春は君のとなり 〜Tokyo & Seoul 〜

水無瀬 蒼

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街角に、君と3

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「ここも半端なく広そうだな」

 昌徳宮の門を正面に見据えたときに思わず声に出た。

「宮殿部分だけなら景福宮の方が広いけど、庭園を込みにするとこっちの方が少し広いからね」
「庭園って見るの?」
「綺麗だから一見の価値はあるけど、正直、ちょっと歩くの大変かも。広い上に坂道もあるからね。それに自由には歩けないんだ。それぞれの言語のガイドツアーに乗る必要がある。明日海的には日本語ツアーの方がいいけど、そうすると俺はガイドさんが何を言っているかわからないから、説明に補足ができない。反対に韓国語のツアーだと、明日海はなにを言っているかわからないでしょう? だから却下。もしツアーに乗るなら英語かな。それなら俺も明日海も理解することができる。ガイドツアーは人数が限られてるから時間を無駄にしないなら今のうちに動く必要があるけど、どうする?」
「坂道かなりある?」
「あるね」
「ここを観終わったあとお茶にしてくれる?」
「いいよ」
「そしたら英語ツアーに乗ろう。だって一見の価値あるんだろ? そしたら見なきゃ。今ならまだまわれる」
「1時間ちょっとかかるけど大丈夫? 冬だからいつもより少し短いけど、それでも1時間は超えたと思うんだ」
「そんなに広いのか。でも、大丈夫」
「じゃあ英語ツアーに乗ろう。それでチケットを買ってくる」

 英語の庭園ガイドツアーの時間まで少し時間があるというので、その間に宮殿部分を見て回ることにした。宮殿部分は景福宮の方が広いというけど、その景福宮が広すぎるので比較するのがおかしいと思う。昌徳宮だってかなりの広さがあると思う。

「昌徳宮はね、世界遺産に登録されてるんだよ」
「すごいな」

 仁政殿の立派さは景福宮に負けない。内装だって景福宮に負けないし、1900年代にはシャンデリアまで作られてる。でも、朝鮮王朝がいくらすごくても、こんなに近距離に2つも宮殿は必要だったんだろうか。そう思ってイジュンに訊いてみた。

「景福宮が正宮。できたのも景福宮の方が10年早い。でも、戦乱とかで景福宮が消失したりしてるから、事実上の正宮として長く使われたのはこっちなんだ」
「じゃあ景福宮は表の顔って感じ?」
「そう。で生活はこっち」
「だから庭園が立派だったりするのかな」
「そうだろうね」

 仁政殿のあとは宣政殿そんじょんじょん。ここは王が日常的な政務を行なったところらしい。学者・官僚の勉強や儒者の試験、宴が開催されたこともあったとイジュンは言う。韓国にも科挙の制度があったというから、ここを使ったんだろうとイジュンは言う。続く煕政堂ひじょんだん大造殿てじょんじょんは王と王妃の生活空間で、一部西洋式にされているらしい。というか、生活空間の建物、2つもいるのか? もっとも煕政堂は執務室として利用されることが多かったらしいけど。
 
「でも景福宮が消失したりっていうのがあっても、こんな立派な宮殿を2つも作る朝鮮王朝ってすごいな」
「朝鮮王朝は500年以上続いた。日韓併合される1910年まで続いてる。でも、好き勝手やってきたとも言われてる」

 日韓併合。日本人と韓国人がいて避けたくなる話題のひとつだ。俺はその話しを踏み込んでしたくない。歴史的解釈が両国で違うからだ。なのでちょっと身構えていたけれど、神様はいたらしい。

「あ、そろそろ庭園-秘苑-のツアーの時間だ。明日海、そろそろ行こう」
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