うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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最終章 3 ミライへ

親友との戦い

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「こいつとお前が親友じゃないだと? そんな強がりはよせ」

 アテウはオムツおじさんを指さして、けらけら笑っている。

「私の仕入れた情報によると、お前はこのへんた――非常に個性的な性癖を持つ」

「あ、オムツおじさんに対して配慮なんかしなくていいですよ」

「そうか。では改めて、私の仕入れた情報によると、お前はこの変態と同じ変態で」

「俺は変態じゃねぇから!」

「じゃあ、お前はこの変態と唯一無二の親友で」

「同族嫌悪の他人だわ! いや嫌悪してるけど同族じゃなかったわ!」

「だから強がるな。わかっている。今は多様性の時代なんだから堂々としていればいい。体裁を気にして友達をバカにすると、後々本当に後悔するぞ」

 はぁ。

 俺、なんで敵キャラから説教されてんの?

「いや後悔もしないしドMでもないから」

「まあいいだろう。本当に後悔するのは友達がいなくなった後なのだから」

 にやりと笑ったアテウが、オムツおじさんに向けて手を伸ばす。

 それまでピクリとも動かなかったオムツおじさんが、ゆっくりと顔を上げた。

「殺れ! 変態どもの戯れを私に見せてくれ!」

 オムツおじさんの瞳が紫色に光っているのが見え、ようやく自分が窮地に陥っていることを悟る。

「【怒炉弾檎どろだんご】」

 だから俺は変態じゃねぇ、というツッコミなどする余裕もない。

 オムツおじさんの周囲に複数の魔法陣が展開され、棘がついた茶色の球体が次々に出現する。

 標的は、もちろん俺たち。

 アテウの指示通り動いてるってことは、オムツおじさんは操られているってことだ。

「いきなりなんだよ!」

盾殺燃龍たてこもり】を発動させてなんとか攻撃を防ぐが、【怒炉弾檎どろだんご】は次から次に降り注いでくる。

「どうしましょう、誠道さん! 誠道さんの親友のオムツおじさんが敵に操られるなんてヤバすぎる状況ですよ」

「だから親友じゃないんだけどね!」

 誤情報をバラまくのは本当に辞めてほしい。

 でも、ミライの言う通りヤバい状況に変わりはない。

 オムツおじさんはアホ変態のどうしようもないおじさんだが、絶対的な強者だ。

 以前、あのマーズを子ども扱いしたのだ。

 しかもその戦いのときに本気を出していたかどうかも怪しい。

「もっと殺れぇ! 操られているとはいえ親友を攻撃することはできないだろう! 一方的な殺戮ショーだ!」

「だから友達でもないし攻撃だってできるわ!」

 このままだと【盾殺燃龍たてこもり】が破壊されるだけだ。

 俺は【無敵の人間インヴィジブル・パーソン】状態になり、盾の外側に魔法陣を三つ展開させる。

「【炎鬼殺燃龍奥義ひきこもりゅうおうぎ炎舞龍夢エンブレム】ッ!」

 三体の炎龍を同時に出現させ、オムツおじさんめがけて突撃させる。

 だが。

「【質誤算しちごさん】」

 炎龍はオムツおじさんによって、デフォルメされたぬいぐるみにされてしまった。

「そういやそんな技あったな――くっ!」

 そして、無情にも【盾殺燃龍たてこもり】が破壊され、無数の【怒炉弾檎どろだんご】が俺たちに向かって飛んでくる。

「ミライ! 俺の後ろに!」

 咄嗟にミライの前に立ちふさがる。

 拳に炎を纏わせ、飛んでくる【怒炉弾檎どろだんご】を殴って破壊していく。

 が、棘が拳に刺さるため長くは持ちこたえられない。

「あのぉ、誠道さん」

「なんだよミライ、こんなときに」

「いや、私も言おうかどうか迷ったんですけど、一応伝えておいた方がいいかと……すみません、やっぱりなんでもないというか」

 ミライの煮え切らない態度に不信感を抱く。

 少しでも気を抜いたら【怒炉弾檎どろだんご】の破壊が間に合わなくなるってのに。

 この逼迫した状況で伝えなきゃいけないことなんかあるわけが…………あ!

 こういうのなんか知ってる!

 アニメとか漫画で見たことあるぞ!

 戦いの最中に「あのぉ……」って自信なさげに話しかけられたときって、たいていの場合「忙しいから後にしろ!」って怒鳴っちゃうんだ。

 でも、実はそれが劣勢を打開する重要な情報で、「なんで先に言わないんだ!」ってまた怒鳴っちゃう、俗に言うブラック企業展開のやつだ。

 そうに決まっている!

「ミライ! 迷うくらいなら早く言え!」

 俺は馬鹿じゃないからね。

 これまでの知識をもとに適切な対策を取れるんだ。

 こういう時のパーティーメンバーの自信なさげな発言は、圧倒的不利な状況を覆す金言に決まってるんだから!

 オタクに産まれてよかったぁあああ!

「じゃあ言います。さっき誠道さんは『俺の後ろに』って言いましたが、誠道さんが有無を言わさず前に出たので、私は後ろに行けませんでした!」

「そんなことどうでもいいだろう! ――あ」

 ミライへツッコむために、思わず振り返ってしまった。

 このままだと【怒炉弾檎どろだんご】をもろに喰らってしまう――――と思った、その時。

「【氷の窯盾かまくらッ!】」

 その声と漂ってきた冷気に、わずかな安堵を覚える。

 目の前には氷の大魔法使い、マーズ・シィの大きな背中があった。

 マーズがドーム状の氷を出現させて俺たちを覆い、守ってくれたのだ。
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