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未来を探す歩幅1
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今日はお店を出すとしたらどこがいいかということで、いくつかの候補地を回ることになっている。朝10時少し前にホテルの1階に降りると、まだイジュンは来ていなかった。そこで、ふと昨日のことを思い出す。ソヨンさんの牽制、そしてイジュンの言葉。ソヨンさんは間違いなくイジュンのことが好きだ。だからあそこまでの言動をした。ソヨンさんは少し気もキツいようだった。でも、イジュンの隣に並ぶのはお似合いだと思った。それが俺を落ち込ませた。でも、イジュンはなにがあっても俺を選ぶと言ってくれた。いくら端から見たらソヨンさんがお似合いに見えても、重要なのはイジュンが誰を選ぶかだ。そしてイジュンは俺を選ぶと言ってくれた。そうしたら不安になる必要はないのかもしれない。ただひとつ不安になるとしたら、男同士だということだ。いくらイジュンが俺を選んでくれても、それだけではいられないこともあるかもしれない。でも、心を強く持っていたら変わるのだろうか。俺が今することはイジュンを信じることなのかもしれない。イジュンを待ちながら、そんなことを考えていた。
「明日海」
俺は結構深く考えていたらしく、目の前にイジュンがいるのにも気づいていなかった。
「どうしたの。考えごと? 俺が来てるのにも気づかないで」
「ううん。ちょっとボーッとしてた」
「疲れた? 大丈夫? 今日は結構歩くけど。できるだけタクシー乗ろうか」
「大丈夫だよ。疲れたら言う」
まずはホテルの近くから地下鉄に乗り、漢江を渡って江南エリアへ行く。俺とイジュンは肩が触れる距離で立っていた。窓の外の暗いトンネルを眺めながら、自分がここにいるのか不思議な気持ちになる。観光でもデートでもない。俺たちは今、「クレープ屋を出店するなら」という前提でソウルの何ヶ所かを見に行こうとしている。夢のような話しでしかないのに、イジュンが真剣に語ると現実味を帯びてくるから不思議だ。
「まずはノニョン洞に行こう。江南エリアの中では比較的賃料も安いし、住宅街で個人カフェも多いエリアなんだ」
「のにょん……? 江南駅の近く?」
「そう。江南駅から歩けるけど、一本路地を入ると住宅街で落ち着いてる」
江南というとガイドブックではソウルでの高級住宅地って書かれていたから、かなり高いんじゃないかと思った。
電車を降り外へ出ると、空気が肌を刺すように冷たい。駅前の大通りはビルが並んで人も多いけれど、路地に入れば一転して人通りは少なくなる。小さなカフェと居酒屋らしい店。そこに並んで歩いていると、確かに隠れ家っぽいお店が似合う場所だと納得した。
「ここなら確かにクレープ屋があっても浮かないね」
「でしょ? 観光客は少ないけど。近所の主婦や学生、会社員がよく来るから常連を作るにはいい」
イジュンは楽しそうに周囲を見回しながら頭の中で店のレイアウトを組み立てているようだった。そして俺は狭い路地の雰囲気に浅草を思い出していた。メイン通りは観光客も多くて賑やかだけど、一本路地に入れば地元の人に愛される街だ。イジュンは覚えているだろうか。そして、もしここに店を出すなら、毎日カウンターに立つのかなと考えてしまった。
「でも……ちょっと静かすぎない? 観光客がほとんどいないんじゃ……」
「それはある。派手さはないから、SNS映えを狙うなら不利かも」
ふと立ち止まった交差点の角に、白い壁のカフェがあった。窓越しに見えるケーキとパフェに、つい目を奪われた。
「こういう雰囲気の店ならクレープも似合うと思わない?」
「そうだね。イートインも出来て、持ち帰りも出来るといいね」
口にした瞬間、自分でも意外なほど自然に想像が膨らんでいることに気づいた。観光客相手ではなく、生活に根付いたスイーツ屋。ここでなら、俺たちの日常の延長線上に店が存在できるかもしれない。けれど同時に「夢を語って終わりになるんじゃないか」という不安が胸をかすめた。現実は厳しい。賃料、仕入れ、人件費。最初は2人で切り盛りするにしても賃料と仕入れは欠かせない。そんなことを考えたら簡単に決断できるものじゃない。
俺が言葉を探していると、イジュンが俺を見て、にこりと笑った。
「とりあえず見てるだけだから。焦らなくていい」
その笑顔に少し救われて、俺は歩き出した。ノニョン洞の静かな街並みを抜け、次の目的地であるカロスキルへ向かうために。
「明日海」
俺は結構深く考えていたらしく、目の前にイジュンがいるのにも気づいていなかった。
「どうしたの。考えごと? 俺が来てるのにも気づかないで」
「ううん。ちょっとボーッとしてた」
「疲れた? 大丈夫? 今日は結構歩くけど。できるだけタクシー乗ろうか」
「大丈夫だよ。疲れたら言う」
まずはホテルの近くから地下鉄に乗り、漢江を渡って江南エリアへ行く。俺とイジュンは肩が触れる距離で立っていた。窓の外の暗いトンネルを眺めながら、自分がここにいるのか不思議な気持ちになる。観光でもデートでもない。俺たちは今、「クレープ屋を出店するなら」という前提でソウルの何ヶ所かを見に行こうとしている。夢のような話しでしかないのに、イジュンが真剣に語ると現実味を帯びてくるから不思議だ。
「まずはノニョン洞に行こう。江南エリアの中では比較的賃料も安いし、住宅街で個人カフェも多いエリアなんだ」
「のにょん……? 江南駅の近く?」
「そう。江南駅から歩けるけど、一本路地を入ると住宅街で落ち着いてる」
江南というとガイドブックではソウルでの高級住宅地って書かれていたから、かなり高いんじゃないかと思った。
電車を降り外へ出ると、空気が肌を刺すように冷たい。駅前の大通りはビルが並んで人も多いけれど、路地に入れば一転して人通りは少なくなる。小さなカフェと居酒屋らしい店。そこに並んで歩いていると、確かに隠れ家っぽいお店が似合う場所だと納得した。
「ここなら確かにクレープ屋があっても浮かないね」
「でしょ? 観光客は少ないけど。近所の主婦や学生、会社員がよく来るから常連を作るにはいい」
イジュンは楽しそうに周囲を見回しながら頭の中で店のレイアウトを組み立てているようだった。そして俺は狭い路地の雰囲気に浅草を思い出していた。メイン通りは観光客も多くて賑やかだけど、一本路地に入れば地元の人に愛される街だ。イジュンは覚えているだろうか。そして、もしここに店を出すなら、毎日カウンターに立つのかなと考えてしまった。
「でも……ちょっと静かすぎない? 観光客がほとんどいないんじゃ……」
「それはある。派手さはないから、SNS映えを狙うなら不利かも」
ふと立ち止まった交差点の角に、白い壁のカフェがあった。窓越しに見えるケーキとパフェに、つい目を奪われた。
「こういう雰囲気の店ならクレープも似合うと思わない?」
「そうだね。イートインも出来て、持ち帰りも出来るといいね」
口にした瞬間、自分でも意外なほど自然に想像が膨らんでいることに気づいた。観光客相手ではなく、生活に根付いたスイーツ屋。ここでなら、俺たちの日常の延長線上に店が存在できるかもしれない。けれど同時に「夢を語って終わりになるんじゃないか」という不安が胸をかすめた。現実は厳しい。賃料、仕入れ、人件費。最初は2人で切り盛りするにしても賃料と仕入れは欠かせない。そんなことを考えたら簡単に決断できるものじゃない。
俺が言葉を探していると、イジュンが俺を見て、にこりと笑った。
「とりあえず見てるだけだから。焦らなくていい」
その笑顔に少し救われて、俺は歩き出した。ノニョン洞の静かな街並みを抜け、次の目的地であるカロスキルへ向かうために。
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