うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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第6章 2 旅館にて、契約

どこからどう見ても

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「お姉ちゃんの店はあっちだよ」

「うわっ、結構並んでるな」

 ジツハフくんが指差した先を見て、純粋に驚く。

 店の前には二十人ほどの行列ができていた。

 お祭りでよく見る屋台のような店構えで、エプロン姿のイツモフさんが忙しそうに動いていた。

「ね、言った通り繁盛してるでしょ?」

「ああ、そうだな……」

 俺は屋台の近くにある看板に目をやる。

 そこには。

『クラーケン焼き! 大特価で販売中!』

 と書かれてあった。

「……まじかよ、ちゃんとクラーケンって書いてある」

 何度も確認したので間違いない。

 あれは確実にカタカナの『ン』だ。

「だから僕の言った通りだったでしょ。ちなみにね、この店の紹介料として」

「ここは歌舞伎町か! いや歌舞伎町の客引きよりたちが悪いまであるぞ!」

 まあ、眠らない街として有名な歌舞伎町は、一般人にとってもはや異世界みたいなもんだけどね。

「もう、誠道お兄ちゃん。きちんとそこはコンサル料って言ってほしいな」

「だから大人の言葉! もうやめろよ!」

「ちなみに、待たずに買いたいなら追加でお金を」

「そして有名テーマパークみたいな仕組み作ってんじゃねぇ!」

「誠道さん」

 ジツハフくんにツッコむので忙しいというのに、ミライが話しかけてきやがった。

「待たずに済むのはいいことじゃないですか。時は金なりって言うでしょう。優秀な金持ちたちは時間をお金で買うと」

「それはミライが金持ちになってから言ってね」

 その後、待ちたくないと駄々をこねるミライをなんとか引き連れて、俺は列に並んだ。

 ジツハフくんは、また客引きをしにいってしまったんだけど、止めた方がよかっただろうか。

「おっ、ようやく俺たちの番だな」

「いらっしゃいませー……って、誠道くんにミライさんっ? き、奇遇ですね」

 俺たちに気づいたイツモフさんは、なぜか引きつった笑みを浮かべた。

 なんか、怪しい。

 ってかそんなことより、よく見るとイツモフさんは赤の真っ赤なビキニの上からエプロンを着ていて、なんだかすごくえろい。

 そして、ミライの視線が痛い。

「お久しぶりです、イツモフさん」

 挨拶してから俺は鉄板に視線を落とす。

 水着エプロン姿のイツモフさんを見つづけるわけにはいかない。

 なんか隣にいるミライから殺気すら感じられるようになったからね。

「やっぱり海の家ぼったくり価格なんですね。どれも平均的に高いですね」

「いや、海ではこれが正常な価格ですから。むしろ客たちはぼったくり感を楽しんでいるまでありますし、ははは……」

 最後のなにかを誤魔化すような笑い。

 明らかに、なんか怪しいぞ。

 やっぱりクラーケンじゃなくてクラーケソなんじゃないかと、看板に書かれてある文字を見直したが、やっぱりどこからどう見てもクラーケンだった。
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