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第6章 2 旅館にて、契約
クラーケン焼き
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「そんなことよりなにを頼むんですか? 他のお客さんも並んでるのでお早めにお願いします」
イツモフさんに言われ後ろを振り返る。
言葉通りまだ何人も並んでいるので、たらたらするのはよくない。
「じゃあとりあえずクラーケン焼きを……ミライも食べるか?」
「はい。せっかく引きこもりの誠道さんと海にくるという奇跡が起こったんですから、海っぽいことは全部堪能したいです」
「なんか俺ちょっとバカにされてない? まあ、とりあえずじゃあクラーケン焼きを二つで」
「お買い上げありがとうございます!」
こうして俺たちは海の家ぼったくり価格で売られている大特価のクラーケン焼きを買った。
ビーチパラソルを立てた場所に戻りながら。
「なんか、結局得したのか損したのかわかんなかったな」
「なに言ってるんですか。海の家ぼったくり価格とはいえ、クラーケン焼きがあの値段で買えたんです。お得に決まってるじゃないですか」
ミライが鼻息荒くそう言った。
「へぇ、クラーケンってそんなに高級食材だったんだな」
「はい。クラーケンは巨大なイカのような生き物で、特殊な生態を持っています」
「特殊な生態?」
「クラーケンは必ず世界に一体しか存在していないのです。その一体が死を迎えると、どこからともなく次のクラーケンの赤ちゃんが現れます」
「それはたしかに不思議だなぁ」
「そして、クラーケンはサイズが小さいうちは食べられたもんじゃないくらいまずいのです。高級食材と呼ばれるくらいの巨大サイズになるまでに最低でも十年はかかります」
「え? じゃあこのクラーケン焼きは、少なくとも今後十年間は食べられないってこと?」
「そうなりますね」
ゆっくりとうなずくミライを見て、クラーケン焼きを持つ手が震えはじめた。
「まじかそれ」
「しかも、クラーケンは遭遇したらすぐに逃げろと教えられるほど強いのです」
「……ってことは、今回イツモフさんが自分でクラーケンを討伐したってことか?」
「おそらく。市場に出たものを買うと、絶対にこんな安くは出来ませんから。大赤字です」
「そうなのか……」
まあ、イツモフさんの強さはピロ―ドロー・カイマセヌとの戦いで知っているから、クラーケンを倒せてもおかしくはない。
そして、ミライの話を聞いたせいかどうかはわからないが、急に目の前のクラーケン焼きがすごくおいしそうに見えはじめた。
もとの場所にもどってきた俺たちは、ビーチパラソルの影の中に座る。
ミライと一緒に超貴重な高級食材、クラーケン焼きを一口。
「うまっ! なにこれっ! 醤油の香ばしさと程よい弾力がすげぇ。これが噂のクラーケン焼きかぁ」
「本当ですね。とてもおいしいです……って」
ミライが俺の頬を見て、くすっと笑い。
「ほっぺにたれがついてますよ」
人差し指でたれを取ると、それをぺろりと舐めた。
「おおお、おい。自分でできるってそれくらい」
「あれ、もしかして照れてます?」
「いや照れてないから!」
とそのとき。
「ねぇ、お母さん。あれなに?」
俺たちの目の前を歩いていた女の子が、沖の方を指さしながら母親を見上げている。
その子が指さした先には、真っ白で巨大な三角形と、同じく真っ白で巨大な触手が二つ、海面から飛び出していた。
「あれはっ……」
その触手を目撃した瞬間、母親の顔が真っ青になった。
「クラーケンよ!」
その叫び声が砂浜に響き渡った瞬間、時が止まったのかと思うくらいの静寂が訪れた。
次の瞬間には悲鳴とともに海水浴客たちが一斉に逃げ惑いはじめる。
「ってやっぱイツモフさん嘘ついてんじゃねぇか!」
さっきミライが巨大なクラーケンになるまでには十年かかるって言ってたからね!
急に目の前のクラーケン焼きがまずそうに見えてきたよ!
そもそも、俺たちが食べてるこれはいったいなに?
イツモフさんに言われ後ろを振り返る。
言葉通りまだ何人も並んでいるので、たらたらするのはよくない。
「じゃあとりあえずクラーケン焼きを……ミライも食べるか?」
「はい。せっかく引きこもりの誠道さんと海にくるという奇跡が起こったんですから、海っぽいことは全部堪能したいです」
「なんか俺ちょっとバカにされてない? まあ、とりあえずじゃあクラーケン焼きを二つで」
「お買い上げありがとうございます!」
こうして俺たちは海の家ぼったくり価格で売られている大特価のクラーケン焼きを買った。
ビーチパラソルを立てた場所に戻りながら。
「なんか、結局得したのか損したのかわかんなかったな」
「なに言ってるんですか。海の家ぼったくり価格とはいえ、クラーケン焼きがあの値段で買えたんです。お得に決まってるじゃないですか」
ミライが鼻息荒くそう言った。
「へぇ、クラーケンってそんなに高級食材だったんだな」
「はい。クラーケンは巨大なイカのような生き物で、特殊な生態を持っています」
「特殊な生態?」
「クラーケンは必ず世界に一体しか存在していないのです。その一体が死を迎えると、どこからともなく次のクラーケンの赤ちゃんが現れます」
「それはたしかに不思議だなぁ」
「そして、クラーケンはサイズが小さいうちは食べられたもんじゃないくらいまずいのです。高級食材と呼ばれるくらいの巨大サイズになるまでに最低でも十年はかかります」
「え? じゃあこのクラーケン焼きは、少なくとも今後十年間は食べられないってこと?」
「そうなりますね」
ゆっくりとうなずくミライを見て、クラーケン焼きを持つ手が震えはじめた。
「まじかそれ」
「しかも、クラーケンは遭遇したらすぐに逃げろと教えられるほど強いのです」
「……ってことは、今回イツモフさんが自分でクラーケンを討伐したってことか?」
「おそらく。市場に出たものを買うと、絶対にこんな安くは出来ませんから。大赤字です」
「そうなのか……」
まあ、イツモフさんの強さはピロ―ドロー・カイマセヌとの戦いで知っているから、クラーケンを倒せてもおかしくはない。
そして、ミライの話を聞いたせいかどうかはわからないが、急に目の前のクラーケン焼きがすごくおいしそうに見えはじめた。
もとの場所にもどってきた俺たちは、ビーチパラソルの影の中に座る。
ミライと一緒に超貴重な高級食材、クラーケン焼きを一口。
「うまっ! なにこれっ! 醤油の香ばしさと程よい弾力がすげぇ。これが噂のクラーケン焼きかぁ」
「本当ですね。とてもおいしいです……って」
ミライが俺の頬を見て、くすっと笑い。
「ほっぺにたれがついてますよ」
人差し指でたれを取ると、それをぺろりと舐めた。
「おおお、おい。自分でできるってそれくらい」
「あれ、もしかして照れてます?」
「いや照れてないから!」
とそのとき。
「ねぇ、お母さん。あれなに?」
俺たちの目の前を歩いていた女の子が、沖の方を指さしながら母親を見上げている。
その子が指さした先には、真っ白で巨大な三角形と、同じく真っ白で巨大な触手が二つ、海面から飛び出していた。
「あれはっ……」
その触手を目撃した瞬間、母親の顔が真っ青になった。
「クラーケンよ!」
その叫び声が砂浜に響き渡った瞬間、時が止まったのかと思うくらいの静寂が訪れた。
次の瞬間には悲鳴とともに海水浴客たちが一斉に逃げ惑いはじめる。
「ってやっぱイツモフさん嘘ついてんじゃねぇか!」
さっきミライが巨大なクラーケンになるまでには十年かかるって言ってたからね!
急に目の前のクラーケン焼きがまずそうに見えてきたよ!
そもそも、俺たちが食べてるこれはいったいなに?
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