俺と彼女のせいしをかけた戦い(ラブコメ) 〜美少女のご主人様が奴隷の俺を興奮させようとエッチなことばかりしてくるんだが〜

田中ケケ

文字の大きさ
40 / 68
俺と彼女の、せいしをかけた戦い

大切に思うからこそ

しおりを挟む
「なに驚いてるの? まさか帆乃がホームレスだと思ってた?」
「そうじゃなくて、だって吉良坂さんの家って豪邸で、名家のお嬢様で……」

 そんな家に一般ピープルの俺が行く? どう振る舞えばいいの? ってかご両親になんて挨拶すれば? ごきげんようでいいのか?

「心配しなくていいわ。帆乃はこの学校に通うために親元を離れて暮らしているから」
「そっか。なら安心だな。余計な気を使わなくて……いいわけないだろ! むしろそれも問題だよ! 他に誰もいない女の子の家に男女が二人ってことだろ!」
「宮田下くんは毎日ここで帆乃と二人きりになってるんじゃなかった?」
「そうだけど、そういうことじゃないんだよ!」

 学校の教室と女の子の部屋では、なんというか気分とかムードとか匂いとか、いろいろ違うだろ! 心の準備とかも違ってくるし、それに……。

「さっきからウジウジウジウジ、なに? いい加減にして! あんた男でしょ!」

 いきなり梨本さんから怒鳴られて、心臓がきゅっと縮み上がった。

「ウダウダ言ってないでとっとと行きなさいよ。帆乃はあなたを待ってるの。女の子を待たせるなんて男として最低よ。ま、帆乃は『私、待つの好きだから……』って言って何時間でも待っちゃう女だけどね」

 そう続けた梨本さんがいきなり俺の肩を掴んだ。引きちぎられそうなほど強い力だったので、思わず顔をしかめる。いきなりなにすんだよ! と言おうとしたが、熱くて鋭い感情が詰まった瞳で睨まれており、委縮して声は出せなかった。

「とにかく、あんたは行くしかないの。男を見せなさい。帆乃は私なんかの友達をやってくれるくらいの、素敵な女の子だから」

 んじゃ、私の用はこれだけ。

 部屋から出ようとする梨本さんを追いかけるように振り返ったが、口は動かないまま。

 梨本さんの異様な雰囲気に身体が凍りついていたのだ。

 ――とにかく、あんたは行くしかないの。男を見せなさい。

 明らかに梨本さんはいつもと違っていた。

 切羽詰まっているような、冷静さを欠いているような、そんな感じだ。

「あ、それと」

 扉に手をかけた梨本さんが振り返らないまま言う。

「もう一度言っとくけど、帆乃を泣かせたら許さないから」

 敵意むき出しの辛辣な言葉が胸に突き刺さった。なにも言えないまま、梨本さんが扉を閉めるのをぼけっと見送る。

 金縛りがとけたのは、廊下の足音が聞こえなくなってからだった。

「自分を卑下するやつは嫌いなんじゃなかったのかよ」

 梨本さんの手が乗っていた肩をさすりながらつぶやく。

 まだ痛い。

 梨本さんにとって吉良坂さんは、自分の考えを簡単に曲げられるくらい、そうしてでも褒めたいと思うくらいの大切な存在なのだ。

 ――帆乃は私なんかの友達をやってくれるくらいの、素敵な女の子だから。

 親友を大切に思う感情で溢れかえっている素敵な言葉は、けれど不吉で不穏で不気味な雑音として、俺の耳の中で暴れ狂っている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...