うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

文字の大きさ
85 / 360
第2章 2 男として、俺は先にいくよ

姉としての一面

しおりを挟む
 その後、俺たちもイツモフさんたちの隣で、ユニコーソの角を採集する運びとなった。

 自然に自生しているものだからイツモフさんだけがその権利を主張するのはおかしい、とミライが珍しく正論を言い放ったのだ。

 ちなみに、俺たちはユニコーソの角をユニコーンの角と偽って販売しようとは思ってないからね。

 節約のために自分たちで食べるだけだからね。

 黒い笑みを浮かべているミライはちょっと不安要素ではあるけれど。

「ふぅ、これだけ取れば充分ですね」

 もともと借用書が入っていた鞄には、今度はあふれんばかりのユニコーソの角が入っている。

 イツモフさんたちも採集を終えたようで、二人が背負っているリュックは力士のおなかのように大きく膨らんでいた。

 これ以上長居をする必要はないので、四人でグランダラへと帰る。

 グランダラにつくと、ジツハフくんがソフトクリームの屋台を見て、

「あれおいしそう! 食べたい!」

 とイツモフさんにねだりはじめた。

「ね、お姉ちゃん! いいでしょう?」

「しょうがないなぁ。ほら、これで買っておいで」

 イツモフさんはすぐにジツハフくんに200リスズを手渡す。

 意外だ。

 もったいないから我慢しろ! って金の亡者であるイツモフさんなら言うと思ったのに。

「ありがとう。お姉ちゃん」

 満面の笑みを浮かべたジツハフくんが、ソフトクリーム屋に走っていく。

 その背中を愛おしそうに見つめているイツモフさんに俺は声をかけた。

「なんか意外なんだけど。イツモフさんがこんな無駄遣いをするなんて」

「無駄遣いじゃないですよ。これは」

 頬を緩めたイツモフさんは、ジツハフくんの背中をじっと見つめている。

「あの子の笑顔が見られるなら、それは無駄遣いなんかじゃないんです。ジツハフの笑顔はプライスレスですから」

「人の笑顔で物が買えますか? って言ってたやつの言うことじゃないな」

「そりゃそうですよ。だって人じゃなくてジツハフだから。私はなにがあってもジツハフの笑顔を守り通すって決めていますから」

 イツモフさんはソフトクリームを買おうとしているジツハフくんの背中を見たままだ。

「へぇ。それは頼りになるお姉ちゃんだな」

「そうでありたいものです。本当に。いつまでも」

 しみじみとつぶやいたイツモフさんに金の亡者の面影はない。

 今この瞬間は、他のなによりも弟のことを大切に思う立派なお姉ちゃんでしかなかった。

「そんなに思われてるなんて、ジツハフは幸せ者だな」

 俺もジツハフくんの方を見る。

 ちょうどジツハフくんがお金を店員に渡しているところだった。

「ただ……もし私が守れなかったときは、ジツハフのこと、お願いしていいでしょうか。誠道くんたちは強いみたいなので。私なんかよりずっと、本当の強さを知っていますから」

「……え?」

 俺は反射的に聞き返していた。

 イツモフさんの声はたしかに小さかったが、聞き取れなかったわけではない。

 でも、言われた内容が想定外すぎて、つい聞き返してしまったのだ。

「ですから、誠道くん…………いえ、聞こえなかったのなら、今のは忘れてください」

「お、おう。イツモフさんがそう言うなら」

 仕方がない。

 もやもやした思いは募るが、イツモフさんがなかったことにしようとしているのだから、俺に追及する権利はない。

 どことなく気まずさを感じて隣を見ると、ミライはソフトクリーム屋の……近くにある金貸し屋の看板を眺めていたおいふざけんな!

「お姉ちゃん! ソフトクリーム買ってきたよ!」

 そのうちに、ジツハフくんがソフトクリームを持って走ってくる。

「よかったね。ジツハフ」

「はい! お姉ちゃんが一番にどうぞ」

「え? いいの?」

「うん!」

「ありがとう」

 ジツハフくんが差し出したソフトクリームをイツモフさんがぺろりと舐める。

「どう? おいしい?」

「うん。ジツハフが買ってきてくれたからすごくおいしいよ」

 なんの変哲もない、むしろかなり微笑ましい姉弟のやり取り。

 二人の笑顔を見ているだけで、互いが互いを思い合っていることがわかる。

 暖かな空気が二人の周りを漂っている。

「そうだ。誠道お兄ちゃんも舐める?」

「え、俺もいいのか?」

「うん。もちろんワンペロ300リスズで」

「金取るのかよ! ほんとちゃっかりしてんなこいつは」

 ってか、ワンペロってなんだよ。俺は犬かっ。

「もう、誠道くんったら。いきなり弟を褒めないでくださいよ。まあ、たしかに姉としてジツハフのことはきちんと教育してますけど」

「いや褒めてねぇからな!」

 なんでイツモフさんは嬉しがっているのかなぁ。

 きちんと教育していたら、こんな風にお金を稼ぐこと第一の思考をしないんだよなぁ。

「それで、誠道お兄ちゃんはワンペロするの? しないの?」

「するわけねぇだろ。なんなら普通に買ってきた方が安いわ」

 当然の事を言い放つと、ジツハフくんは、どうして? と言わんばかりに眉尻を下げた。

「え? ワンペロしないの? このソフトクリームにはお姉ちゃんがすでに舐めたっていう、間接キスという付加価値が」

「ジツハフ。それ、言い値で買お」

 俺がそう言いかけた瞬間に、ミライさんから思いきり頭をはたかれたとさ。

 え?

 俺、さっきからずっとソフトクリームを買う前提で話を進めていたのに、なんでいきなりはたかれたの?

 しかも。

「すみません、ジツハフくん。申しわけありませんが、私たちの家計は火の車。常に節約を心掛けているので、そちらのソフトクリームは購入できません」

「いやどの口が言ってんだよその言葉をよぉ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

処理中です...