346 / 360
最終章 3 ミライへ
ボキャブラリーは多いもの
しおりを挟む
「ごめんなさい。事情があって縄で縛られていて、ほどくのにてこずってね」
ちらりと振り返ったマーズが得意げに笑うが……それは敵に拘束されてた的なことですよね?
実はそういうお店がフェニックスハイランドにあるわけではないですよね?
せっかく格好よく登場してくれたので、詳しくは聞きませんけど!
べべべ、別に俺がそういうお店に興味があるわけじゃないからね!
「あいつには、いつかリベンジしたいと思っていたのよ」
オムツおじさんを見上げたマーズが、怒気を孕んだ白い冷気をまとっていく。
「本気を出すわ。【氷の拷問監獄ッ!】
マーズが一切のふざけを排除した冷たい声で技名を唱えると、アテウとオムツおじさんが氷の中に閉じ込められた。
いつぞやミライが閉じ込められていた氷でできた立方体の監獄で、あの氷の頑丈さを俺はこの身をもって理解している。
「まだまだこれからよ! 【氷の氷柱爆撃・密集乱撃《パーティー》】」
マーズがそう叫ぶと【氷の拷問監獄】の中で次々に爆発が起こり、アテウとオムツおじさんが爆風と爆音の中に消える。
密閉された氷の監獄に囚われているので、逃げることができないのだ。
オムツおじさんも、さすがにこの状況では攻撃をつづけられなかったようで【怒炉弾檎】の脅威がようやく去った。
「一人は敵で、一人はドM。遠慮なく攻撃できるわ! 爆撃! 爆撃! もっと爆撃!」
マーズは攻撃の手を緩めない。
なんか声色に愉悦が混じっている気がするんだけど、勘違いだよね?
だってマーズはドMなんだから。
どちらかというと爆炎に包まれたい側だもんね。
「終曲は派手にいくわよ! 【氷の終焉殺戮・挟撃】ッ!」
東京ドーム4DAYZライブの最終日、熱狂に包まれているファンたちをさらに熱狂させようとする歌手のように謎の煽りを入れたマーズ。
ってか終曲って……ああ、マーズは鎮魂歌とか協奏曲とか交響曲とか、そういう系の言葉を自分だけが知っていると思い込んで、しかもなぜか格好いいと思って好きになっちゃう、なんなら自作の小説のタイトルにやたらと使っちゃう、どこにでもいる普通の中二病患者だったんですねぇ。
それ、黒歴史になるからやめといたほうがいいよ。
だって男子は全員、そういう言葉を好きになるから。
格好つけて、アジェンダとかスキームとか使っちゃう大学生みたいにダサくなっちゃうから。
いや、もしかしたら、マーズレベルの中二病患者だったら、幻想曲や、子守歌、狂詩曲、追走曲、他にも嬉遊曲、後奏曲、交声曲、さらにさらに哀歌、装飾曲、遁走曲、聖譚曲、もしかすると舟歌とかも…………え?
俺がそういう感じの言葉を知り過ぎじゃないかって?
ふざけたこと言うなよ!
俺はあくまで、マーズがこういう言葉も知ってるんじゃないかって、そういうありきたりな中二病患者なんじゃないかって具体例を挙げているだけで、俺自身がそうだったとは一言も言ってないからね。
引きこもり時代に、ラノベ作家なら簡単そうだしなれるんじゃね? とか思ってそういう単語を調べ上げたりとかしてないからね。
俺がそんなありきたりな男子に見える?
そんなジャストアイデアに簡単にコンセンサスしないでエヴィデンスをきっちりサジェスチョンしたスキームじゃないとイニシアチブは取れないよ。
ってかもっと互いにウィンウィンでシナジー的でイノベーション的でコスパとリスケをきっちりコンテインしているようなビジョンやメソッドをプランニングしないと、ユーザーたちとアライアンスどころか、ネゴシエーションのコミットすらできないよ。
……っと、変なモードに入ってしまった。
とにかく、ありきたり中二病患者のマーズが、囚われたアテウとオムツおじさんを挟むようにして巨大な氷の塊を二つ発生させる。
以前、俺が炎龍を何発も必死でぶち当てて、ようやく壊せた巨大な氷塊。
あの時と同じように鋭い氷の棘が無数についており、押しつぶされたらひとたまりもないことは容易に想像がつく。
しかも、今回はそれが二つ。
「拍手喝采ッ!!」
マーズが、中学生男子が聞けば変なことを想像してくすっと笑ってしまう単語を叫びながらシンバルを叩くように手を動かす。
巨大な二つの氷塊はマーズの動きに合わせて移動し、轟音とともにアテウとオムツおじさんを【氷の拷問監獄】ごと押しつぶした。
「私が本気を出せば、こんなもんよ」
満足げにマーズがつぶやく。
さすが氷の大魔法使いといったところか……ドMでも中二病患者でもあるけど。
巨大な氷の塊から落下する細かな氷の粒が、沈みゆく夕日に照らされて輝く様は圧巻の一言だ。
この攻撃をもろに受けたんだから、アテウもオムツおじさんもただでは済まない。
なんなら、オムツおじさんはただでは済まさず、ありがとうとお金を払ってくるまである。
「誠道さん、奇麗ですね」
後ろで戦況を見守っていたミライが、安堵の笑みを浮かべながら隣に並んでくる。
たしかに、不謹慎かもしれないがとても綺麗だ。
きたねぇ花火だ的な感じに綺麗だ…………あれっ?
これはもしかして、今が告白の絶好の機会なんじゃないか?
いやいや、さすがに不謹慎すぎるよな。
などと、俺が告白しようかしまいか悩んでいると、ミライがこんなことを言った。
「これでもう安心です。マーズさんが完全にやりましたから!」
「おいそれフラグ!」
「あれ? よく見ると……本当にやったんでしょうか?」
「疑問形にしたらもっとフラグ!」
ミライが、絶対に敵を倒せていないときに言うセリフを言ってしまったせいかはわからないが。
「たしかに、これは絶景ですね」
背後からアテウの声がしてしまった。
俺とミライ、そしてマーズが同時に振り返ると、不敵に笑うアテウとオムツおじさんがいた。
ちらりと振り返ったマーズが得意げに笑うが……それは敵に拘束されてた的なことですよね?
実はそういうお店がフェニックスハイランドにあるわけではないですよね?
せっかく格好よく登場してくれたので、詳しくは聞きませんけど!
べべべ、別に俺がそういうお店に興味があるわけじゃないからね!
「あいつには、いつかリベンジしたいと思っていたのよ」
オムツおじさんを見上げたマーズが、怒気を孕んだ白い冷気をまとっていく。
「本気を出すわ。【氷の拷問監獄ッ!】
マーズが一切のふざけを排除した冷たい声で技名を唱えると、アテウとオムツおじさんが氷の中に閉じ込められた。
いつぞやミライが閉じ込められていた氷でできた立方体の監獄で、あの氷の頑丈さを俺はこの身をもって理解している。
「まだまだこれからよ! 【氷の氷柱爆撃・密集乱撃《パーティー》】」
マーズがそう叫ぶと【氷の拷問監獄】の中で次々に爆発が起こり、アテウとオムツおじさんが爆風と爆音の中に消える。
密閉された氷の監獄に囚われているので、逃げることができないのだ。
オムツおじさんも、さすがにこの状況では攻撃をつづけられなかったようで【怒炉弾檎】の脅威がようやく去った。
「一人は敵で、一人はドM。遠慮なく攻撃できるわ! 爆撃! 爆撃! もっと爆撃!」
マーズは攻撃の手を緩めない。
なんか声色に愉悦が混じっている気がするんだけど、勘違いだよね?
だってマーズはドMなんだから。
どちらかというと爆炎に包まれたい側だもんね。
「終曲は派手にいくわよ! 【氷の終焉殺戮・挟撃】ッ!」
東京ドーム4DAYZライブの最終日、熱狂に包まれているファンたちをさらに熱狂させようとする歌手のように謎の煽りを入れたマーズ。
ってか終曲って……ああ、マーズは鎮魂歌とか協奏曲とか交響曲とか、そういう系の言葉を自分だけが知っていると思い込んで、しかもなぜか格好いいと思って好きになっちゃう、なんなら自作の小説のタイトルにやたらと使っちゃう、どこにでもいる普通の中二病患者だったんですねぇ。
それ、黒歴史になるからやめといたほうがいいよ。
だって男子は全員、そういう言葉を好きになるから。
格好つけて、アジェンダとかスキームとか使っちゃう大学生みたいにダサくなっちゃうから。
いや、もしかしたら、マーズレベルの中二病患者だったら、幻想曲や、子守歌、狂詩曲、追走曲、他にも嬉遊曲、後奏曲、交声曲、さらにさらに哀歌、装飾曲、遁走曲、聖譚曲、もしかすると舟歌とかも…………え?
俺がそういう感じの言葉を知り過ぎじゃないかって?
ふざけたこと言うなよ!
俺はあくまで、マーズがこういう言葉も知ってるんじゃないかって、そういうありきたりな中二病患者なんじゃないかって具体例を挙げているだけで、俺自身がそうだったとは一言も言ってないからね。
引きこもり時代に、ラノベ作家なら簡単そうだしなれるんじゃね? とか思ってそういう単語を調べ上げたりとかしてないからね。
俺がそんなありきたりな男子に見える?
そんなジャストアイデアに簡単にコンセンサスしないでエヴィデンスをきっちりサジェスチョンしたスキームじゃないとイニシアチブは取れないよ。
ってかもっと互いにウィンウィンでシナジー的でイノベーション的でコスパとリスケをきっちりコンテインしているようなビジョンやメソッドをプランニングしないと、ユーザーたちとアライアンスどころか、ネゴシエーションのコミットすらできないよ。
……っと、変なモードに入ってしまった。
とにかく、ありきたり中二病患者のマーズが、囚われたアテウとオムツおじさんを挟むようにして巨大な氷の塊を二つ発生させる。
以前、俺が炎龍を何発も必死でぶち当てて、ようやく壊せた巨大な氷塊。
あの時と同じように鋭い氷の棘が無数についており、押しつぶされたらひとたまりもないことは容易に想像がつく。
しかも、今回はそれが二つ。
「拍手喝采ッ!!」
マーズが、中学生男子が聞けば変なことを想像してくすっと笑ってしまう単語を叫びながらシンバルを叩くように手を動かす。
巨大な二つの氷塊はマーズの動きに合わせて移動し、轟音とともにアテウとオムツおじさんを【氷の拷問監獄】ごと押しつぶした。
「私が本気を出せば、こんなもんよ」
満足げにマーズがつぶやく。
さすが氷の大魔法使いといったところか……ドMでも中二病患者でもあるけど。
巨大な氷の塊から落下する細かな氷の粒が、沈みゆく夕日に照らされて輝く様は圧巻の一言だ。
この攻撃をもろに受けたんだから、アテウもオムツおじさんもただでは済まない。
なんなら、オムツおじさんはただでは済まさず、ありがとうとお金を払ってくるまである。
「誠道さん、奇麗ですね」
後ろで戦況を見守っていたミライが、安堵の笑みを浮かべながら隣に並んでくる。
たしかに、不謹慎かもしれないがとても綺麗だ。
きたねぇ花火だ的な感じに綺麗だ…………あれっ?
これはもしかして、今が告白の絶好の機会なんじゃないか?
いやいや、さすがに不謹慎すぎるよな。
などと、俺が告白しようかしまいか悩んでいると、ミライがこんなことを言った。
「これでもう安心です。マーズさんが完全にやりましたから!」
「おいそれフラグ!」
「あれ? よく見ると……本当にやったんでしょうか?」
「疑問形にしたらもっとフラグ!」
ミライが、絶対に敵を倒せていないときに言うセリフを言ってしまったせいかはわからないが。
「たしかに、これは絶景ですね」
背後からアテウの声がしてしまった。
俺とミライ、そしてマーズが同時に振り返ると、不敵に笑うアテウとオムツおじさんがいた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです
忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる