39 / 68
俺と彼女の、せいしをかけた戦い
吉良坂さんへの思い
しおりを挟む
週明けの月曜日。
吉良坂さんはめずらしく学校を休んでいた。
これまで吉良坂さんが学校を休んだことはなかったので、なんとなく心配になる。風邪だろうか? って、その場にいない人のことを考えるようになってる俺はもう……。
俺は首を横に振って、吉良坂さんのことを考えるのをやめた。黒板に顔を向け、ノートに板書していく。あ、また出てきやがったな。酸素と水素から水ができる化学反応式。エッチが丸いものに足されるって、もはや受精だからな! しかもその結果がエッチ二つに丸が一つ。つまりは双子! 新たな発見ですなぁ! 空しくなってきたぞ!
心の中でため息をつく。
俺の中の切実な願望がこんなことを思わせるのだろうか。
――俺は吉良坂さんとどうなりたい?
その問いに対して、俺が明確な答えを持っているのか。
わからないけどわかっている。
わかっているけどわからない。
俺は女性に対して欲情してはいけない、そう自制したはずなのに、吉良坂さんの誘惑? に理性を失いそうになってしまう。
ってか今日は放課後の吉良坂さんとのあれやこれやはないってことか。
ちょっと残念だなぁ。
そんなことを考えている間に授業は終了。
久しぶりの、なんも予定のない放課後がやってきた。理科準備室に行かなくていいという状況が落ち着かない。くしゃみが出そうで出ない感覚に似ている。
「……なにすっかなぁ」
鞄を背負って教室を出る。……まあ、行くだけ行ってみるかと思ってしまうあたり俺はもうやばいところまで来てしまったのかもしれない。
でも吉良坂さんなら平然とそこにいそうだし。
なんなら放課後の準備のために学校を休んだまである。
なにそれ、そんなに壮大な準備が必要なことをされちゃうの? 楽しみだなぁ。
「ほんとやべぇな、俺」
小さく笑いながらつぶやく。
俺はもう吉良坂帆乃という存在に毒されているのかもしれない。
彼女とならもしかするかも……とありもしない未来を想像してしまう。
人間は与えられた運命の中で生きるしかないというのに。
見合った対価を提供できる男ではないから、俺には彼女のおっぱいを揉む資格なんてない。
ははは。
童貞男子の嘆きだと笑ってくれ。
神様、せめて三十歳になったら本当に魔法を使えるようにしてくれよ。
「……エッチなことを考えてむなしくなるとか、俺くらいだよ」
なんて独り言ちつつ理科準備室の扉を開ける。
「あれ、梨本さん?」
部屋の中央に立っていたのは吉良坂さんじゃなくて、唯我独尊発明家の梨本臨だった。
「悪かったわね。帆乃じゃなくて」
「それ、拗ねてるの?」
「は? なにバカな妄想してんの?」
嫌悪を少しも隠さない梨本さん。
「でも、いまのあなたの反応で確信した。もうあなたの身体は帆乃を求めるようにできてるのよ」
「そんなはずないよ」
それはきっぱりと否定する。
俺の身体が、男としての本能が吉良坂さんの身体を求めている?
笑えない冗談だよほんと。
「そんなはずあるのよ。むしろ、あの魅力的な身体の誘惑によく耐えた方だわ」
「吉良坂さんの魅力が身体だけみたいな言い方だな?」
「あなたも生意気に言うようになったじゃない? 毒されてるって自白してるくせに」
「どういう意味だ?」
「さっきの言葉は、あなたにも帆乃の真の魅力が伝わってることを意味してるじゃない」
しまったと思う。
身体だけ、という言葉に反発して言い返したということは、俺自身が吉良坂さんの魅力が身体だけではないと思っているのと同義だ。
完全に無意識だった。
無意識レベルにまでもう吉良坂さんは侵入しているということか。
「まあ、それなりにかかわってきたからな」
吉良坂さんが持っているエロさも、優しさも、包容力も、やわらかさも、懐かしさも、俺にとっては全部心地よい。
「あら? なんでその中におっぱいが入っていないのかしら?」
「はっ? なにを言って」
心の中を読まれたっ?
「まさか、そういう発明品が」
「バカね。あんたみたいな単純な童貞男の思考を読むなんて造作もないわ」
梨本さんは勝ち誇った笑みを見せながら歩み寄ってくる。俺の前で立ち止まると、俺の胸をガツンと拳で小突いた。
「とにかく、あんたが男であるってことを私は信じてる」
梨本さんが続けざまにポケットからなにかを取り出す。
「封筒?」
「帆乃からよ。今日の指令ってこと」
なるほど、そういうことね。
俺は梨本さんから封筒を受け取り、中身を取り出す。とあるマンション名とその住所、そこまでの簡単な地図が書かれていた。
「これは?」
「帆乃の家の住所よ。要するに招待状ってこと。あなたはいまからそこに行くの」
へぇ。今日はそういう命令か……って、ええええええええ!
「き、吉良坂さんの、いいいい家に俺が行く?」
吉良坂さんはめずらしく学校を休んでいた。
これまで吉良坂さんが学校を休んだことはなかったので、なんとなく心配になる。風邪だろうか? って、その場にいない人のことを考えるようになってる俺はもう……。
俺は首を横に振って、吉良坂さんのことを考えるのをやめた。黒板に顔を向け、ノートに板書していく。あ、また出てきやがったな。酸素と水素から水ができる化学反応式。エッチが丸いものに足されるって、もはや受精だからな! しかもその結果がエッチ二つに丸が一つ。つまりは双子! 新たな発見ですなぁ! 空しくなってきたぞ!
心の中でため息をつく。
俺の中の切実な願望がこんなことを思わせるのだろうか。
――俺は吉良坂さんとどうなりたい?
その問いに対して、俺が明確な答えを持っているのか。
わからないけどわかっている。
わかっているけどわからない。
俺は女性に対して欲情してはいけない、そう自制したはずなのに、吉良坂さんの誘惑? に理性を失いそうになってしまう。
ってか今日は放課後の吉良坂さんとのあれやこれやはないってことか。
ちょっと残念だなぁ。
そんなことを考えている間に授業は終了。
久しぶりの、なんも予定のない放課後がやってきた。理科準備室に行かなくていいという状況が落ち着かない。くしゃみが出そうで出ない感覚に似ている。
「……なにすっかなぁ」
鞄を背負って教室を出る。……まあ、行くだけ行ってみるかと思ってしまうあたり俺はもうやばいところまで来てしまったのかもしれない。
でも吉良坂さんなら平然とそこにいそうだし。
なんなら放課後の準備のために学校を休んだまである。
なにそれ、そんなに壮大な準備が必要なことをされちゃうの? 楽しみだなぁ。
「ほんとやべぇな、俺」
小さく笑いながらつぶやく。
俺はもう吉良坂帆乃という存在に毒されているのかもしれない。
彼女とならもしかするかも……とありもしない未来を想像してしまう。
人間は与えられた運命の中で生きるしかないというのに。
見合った対価を提供できる男ではないから、俺には彼女のおっぱいを揉む資格なんてない。
ははは。
童貞男子の嘆きだと笑ってくれ。
神様、せめて三十歳になったら本当に魔法を使えるようにしてくれよ。
「……エッチなことを考えてむなしくなるとか、俺くらいだよ」
なんて独り言ちつつ理科準備室の扉を開ける。
「あれ、梨本さん?」
部屋の中央に立っていたのは吉良坂さんじゃなくて、唯我独尊発明家の梨本臨だった。
「悪かったわね。帆乃じゃなくて」
「それ、拗ねてるの?」
「は? なにバカな妄想してんの?」
嫌悪を少しも隠さない梨本さん。
「でも、いまのあなたの反応で確信した。もうあなたの身体は帆乃を求めるようにできてるのよ」
「そんなはずないよ」
それはきっぱりと否定する。
俺の身体が、男としての本能が吉良坂さんの身体を求めている?
笑えない冗談だよほんと。
「そんなはずあるのよ。むしろ、あの魅力的な身体の誘惑によく耐えた方だわ」
「吉良坂さんの魅力が身体だけみたいな言い方だな?」
「あなたも生意気に言うようになったじゃない? 毒されてるって自白してるくせに」
「どういう意味だ?」
「さっきの言葉は、あなたにも帆乃の真の魅力が伝わってることを意味してるじゃない」
しまったと思う。
身体だけ、という言葉に反発して言い返したということは、俺自身が吉良坂さんの魅力が身体だけではないと思っているのと同義だ。
完全に無意識だった。
無意識レベルにまでもう吉良坂さんは侵入しているということか。
「まあ、それなりにかかわってきたからな」
吉良坂さんが持っているエロさも、優しさも、包容力も、やわらかさも、懐かしさも、俺にとっては全部心地よい。
「あら? なんでその中におっぱいが入っていないのかしら?」
「はっ? なにを言って」
心の中を読まれたっ?
「まさか、そういう発明品が」
「バカね。あんたみたいな単純な童貞男の思考を読むなんて造作もないわ」
梨本さんは勝ち誇った笑みを見せながら歩み寄ってくる。俺の前で立ち止まると、俺の胸をガツンと拳で小突いた。
「とにかく、あんたが男であるってことを私は信じてる」
梨本さんが続けざまにポケットからなにかを取り出す。
「封筒?」
「帆乃からよ。今日の指令ってこと」
なるほど、そういうことね。
俺は梨本さんから封筒を受け取り、中身を取り出す。とあるマンション名とその住所、そこまでの簡単な地図が書かれていた。
「これは?」
「帆乃の家の住所よ。要するに招待状ってこと。あなたはいまからそこに行くの」
へぇ。今日はそういう命令か……って、ええええええええ!
「き、吉良坂さんの、いいいい家に俺が行く?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる