うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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第3章 2 いざ、混浴へと!

最悪の打開策

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「くそぉっ…………」

 俺は床に膝をついてうなだれていた。

 もう【無敵の人間インヴィジブル・パーソン】状態すら維持できない。

 感じている痛みが、マーズにやられたことによる痛みなのか、【無敵の人間】による副作用の痛みなのかわからない。

「誠道さんっ! 誠道さんっ!」

 ミライが氷の中から叫んでくれる。

 どうしよう。

 このままではミライが危ない。

 殺されてしまう。

 マーズが求めているのはドMの俺だけで、ミライはいらないのだ。

 俺はドMじゃないけど。

「【氷の調教鎖アイスエンドチェーン】」

 冷徹で、それでいてどこか興奮しているような声がする。

 マーズから無慈悲な攻撃が放たれ、俺は氷の鎖で締め上げられた。

「誠道さんを縛っていいのは、私だけだって言ってるでしょう!」

 ミライの悲痛の叫びが胸に刺さる。

 そうだな。

 たしかに、もし仮に縛られるのならミライの方がいい。

 もしも縛られるなら、ね。

「あなたの意見なんかどうでもいいの。この男は、すぐに私色に染めてあげるから」

「おい、マーズとか言ったな」

 俺は一つの賭けに出る。

 ミライを救い出すための、たった一つの方法だ。

「悪いが、俺はお前に服従する気は絶対にない。お前色に染まるような根性なしでもない」

 マーズを睨むと、彼女は嬉しそうに笑った。

「まだ張れる威勢を持っていたなんてねぇ。もっと痛めつける必要があるのかしら」

「よく話を聞け。俺は絶対に服従はしないが、ミライをこのまま無傷で返してくれるなら、お前のペットにでもなんでもなってやる」

「誠道さんっ。それは……」

 ミライの悲しそうな声が聞こえるが、断腸の思いで無視をする。

 こうするしかないんだ。

 いまはこいつに形だけ従っておいて、隙をついて倒すか逃げる。

 それしか、ミライが助かる道はない。

「へぇ。なんでも、ねぇ」

 マーズが俺の体を舐めるように見ていく。

「ああ、なんでも、だ」

 本当に悔しい。

 俺が弱いばかりに、こんな道しか取ることができないなんて。

「わかったわ。あなたの涙に免じて許してあげることにしましょう」

「ありがとう……って、涙?」

 まさか、俺は悔しくて泣いていたのか。

 情けない。

 情けなさすぎる。

「これは違う。泣いてなんかない。お前の氷が溶けただだけ――」

 ――ゴリ、ゴリ、ゴリ。

 そのとき、右横から巨大なコンクリートが削られるような、鈍い音が聞こえてきた。

 ゴリ、ゴリ、ゴリ、と謎の空間の壁が、まるでプロレスラーが分厚い雑誌でも破いているかのように破れていく。

 そして、そこから現れたのは。

「オムツ……おじさん」

 裸にオムツ姿のダンディなおじさまだった。

「こちらの部屋から、ドMの悲鳴が聞こえてたのでな」

 この部屋を見回した後でオムツおじさんは小さく笑うと、ミライ、俺、マーズと順に見ていく。

「なぁ、君たちよ。わんわんと無邪気に泣いていいのは赤ちゃんだけなのだ。だから、赤ちゃんヒーローの私が大人の涙をあやしにきた」

 うん。

 言っていることはよくわからないが、俺たちを助けにきてくれたことだけはわかった。

 そして、その立ち姿から放たれる威圧感で、相当の強者であることも。
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