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第6章 5 目指せ! 敗北!
この大会の本当の名は
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とりあえず、聖ちゃんを人気のない砂浜の端の方に連れてくることに成功した。
「お二人に説得されたら……仕方ないですね」
聖ちゃんは深呼吸をしてから、俺の正面に立つ。
ビーチに降り注ぐ日差しよりも眩しい笑顔を浮かべ、おもむろに手を差し出してきた。
「誠道さんの睾丸を差し出してくれると約束してくれましたし。交渉成立です」
「うん。いきなりふざけないでね。事実を捏造しないでくれるかな?」
「私はふざけてなどいません。私は私を運営に入れてくれない大会を潰すことを諦める。誠道さんは私に睾丸を提供する。ほら、いたって真面目な等価交換じゃないですか」
「等価交換の意味をちゃんと調べようか!」
「そんなことはどうでもいいんです!」
「聖ちゃんが自分から言い出したことだろ! そもそもどうしてこんな素敵な大会をぶち壊そうとするんだよ」
「え? この大会が、素敵?」
「ああ」
大きくうなずいた俺は、首を傾げた聖ちゃんに、この大会がいかに素晴らしいのか説明してやることにする。
「だってこの大会で優勝すればハーレム確定……自分がどれくらい強いのかを純粋な気持ちで推し量ることができるんだぞ!」
おっと危ない。
言い間違えそうになってしまったが、なんとかこらえた。
「いや本音が漏れている気がしますが……」
聖ちゃんはやれやれとため息をついた後。
「でも、この大会で勝ってもハーレムなんか作れませんよ」
「は? どういうことだよ! ……じゃなくて俺は純然たる向上心でこの大会に参加していると何度言ったら」
「だから本音が……」
そうつぶやいた聖ちゃんは、目を黒く光らせる。
「だって、この大会には裏があるんですから」
「え?」
裏?
俺とミライは顔を見合わせる。
「はい。この大会には秘密が隠されているんです」
聖ちゃんは、俺たち以外他に誰もいないのに、手をちょいちょいとして顔を近づけるように指示を出してくる。
それくらい、他の人間に聞かれてはまずい内容なのだろう。
ってことはやっぱり、テロとか暗殺か?
そうか!
聖ちゃんはテロの計画を知って、それを阻止するために運営に潜り込もうとしたのか。
「実はこの大会は……」
顔を近づけた俺たちにさらに近づくようにしながら、聖ちゃんが小声でつづける。
「キョセイ大会なんです」
「「……キョセイ?」」
俺とミライは聖ちゃんの言った言葉をオウム返ししていた。
意味がわからなすぎて、それ以外の選択肢がなかった。
「はい。キョセイ大会です!」
自信満々にうなずく聖ちゃん。
あのぉ、えっと、キョセイとかどうでもいいですが。
テロとか暗殺の危機はいったいどこに?
「キョセイ、きょせい……あっ!」
俺はポンと手を叩く。
そうかわかったぞ!
「きょせい大会って、虚勢を張る大会ってことか!」
「違います」
聖ちゃんが即座に否定してくる。
「虚勢を張る大会って意味わからないじゃないですか。バカなんですか? 誠道さんは、もう少し虚勢を張ってでも頭いい人を演じた方がいいですよ」
そして、更なる追撃もくらってしまった。
追撃を食らった意味はよくわからないが。
「いいですか、きょせい大会っていうのはですね」
呆れた様子の聖ちゃんが、ぱんぱんと手を叩く。
塾講師が重要な公式を説明するみたいに、はきはきとした口調で。
「生殖に必要な部位を切除すること、つまり睾丸をむしり取る大会なんです!」
「そっちの大会の方が意味わかんないだろうが! 『俺まだ本気出してないから』とか言って強がりを見せつけ合う虚勢大会の方がまだ現実的だろうが!」
でも、それで聖ちゃんはあんなに必死になって運営に潜り込もうとしていたんですね。
私にやらせてって、睾丸をむしり取る役割をやらせてってことなんですね。
ああ、すべて点が一本に繋がっていく感覚は嫌いじゃないけど、今回ばかりはつながってほしくなかった。
真実はいつもひとつだけど、今回はもうひとつの真実がほしかったよ!
「お二人に説得されたら……仕方ないですね」
聖ちゃんは深呼吸をしてから、俺の正面に立つ。
ビーチに降り注ぐ日差しよりも眩しい笑顔を浮かべ、おもむろに手を差し出してきた。
「誠道さんの睾丸を差し出してくれると約束してくれましたし。交渉成立です」
「うん。いきなりふざけないでね。事実を捏造しないでくれるかな?」
「私はふざけてなどいません。私は私を運営に入れてくれない大会を潰すことを諦める。誠道さんは私に睾丸を提供する。ほら、いたって真面目な等価交換じゃないですか」
「等価交換の意味をちゃんと調べようか!」
「そんなことはどうでもいいんです!」
「聖ちゃんが自分から言い出したことだろ! そもそもどうしてこんな素敵な大会をぶち壊そうとするんだよ」
「え? この大会が、素敵?」
「ああ」
大きくうなずいた俺は、首を傾げた聖ちゃんに、この大会がいかに素晴らしいのか説明してやることにする。
「だってこの大会で優勝すればハーレム確定……自分がどれくらい強いのかを純粋な気持ちで推し量ることができるんだぞ!」
おっと危ない。
言い間違えそうになってしまったが、なんとかこらえた。
「いや本音が漏れている気がしますが……」
聖ちゃんはやれやれとため息をついた後。
「でも、この大会で勝ってもハーレムなんか作れませんよ」
「は? どういうことだよ! ……じゃなくて俺は純然たる向上心でこの大会に参加していると何度言ったら」
「だから本音が……」
そうつぶやいた聖ちゃんは、目を黒く光らせる。
「だって、この大会には裏があるんですから」
「え?」
裏?
俺とミライは顔を見合わせる。
「はい。この大会には秘密が隠されているんです」
聖ちゃんは、俺たち以外他に誰もいないのに、手をちょいちょいとして顔を近づけるように指示を出してくる。
それくらい、他の人間に聞かれてはまずい内容なのだろう。
ってことはやっぱり、テロとか暗殺か?
そうか!
聖ちゃんはテロの計画を知って、それを阻止するために運営に潜り込もうとしたのか。
「実はこの大会は……」
顔を近づけた俺たちにさらに近づくようにしながら、聖ちゃんが小声でつづける。
「キョセイ大会なんです」
「「……キョセイ?」」
俺とミライは聖ちゃんの言った言葉をオウム返ししていた。
意味がわからなすぎて、それ以外の選択肢がなかった。
「はい。キョセイ大会です!」
自信満々にうなずく聖ちゃん。
あのぉ、えっと、キョセイとかどうでもいいですが。
テロとか暗殺の危機はいったいどこに?
「キョセイ、きょせい……あっ!」
俺はポンと手を叩く。
そうかわかったぞ!
「きょせい大会って、虚勢を張る大会ってことか!」
「違います」
聖ちゃんが即座に否定してくる。
「虚勢を張る大会って意味わからないじゃないですか。バカなんですか? 誠道さんは、もう少し虚勢を張ってでも頭いい人を演じた方がいいですよ」
そして、更なる追撃もくらってしまった。
追撃を食らった意味はよくわからないが。
「いいですか、きょせい大会っていうのはですね」
呆れた様子の聖ちゃんが、ぱんぱんと手を叩く。
塾講師が重要な公式を説明するみたいに、はきはきとした口調で。
「生殖に必要な部位を切除すること、つまり睾丸をむしり取る大会なんです!」
「そっちの大会の方が意味わかんないだろうが! 『俺まだ本気出してないから』とか言って強がりを見せつけ合う虚勢大会の方がまだ現実的だろうが!」
でも、それで聖ちゃんはあんなに必死になって運営に潜り込もうとしていたんですね。
私にやらせてって、睾丸をむしり取る役割をやらせてってことなんですね。
ああ、すべて点が一本に繋がっていく感覚は嫌いじゃないけど、今回ばかりはつながってほしくなかった。
真実はいつもひとつだけど、今回はもうひとつの真実がほしかったよ!
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