うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

文字の大きさ
160 / 360
第3章 4 決意と謝罪の性感帯

絶体絶命

しおりを挟む
 氷の巨兵を倒した聖ちゃんと心出たちも、倒れたままのネコさんを呆然と見ている。

「……あっ、…………いや、そんな、避けられる、はずで」

 マーズは頭を抱えて項垂れていたが。

「……違う。あいつはネコたんじゃない。ネコたんを、私の最愛の人を騙るなんて、私たちに対する冒涜だ……」

 こめかみを抑えながら乾いた笑い声を垂れ流すマーズ。

 ただ、彼女の虚な瞳はずっと倒れているネコさんに向けられている。

「そうだ、私は……ネコたんはもう死んだんだから」

 マーズはネコさんを睨みつけながら、ぽろりと涙を流した。

「次は……お前だ、石川誠道。私はドSのマーズ。だから、ドMのお前は私にひれ伏せ。私を愛するネコたんはもういないのだから!」

「おい、マーズ」

 俺は自分を抑えられなかった。

 ネコさんの強い思いに感化され、ネコさんの思いを一向に受け取ろうとしないマーズに腹が立った。

「あんたは姿形が変わったくらいで最愛の人を見失うのかよ! あんたの愛はそんなもんかよ! いまのあんたの方が、あんたたちの過去を、あんたたちの愛を冒涜してる!」

「うるさいうるさいうるさい!」

 彼女の怒鳴り声と同時に、俺たちの頭上に水色の巨大な魔法陣が出現する。

「みんな押し潰されればいいのよ! 【氷の終焉殺劇アイスジエンド】」

 その魔法陣から超巨大な氷が現れる。

 しかも吊り天井の罠みたいに、真下にいる俺たちを串刺しにするための氷柱が無数についている。

 マズい。

 こんなのくらったらみんな死んでしまう。

 逃げ場もない。

 ってかマーズだって死ぬだろこれ――いや、相手はリッチーだから死なないのか。

「リッチーだからこその攻撃かよ」

 残された道はただひとつ。

 あの超巨大な氷を消滅させるしかない。

「くそがぁ! 【炎舞龍夢エンブレム】ッ! 【炎舞龍夢エンブレム】ッ! 【炎舞龍夢エンブレム】ッ!」

 俺は炎龍を超巨大な氷に向けて放ちつづける。

 炎龍は次々に巨大氷とぶつかり、徐々に超巨大な氷を砕き溶かしていく。

 こんなところで死んでたまるかよ。

 ミライを死なせてたまるかよ。

 みんなを死なせてたまるかよ。

「うおおおおおぁぁあああ! 【炎舞龍夢エンブレム】ッッ!」

 そして。

「…………やっ、た」

 巨大な氷は俺たちを押しつぶすことなく、完全に消滅した。

 聖ちゃんたちが歓声をあげる。

 持てる力をすべて出し尽くした俺は、ミライの隣にどさっと倒れた。

「やった、ミライ……」

 俺は隣で眠るミライの手を握る――が。

「うそ、だろ」

 俺たちの目の前に、超巨大なアイスゴーレムが立っていた。

「……もう、俺は」

無敵の人間インヴィジブル・パーソン】状態も保てていない。

 というより指の一本も動かせない。

 アイスゴーレムがその巨大な足をあげる。

 ……くそ。

 踏みつけられるのはご褒美ってか。

 ドMじゃないけど。

 俺は最後の力を振り絞って、意味はないかもしれないけど、ミライの上に覆い被さった。

「ミライ……死ぬな」

 アイスゴーレムの足が下りてきて、俺たちは踏み潰され――

「させません」

「……っ。聖、ちゃん」

 顔を上げると、聖ちゃんが聖剣ジャンヌダルクで、アイスゴーレムの足を押しとどめていた。

「引きこもりの誠道さんに守られただけとあっては、【愉悦の睾丸女帝】の名が廃れますからっ……」

 聖ちゃんの両足はプルプルと震えている。

 無理をしているのは明らかだ。

「あと、できればこのお礼として誠道さんの睾丸を」

「それはいやだ」

 ああ、聖ちゃんはやっぱりこんな状況でもぶれないですねぇ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...