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第3話 「増殖ゴブリン①」
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放課後。
開発部専用バーチャル世界『プレワールド』にて。
相変わらず太陽がカンカン照りでどこまでも果てしない海辺だ。
どうやら春樹の『ダンジョンに隠された水着を探すVRMMO』というコンセプトは未だ健在らしい。
部員全員の前で波の音に声が吸われつつも俺は声を張り上げる。
「えー、この前の会議で伝えた通り、夏までに一作品VRMMOの完成を目指したいと思う。とは言えまだどんなものを仕上げたいかは決まっていない。なのでその模索として、今日は新入部員の湯雲さんにゲームプログラムの仕方を教えつつ自由にこのプレワールドを書き換えていってほしい。山田くんからの許可もおりている」
「うぅ...拙者の水着探しVRMMOは短い命でした...」
丸メガネとプログラミングしか取り柄のない地味男、山田春樹は嘆くように悶絶する。
「春樹!私は面白かったじょ?」
ロリの化身、東城ミクルはまたもや水着を着用していて砂浜に打ちひしがれた春樹をなでなでして慰めている。
流れるプールによくいる小学生にしか見えない事は黙っておこう。
「じゃあ璃咲!はじめよっか?」
「はい!」
新入部員、湯雲璃咲の元気な掛け声が浜に響き渡る。
◇
幼馴染み、水亜の掛け声と共に『ゲームプログラミング』が始まった。
こうしてみんなして本格的にゲームをいじくるのは初めてなのでみんな楽しそうだ。
ん?あいつらはどこに?
問題児2人がいなくなったことに気がついた俺はあたりを見回す。
「あ、あれは...」
遠くの浜。なにやら馬鹿でかい城が...。
どうやらミクルと春樹は奥の浜で巨大な砂の城をプログラムしているようである。
やれやれ。無駄にクオリティが高いので口出ししづらい。
とりあえずこちらはこちらで作業に没頭するとしよう。
どうやら水亜は湯雲さんにゲームプログラムのレクチャーをしているみたいだった。
「人差指を下から上にスワイプさせるの。そうすると開発者ツールがたちあがるからそこから色々やるわけね。何か操作してみて」
「ははぁ...なるほど...や、やってみます」
そう言うと湯雲さんは空に浮かぶウィンドウをテンポよく操作して、なんともひ弱そうなゴブリンを1体、目の前に呼び出した。
これは敵NPCのプログラムだ。
どのVRMMOでも使われる基本中の基本。
「璃咲すごいよ!ミクルはこれに2日かかったのに」
「そ、そんなにですか!?う、うれしい」
水亜はこう見えて物事を吸収して人に教えるのがうまい。ゲームプログラムも最初は俺が教えたものだが水亜はメキメキ上達していって逆に色々と教えてもらった記憶がある。
...そういえば気になることが...。
「湯雲さんは普段どんなVRMMOをプレイしてるの?」
こんな部活に入るくらいだ。何か好きなゲームがあるのだろう。
「私はStrawberry Bulletが大好きで毎日プレイしてます!」
「SBかぁ...なるほど...」
あまりにも意外すぎたので変な声が出てしまった。
もっとこう、ファンタジー系というかそういうのじゃだめだったのか?
通称SB、「Strawberry Bullet Online」は銃でのPvPが売りの大人気VRMMO。
ゾンビが蔓延る世紀末を舞台にフィールド上で殺しあう、ちょっと上級者向けのゲーム。俺や春樹でさえちょっと1歩引くのにまさか女子のユーザーがこんな身近にいたとは。
「この子、銃マニアなのよ...ストラップとかスマホの待ち受けとか全部銃だし...」
水亜は呆れたようにそう言う。
「ひ、否定はしませんっ...。...そうなんです。何故か小さな時から銃が好きで...。開発部に入ろうと思ったのもそういう銃のゲームがつくりたいなぁって...」
「じゃあ作るゲームには銃の要素は必ずいれるようにしよう」
「いいんですか!?やったぁー!」
そう言って嬉しそうに湯雲さんが飛び上がったその時だった。
ピシリ、という音と共にプレワールド全体が停止したのだ。
雲や波。プログラムされているはずの波風も何一つ動いていない。
まるで時が止まったようなそんな感覚にも陥ってしまいそうな。
一体何が起こった?
「京太郎あそこ!」
水亜の指先を追うように目を移すとそこには先の湯雲さんが出したゴブリンが何百、何千と湧いているではないか。
よく見ると一定間隔でそいつらは増殖している。
まさか...。
「ログアウトは?」
俺は咄嗟に水亜に聞く。
これができないと...。
「だめ。まずメニューが立ち上がらない。開発者プログラムも!」
湯雲さんは状況が全く読み込めないようでポカーン、としている。可愛いが今はそれどころではない。
「な、何が起こったでありますか?京太郎殿~!」
春樹やミクルも事の異変に気がついたのかこちらにやってくる。
「さっき試しに出したゴブリンだ...。バグかなにかで異常な数に増殖してプレワールドのキャパをオーバーしたんだ!ログアウトもできなくなってる!」
開発部一大事件「ゴブリン殲滅オンライン」の始まりだった...。
開発部専用バーチャル世界『プレワールド』にて。
相変わらず太陽がカンカン照りでどこまでも果てしない海辺だ。
どうやら春樹の『ダンジョンに隠された水着を探すVRMMO』というコンセプトは未だ健在らしい。
部員全員の前で波の音に声が吸われつつも俺は声を張り上げる。
「えー、この前の会議で伝えた通り、夏までに一作品VRMMOの完成を目指したいと思う。とは言えまだどんなものを仕上げたいかは決まっていない。なのでその模索として、今日は新入部員の湯雲さんにゲームプログラムの仕方を教えつつ自由にこのプレワールドを書き換えていってほしい。山田くんからの許可もおりている」
「うぅ...拙者の水着探しVRMMOは短い命でした...」
丸メガネとプログラミングしか取り柄のない地味男、山田春樹は嘆くように悶絶する。
「春樹!私は面白かったじょ?」
ロリの化身、東城ミクルはまたもや水着を着用していて砂浜に打ちひしがれた春樹をなでなでして慰めている。
流れるプールによくいる小学生にしか見えない事は黙っておこう。
「じゃあ璃咲!はじめよっか?」
「はい!」
新入部員、湯雲璃咲の元気な掛け声が浜に響き渡る。
◇
幼馴染み、水亜の掛け声と共に『ゲームプログラミング』が始まった。
こうしてみんなして本格的にゲームをいじくるのは初めてなのでみんな楽しそうだ。
ん?あいつらはどこに?
問題児2人がいなくなったことに気がついた俺はあたりを見回す。
「あ、あれは...」
遠くの浜。なにやら馬鹿でかい城が...。
どうやらミクルと春樹は奥の浜で巨大な砂の城をプログラムしているようである。
やれやれ。無駄にクオリティが高いので口出ししづらい。
とりあえずこちらはこちらで作業に没頭するとしよう。
どうやら水亜は湯雲さんにゲームプログラムのレクチャーをしているみたいだった。
「人差指を下から上にスワイプさせるの。そうすると開発者ツールがたちあがるからそこから色々やるわけね。何か操作してみて」
「ははぁ...なるほど...や、やってみます」
そう言うと湯雲さんは空に浮かぶウィンドウをテンポよく操作して、なんともひ弱そうなゴブリンを1体、目の前に呼び出した。
これは敵NPCのプログラムだ。
どのVRMMOでも使われる基本中の基本。
「璃咲すごいよ!ミクルはこれに2日かかったのに」
「そ、そんなにですか!?う、うれしい」
水亜はこう見えて物事を吸収して人に教えるのがうまい。ゲームプログラムも最初は俺が教えたものだが水亜はメキメキ上達していって逆に色々と教えてもらった記憶がある。
...そういえば気になることが...。
「湯雲さんは普段どんなVRMMOをプレイしてるの?」
こんな部活に入るくらいだ。何か好きなゲームがあるのだろう。
「私はStrawberry Bulletが大好きで毎日プレイしてます!」
「SBかぁ...なるほど...」
あまりにも意外すぎたので変な声が出てしまった。
もっとこう、ファンタジー系というかそういうのじゃだめだったのか?
通称SB、「Strawberry Bullet Online」は銃でのPvPが売りの大人気VRMMO。
ゾンビが蔓延る世紀末を舞台にフィールド上で殺しあう、ちょっと上級者向けのゲーム。俺や春樹でさえちょっと1歩引くのにまさか女子のユーザーがこんな身近にいたとは。
「この子、銃マニアなのよ...ストラップとかスマホの待ち受けとか全部銃だし...」
水亜は呆れたようにそう言う。
「ひ、否定はしませんっ...。...そうなんです。何故か小さな時から銃が好きで...。開発部に入ろうと思ったのもそういう銃のゲームがつくりたいなぁって...」
「じゃあ作るゲームには銃の要素は必ずいれるようにしよう」
「いいんですか!?やったぁー!」
そう言って嬉しそうに湯雲さんが飛び上がったその時だった。
ピシリ、という音と共にプレワールド全体が停止したのだ。
雲や波。プログラムされているはずの波風も何一つ動いていない。
まるで時が止まったようなそんな感覚にも陥ってしまいそうな。
一体何が起こった?
「京太郎あそこ!」
水亜の指先を追うように目を移すとそこには先の湯雲さんが出したゴブリンが何百、何千と湧いているではないか。
よく見ると一定間隔でそいつらは増殖している。
まさか...。
「ログアウトは?」
俺は咄嗟に水亜に聞く。
これができないと...。
「だめ。まずメニューが立ち上がらない。開発者プログラムも!」
湯雲さんは状況が全く読み込めないようでポカーン、としている。可愛いが今はそれどころではない。
「な、何が起こったでありますか?京太郎殿~!」
春樹やミクルも事の異変に気がついたのかこちらにやってくる。
「さっき試しに出したゴブリンだ...。バグかなにかで異常な数に増殖してプレワールドのキャパをオーバーしたんだ!ログアウトもできなくなってる!」
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