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最終章 2 フェニックスハイランドはきっと貸し切り
らいあーげぇむ?
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「お前たち、いいかげんにしろ。ここは有能なカラスであるこの私が質問に答えるアトラクションだぞ」
スクリーン上のカラスがそう怒鳴ったおかげで、ようやく場が落ち着きを取り戻した。
「では、改めてそこの猫耳少女の質問に答え――」
が、なぜかスクリーンがフリーズし、映像が移り変わった。
「えー、ごほんごほん。あ、聞こえてます? どうもー、みんなのプリチーアイドルのホンアちゃんでーす!」
ピンクのフリフリ衣装を着たホンアちゃんがきゃぴっとウインクするが、残念ながら、ここには俺しかホンアちゃんのファンがいない。
しかも唯一のファンである俺も、ミライがいる手前、歓声を飛ばすことができないので残念ながら滑ったような空気に――はならず。
「よかったぁ! ホンアちゃんのゲリラ告知タイムに間に合ったぞ!」
ホンアちゃんファンクラブ会長のキシャダ・マシイが、多くのファンを引き連れて場内乱入してきた。
彼らは歓声を上げながら、空いている座席を見る見るうちに埋め尽くしていく。
「もうわかってたから驚かんぞ! 傾向最高!」
はぁ、おかしいなぁ、今日は貸し切りのはずなのに。
「みなさーん。今日は大事なお知らせがあります」
スクリーンに映るホンアちゃんがそう言うと、ファンたちが「なーにー?」とレスポンスする。
「実は、今日の夜、このフェニックスハイランドのイベントブースにて、ゲリラライブを開催することが決定しました!」
「「「うぉおおおお!」」」
ファンたちが地鳴りのような歓声を上げるが……だから今日は貸し切りのはずなんだけど。
どうして貸切られている場所で、ゲリラライブが開催されるんでしょうか?
「みんな歓声ありがとう! つづけてライブのタイトルの発表です!」
ホンアちゃんはそこで言葉を止めて、ファンたちの期待を最高潮にまで高めていく。
「タイトルは、ずばり! 『参加者はカップル限定! プリチーアイドルホンアちゃんの魅力で誘惑、カップルの中を引き裂いちゃおう大作戦!』です!」
「「「……え」」」
ファンたちが嘘のように静まり返るが、ホンアちゃんは気にせずに告知をつづける。
「タイトルの通り、このライブに入場できるのはカップルだけです。残念ながら、恋人がいない方は入場することができません。ごめんねー」
顔の前で手を合わせるホンアちゃん。
ファンたちが互いに顔を見合わせてざわざわしはじめる。
「どうしよう、俺、恋人なんていないんだけど」
「俺も俺も」
「ってかアイドルのファンやってるやつに恋人なんかいるわけないだろ。いたらアイドルのファンになんかならないし」
なんかすごい偏見が混じっていた気がするが……でも、その意見もあながち間違いとは言えない。
だって、この場で喜んでいる人なんていないのだから。
つまり、ここにいるファンたちに恋人はいない。
全員、今日のホンアちゃんのライブに参加できない。
「厳しい条件を設けちゃってごめんねー。でも、これは真のプリチーアイドルになるために必要なことなの。私の魅力でカップルの仲を引き裂けるかどうか、試したいの。それができたら、私はさらなる高みへ上ることができるの」
ホンアちゃんの納得できるようなできないような意見を聞きながら、俺は隣に座るミライを見る。
今日のホンアちゃんのライブはカップル限定、カップル、カップル、告白……。
「誠道さん。残念ですね」
不意にミライがこちらを向いて、目線が交錯する。
「ざ、残念って」
「現時点で誠道さんには恋人がいませんので、せっかくのホンアちゃんのライブに参加できませんよ」
ミライがどこか恥ずかしそうに目を伏せて、「恋人がいないと参加できないライブなんてあるんですねぇ」と付け加える。
え、なにこれ。
なんか急に恥ずかしくなってきた。
身体が火照ってきた。
「それじゃあみんな! 私のファンなら、観客ゼロなんて悲惨な状況は絶対に作らせないでね! ライブ会場で待ってるよー!」
ホンアちゃんが満面の笑みで手を振り、映像が終了する。
カラスの映像が戻ってきたが、まだフリーズしたまま。
ホンアちゃんのファンたちのざわざわも、俺のドキドキも、つづいたまま。
「大丈夫だ! みんな!」
ファンたちのざわめきを静めたのは、最前列中央の席に居座っていたキシャダ・マシイだ。
「このライブには、必勝法がある」
莫大なお金を取り合う騙し合いゲームに参加している有能プレイヤーのようなセリフを吐いたキシャダは、困惑するファンたちの視線が自分に集まったことを確認すると。
「みんな、よく思い出してほしい。このライブに参加できるのはカップルだけだとホンアちゃんは言った。ただ、男女カップルとは言っていない」
つまり! とひときわ大きな声を出すキシャダ。
「同性同士のカップルでも入場できるというわけだ!」
「なるほど!」
「それは思いつかなかった!」
「さすがキシャダさん! ファンの鏡です!」
ファンたちが元気を取り戻し、拍手が巻き起こる。
さすがキシャダさん! バカの鏡です!
「じゃあみんな! 隣のファンとペアになってつき合ってくださいと告白するんだ。ファン同士、ホンアちゃんのライブに参加する義務があるから、この告白は絶対に成功する。これで晴れてここにいる全員がカップル限定のライブに参加できるんだ!」
その言葉を皮切りに、ファンたちは隣のファンと向き合う。
場内が「俺と付き合ってください」「はい、お願いします」という言葉であふれかえる。
「あ、誠道くんもいたのか」
隣にいたファン仲間に告白してカップル成立させたキシャダが、俺に気がついて話しかけてくる。
「君も早く隣にいるファンとペアになって……あ」
キシャダがあからさまに申しわけなさそうな顔をする。
「すまない。ここにいるファンは誠道くんを合わせると奇数。そして、もうすでに全員がペアを作ってしまった」
キシャダは深々と頭を下げる。
「すまない。体育の時に先生とペアになるのと同じ屈辱を味わわせてしまった」
なんか屈辱的なことを言われている気がするけど、展開が急すぎて心もツッコみも追いつかないんだよなぁ。
「だがしかし、誠道くん。ホンアちゃんのファンである俺たちには、ホンアちゃんのライブに参加する義務がある。だから、誠道くんは自力で恋人を作ってライブに参加しなければいけないんだ。心当たりがあるといいのだけど……本当に申しわけない」
また深々と頭を下げるキシャダ。
いや、義務ってなに?
ファンだからってそんな義務はないけど?
そうツッコみたかったが、キシャダの言葉で、よりミライの存在を意識してしまったため、言葉に詰まった。
だめだ、もうミライを直視できない。
ってか、なんかフェニックスハイランドに来てから、カップルだの恋人だのって展開が多すぎない?
「ヤバいぞ真枝務たん」
「本当だな。光聖志たん」
そんな時、どこからともなく聞こえてきたのは、いつだったかキャラ付けしたいって理由で恋人同士になった真枝務と光聖志の慌てる声。
ってかあなたたち、たん付けで呼び合ってたんですね。
「真枝務たんどうしよう。せっかく人気が出かけていたのに、こんなに男同士のカップルが誕生したら、せっかくのキャラが埋もれてしまう」
その心配はしなくて大丈夫です。
あなたたちはすでに埋もれていますから。
特殊な層にしか人気ないですから。
「すまない。どうやら何者かにハッキングされていたようだ」
ようやく動きはじめたカラスが、ごほんと咳払いをする。
「では、迷える少女の質問に答えるとしよう」
うん、カラスさんごめんね。
あなたがフリーズしている間にいろいろありすぎて、コハクちゃんの質問もカラスさんの返答も、どうでもよくなっちゃってるんだよ。
コハクちゃんが悪いわけじゃなくて、カラスさんが悪いわけでもなくて、これは乱入に次ぐ乱入でこの場を乱しまくったみんなが悪いんだからね!
「誰かに必要とされたいのであれば、まずぐちゃぐちゃ道を究めなければいけない」
「声当ててたの聖ちゃんだったのかよ!」
そういや出てきてませんでしたね!
「ぐちゃぐちゃ道ですね! はい! わかりました!」
「わからないで! コハクちゃん絶対にわからないで!」
「そうだ、ぐちゃぐちゃ道だ! では手始めに、いま成立したカップルの片方の睾丸をむしり……いや、それは私がやる! 【愉悦の睾丸女帝】として、睾丸を抉る役割は誰にも渡さない!」
すぐにスクリーンの横の扉が開いて、聖ちゃんが観客席にジャンプする。
「「「うわぁあああ!」」」
四方八方に逃げ惑うホンアちゃんのファンたちを見ながら、俺は叫んだ。
「だから貸し切りぃいいいいい!!」
スクリーン上のカラスがそう怒鳴ったおかげで、ようやく場が落ち着きを取り戻した。
「では、改めてそこの猫耳少女の質問に答え――」
が、なぜかスクリーンがフリーズし、映像が移り変わった。
「えー、ごほんごほん。あ、聞こえてます? どうもー、みんなのプリチーアイドルのホンアちゃんでーす!」
ピンクのフリフリ衣装を着たホンアちゃんがきゃぴっとウインクするが、残念ながら、ここには俺しかホンアちゃんのファンがいない。
しかも唯一のファンである俺も、ミライがいる手前、歓声を飛ばすことができないので残念ながら滑ったような空気に――はならず。
「よかったぁ! ホンアちゃんのゲリラ告知タイムに間に合ったぞ!」
ホンアちゃんファンクラブ会長のキシャダ・マシイが、多くのファンを引き連れて場内乱入してきた。
彼らは歓声を上げながら、空いている座席を見る見るうちに埋め尽くしていく。
「もうわかってたから驚かんぞ! 傾向最高!」
はぁ、おかしいなぁ、今日は貸し切りのはずなのに。
「みなさーん。今日は大事なお知らせがあります」
スクリーンに映るホンアちゃんがそう言うと、ファンたちが「なーにー?」とレスポンスする。
「実は、今日の夜、このフェニックスハイランドのイベントブースにて、ゲリラライブを開催することが決定しました!」
「「「うぉおおおお!」」」
ファンたちが地鳴りのような歓声を上げるが……だから今日は貸し切りのはずなんだけど。
どうして貸切られている場所で、ゲリラライブが開催されるんでしょうか?
「みんな歓声ありがとう! つづけてライブのタイトルの発表です!」
ホンアちゃんはそこで言葉を止めて、ファンたちの期待を最高潮にまで高めていく。
「タイトルは、ずばり! 『参加者はカップル限定! プリチーアイドルホンアちゃんの魅力で誘惑、カップルの中を引き裂いちゃおう大作戦!』です!」
「「「……え」」」
ファンたちが嘘のように静まり返るが、ホンアちゃんは気にせずに告知をつづける。
「タイトルの通り、このライブに入場できるのはカップルだけです。残念ながら、恋人がいない方は入場することができません。ごめんねー」
顔の前で手を合わせるホンアちゃん。
ファンたちが互いに顔を見合わせてざわざわしはじめる。
「どうしよう、俺、恋人なんていないんだけど」
「俺も俺も」
「ってかアイドルのファンやってるやつに恋人なんかいるわけないだろ。いたらアイドルのファンになんかならないし」
なんかすごい偏見が混じっていた気がするが……でも、その意見もあながち間違いとは言えない。
だって、この場で喜んでいる人なんていないのだから。
つまり、ここにいるファンたちに恋人はいない。
全員、今日のホンアちゃんのライブに参加できない。
「厳しい条件を設けちゃってごめんねー。でも、これは真のプリチーアイドルになるために必要なことなの。私の魅力でカップルの仲を引き裂けるかどうか、試したいの。それができたら、私はさらなる高みへ上ることができるの」
ホンアちゃんの納得できるようなできないような意見を聞きながら、俺は隣に座るミライを見る。
今日のホンアちゃんのライブはカップル限定、カップル、カップル、告白……。
「誠道さん。残念ですね」
不意にミライがこちらを向いて、目線が交錯する。
「ざ、残念って」
「現時点で誠道さんには恋人がいませんので、せっかくのホンアちゃんのライブに参加できませんよ」
ミライがどこか恥ずかしそうに目を伏せて、「恋人がいないと参加できないライブなんてあるんですねぇ」と付け加える。
え、なにこれ。
なんか急に恥ずかしくなってきた。
身体が火照ってきた。
「それじゃあみんな! 私のファンなら、観客ゼロなんて悲惨な状況は絶対に作らせないでね! ライブ会場で待ってるよー!」
ホンアちゃんが満面の笑みで手を振り、映像が終了する。
カラスの映像が戻ってきたが、まだフリーズしたまま。
ホンアちゃんのファンたちのざわざわも、俺のドキドキも、つづいたまま。
「大丈夫だ! みんな!」
ファンたちのざわめきを静めたのは、最前列中央の席に居座っていたキシャダ・マシイだ。
「このライブには、必勝法がある」
莫大なお金を取り合う騙し合いゲームに参加している有能プレイヤーのようなセリフを吐いたキシャダは、困惑するファンたちの視線が自分に集まったことを確認すると。
「みんな、よく思い出してほしい。このライブに参加できるのはカップルだけだとホンアちゃんは言った。ただ、男女カップルとは言っていない」
つまり! とひときわ大きな声を出すキシャダ。
「同性同士のカップルでも入場できるというわけだ!」
「なるほど!」
「それは思いつかなかった!」
「さすがキシャダさん! ファンの鏡です!」
ファンたちが元気を取り戻し、拍手が巻き起こる。
さすがキシャダさん! バカの鏡です!
「じゃあみんな! 隣のファンとペアになってつき合ってくださいと告白するんだ。ファン同士、ホンアちゃんのライブに参加する義務があるから、この告白は絶対に成功する。これで晴れてここにいる全員がカップル限定のライブに参加できるんだ!」
その言葉を皮切りに、ファンたちは隣のファンと向き合う。
場内が「俺と付き合ってください」「はい、お願いします」という言葉であふれかえる。
「あ、誠道くんもいたのか」
隣にいたファン仲間に告白してカップル成立させたキシャダが、俺に気がついて話しかけてくる。
「君も早く隣にいるファンとペアになって……あ」
キシャダがあからさまに申しわけなさそうな顔をする。
「すまない。ここにいるファンは誠道くんを合わせると奇数。そして、もうすでに全員がペアを作ってしまった」
キシャダは深々と頭を下げる。
「すまない。体育の時に先生とペアになるのと同じ屈辱を味わわせてしまった」
なんか屈辱的なことを言われている気がするけど、展開が急すぎて心もツッコみも追いつかないんだよなぁ。
「だがしかし、誠道くん。ホンアちゃんのファンである俺たちには、ホンアちゃんのライブに参加する義務がある。だから、誠道くんは自力で恋人を作ってライブに参加しなければいけないんだ。心当たりがあるといいのだけど……本当に申しわけない」
また深々と頭を下げるキシャダ。
いや、義務ってなに?
ファンだからってそんな義務はないけど?
そうツッコみたかったが、キシャダの言葉で、よりミライの存在を意識してしまったため、言葉に詰まった。
だめだ、もうミライを直視できない。
ってか、なんかフェニックスハイランドに来てから、カップルだの恋人だのって展開が多すぎない?
「ヤバいぞ真枝務たん」
「本当だな。光聖志たん」
そんな時、どこからともなく聞こえてきたのは、いつだったかキャラ付けしたいって理由で恋人同士になった真枝務と光聖志の慌てる声。
ってかあなたたち、たん付けで呼び合ってたんですね。
「真枝務たんどうしよう。せっかく人気が出かけていたのに、こんなに男同士のカップルが誕生したら、せっかくのキャラが埋もれてしまう」
その心配はしなくて大丈夫です。
あなたたちはすでに埋もれていますから。
特殊な層にしか人気ないですから。
「すまない。どうやら何者かにハッキングされていたようだ」
ようやく動きはじめたカラスが、ごほんと咳払いをする。
「では、迷える少女の質問に答えるとしよう」
うん、カラスさんごめんね。
あなたがフリーズしている間にいろいろありすぎて、コハクちゃんの質問もカラスさんの返答も、どうでもよくなっちゃってるんだよ。
コハクちゃんが悪いわけじゃなくて、カラスさんが悪いわけでもなくて、これは乱入に次ぐ乱入でこの場を乱しまくったみんなが悪いんだからね!
「誰かに必要とされたいのであれば、まずぐちゃぐちゃ道を究めなければいけない」
「声当ててたの聖ちゃんだったのかよ!」
そういや出てきてませんでしたね!
「ぐちゃぐちゃ道ですね! はい! わかりました!」
「わからないで! コハクちゃん絶対にわからないで!」
「そうだ、ぐちゃぐちゃ道だ! では手始めに、いま成立したカップルの片方の睾丸をむしり……いや、それは私がやる! 【愉悦の睾丸女帝】として、睾丸を抉る役割は誰にも渡さない!」
すぐにスクリーンの横の扉が開いて、聖ちゃんが観客席にジャンプする。
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