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第4章 5 私はあなたを選ばない
パペットマスターの脚本
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……そうか。
それでコハクちゃんは独りぼっちだったのか。
犯罪者の娘だから、里のみんなから偏見を持たれて、冷たくあしらわれつづけていたのか。
……悲しいなぁ。
コハクちゃんはなにも悪くないじゃないか。
なのにこんなに、優しい心を持ちつづけられたのか。
「私にはお母さんと同じ血が流れて……だから私はっ! 私はずっと一人でっ! 一人でもっ! 絶対に本当のお母さんのようになるかって! 思ってきたのにっ! それなのにっ! 私はさっき、あなたたちをっ、殺そうとして……冒険者たちからお金を奪った、犯罪者でっ――」
「殺してないじゃん、俺たちのこと。コハクちゃんは悪くない。なにも悪くない」
俺がそう声をかけると、コハクちゃんは大きく体を震わせはじめる。
ミライがコハクちゃんをぎゅっと抱きしめるが、その震えはどんどん大きくなっていく。
「でも、だから、私は犯罪者の娘で、生きているだけで恨まれて当然の存在で」
「それがどうしたんだよ? 関係ないじゃん。親がどうかなんて。コハクちゃんはコハクちゃんだよ」
「だから、私には、私は、罪を ……いつかきっとみんな私を怖がるんだ! 煙たがるんだ! ああ、やっぱりあいつの子供なんだって、蔑んで離れていくんだっ!」
「俺たちはコハクちゃんが優しいってわかってる。コハクちゃんのお母さんとは違って、素敵な可愛い女の子だって、知ってるから」
俺はコハクちゃんの肩をポンと叩いてから立ち上がる。
「大丈夫。見ててほしい。俺は、絶対にあいつを許さないから」
俺はテツカさんの方を向き直り、じっと睨みつける。
「コハクちゃんを傷つけたあいつは、いまからずっと俺の敵だ」
「おっ? ようやく茶番は終わったか?」
テツカさんは鼻をほじっていた。
「誰が誰を許さないって? 面白いなぁ、本当に。全員、俺の脚本通りに動いていただけなのによぉ」
「この外道が。覚悟はできてるんだろうな」
「覚悟するのはお前らの方だろ?」
テツカさんの体が黒い瘴気のようなものに包まれていく。
「生き物はなぁ、死ぬことでその体に抱え込んだ感情をこの世に解き放つ。俺はその負の感情を喰らう魔物。パペットマスター、ワルシュミー。ここでお前らは俺の美食のために全員殺されんだよぉ!」
「だからどうした? なんで俺たちが殺される前提なんだよ」
俺は腹の底から湧き上がる怒りに身を委ねていく。
「殺されんのは、お前の方だ。趣味悪野郎」
抱いた怒りをすべて視線に込めて、テツカさん――ワルシュミーを睨む。
ワルシュミーは「おおぉ、怖いねぇ」と茶化したあと、からかうような声音でつづけた。
「言っただろぉ。俺は絶望が大好きなんだ。お前らを絶望させる手段だってちゃんと用意してんだよ。お前らが死ねば、さらにコハクは絶望するだろうなぁ」
「てめぇ……」
「ほら、もっとコハクに優しい言葉をかけてやれよ。その分そんなお前らを殺そうとしてしまった罪悪感も、お前らが殺されるときに抱く絶望も大きくなるからよぉ」
「うるせぇ。いますぐコハクちゃんに謝れよ。俺は許さねぇけど謝れよ。……【無敵の人間】」
怒りと熱と興奮が体の中で心地よく混ざり合っていく。
「謝る? 誰が? 犯罪者の血を受け継いで生まれてきてごめんなさいって、そこの犯罪者の娘が、か?」
「もう黙れよ。【炎鬼超燃龍奥義・炎舞龍夢】」
俺はワルシュミーに向けて炎龍を放つ。
一直線に突き進んでいく炎龍が、高笑いをつづけるワルシュミーと衝突する間際。
なにかが二つの間に割って入った。
氷の盾がいきなり現れ、その盾に触れたところから炎龍が凍りついていく。
氷の鎖が凍った炎龍を縛り上げ、引きちぎる。
「……え」
俺は炎龍を消滅させた技を見て、目を疑った。
「だから、お前らを絶望させる手段は用意してるんだよ」
ワルシュミーの隣には虚ろな目をした、なぜか百キロ越えの巨漢みたいにまるまると太っているマーズがいた。
「俺はパペットマスターなんだよ。操られた仲間に殺されるなんて、かなりのシチュエーションだと思わないか?」
ワルシュミーの言葉に、俺は奥歯を噛み締めた。
それでコハクちゃんは独りぼっちだったのか。
犯罪者の娘だから、里のみんなから偏見を持たれて、冷たくあしらわれつづけていたのか。
……悲しいなぁ。
コハクちゃんはなにも悪くないじゃないか。
なのにこんなに、優しい心を持ちつづけられたのか。
「私にはお母さんと同じ血が流れて……だから私はっ! 私はずっと一人でっ! 一人でもっ! 絶対に本当のお母さんのようになるかって! 思ってきたのにっ! それなのにっ! 私はさっき、あなたたちをっ、殺そうとして……冒険者たちからお金を奪った、犯罪者でっ――」
「殺してないじゃん、俺たちのこと。コハクちゃんは悪くない。なにも悪くない」
俺がそう声をかけると、コハクちゃんは大きく体を震わせはじめる。
ミライがコハクちゃんをぎゅっと抱きしめるが、その震えはどんどん大きくなっていく。
「でも、だから、私は犯罪者の娘で、生きているだけで恨まれて当然の存在で」
「それがどうしたんだよ? 関係ないじゃん。親がどうかなんて。コハクちゃんはコハクちゃんだよ」
「だから、私には、私は、罪を ……いつかきっとみんな私を怖がるんだ! 煙たがるんだ! ああ、やっぱりあいつの子供なんだって、蔑んで離れていくんだっ!」
「俺たちはコハクちゃんが優しいってわかってる。コハクちゃんのお母さんとは違って、素敵な可愛い女の子だって、知ってるから」
俺はコハクちゃんの肩をポンと叩いてから立ち上がる。
「大丈夫。見ててほしい。俺は、絶対にあいつを許さないから」
俺はテツカさんの方を向き直り、じっと睨みつける。
「コハクちゃんを傷つけたあいつは、いまからずっと俺の敵だ」
「おっ? ようやく茶番は終わったか?」
テツカさんは鼻をほじっていた。
「誰が誰を許さないって? 面白いなぁ、本当に。全員、俺の脚本通りに動いていただけなのによぉ」
「この外道が。覚悟はできてるんだろうな」
「覚悟するのはお前らの方だろ?」
テツカさんの体が黒い瘴気のようなものに包まれていく。
「生き物はなぁ、死ぬことでその体に抱え込んだ感情をこの世に解き放つ。俺はその負の感情を喰らう魔物。パペットマスター、ワルシュミー。ここでお前らは俺の美食のために全員殺されんだよぉ!」
「だからどうした? なんで俺たちが殺される前提なんだよ」
俺は腹の底から湧き上がる怒りに身を委ねていく。
「殺されんのは、お前の方だ。趣味悪野郎」
抱いた怒りをすべて視線に込めて、テツカさん――ワルシュミーを睨む。
ワルシュミーは「おおぉ、怖いねぇ」と茶化したあと、からかうような声音でつづけた。
「言っただろぉ。俺は絶望が大好きなんだ。お前らを絶望させる手段だってちゃんと用意してんだよ。お前らが死ねば、さらにコハクは絶望するだろうなぁ」
「てめぇ……」
「ほら、もっとコハクに優しい言葉をかけてやれよ。その分そんなお前らを殺そうとしてしまった罪悪感も、お前らが殺されるときに抱く絶望も大きくなるからよぉ」
「うるせぇ。いますぐコハクちゃんに謝れよ。俺は許さねぇけど謝れよ。……【無敵の人間】」
怒りと熱と興奮が体の中で心地よく混ざり合っていく。
「謝る? 誰が? 犯罪者の血を受け継いで生まれてきてごめんなさいって、そこの犯罪者の娘が、か?」
「もう黙れよ。【炎鬼超燃龍奥義・炎舞龍夢】」
俺はワルシュミーに向けて炎龍を放つ。
一直線に突き進んでいく炎龍が、高笑いをつづけるワルシュミーと衝突する間際。
なにかが二つの間に割って入った。
氷の盾がいきなり現れ、その盾に触れたところから炎龍が凍りついていく。
氷の鎖が凍った炎龍を縛り上げ、引きちぎる。
「……え」
俺は炎龍を消滅させた技を見て、目を疑った。
「だから、お前らを絶望させる手段は用意してるんだよ」
ワルシュミーの隣には虚ろな目をした、なぜか百キロ越えの巨漢みたいにまるまると太っているマーズがいた。
「俺はパペットマスターなんだよ。操られた仲間に殺されるなんて、かなりのシチュエーションだと思わないか?」
ワルシュミーの言葉に、俺は奥歯を噛み締めた。
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