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街角に、君と
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朝、ホテルの部屋を出て下に降りると、もうイジュンが来ていた。
「早いな」
「早く明日海に会いたいからね。でも、そういう明日海だって少し早いよ?」
「支度が早く終わったからだよ」
「まぁいいや。そういうことにしておいてあげる。さて、今日は景福宮からだね」
ホテルの外へ出ると日本とは違いせかせかと歩く人並みを見ると、ほんとに韓国にいるんだなと思う。韓国人はイジュンの言う通りせっかちだ。車の様子もなんだか東京とは違う。そして一番違うのは街の看板が全てハングルで書かれていること。韓国にくるときに少し韓国語を勉強してきたから少しは読めるけれど意味がわからない。そんな東京と違う街並みだけど、街角にイジュンといる、それだけでどこにいてもいい、イジュンの隣だからいいと思う。そんなこと恥ずかしくて絶対に言えないけど。
景福宮はホテルの最寄り駅から1回乗り換えはあったけれど近かった。地下鉄に乗るのに、昨日イジュンに貰った交通カードを使った。
「交通カードにいくらチャージしたの? 払うよ」
「そんなのはいいよ。だって明日海はわざわざ日本から来てくれたんだよ。これくらい当然だ。だからそんなことは気にしなくていいの。そんなことより、楽しんでくれる方が嬉しい」
そう言うイジュンは、きっとなんと言っても受け取ってはくれないんだろうなと思う。そうしたら、ただ楽しめばいいんだろうか。イジュンと隣を歩けるだけでも楽しいのに。
「じゃあ、ありがとう」
「どういたしまして」
「今から行く、景福宮ってどんなところなの?」
地下鉄の中で景福宮がどんなところなのか訊いてみた。
「1395年に、太祖・李成桂によって新しい朝鮮王朝の王宮として建てられたんだ。だけど、1592年の文禄の役で焼失した。そして、李氏朝鮮末期の1865年の興宣大院君による再建から1896年まで王宮として使われたんだ」
「王宮だったのか。そしたら広いんだろうね」
「広いよ」
「イジュンは何度も来てる?」
「来てる。親と来たこともあるけど、学校で何度も来てるよ。だから景福宮のガイドは出来るよ」
「そんなに来てるのか。王宮に行くってすごいな。日本で言うと皇居になるのかな? 皇居は今現在、天皇陛下が住んでるから行くことはできないけど」
「いや。一部はツアーで見れるんだよ」
「そうなの? 知らなかった」
「ガイドブックには書かれてる。俺は行こうと思ったら休みの日だったから諦めたけど」
「東京に住んでるけど知らなかった」
「逆に住んでるからこそじゃないかな。あ、着いた。降りるよ」
そう言って電車を降りるイジュンの後ろに着いて行く。改札を出て少し歩くと、もうそこは景福宮だった。
「広い……」
「中に入ってみるともっと広いよ。さあ行こう」
チケット売り場のそばでは、デジタルガイドのレンタルがあったり、日本語ツアーがあったりしたけれど、俺はイジュンにガイドして貰うから、そんなのを黙って見てた。もし、空港での誤解のまま1人で来ていたら、きっと日本語ツアーにのったりしたんだろうな。そういう今も、日本人が数名固まっている。ツアー待ちなのだろうか。
「お待たせ。チケット買ってきたよ。ほんとは韓服着てくるといいんだけどね」
「なんで?」
「韓服着てくると入場料がタダになるんだ。明日海にチマチョゴリを着て貰うのもいいんだけど」
「チマチョゴリって女性の服だろ? 俺は男だ!」
「ね? そうやって怒っちゃうでしょ。だから諦めた」
「男用の韓服だってあるだろ」
「えー。そんなに綺麗なのに」
「イジュン、怒るぞ」
「もう怒ってるじゃん。ごめんごめん。冗談だってば」
「ほら、行くぞ。ガイドしろよ。でないと、俺、日本語ツアーに乗るぞ」
「わかった! 待って! ほんとに冗談だから。ごめん。さ、行こう」
俺が女顔なのを嫌がってて、トラウマになってるのを知ってて言う冗談は笑えない。これ、イジュンが言ったんじゃなければ完全に怒ってたけど、相手がイジュンだから本気では怒れない。いや、結構本気に近かったけど、それは内緒だ。
「早いな」
「早く明日海に会いたいからね。でも、そういう明日海だって少し早いよ?」
「支度が早く終わったからだよ」
「まぁいいや。そういうことにしておいてあげる。さて、今日は景福宮からだね」
ホテルの外へ出ると日本とは違いせかせかと歩く人並みを見ると、ほんとに韓国にいるんだなと思う。韓国人はイジュンの言う通りせっかちだ。車の様子もなんだか東京とは違う。そして一番違うのは街の看板が全てハングルで書かれていること。韓国にくるときに少し韓国語を勉強してきたから少しは読めるけれど意味がわからない。そんな東京と違う街並みだけど、街角にイジュンといる、それだけでどこにいてもいい、イジュンの隣だからいいと思う。そんなこと恥ずかしくて絶対に言えないけど。
景福宮はホテルの最寄り駅から1回乗り換えはあったけれど近かった。地下鉄に乗るのに、昨日イジュンに貰った交通カードを使った。
「交通カードにいくらチャージしたの? 払うよ」
「そんなのはいいよ。だって明日海はわざわざ日本から来てくれたんだよ。これくらい当然だ。だからそんなことは気にしなくていいの。そんなことより、楽しんでくれる方が嬉しい」
そう言うイジュンは、きっとなんと言っても受け取ってはくれないんだろうなと思う。そうしたら、ただ楽しめばいいんだろうか。イジュンと隣を歩けるだけでも楽しいのに。
「じゃあ、ありがとう」
「どういたしまして」
「今から行く、景福宮ってどんなところなの?」
地下鉄の中で景福宮がどんなところなのか訊いてみた。
「1395年に、太祖・李成桂によって新しい朝鮮王朝の王宮として建てられたんだ。だけど、1592年の文禄の役で焼失した。そして、李氏朝鮮末期の1865年の興宣大院君による再建から1896年まで王宮として使われたんだ」
「王宮だったのか。そしたら広いんだろうね」
「広いよ」
「イジュンは何度も来てる?」
「来てる。親と来たこともあるけど、学校で何度も来てるよ。だから景福宮のガイドは出来るよ」
「そんなに来てるのか。王宮に行くってすごいな。日本で言うと皇居になるのかな? 皇居は今現在、天皇陛下が住んでるから行くことはできないけど」
「いや。一部はツアーで見れるんだよ」
「そうなの? 知らなかった」
「ガイドブックには書かれてる。俺は行こうと思ったら休みの日だったから諦めたけど」
「東京に住んでるけど知らなかった」
「逆に住んでるからこそじゃないかな。あ、着いた。降りるよ」
そう言って電車を降りるイジュンの後ろに着いて行く。改札を出て少し歩くと、もうそこは景福宮だった。
「広い……」
「中に入ってみるともっと広いよ。さあ行こう」
チケット売り場のそばでは、デジタルガイドのレンタルがあったり、日本語ツアーがあったりしたけれど、俺はイジュンにガイドして貰うから、そんなのを黙って見てた。もし、空港での誤解のまま1人で来ていたら、きっと日本語ツアーにのったりしたんだろうな。そういう今も、日本人が数名固まっている。ツアー待ちなのだろうか。
「お待たせ。チケット買ってきたよ。ほんとは韓服着てくるといいんだけどね」
「なんで?」
「韓服着てくると入場料がタダになるんだ。明日海にチマチョゴリを着て貰うのもいいんだけど」
「チマチョゴリって女性の服だろ? 俺は男だ!」
「ね? そうやって怒っちゃうでしょ。だから諦めた」
「男用の韓服だってあるだろ」
「えー。そんなに綺麗なのに」
「イジュン、怒るぞ」
「もう怒ってるじゃん。ごめんごめん。冗談だってば」
「ほら、行くぞ。ガイドしろよ。でないと、俺、日本語ツアーに乗るぞ」
「わかった! 待って! ほんとに冗談だから。ごめん。さ、行こう」
俺が女顔なのを嫌がってて、トラウマになってるのを知ってて言う冗談は笑えない。これ、イジュンが言ったんじゃなければ完全に怒ってたけど、相手がイジュンだから本気では怒れない。いや、結構本気に近かったけど、それは内緒だ。
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