うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

文字の大きさ
340 / 360
最終章 2 フェニックスハイランドはきっと貸し切り

信頼できる言葉を聞きたい

しおりを挟む
 それから俺たちは、ジェットコースターに乗ったり、メリーゴーラウンドに乗ったり、船がブランコみたいに左右に大きく揺れるあれ(正式名称なんなのさ)に乗ったりして、フェニックスハイランドを満喫していた。

 ただ、一つ問題があった。

 俺は絶叫系アトラクションが大の苦手なのだ。

「誠道さん、楽しいですね」

「あ、ああ、そそそそうだな、たたた楽しいな」

 ミライと一緒にいる手前、平然を装ってジェットコースターにも船がブランコみたいに揺れるあれにも乗ったが、怖すぎて気絶しそうだった。

 いや、ちょっとくらいは気絶していたかもしれない。

 流れる景色がブラックアウトした瞬間あったもん。

 あの、ふわって体が浮くような感覚がとにかく気持ち悪くて、隣で歓声を上げるミライに逆切れしそうにもなって。

 ってか大体さ、安全バーが信用できないんだよ。

 もし、乗っている最中に安全バーが外れたら人生終了じゃん。

 いかにも簡単に外れそうな構造してるじゃん。

 そんなもんを信用して命を預けられる方がどうかしてるよ。

「私、ジェットコースターって初めて乗りましたけど、あんなにも爽快で、楽しいものだったんですね」

「ああああああそそそそうだな。そそそ爽快でたたた、楽しかったな」

 なんか気分悪くて吐きそうだ。

 膝がまだがくがくと震えている。

「ですよね! じゃあ今度は……あっ、あっちのジェットコースターに乗りましょう」

「そそそうだな……えっ? また?」

 俺はミライを二度見する。

 ミライは不思議そうに首を傾げた。

「また? って別のやつですから。メリーゴーラウンドにも船が左右に揺れるやつにもコーヒーカップにも乗って、そろそろジェットコースターリターンズかなって思いまして」

「ドラマの二シーズン目みたいに言うなよ。そもそも、ここにはいろんなアトラクションがあるんだから、ジェットコースターばっかりに乗らなくても」

「誠道さん、さっき爽快で楽しいって言いましたよね」

「え、ああ、まままあ、言ったは言ったけど」

 さっきの強がっていた俺ふざけんな!

「ですよね。じゃあさっそく行きましょう!」

 断る隙すら与えられず、ミライに手を引かれさっき乗ったのとは別のジェットコースターへ。

 貸し切りなので当然待ち時間はない。

 心の準備もままならないままシートに座らされ、『行けたら行く』『怒らないから言って』という言葉以上に信用できない安全バーで体を固定させられる。

 これはもうあれだ。

 人事を尽くして天命を待つしかない。

「誠道さん。楽しみですね」

 隣のミライは目をキラキラさせながら、発進の時を今か今かと待っている。

「すみません。ちょっと確かめさせてくださいね」

 このジェットコースターを仕切っている男性ロボットが後ろから現れ、安全バーがしっかり固定されているか確認してくれた。

 よかった。

 こうやってしっかりチェックしてくれるなら、多少の不安は紛れるってもんだ。

「……ん? まあいいか。運行時間最優先だし」

 男性ロボットは首を傾げながらそう言った。

「いや乗客の命最優先にしろよ! 貸し切りだから時間優先する必要ないだろ!」

「貸し切りだからこそ命は別に優先しなくてもいいんです。だって目撃者がいないので、いくらでも揉み消せますから」

「怖いこと言うなよ!」

 もう格好つけたいとか言っていられない。

 生命の危機なんだ!

 俺は手足をじたばたさせて暴れまくる。

「おい! 下ろせ! いいから下ろせよ!」

「それでは、安全? でスリル満点な音速の大冒険にいってらっしゃい」

「おい勝手に進めんなー!」

 なおも激しく暴れる俺を見て、ロボットが一言。

「それだけ暴れてバーが外れないんですから、大丈夫ってことですよ。わかりますか?」

「……」

 反論の言葉が浮かばなかった。

 その間に、ジェットコースターは動き出してしまう。

「誠道さん。もしかして怖いんですか?」

 恐怖心と緊張感を煽るようにレールをゆっくり上っている最中に、ミライがからかうような声で聞いてきた。

「ああそうだよ。だってしょうがないじゃないか! ジェットコースターに乗れないなんて格好悪いし」

 いろいろとバレてしまっているので、もう強がる必要はない。

 俺は安全レバーをしっかりつかんで、目を閉じていた。

「格好悪いって、もう」

 ミライはどこか呆れたようにつぶやいた後で。

「私は誠道さんと一緒だったらどんなアトラクションでもよかったんです。正直に言ってくれてたら、ジェットコースターになんて、たぶん乗らなかったのに」

「おい、たぶんってなんだ。この安全バーより信用できないぞ、今の言葉」

「だいたい、絶叫マシンが苦手なことくらい知ってるわけないんですからね! あえて乗らせて怖がる姿を見たいなんて思ってないんですからね!」

「ツンデレっぽく言っても許されねぇぞ! 今のミライ、『俺って口硬いから』って言葉くらい信用できないからな」

「じゃあ」

 からかいの色を帯びていたミライの声が、急に真剣なものに代わる。

「これでどうですか?」

 安全バーをしっかりと握っている俺の手に、ミライが手を重ねてきた。

「私が手をつないであげますから、これで、少しは怖くなくなりましたか?」

 ミライの体温が直に伝わってくる。

 恐るおそる目を開けると、穏やかに笑うミライと目が合った。

 ガタガタと登るレールの音が、いつの間にか俺の心臓の音でかき消されていた。

「……うん、まあ、少しは」

 恐怖でいっぱいだった心がドキドキに侵食されていく。

 怖がる俺を心配して手を握ってくれるなんて、ミライはなんて優しいんだ……ん?

 いや、そもそもミライのせいでこうなっているのでは?

 怖がる俺を見たい、なんてクソな理由でジェットコースターに乗せたのが原因では?

 あぶねぇ、自作自演の吊り橋効果に引っかかるところだったぞ!

 ……まあ、吊り橋効果なんて今さら意味ないんだけど。

 それに、こうして手をつなげるなら、まあ、その、ジェットコースターくらい乗ってもいいか。

「あ、誠道さんの震え、止まりましたね。私の存在がそんなに心強かったですか?」

「うるせぇ」

 強がりながらそっぽを向く。

 だけど、ミライの手は受け入れたまま。

 怖いから仕方ないね。

「でも、確かにこのジェットコースターの安全バー、心もとない気がします。信用できないかもしれませんね」

「おい、いきなり変なこと言うな」

「『なにもしないからホテル行こう』って言う男と同じ信頼度です」

「おい、さらに変なこと言うな」

「でも誠道さんは、そんな責任感のない男じゃありませんよね?」

 ……え。

 と疑問の言葉が口から出てくる前に、体が落下していく。

 ふわりと浮くような感覚に見舞われ、上下左右でたらめに回転する視界に圧倒され、気がつけば、俺は意識を失った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...