69 / 360
第2章 1 なにか忘れてるような
下着姿の痴女
しおりを挟む
俺は、俺を氷漬けにしてスケートリンクのオブジェにでもしそうな勢いのミライに、女神リスズが残した手紙を見せた。
「なるほど。そういうことでしたか。すみません」
ようやくことの次第を理解してくれたようだ。
これで一安心。
「しかし、よく見るとイツモフさんは美人ですから……先手を打っておかねば」
つづけて呟かれた言葉の意味はよくわからなかったが、まあいいや。
こほんと咳払いしたミライが、部屋の扉の前から横にずれる。
「とりあえず、誠道さんはこの部屋から出ていってください」
「なんでだよ! ここは俺の部屋だぞ!」
一緒に世界一の引きこもりを目指すんじゃなかったのか!
そんな引きこもりを部屋から追い出すって、支援メイドの発言じゃねぇぞ!
もしかしてまだ心の内では怒ってる?
その証拠に、目がぎろりと光ったし。
「なにをおっしゃっているんですか? イツモフさんを起こして服を着てもらうので、その間は出ていってください」
「……あ、ですよねー」
「それともなんですか? 誠道さんがイツモフさんを着替えさせたいと? イツモフさんが下着姿で寝ているのをいいことに、まるで彼女がフィギュアかのように、いろんなところを観察したいと?」
「するわけねぇだろ!」
「ですが誠道さんは、美少女フィギュアを買うと一番に、そのスカートの中を覗き込んでパンツを見るような人ですから。ただの塗装なのに」
「なんでそんなことまで知ってんだよ! ってそんなことやってねぇわ!」
ほ、ほんとだよ?
たまたま棚の高いところに陳列していたから見上げる形になって、不可抗力で見えていただけだよ?
不良品かどうか確認するために、細部まで丁寧に点検していただけだよ?
「ソ、ソウダッタンデスネ。ワカリマシタ」
「絶対わかってないだろ!」
「とりあえず、早く部屋から出てください」
「……ですよねー」
俺はミライの指示通り、部屋から出ようとした。まさにその時。
「ん、わた、し、あれ?」
マジメンタリストこと、イツモフ・ザケテイルさんが目を覚ました。
上半身を起こしたときに、金色の髪の毛がはらりと揺れる。
「ここ、は、あれ、私たしか……ミライさんが…………あっ! ミライさんが攫われて!」
イツモフさんは布団を跳ね除けながらベッドから飛び降りたが、足がもつれて尻餅をつく形で床に倒れてしまった。
俺たちにはまだ気がついていないようだ。
黒の下着と凹凸のはっきりしたスタイルのよい蒼白の体が、窓から差し込む日差しに照らされて綺麗に輝いていた。
……うん。要するにただの下着姿の痴女だな。
「いててて……ってそんな場合では! ミライさんが攫われたのに……なのに私は……私は……」
拳をぎゅっと握りしめて悔しそうに顔を歪めるイツモフさん。
いや、いいから冷静に、落ち着いて。
ミライはあなたの前にいますよ。
でも、ミライのためにここまで悔しがってくれるのはすごく嬉しい。
なお、彼女は下着姿の痴女です。
「あの」
自分の世界に入り込んでいるイツモフさんに、ミライが声をかける。
「私ならここに」
「ああ、どうしたらいいの! そうだ! ここはお得意のポジティブシンキングで……」
ミライの声はどうやら焦っているイツモフさんに届いていないようだ。
胸の下で腕を組んで首を捻り、ポジティブシンキングに集中している。
なお彼女は、おっぱいの大きさを強調させている下着姿のただの痴女です。
「よし! ひらめいた!」
自慢げに目を見開かれても、彼女はやっぱり下着姿の痴女です。
この状況から、攫われたミライさんを誠道さんが勇敢にも助けにいったのだと思われる。
↓
つまり私はこの家にひとりきり。
↓
金目の物を盗んで逃げれば、そのお金が私のものに?
「おいふざけんな! こいつやっぱただの金の亡者じゃねぇか!」
感動を返してください。
もはや下着姿とか関係ねぇぞ!
イツモフさんの目はキラキラと輝くドルマークだ。
この世界の単位はリスズだけどね。
「誠道さん」
ミライが俺の肩に手を置く。彼女の顔は真剣で、俺を諭すように。
「人のポジティブシンキングを否定してはいけないと、昨日教わったばかりですよね?」
「ミライさんは指摘するとこ絶対間違ってるからね!」
いま俺たちが不在の間に金を盗まれようとしてたんですよ?
「ミライさんの言う通りですよ。ぬすみちくん」
「誰がぬすみちだ!! このヌステイル!」
「ヌステイルとはなんだヌステイルとは! せめてもっと格好よくしてください。ヌスティールと呼んでください」
「もっとヤバくなってるからねそれ」
盗むとスティールが合わさって……絶対それ事前に用意してただろ!
なおヌスティールさんは下着姿の痴女泥棒です。
「なるほど。そういうことでしたか。すみません」
ようやくことの次第を理解してくれたようだ。
これで一安心。
「しかし、よく見るとイツモフさんは美人ですから……先手を打っておかねば」
つづけて呟かれた言葉の意味はよくわからなかったが、まあいいや。
こほんと咳払いしたミライが、部屋の扉の前から横にずれる。
「とりあえず、誠道さんはこの部屋から出ていってください」
「なんでだよ! ここは俺の部屋だぞ!」
一緒に世界一の引きこもりを目指すんじゃなかったのか!
そんな引きこもりを部屋から追い出すって、支援メイドの発言じゃねぇぞ!
もしかしてまだ心の内では怒ってる?
その証拠に、目がぎろりと光ったし。
「なにをおっしゃっているんですか? イツモフさんを起こして服を着てもらうので、その間は出ていってください」
「……あ、ですよねー」
「それともなんですか? 誠道さんがイツモフさんを着替えさせたいと? イツモフさんが下着姿で寝ているのをいいことに、まるで彼女がフィギュアかのように、いろんなところを観察したいと?」
「するわけねぇだろ!」
「ですが誠道さんは、美少女フィギュアを買うと一番に、そのスカートの中を覗き込んでパンツを見るような人ですから。ただの塗装なのに」
「なんでそんなことまで知ってんだよ! ってそんなことやってねぇわ!」
ほ、ほんとだよ?
たまたま棚の高いところに陳列していたから見上げる形になって、不可抗力で見えていただけだよ?
不良品かどうか確認するために、細部まで丁寧に点検していただけだよ?
「ソ、ソウダッタンデスネ。ワカリマシタ」
「絶対わかってないだろ!」
「とりあえず、早く部屋から出てください」
「……ですよねー」
俺はミライの指示通り、部屋から出ようとした。まさにその時。
「ん、わた、し、あれ?」
マジメンタリストこと、イツモフ・ザケテイルさんが目を覚ました。
上半身を起こしたときに、金色の髪の毛がはらりと揺れる。
「ここ、は、あれ、私たしか……ミライさんが…………あっ! ミライさんが攫われて!」
イツモフさんは布団を跳ね除けながらベッドから飛び降りたが、足がもつれて尻餅をつく形で床に倒れてしまった。
俺たちにはまだ気がついていないようだ。
黒の下着と凹凸のはっきりしたスタイルのよい蒼白の体が、窓から差し込む日差しに照らされて綺麗に輝いていた。
……うん。要するにただの下着姿の痴女だな。
「いててて……ってそんな場合では! ミライさんが攫われたのに……なのに私は……私は……」
拳をぎゅっと握りしめて悔しそうに顔を歪めるイツモフさん。
いや、いいから冷静に、落ち着いて。
ミライはあなたの前にいますよ。
でも、ミライのためにここまで悔しがってくれるのはすごく嬉しい。
なお、彼女は下着姿の痴女です。
「あの」
自分の世界に入り込んでいるイツモフさんに、ミライが声をかける。
「私ならここに」
「ああ、どうしたらいいの! そうだ! ここはお得意のポジティブシンキングで……」
ミライの声はどうやら焦っているイツモフさんに届いていないようだ。
胸の下で腕を組んで首を捻り、ポジティブシンキングに集中している。
なお彼女は、おっぱいの大きさを強調させている下着姿のただの痴女です。
「よし! ひらめいた!」
自慢げに目を見開かれても、彼女はやっぱり下着姿の痴女です。
この状況から、攫われたミライさんを誠道さんが勇敢にも助けにいったのだと思われる。
↓
つまり私はこの家にひとりきり。
↓
金目の物を盗んで逃げれば、そのお金が私のものに?
「おいふざけんな! こいつやっぱただの金の亡者じゃねぇか!」
感動を返してください。
もはや下着姿とか関係ねぇぞ!
イツモフさんの目はキラキラと輝くドルマークだ。
この世界の単位はリスズだけどね。
「誠道さん」
ミライが俺の肩に手を置く。彼女の顔は真剣で、俺を諭すように。
「人のポジティブシンキングを否定してはいけないと、昨日教わったばかりですよね?」
「ミライさんは指摘するとこ絶対間違ってるからね!」
いま俺たちが不在の間に金を盗まれようとしてたんですよ?
「ミライさんの言う通りですよ。ぬすみちくん」
「誰がぬすみちだ!! このヌステイル!」
「ヌステイルとはなんだヌステイルとは! せめてもっと格好よくしてください。ヌスティールと呼んでください」
「もっとヤバくなってるからねそれ」
盗むとスティールが合わさって……絶対それ事前に用意してただろ!
なおヌスティールさんは下着姿の痴女泥棒です。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです
忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる