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第3章 4 決意と謝罪の性感帯
ライアーゲーム
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「それ、なんですか?」
聖ちゃんが俺の持っているものを覗き込む。
「これは助っ人を呼ぶ笛、でいいのかな。吹くと、この笛をくれた人が俺たちの目の前にワープしてくるんだ」
困ったことがあればすぐに呼んでくれ。
必ず、誠道くんたちの助けになるから。
大度出……いや、心出皇帝はそう言って俺にこの笛を託した。
あんなやつらに助けなんか乞いたくない、絶対に使うもんかと思っていたが、そんな感情はミライを助けるためならなんのためらいもなく捨てられる。
プライドで救えるものは、自分の自尊心だけだ。
大切な誰かを救ってくれることはない。
「ってことはにや、その助っ人とやらも一緒に来てくれるってことかにゃ?」
「ああ。戦力は多いに越したことはないからな」
なんせ、相手は元魔王軍四天王で、氷の大魔法使いであるリッチーのマーズだ。
戦力をケチっている余裕はない。
俺はその笛を口に咥えて思いきり吹いた。
ピホー。
「しまらん音にゃ。さすが引きこもり」
「引きこもりにしか出せない情けない音ですね。ある意味貴重な音色です」
「んにゃ。きっと誠道は好きな子の縦笛を吹くときみたいに緊張していたのにゃ」
ネコさんも聖ちゃんもなにを言っているのかな?
たしかに、リコーダーを吹くのを失敗したときのような音が鳴ったよ。
でも、それ引きこもりと関係なくない?
「って俺は好きな子のリコーダーを吹こうと思ったことなんて一度もないわ! 教室に入ったあとで何度も後ろを振り返ったり、周囲の音を最大限気にしたり、吹いたあとは一目散に逃げて罪悪感と高揚感で胸がいっぱいになったりしてねぇわ!」
「情景がありありと浮かんでくる詳細な否定をすることで逆に肯定をするにゃんて、お前はある意味すごいのう」
「だからなんで俺が小学二年生の時、廊下側から数えて二列目、前から三番目の席の……って」
俺は誤解をとくのも忘れ、輝きだした笛に目を向けた。
神々しく、暖かな白い光。
これはまるで……そう!
アニメの入浴シーンでなぜか女の子の体を隠している謎の光のようだ!
そう考えるとなんかすごいムカついてきたぞ!
俺がものすごく重要なことを考えている間に、笛にぴきぴきとひびが入っていき、やがて粉々に砕け散った。
すぐに白の魔法陣が浮かび上がり、その中に心出皇帝、光聖志太一、真枝務喜一、五升・リマク・李男が現れた。
……なんかテーブルとトランプも一緒にワープしてるんですけど、まあいいや。
「ああー、俺はフォールドです」
坊主に黒縁眼鏡の光聖志太一がそう告げる。
どうやらポーカーのテキサスホールデムをやっているみたいだ。
朝からなにやってんだよ。
熱中しすぎ。
ワープしてることに気づけよ。
「俺はそこそこ勝負になりそうだけど、もし他のみんなが高い手だったらぁ……。フォールドで」
坊ちゃん刈りに黒縁眼鏡の真枝務喜一も勝負を下りた。
いやお前は後ろ向きすぎんだろ。
もっと名前通り前向きに攻めろよ。
「そうかぁ。じゃあ俺も無理そうかなぁ。フォール」
「待ってください。皇帝さん」
七三分けに黒縁眼鏡の心出皇帝も他二人と同じようにフォールドとしていたが、それに待ったをかけたのが茶髪の長髪、五升・リマク・李男だ。
「俺、そこはかとなく皇帝さんの方が強そうな気がするんです。なんなら絶対に皇帝さんが勝つと思ってるんですが、俺はここが勝負と見て、一発逆転、打って出ますよ。負けるのが皇帝さんなら悔いはないです。ああ、ここで勝負してくる皇帝さんはすごい格好いいんだろうなぁ」
五升がわけのわからない理屈で、心出に勝負するよう勧める。
ねぇ、やっぱり五升が言っていることに心がこもっていないような気がするんだけど、どうしたらいい?
ってか今回のは明らかに心出をだまして自分が勝つためだよね?
「そうか。五升が言うならじゃあ……オールインだ」
あのぉ、心出さんは人を――五升を疑うことを覚えようか。
それ、心が広いんじゃなくて、人を疑うことを知らないただのバカだからね。
「やっぱり皇帝さんはそういう人だと思ってましたよ。俺もオールイン。役はフルハウスです!」
こいつやっぱり騙すつもりしかなかったよ!
できてる役が強烈すぎるぅ!!
「なに? 俺はナインのハイカードだ」
そして、心出の手は超弱い役。
絶対に勝てないとわかる手。
うん。
心出はただのバカだったよぉ!
「えっ? 嘘ですよね? 皇帝さんはロイヤルストレートフラッシュだと確信していたんですけど」
どこにそんな要素があった。
言ってみろ。
「すみません皇帝さん。読み違えました。格好良く勝たせようと思ったんす。フルハウスで自信満々に勝負する俺に、ロイヤルストレートフラッシュを見せつける皇帝さん格好いいなぁって。でも、勝負は勝負ですから、恨みっこなしっすよね」
五升は若干棒読み気味――俺にはそう聞こえる―ーで弁解をしている。
こいつ、よくもまぁするすると嘘をつけるもんだ。
「ああ、俺の手ストレートフラッシュだったのに、勝負しとけばよかった」
真枝務喜一が前向きになれなかったことを後悔しているが、ストレートフラッシュができていてフォールドするやつなんて聞いたことねぇぞ!
お前もただのアホだよ!
もっと前向きになれよ!
「そうだな。勝負は勝負だ。ロイヤルストレートフラッシュを作れなかった俺が悪い」
そんなわけねぇだろうが!
ああ、もう声に出してツッコみますね!
「いや心出はバカなのか? そもそも場に開かれた五枚のカードにエースもキングもクイーンもジャックもないじゃん! ロイヤルストレートフラッシュなんか絶対無理な状況なんだよ!」
「ん? いま誠道くんの声がしたが……って、おい光聖志、真枝務、五升! 俺たち誠道くんに呼ばれてるぞ!」
心出たちはようやく自分たちの置かれた現状に気がついた。
すぐにポーカーをやめ、俺のもとにぞろぞろと集まっ――
「あっ! 皇帝さん、話を逸らさないでください! キッチリお金は払ってください!」
五升の言う通りだ(言う通りか?)。
うやむやにするのはよくない(よくないとは言っていない)。
彼らはきちんと(きちんとってなに?)勝負の精算をしてから、俺のもとにぞろぞろと集まってきた。
聖ちゃんが俺の持っているものを覗き込む。
「これは助っ人を呼ぶ笛、でいいのかな。吹くと、この笛をくれた人が俺たちの目の前にワープしてくるんだ」
困ったことがあればすぐに呼んでくれ。
必ず、誠道くんたちの助けになるから。
大度出……いや、心出皇帝はそう言って俺にこの笛を託した。
あんなやつらに助けなんか乞いたくない、絶対に使うもんかと思っていたが、そんな感情はミライを助けるためならなんのためらいもなく捨てられる。
プライドで救えるものは、自分の自尊心だけだ。
大切な誰かを救ってくれることはない。
「ってことはにや、その助っ人とやらも一緒に来てくれるってことかにゃ?」
「ああ。戦力は多いに越したことはないからな」
なんせ、相手は元魔王軍四天王で、氷の大魔法使いであるリッチーのマーズだ。
戦力をケチっている余裕はない。
俺はその笛を口に咥えて思いきり吹いた。
ピホー。
「しまらん音にゃ。さすが引きこもり」
「引きこもりにしか出せない情けない音ですね。ある意味貴重な音色です」
「んにゃ。きっと誠道は好きな子の縦笛を吹くときみたいに緊張していたのにゃ」
ネコさんも聖ちゃんもなにを言っているのかな?
たしかに、リコーダーを吹くのを失敗したときのような音が鳴ったよ。
でも、それ引きこもりと関係なくない?
「って俺は好きな子のリコーダーを吹こうと思ったことなんて一度もないわ! 教室に入ったあとで何度も後ろを振り返ったり、周囲の音を最大限気にしたり、吹いたあとは一目散に逃げて罪悪感と高揚感で胸がいっぱいになったりしてねぇわ!」
「情景がありありと浮かんでくる詳細な否定をすることで逆に肯定をするにゃんて、お前はある意味すごいのう」
「だからなんで俺が小学二年生の時、廊下側から数えて二列目、前から三番目の席の……って」
俺は誤解をとくのも忘れ、輝きだした笛に目を向けた。
神々しく、暖かな白い光。
これはまるで……そう!
アニメの入浴シーンでなぜか女の子の体を隠している謎の光のようだ!
そう考えるとなんかすごいムカついてきたぞ!
俺がものすごく重要なことを考えている間に、笛にぴきぴきとひびが入っていき、やがて粉々に砕け散った。
すぐに白の魔法陣が浮かび上がり、その中に心出皇帝、光聖志太一、真枝務喜一、五升・リマク・李男が現れた。
……なんかテーブルとトランプも一緒にワープしてるんですけど、まあいいや。
「ああー、俺はフォールドです」
坊主に黒縁眼鏡の光聖志太一がそう告げる。
どうやらポーカーのテキサスホールデムをやっているみたいだ。
朝からなにやってんだよ。
熱中しすぎ。
ワープしてることに気づけよ。
「俺はそこそこ勝負になりそうだけど、もし他のみんなが高い手だったらぁ……。フォールドで」
坊ちゃん刈りに黒縁眼鏡の真枝務喜一も勝負を下りた。
いやお前は後ろ向きすぎんだろ。
もっと名前通り前向きに攻めろよ。
「そうかぁ。じゃあ俺も無理そうかなぁ。フォール」
「待ってください。皇帝さん」
七三分けに黒縁眼鏡の心出皇帝も他二人と同じようにフォールドとしていたが、それに待ったをかけたのが茶髪の長髪、五升・リマク・李男だ。
「俺、そこはかとなく皇帝さんの方が強そうな気がするんです。なんなら絶対に皇帝さんが勝つと思ってるんですが、俺はここが勝負と見て、一発逆転、打って出ますよ。負けるのが皇帝さんなら悔いはないです。ああ、ここで勝負してくる皇帝さんはすごい格好いいんだろうなぁ」
五升がわけのわからない理屈で、心出に勝負するよう勧める。
ねぇ、やっぱり五升が言っていることに心がこもっていないような気がするんだけど、どうしたらいい?
ってか今回のは明らかに心出をだまして自分が勝つためだよね?
「そうか。五升が言うならじゃあ……オールインだ」
あのぉ、心出さんは人を――五升を疑うことを覚えようか。
それ、心が広いんじゃなくて、人を疑うことを知らないただのバカだからね。
「やっぱり皇帝さんはそういう人だと思ってましたよ。俺もオールイン。役はフルハウスです!」
こいつやっぱり騙すつもりしかなかったよ!
できてる役が強烈すぎるぅ!!
「なに? 俺はナインのハイカードだ」
そして、心出の手は超弱い役。
絶対に勝てないとわかる手。
うん。
心出はただのバカだったよぉ!
「えっ? 嘘ですよね? 皇帝さんはロイヤルストレートフラッシュだと確信していたんですけど」
どこにそんな要素があった。
言ってみろ。
「すみません皇帝さん。読み違えました。格好良く勝たせようと思ったんす。フルハウスで自信満々に勝負する俺に、ロイヤルストレートフラッシュを見せつける皇帝さん格好いいなぁって。でも、勝負は勝負ですから、恨みっこなしっすよね」
五升は若干棒読み気味――俺にはそう聞こえる―ーで弁解をしている。
こいつ、よくもまぁするすると嘘をつけるもんだ。
「ああ、俺の手ストレートフラッシュだったのに、勝負しとけばよかった」
真枝務喜一が前向きになれなかったことを後悔しているが、ストレートフラッシュができていてフォールドするやつなんて聞いたことねぇぞ!
お前もただのアホだよ!
もっと前向きになれよ!
「そうだな。勝負は勝負だ。ロイヤルストレートフラッシュを作れなかった俺が悪い」
そんなわけねぇだろうが!
ああ、もう声に出してツッコみますね!
「いや心出はバカなのか? そもそも場に開かれた五枚のカードにエースもキングもクイーンもジャックもないじゃん! ロイヤルストレートフラッシュなんか絶対無理な状況なんだよ!」
「ん? いま誠道くんの声がしたが……って、おい光聖志、真枝務、五升! 俺たち誠道くんに呼ばれてるぞ!」
心出たちはようやく自分たちの置かれた現状に気がついた。
すぐにポーカーをやめ、俺のもとにぞろぞろと集まっ――
「あっ! 皇帝さん、話を逸らさないでください! キッチリお金は払ってください!」
五升の言う通りだ(言う通りか?)。
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