猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした

水無瀬 蒼

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居場所のはじまり1

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 パチリ。
 すっきりと目が覚めた。昨日の吐き気も、頭と体の重さもなく、ほんとにすっきりと。昨日医者が休んでいれば時期落ち着くって言ってたけどほんとだった。で、目が覚めたはいいけど、今って何時なんだろう。時間によってはルナにご飯をあげなきゃいけないけど、キッチンがどこにあるかわからないし、大体、勝手に行って貰うわけにもいかないし、どうしたらいいんだろう。そのルナはというと、窓辺で昨日同様外を眺めている。部屋のドアが閉まってるから、外に行かれなかったんだよな。まぁ、外に行かれないのは俺も同じだ。知らない人の家を勝手に歩くわけにはいかない。レオニスさん来てくれないかな。と、俺が考えているとドアをノックする音が聞こえた。レオニスさんかな?

「お目覚めでございましょうか」

 レオニスさんの声ではなかった。恐らくメイドさんだろう。

「起きてます!」

 そう言ってベッドを降り、ドアを開けるとメイドさんがピッチャーを持って立っていた。

「お水をお持ちしました」
「あ、ありがとうございます。あのー。レオニスさんは起きてますか?」
「はい。先ほどお目覚めになられました。タクヤ様の体調がよろしければ朝食を一緒にと仰っておられましたので、お目覚めになられた旨お伝えいたします」
「はい。お願いします」

 メイドさんはベッドサイドテーブルにピッチャーを置くと部屋を出て行った。うん、これでレオニスさんが来てくれるかも。その前にお水を飲もうとコップに注ぎ、一口飲む。すると、相当喉が渇いていたのか、ごくごくとコップ一杯すぐに飲んでしまった。と、そこで一息ついて、ルナにも水をやりたいけどお皿がないので、コップに水を並々と注ぎ、ルナの目の前に持っていってやると、ピチャピチャとすごい勢いで飲んでいる。うん、ルナも相当喉が渇いていたみたいだ。お水を飲んだことで胃が動いたのか、それとも俺が起きたからなのか、にゃ~にゃ~と顔を見て鳴いている。多分、お腹が空いたっていうことだろうけど、自分の家じゃないからあげられないんだよ。でも、そんなのルナには関係ないんだろう。だよな。お腹が空いたから、くれっていうのは自然な行動だよ。と困っていると再びドアがノックされ、ドアを開けるとそこにはレオニスさんがいた。

「おはよう。体調はどう?」
「おかげさまですっきりしました」
「そうか。良かった。ところで一緒に朝食はどうだ? 猫もお腹が空いてるんじゃないかな」
「朝食、ご一緒させてください。ルナ――猫はもうお腹好いてるみたいです」
「じゃあ、食べに行こうか、と言いたいんだけど、他に服がないんだな」
「ないですね」
「いつまでも同じ服を着ているわけにもいかないから、朝食が済んだら仕立屋に来て貰おう」
「え! 俺、お金ないし……」

 昨日、ルナを追いかけるのに、お財布の入った鞄は玄関に放ってきたし、決済サービスが使えるとは思わないし、大体スマホは圏外だ。いや、財布があったところで通貨が違うだろうから役にはたたないだろうけど。つまり、今の俺は無一文ってことだ。さて、どうしたことか。

「お金なんて気にしなくていい。まぁ、詳しいことは食べながら話そう」
「はい……」

 レオニスさんのあとをついて、ダイニングルーム(って言うのか?)へと向かう。昨日は体調悪かったから邸内を見ることはなかったけれど、そこそこの広さはあるのではないかと思われる。って、ここでふと、テーブルがやたらに長いやつだったりするのかな? 貴族の家って言ったら、そんなイメージなんだけど。と、レオニスさんが部屋に入ったところで俺もその後を続き、中に入ると、そんなに長いテーブルじゃなくてホッとした。でも、そのテーブルには誰も座っていなかった。てっきりレオニスさんの奥様でもいるんじゃないかと思ってたけど、誰もいないということは独身なんだろうか。貴族で、しかもこんなにイケメンなのに? まぁ、そんなの余計なお世話だよな。レオニスさんが座るときに、執事さん? が椅子をサッと引いた。うわ、椅子に座るのまで自分ではしないのか。俺は自分で……と思って椅子の背に手をやろうとしたところでエスコートされた。すごいな。そして席についたのが合図かのように、パン、サラダ、スープとテーブルに置かれていく。そして、ルナもお腹空いてるよな、と思って、俺は自分のパンをルナにやろうとパンに手をつけたところで、メイドさんが俺の椅子の隣に小さなお皿をふたつ置いてくれた。ひとつはミルク。もうひとつは焼いた魚がほぐされていた。目の前に置かれると、ルナは勢いよく食べ始めた。

「猫はお腹が空いてたんだな」
「すいません……」

 お前は昨夜もきちんと食べたんだろう、とルナに目を向けるも、食べるのに忙しいルナは俺の視線なんて気づきもしない。

「さあ私たちも食べよう」

 その言葉を合図に俺たちも食事に手をつけた。
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