50 / 86
君と写す未来5
しおりを挟む
「……ごめん。急に。明日海が綺麗だったから」
キスのことをイジュンが謝る。それに対して俺は黙って首を振った。びっくりしたけど、嫌じゃなかったから。するとイジュンはパーッと花が咲いたように笑った。嫌なはずないじゃないか。
でも、俺はずっとわからなかった。イジュンの笑顔が好きなことも、一緒にいて楽しいことも、一緒にいるとドキドキすることもなんでだろうって思ってた。でも、イジュンに告白されてわかったんだ。俺も好きなんだって。どうして今まで気づかなかったんだろう。いや、気づかなかったんじゃない。気づかないようにしてたんだ。俺もイジュンも男だから。
だけど、お互いの気持ちがわかっても、明後日にはイジュンは帰国してしまう。そうしたら会えない。せっかくのこの気持ちもなかったことになってしまわないだろうか。そう思ったら寂しくなった。今、ここにある気持ちは本物なのに。そう思ったらいてもたってもいられず、俺はポケットからスマホを出した。そして自撮りモードにして、イジュンのすぐ隣に行く。写真は好きじゃない。でも、今のこの瞬間の俺たちを残しておきたかった。
「今の俺たち、ちゃんと残したいから」
イジュンは一瞬驚いたみたいで目を見開いたけど、すぐに破顔した。
「そうだね」
そう笑ったイジュンに肩を抱かれて、恥ずかしくて、体中の熱が頬に集まったみたいで熱くなる。でも、嬉しいから離れはしない。
カシャッ。カシャッ。
二枚連続で撮る。すぐに確認すると、ほんとに俺は赤い顔をしていた。でも、うん。2人とも幸せそうでよく写ってると思う。
「俺も撮りたい」
今度はイジュンがスマホを撮り出す。
カシャッ。
そこに写った俺たちは、さきほどと同じく、幸せそうな顔をしていた。
「写ルンですはいいのか」
「撮る!」
「でも、スマホと違って確認出来ないぞ」
「失敗したらしたで、それも味があっていいんじゃない?」
味がある……。そっか。そんなふうに考えたことはなかった。カメラもデジタルになってからしか知らないから、アナログは不便だなってマイナスにしか取れなかった。でも、そうか。プラスに考えることもできるんだな。それは多分、イジュンだからできることだ。
「明日海! ほら!」
俺がそんなことを考えていると、イジュンは写ルンですをバッグから取りだして、すでに構えていた。いつもと違うアナログだと思っただけで、なんだか緊張してしまう。
「明日海? なんで緊張してるの?」
当然それはイジュンにもすぐにバレる。
「いや。アナログって慣れないなと思って」
「デジタルもアナログも撮ることに変わりはないよ。ただ、その場で確認できるかできないかだけの違いだよ」
「うん……」
「だから、ほら。笑って。こういうとき、日本ではなんて言うの? 韓国では笑って撮りたい場合、「はい、キムチ」って言うんだけど」
「キムチ? それはほんとに笑っちゃうな」
「そう? キムチのチの発音のとき、口が横に広がるんだよね。だから笑ってるように見えるから。日本はそういうのってない?」
「あるよ。「はいチーズ」って言う」
「チーズ?」
そう言ってイジュンはチーズのときの口を動かしている。
「そっか、こっちの”う”なら横に広がるのか」
こっちの”う”? なんだ、それは。
「韓国語で”う”って2つあるんだ。口をすぼめた”う”と、横に広げた”う”」
「”う”がふたつもあるのか?」
「うん。”お”もふたつある」
何気に始まった韓国語講座に俺はびっくりした。同じ母音が2つもあるなんて。日本語ではひとつしかない。2つもあったら紛らわしくないだろうか?
「でも、チーズって”チ”で伸びるからじゃないかな」
「それなら、キムチの方がいい気がする」
カメラ前で笑うときの言葉ということで論争(?)になる。
「まぁ、チーズって言われたら笑うってしておけばいいのか」
イジュンがそう結論づけた。でも、チーズとキムチ。全然違うものだけど、どちらも食べ物なんだな、と俺は馬鹿なことを考えていた。
「明日海?」
「あぁ、ごめん。面白いなと思ってさ」
「そうだね。国の違いが出て面白い」
そんなことでひとしきり笑ったけれど、ふと笑顔が途切れてしまう。せっかく2人の気持ちが重なっているのに気がついたのに、ここで別れなければいけない。もちろん、明日にはまた会うのだけど、その数時間が寂しいと思ってしまう。そう思って俯いてしまった俺の手をイジュンが握ってきた。
キスのことをイジュンが謝る。それに対して俺は黙って首を振った。びっくりしたけど、嫌じゃなかったから。するとイジュンはパーッと花が咲いたように笑った。嫌なはずないじゃないか。
でも、俺はずっとわからなかった。イジュンの笑顔が好きなことも、一緒にいて楽しいことも、一緒にいるとドキドキすることもなんでだろうって思ってた。でも、イジュンに告白されてわかったんだ。俺も好きなんだって。どうして今まで気づかなかったんだろう。いや、気づかなかったんじゃない。気づかないようにしてたんだ。俺もイジュンも男だから。
だけど、お互いの気持ちがわかっても、明後日にはイジュンは帰国してしまう。そうしたら会えない。せっかくのこの気持ちもなかったことになってしまわないだろうか。そう思ったら寂しくなった。今、ここにある気持ちは本物なのに。そう思ったらいてもたってもいられず、俺はポケットからスマホを出した。そして自撮りモードにして、イジュンのすぐ隣に行く。写真は好きじゃない。でも、今のこの瞬間の俺たちを残しておきたかった。
「今の俺たち、ちゃんと残したいから」
イジュンは一瞬驚いたみたいで目を見開いたけど、すぐに破顔した。
「そうだね」
そう笑ったイジュンに肩を抱かれて、恥ずかしくて、体中の熱が頬に集まったみたいで熱くなる。でも、嬉しいから離れはしない。
カシャッ。カシャッ。
二枚連続で撮る。すぐに確認すると、ほんとに俺は赤い顔をしていた。でも、うん。2人とも幸せそうでよく写ってると思う。
「俺も撮りたい」
今度はイジュンがスマホを撮り出す。
カシャッ。
そこに写った俺たちは、さきほどと同じく、幸せそうな顔をしていた。
「写ルンですはいいのか」
「撮る!」
「でも、スマホと違って確認出来ないぞ」
「失敗したらしたで、それも味があっていいんじゃない?」
味がある……。そっか。そんなふうに考えたことはなかった。カメラもデジタルになってからしか知らないから、アナログは不便だなってマイナスにしか取れなかった。でも、そうか。プラスに考えることもできるんだな。それは多分、イジュンだからできることだ。
「明日海! ほら!」
俺がそんなことを考えていると、イジュンは写ルンですをバッグから取りだして、すでに構えていた。いつもと違うアナログだと思っただけで、なんだか緊張してしまう。
「明日海? なんで緊張してるの?」
当然それはイジュンにもすぐにバレる。
「いや。アナログって慣れないなと思って」
「デジタルもアナログも撮ることに変わりはないよ。ただ、その場で確認できるかできないかだけの違いだよ」
「うん……」
「だから、ほら。笑って。こういうとき、日本ではなんて言うの? 韓国では笑って撮りたい場合、「はい、キムチ」って言うんだけど」
「キムチ? それはほんとに笑っちゃうな」
「そう? キムチのチの発音のとき、口が横に広がるんだよね。だから笑ってるように見えるから。日本はそういうのってない?」
「あるよ。「はいチーズ」って言う」
「チーズ?」
そう言ってイジュンはチーズのときの口を動かしている。
「そっか、こっちの”う”なら横に広がるのか」
こっちの”う”? なんだ、それは。
「韓国語で”う”って2つあるんだ。口をすぼめた”う”と、横に広げた”う”」
「”う”がふたつもあるのか?」
「うん。”お”もふたつある」
何気に始まった韓国語講座に俺はびっくりした。同じ母音が2つもあるなんて。日本語ではひとつしかない。2つもあったら紛らわしくないだろうか?
「でも、チーズって”チ”で伸びるからじゃないかな」
「それなら、キムチの方がいい気がする」
カメラ前で笑うときの言葉ということで論争(?)になる。
「まぁ、チーズって言われたら笑うってしておけばいいのか」
イジュンがそう結論づけた。でも、チーズとキムチ。全然違うものだけど、どちらも食べ物なんだな、と俺は馬鹿なことを考えていた。
「明日海?」
「あぁ、ごめん。面白いなと思ってさ」
「そうだね。国の違いが出て面白い」
そんなことでひとしきり笑ったけれど、ふと笑顔が途切れてしまう。せっかく2人の気持ちが重なっているのに気がついたのに、ここで別れなければいけない。もちろん、明日にはまた会うのだけど、その数時間が寂しいと思ってしまう。そう思って俯いてしまった俺の手をイジュンが握ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
カフェ・コン・レーチェ
こうらい ゆあ
BL
小さな喫茶店 音雫には、今日も静かなオルゴール調のの曲が流れている。
背が高すぎるせいか、いつも肩をすぼめている常連の彼が来てくれるのを、僕は密かに楽しみにしていた。
苦いブラックが苦手なのに、毎日変わらずブラックを頼む彼が気になる。
今日はいつもより温度を下げてみようかな?香りだけ甘いものは苦手かな?どうすれば、喜んでくれる?
「君の淹れる珈琲が一番美味しい」
苦手なくせに、いつも僕が淹れた珈琲を褒めてくれる彼。
照れ臭そうに顔を赤ながらも褒めてくれる彼ともっと仲良くなりたい。
そんな、ささやかな想いを込めて、今日も丁寧に豆を挽く。
甘く、切なく、でも愛しくてたまらない――
珈琲の香りに包まれた、静かで優しい記憶の物語。
孤毒の解毒薬
紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。
中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。
不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。
【登場人物】
西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
雪を溶かすように
春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。
和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。
溺愛・甘々です。
*物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています
悋気応変!
七賀ごふん
BL
激務のイベント会社に勤める弦美(つるみ)は、他人の“焼きもち”を感じ取ると反射的に号泣してしまう。
厄介な体質に苦しんできたものの、感情を表に出さないクールな幼なじみ、友悠(ともひさ)の存在にいつも救われていたが…。
──────────
クール&独占欲強め×前向き&不幸体質。
◇BLove様 主催コンテスト 猫野まりこ先生賞受賞作。
◇プロローグ漫画も公開中です。
表紙:七賀ごふん
Candy pop〜Bitter&Sweet
義井 映日
BL
「完璧な先輩」が壊れるまで、カウントはもう、とっくに『0』を過ぎていた。
「185cmの看板男」が、たった一人の恋人の前で理性を失う。
三ヶ月の禁欲を経て、その愛は甘く、激しく、暴走する――。
「あらすじ」
大学の「看板男」こと安達大介は、後輩の一之瀬功(こう)を溺愛している。
ついに迎えた初めての夜。しかし、安達の圧倒的な「雄」の迫力に、功は本能的な恐怖で逃げ出してしまう。
「――お前は俺を狂わせる毒だと思ってた」
絶望した安達と、愛しているのに身体が竦む功。
三ヶ月の「じれったい禁欲生活」を経て、看板男の仮面が剥がれるとき、世界で一番甘い夜が始まる。
★本編全6話に加え、季節を巡る濃密な番外編1本も公開中!近日最新エピソードも追加予定!
(2月の看病編/3月のホワイトデー編公開予定です)
お話が気に入った、面白かった、と思ってくださったら、お気に入り登録、いいね、をお願い致します!
作者の励みになります!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる