春は君のとなり 〜Tokyo & Seoul 〜

水無瀬 蒼

文字の大きさ
13 / 86

これが日本の居酒屋6

しおりを挟む
「タッコチだ! 赤くない! こっちは? おでん?」
「焼き鳥と、こっちはおでん。おでんは韓国のと日本のは違うって聞いたことがあるから頼んでみた。で、なに? タッコチ? それって焼き鳥のこと?」
「そう焼き鳥。韓国では屋台のタッコチって言ったらコチュジャンで赤いんだ。でも、きちんとした焼き鳥もあるよ。日本式焼き鳥屋もあるし、韓国のチェーン店もある。大学の近くにローカルな焼き鳥屋があった」
「そうなんだ。食べてみて」

 俺がそう言うと、イジュンは「いただきます」と言って鶏皮を食べた。

「もちもち弾力があって美味しい。これはなに?」
「鶏皮だよ。韓国では食べない?」
「日本式の居酒屋ではわからないけど、韓国ではあまり……。最近人気が出てきたっていうけど、初めて食べた」
「どう?」
「美味しい! なんでこんな美味しいものを韓国ではあまり食べないんだろう。もったいない」
「気に入ってくれたのなら良かったよ」
「でも、焼き鳥美味しいね」

 そう言いながら、もも、つくね、せせりとあっという間に食べていく。気がついたら3串しか残っていなかった。それにハタと気づいたイジュンは青くなり、俺は笑った。

「ごめん、食べ過ぎた」

 イジュンはそう謝ってくるけど、謝る必要なんてないのに。イジュンに食べて欲しくて頼んだわけだし、食べたかったら追加で注文すればいいだけの話しだ。青くなる必要なんてない。

「気にしないでいいよ。イジュンに食べて欲しいんだからさ」
「明日海……。じゃあ残りも頂いてもいい?」
「もちろん」

 俺が笑顔でそういうと、イジュンは笑顔で残りの焼き鳥を食べた。美味しく食べて貰えたのなら、それで十分なんだ。
 そして残ったおでん。俺にとっては何の変哲もないいつものおでんだけど、イジュンは別の意味で固まってる。

「俺の知ってるおでんとは違うみたいだ。これは大根、だよね?」
「うん。食べてみ。美味しいから」

 俺が勧めると、イジュンは大根を一口食べ、そして目をキラキラとさせる。

「美味しい! なにこれ、すっごい味が染みてる。これだけでご飯一杯は軽く食べれるね」

 そうして次のものにイジュンは不思議そうな顔をしている。

「これ、なんだろう? ゴム? え、そんなことないよね。不思議な食感だけど美味しい」
「韓国ではこんにゃくって食べないの? 芋から出来てる」
「芋? なんで芋からこうなるの? ダイエット食として売られているのは見たことあるけど、食べるのは初めて。でも、すごい味が染みてる」

 こんにゃくのカロリーを考えたら確かにダイエット食というのも頷けるけど、まさかおでんに入れないとは思わなかった。次にイジュンはちくわぶを口に入れる。

「なに、これ? パン? ごはん? もち? なんだか不思議な食感」
「それはちくわぶだよ。美味しいだろ? 小麦粉なんだよ」
「え? 小麦粉? パンかごはんかもちだと思った。面白いのが入ってるね」
「そう? ちくわぶが入ってないなんておでんじゃないよ。たまにちくわぶ入ってなかったりするけど、それは邪道だね」
「明日海は好きなの?」
「もちろん! 食感がたまらなく好き。味が染みこんでると最高に美味しい」
「うん、確かに美味しいかも。癖になりそう。でも、日本のおでんは色々入ってるんだね。韓国のおでんは練り物が入ってるだけだよ」
「え? そうなの?」
「いいなぁ日本人は。いつもこんなに美味しいおでんを食べられるんだ」
「おでんなんてコンビニでも食べられるよ」
「え? コンビニでおでん? そうだ! 日本のコンビニ行かなきゃだ」
「なんで?」
「日本のコンビニはマートみたいだって聞いたんだ。なんでもあるって」
「そうなの? じゃああとで行ってみる?」
「行く行く!」

 そういうイジュンの声はとても弾んでいた。おでんの具材が多いのも、コンビニで売ってるのも当たり前だと思ってたけど、違うんだな。韓国にだってコンビニはあるんだから同じだとばかり思ってた。それに、マートみたいというのも引っかかった。マートってスーパーだよな? コンビニってそんなだっけ? それとも、そう感じてしまうくらいに韓国のコンビニは品揃えが悪いとか? 韓国に行ったことのない俺にはわからない。でも、お隣の国とはいえ、色々な面で違うんだと気づけたのは楽しかった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

カフェ・コン・レーチェ

こうらい ゆあ
BL
小さな喫茶店 音雫には、今日も静かなオルゴール調のの曲が流れている。 背が高すぎるせいか、いつも肩をすぼめている常連の彼が来てくれるのを、僕は密かに楽しみにしていた。 
苦いブラックが苦手なのに、毎日変わらずブラックを頼む彼が気になる。 今日はいつもより温度を下げてみようかな?香りだけ甘いものは苦手かな?どうすれば、喜んでくれる? 「君の淹れる珈琲が一番美味しい」
苦手なくせに、いつも僕が淹れた珈琲を褒めてくれる彼。 照れ臭そうに顔を赤ながらも褒めてくれる彼ともっと仲良くなりたい。 そんな、ささやかな想いを込めて、今日も丁寧に豆を挽く。 甘く、切なく、でも愛しくてたまらない―― 珈琲の香りに包まれた、静かで優しい記憶の物語。

孤毒の解毒薬

紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。 中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。 不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。 【登場人物】 西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

悋気応変!

七賀ごふん
BL
激務のイベント会社に勤める弦美(つるみ)は、他人の“焼きもち”を感じ取ると反射的に号泣してしまう。 厄介な体質に苦しんできたものの、感情を表に出さないクールな幼なじみ、友悠(ともひさ)の存在にいつも救われていたが…。 ────────── クール&独占欲強め×前向き&不幸体質。 ◇BLove様 主催コンテスト 猫野まりこ先生賞受賞作。 ◇プロローグ漫画も公開中です。 表紙:七賀ごふん

恋と脅しは使いよう

makase
BL
恋に破れ、やけ酒の末酔いつぶれた賢一。気が付けば酔っぱらいの戯言を弱みとして握られてしまう……

Candy pop〜Bitter&Sweet

義井 映日
BL
「完璧な先輩」が壊れるまで、カウントはもう、とっくに『0』を過ぎていた。 ​「185cmの看板男」が、たった一人の恋人の前で理性を失う。 三ヶ月の禁欲を経て、その愛は甘く、激しく、暴走する――。 ​「あらすじ」 大学の「看板男」こと安達大介は、後輩の一之瀬功(こう)を溺愛している。 ついに迎えた初めての夜。しかし、安達の圧倒的な「雄」の迫力に、功は本能的な恐怖で逃げ出してしまう。 ​「――お前は俺を狂わせる毒だと思ってた」 ​絶望した安達と、愛しているのに身体が竦む功。 三ヶ月の「じれったい禁欲生活」を経て、看板男の仮面が剥がれるとき、世界で一番甘い夜が始まる。 ​★本編全6話に加え、季節を巡る濃密な番外編1本も公開中!近日最新エピソードも追加予定! (2月の看病編/3月のホワイトデー編公開予定です) お話が気に入った、面白かった、と思ってくださったら、お気に入り登録、いいね、をお願い致します! 作者の励みになります!!

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

拾われた後は

なか
BL
気づいたら森の中にいました。 そして拾われました。 僕と狼の人のこと。 ※完結しました その後の番外編をアップ中です

処理中です...