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第2章 1 なにか忘れてるような
ベッドの上には
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我が家の前に到着すると、なんだか感慨深い思いが込みあがってきた。
出ていったときは一人で、こうして帰ってきたときはミライと二人で。
本当に心がじんと温まる。
しかもこれは俗にいう朝帰りってやつだ。
ま、膝枕以上のことはなかったけど。
「なんか、家にいなかったのは一晩だけなのに、ものすごく久しぶりに帰ってきたような、そんな気がするよ」
「ええ。私もなんだか懐かしいです」
ミライは柔らかな笑みを浮かべながら、俺たちの家を見つめている。
「もう帰ってこられないと思っていたので、本当に、不思議な感覚です」
「俺も、俺たちの家にミライと帰ってこられてよかった」
「はい。私は昨日の夜、大度出さんたちに連れ去られ、そして暴行を受けました。ああ、もうだめだ。私はこのままこの人の凶悪さに屈服して、なすがままにされるんだと諦めかけていました。でも私の願いを聞き届けてくれたのか、誠道さんが救いにきてくれて、本当に嬉しかったです」
ミライは目を閉じて、自分の胸に手を押し当てている。
やめろよ。そうやってゆっくりと振り返るの。
恥ずかしいだろ。
「そして私のために怒ってくれて、それによって得た力で大度出さんをやっつけて、本当に格好よかったです」
まあ、戦っている最中の記憶はない(ミライから説明はされたけど)から、俺がこの手で助けたって実感もないんですけどね。
「そして、その後私と誠道さんは、傷ついた体を寄せ合い、最初は少し痛かったですけど、互いの体をひとつにして、そして……」
ミライが嬉しそうにお腹に手を添える。
「未だ……来ないの」
「なんだその顔は! なんだその言葉は!」
どうして感動で終わらせてくれないんだよ!
「ってかやってたのは膝枕だから。よくもまぁ膝枕という行為をそこまで都合よく表現できたなぁ」
ってかもし仮にそう言うことが行われてたとして、「未だ……来ないの」って言うのが明らかに早すぎな。
あれって三週間とか立たないとわからないでしょ。
知らんけど。
「とにかく、さっさと俺たちの家に帰るぞ。だって俺は引きこもりで」
「私はその引きこもりを支援するメイドですからね」
笑顔でうなずき合ったあと、ミライが扉を開けてくれる。
「ありがとう。ミライ」
「こちらこそ、俺たちの家と言っていただいてありがとうございます」
綺麗にお辞儀をするミライを見て、そういや、ずいぶん前に「私の家」だの「俺の家」だので言い合いをしたなぁと思いだした。
さきほど、無意識に『俺たちの家』という言葉を使っていたことがちょっぴり嬉しくて、ちょっぴり恥ずかしかった。
玄関で靴を脱いで、家に上がろうとして――そうするべきかなと思ってミライを待つ。
そして、一緒に廊下に足を踏み出した。
ここから俺とミライの、新たな異世界引きこもり生活がはじまるんだ!
うん。すごい心が感動してるんだけど……やっぱりなんか忘れてる気がするんだよなぁ。
まぁ、いっか。
ってか、帰宅ってこんなにも安心するんだなぁ。
思いきり背伸びをすると、思わずあくびが出た。
「まさか誠道さん。まだ眠いんですか?」
「いや、安心しただけだって」
「本当ですか?」
不安げな表情を浮かべたミライは、首を折って、自分の下半身を見る。
「まさか私のが気持ちよくなかった? だって昨日の夜は一晩中私を動けないように拘束して、私の上によだれを垂らして、ひとつになって、なのにまだ眠いってことはそれしか……」
「だからあくまで膝枕! ほんとよくもまあ俺がひどいことをしてるように表現できるよなぁ。……ってかよだれ垂らしてたの俺!」
それは割とガチですごい恥ずかしいです。はい。
「そんなに眠いのでしたら、また膝枕してもいいですよ」
「自分のベッドで寝るよ!」
本当に寝ようと思っていなかったのに、つい口からそんな言葉が飛び出してしまった。
言った手前、後には引けない。
「二時間ぐらいしたら起きるから、そっとしといてくれよ」
「本当に、面倒くさい人ですね」
小さく笑うミライに背を向け、階段を上がる。
自室に入って、仕方なくベッドでごろごろしようと、掛け布団をめくると。
「うわぁっ!」
そこには、黒の下着しか身につけていないイツモフさんが眠っていた。
そうだ!
さっきからなにか忘れていたと思っていたけど、イツモフさんだ。
ごめんなさい。
あなた負傷してたんでしたね……って。
なんでイツモフさんが、俺のベッドで寝てるの?
「えっと、この状況はとにかくヤバいから……イツモフさんの現状を写真に……じゃなくて永遠に目視! もしてはいけないから……」
掛け布団を持ったまま、どうしたらいいのかと慌てていると。
「誠道さん」
後ろから氷柱のように冷たく尖った声が聞こえてきましたとさ。
おそらく、俺の悲鳴を聞いて様子を見にきたのだろう。
「これはいったい、どういう状況なんですか?」
「いや……ですから、これは……」
恐る恐る振り返ると、獲物を見つけた暗殺者の目をしたミライが立っておりました。
「なるほど。わかりました。誠道さんは私が攫われた後、イツモフさんと一発情事をぶちかましたのち、ようやく助けにきたと、そういうことですか」
「そそそそ、それはそ、ごご、誤解なんです」
「言いわけ無用です。しかも一回ではなく五回もやったというのですか!」
「そうじゃない! 俺はなにもやってないんだよぉ!」
俺が自身の無罪を叫んだとき、ふと隣の机の上に置いてある紙を目が捉えた。
そこには。
《こやつをあのまま廊下に放置はさすがにまずいから、けがの手当てをしてベッドに寝かせておいたぞ。包帯を巻くときに脱がせた服は面倒だからそのままにしておいたけど、別に問題なかろう。by優しい優しい女神様より》
「いや問題大ありだわあのクソ女神!」
ああ、痴漢冤罪ってこうして生まれるのですねぇ。
出ていったときは一人で、こうして帰ってきたときはミライと二人で。
本当に心がじんと温まる。
しかもこれは俗にいう朝帰りってやつだ。
ま、膝枕以上のことはなかったけど。
「なんか、家にいなかったのは一晩だけなのに、ものすごく久しぶりに帰ってきたような、そんな気がするよ」
「ええ。私もなんだか懐かしいです」
ミライは柔らかな笑みを浮かべながら、俺たちの家を見つめている。
「もう帰ってこられないと思っていたので、本当に、不思議な感覚です」
「俺も、俺たちの家にミライと帰ってこられてよかった」
「はい。私は昨日の夜、大度出さんたちに連れ去られ、そして暴行を受けました。ああ、もうだめだ。私はこのままこの人の凶悪さに屈服して、なすがままにされるんだと諦めかけていました。でも私の願いを聞き届けてくれたのか、誠道さんが救いにきてくれて、本当に嬉しかったです」
ミライは目を閉じて、自分の胸に手を押し当てている。
やめろよ。そうやってゆっくりと振り返るの。
恥ずかしいだろ。
「そして私のために怒ってくれて、それによって得た力で大度出さんをやっつけて、本当に格好よかったです」
まあ、戦っている最中の記憶はない(ミライから説明はされたけど)から、俺がこの手で助けたって実感もないんですけどね。
「そして、その後私と誠道さんは、傷ついた体を寄せ合い、最初は少し痛かったですけど、互いの体をひとつにして、そして……」
ミライが嬉しそうにお腹に手を添える。
「未だ……来ないの」
「なんだその顔は! なんだその言葉は!」
どうして感動で終わらせてくれないんだよ!
「ってかやってたのは膝枕だから。よくもまぁ膝枕という行為をそこまで都合よく表現できたなぁ」
ってかもし仮にそう言うことが行われてたとして、「未だ……来ないの」って言うのが明らかに早すぎな。
あれって三週間とか立たないとわからないでしょ。
知らんけど。
「とにかく、さっさと俺たちの家に帰るぞ。だって俺は引きこもりで」
「私はその引きこもりを支援するメイドですからね」
笑顔でうなずき合ったあと、ミライが扉を開けてくれる。
「ありがとう。ミライ」
「こちらこそ、俺たちの家と言っていただいてありがとうございます」
綺麗にお辞儀をするミライを見て、そういや、ずいぶん前に「私の家」だの「俺の家」だので言い合いをしたなぁと思いだした。
さきほど、無意識に『俺たちの家』という言葉を使っていたことがちょっぴり嬉しくて、ちょっぴり恥ずかしかった。
玄関で靴を脱いで、家に上がろうとして――そうするべきかなと思ってミライを待つ。
そして、一緒に廊下に足を踏み出した。
ここから俺とミライの、新たな異世界引きこもり生活がはじまるんだ!
うん。すごい心が感動してるんだけど……やっぱりなんか忘れてる気がするんだよなぁ。
まぁ、いっか。
ってか、帰宅ってこんなにも安心するんだなぁ。
思いきり背伸びをすると、思わずあくびが出た。
「まさか誠道さん。まだ眠いんですか?」
「いや、安心しただけだって」
「本当ですか?」
不安げな表情を浮かべたミライは、首を折って、自分の下半身を見る。
「まさか私のが気持ちよくなかった? だって昨日の夜は一晩中私を動けないように拘束して、私の上によだれを垂らして、ひとつになって、なのにまだ眠いってことはそれしか……」
「だからあくまで膝枕! ほんとよくもまあ俺がひどいことをしてるように表現できるよなぁ。……ってかよだれ垂らしてたの俺!」
それは割とガチですごい恥ずかしいです。はい。
「そんなに眠いのでしたら、また膝枕してもいいですよ」
「自分のベッドで寝るよ!」
本当に寝ようと思っていなかったのに、つい口からそんな言葉が飛び出してしまった。
言った手前、後には引けない。
「二時間ぐらいしたら起きるから、そっとしといてくれよ」
「本当に、面倒くさい人ですね」
小さく笑うミライに背を向け、階段を上がる。
自室に入って、仕方なくベッドでごろごろしようと、掛け布団をめくると。
「うわぁっ!」
そこには、黒の下着しか身につけていないイツモフさんが眠っていた。
そうだ!
さっきからなにか忘れていたと思っていたけど、イツモフさんだ。
ごめんなさい。
あなた負傷してたんでしたね……って。
なんでイツモフさんが、俺のベッドで寝てるの?
「えっと、この状況はとにかくヤバいから……イツモフさんの現状を写真に……じゃなくて永遠に目視! もしてはいけないから……」
掛け布団を持ったまま、どうしたらいいのかと慌てていると。
「誠道さん」
後ろから氷柱のように冷たく尖った声が聞こえてきましたとさ。
おそらく、俺の悲鳴を聞いて様子を見にきたのだろう。
「これはいったい、どういう状況なんですか?」
「いや……ですから、これは……」
恐る恐る振り返ると、獲物を見つけた暗殺者の目をしたミライが立っておりました。
「なるほど。わかりました。誠道さんは私が攫われた後、イツモフさんと一発情事をぶちかましたのち、ようやく助けにきたと、そういうことですか」
「そそそそ、それはそ、ごご、誤解なんです」
「言いわけ無用です。しかも一回ではなく五回もやったというのですか!」
「そうじゃない! 俺はなにもやってないんだよぉ!」
俺が自身の無罪を叫んだとき、ふと隣の机の上に置いてある紙を目が捉えた。
そこには。
《こやつをあのまま廊下に放置はさすがにまずいから、けがの手当てをしてベッドに寝かせておいたぞ。包帯を巻くときに脱がせた服は面倒だからそのままにしておいたけど、別に問題なかろう。by優しい優しい女神様より》
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ああ、痴漢冤罪ってこうして生まれるのですねぇ。
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