握り返してくれた。

「ミライ。ミラ……イ」

 誠道さんは、二度、私の名前を読んでから意識を失った。
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