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プロローグ
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◇
2089年 新世代ダイヴ型VRMMORPG
〈Another Eve Online〉
8月1日 サービス開始予定。
突如、オンラインゲームストアの広告に登場したこのゲームにはこんな3つの説明が添えられた。
「量子コンピューターを用いた世界初のVRMMOであり、従来のゲームの1億倍のデータ量を搭載し自己アップデートを行うAIを搭載」
「人間の脳にあるすべての個性を司る感覚質〈クオリア〉を読み取ることでプレイヤーに独自の異能力が与えられる異能力システム〈ティア〉を実現」
「ゲーム内アイテムを現実へ持ち帰るシステム〈ヴィラ〉を実現」
いずれも現代の技術では到底考えられないようなものばかりで開発会社も不明ということもありRabitter〈Virtual Social Networking Service〉では大量のゲーマー達から反感を買った。
ここ最近のダイヴ型VRMMOはただでさえシステムエラーや感覚同期に問題があるにも関わらずこんな夢のようなものができるはずもない、と。
いわゆる視覚、聴覚、感覚、味覚、嗅覚といった五感からその他多岐に渡る数十あまりの感覚を専用ハードを用いて、仮想神経として再現するVRMMO実現の試みは着実に進んではいるものの課題は多数残されているのだ。
結局のところ、様々なVRMMOが世に出るもそれらは〈ゲーム〉という範疇から抜け出せないままなのである。
つまりは誰も信用などしなかった。
そして誰も期待などしていないリリース日、
〈 Welcome to new World 〉
新たなる世界へようこそ
と公式からの一言が添えられサービスは開始された。
◇
受験生にとって夏休みは最後の希望である。志望校に足りない学力を一気に補い全国のライバルと差をつけなければならないあまりにも大切な時期だ。
そんなことは言われなくとも分かっている。
学区都市という学校や塾といった学習機関が密集する地域に住んでいるのだからそれなりに勉学への意識は高いのだ。
それに学区都市では自主的に勉強をし生活することを学ぶため親とは離れた環境で暮らしており、ここまで勉強に特化した環境は他には無いと言えるだろう。
そんな恵まれた俺が高校最後の夏休みに何をしているかと言うと、あるゲームの説明書を念入りに読んでいるのだった。
あるゲームというのは先日サービスが開始された最新のダイヴ型VRMMOである
〈Another Eve Online〉のことだ。
開始前は現実味のない仕様からデマやイタズラだと囁かれており内心、ホッとしていたがすべて紛れもない本物だということを知ると俺は絶望した。
数年前から始まったダイヴ型VRMMOのデビューすら果たせていない僕は特にフラストレーションが溜まっていたのだ。
それだけではない、更に大きな要因であるのが廃人ゲーマー兼女子中学生の妹の存在である。
実の妹ではなく親が養子として引き取った義妹、というやつだ。
仲は、普通としか言いようがない。お互い違う学校で妹は私学の名門中学に、おれは公立の高校に通いそもそもあまり顔を合わせることもない。
休日も妹はVRMMOに明け暮れている始末でなんでそれで成績優秀なのかが不思議だった。
もちろん違う部屋とはいえひとつ屋根の下で暮らしているため嫌でも妹のゲーマーっぷりに目がいかないはずもない。攻略本だとかゲームの公式グッズ...etc。そそられるアイテムはいくらでも部屋にある。
俺もやりたい、何度そう思ったことか。
そういった意味ではかなり過酷な環境を過ごしてきたと言える。
そして今回、それにトドメを指すようにAEOがリリースされ俺は耐えることを辞めた。
一目散にゲームショップへ向かい人が押し寄せる中、ギリギリのところで手に入れることができた。
リリースから3日で5000万本、既に売れているらしく次世代のVRMMOとして様々なメディアでも注目されている。
妹はリリース当日に買いにいったらしく一足はやくダイヴしているようだ。
ちょっとだけプレイして勉強に戻ればなんの心配もない。
そうして今、設定AIに手解きされながらダイヴ機〈スフィアゴーグル〉の初期設定を終えた。
スフィアゴーグルは目のライン1周を覆うゴツイ機械で視覚、聴覚、感覚、味覚、嗅覚といった五感からその他多岐に渡る数十あまりの感覚を専用ハードを用いて現実世界と遮断し、ゲーム内の仮想神経と同期させる。
この開発にどれだけの気力が注がれたことだろう。
「...よし」
妹とはゲーム内で落ち合う予定になっていた。
俺は生体認証を終えたことを確認すると遂に夢の世界へと〈ダイヴ〉する。
目の前が暗転し 仮想世界へと行く準備が始まったらしい。
ゲームは日々進化しているのだ。
もはやそれは娯楽ではなくもうひとつの世界として。
2089年 新世代ダイヴ型VRMMORPG
〈Another Eve Online〉
8月1日 サービス開始予定。
突如、オンラインゲームストアの広告に登場したこのゲームにはこんな3つの説明が添えられた。
「量子コンピューターを用いた世界初のVRMMOであり、従来のゲームの1億倍のデータ量を搭載し自己アップデートを行うAIを搭載」
「人間の脳にあるすべての個性を司る感覚質〈クオリア〉を読み取ることでプレイヤーに独自の異能力が与えられる異能力システム〈ティア〉を実現」
「ゲーム内アイテムを現実へ持ち帰るシステム〈ヴィラ〉を実現」
いずれも現代の技術では到底考えられないようなものばかりで開発会社も不明ということもありRabitter〈Virtual Social Networking Service〉では大量のゲーマー達から反感を買った。
ここ最近のダイヴ型VRMMOはただでさえシステムエラーや感覚同期に問題があるにも関わらずこんな夢のようなものができるはずもない、と。
いわゆる視覚、聴覚、感覚、味覚、嗅覚といった五感からその他多岐に渡る数十あまりの感覚を専用ハードを用いて、仮想神経として再現するVRMMO実現の試みは着実に進んではいるものの課題は多数残されているのだ。
結局のところ、様々なVRMMOが世に出るもそれらは〈ゲーム〉という範疇から抜け出せないままなのである。
つまりは誰も信用などしなかった。
そして誰も期待などしていないリリース日、
〈 Welcome to new World 〉
新たなる世界へようこそ
と公式からの一言が添えられサービスは開始された。
◇
受験生にとって夏休みは最後の希望である。志望校に足りない学力を一気に補い全国のライバルと差をつけなければならないあまりにも大切な時期だ。
そんなことは言われなくとも分かっている。
学区都市という学校や塾といった学習機関が密集する地域に住んでいるのだからそれなりに勉学への意識は高いのだ。
それに学区都市では自主的に勉強をし生活することを学ぶため親とは離れた環境で暮らしており、ここまで勉強に特化した環境は他には無いと言えるだろう。
そんな恵まれた俺が高校最後の夏休みに何をしているかと言うと、あるゲームの説明書を念入りに読んでいるのだった。
あるゲームというのは先日サービスが開始された最新のダイヴ型VRMMOである
〈Another Eve Online〉のことだ。
開始前は現実味のない仕様からデマやイタズラだと囁かれており内心、ホッとしていたがすべて紛れもない本物だということを知ると俺は絶望した。
数年前から始まったダイヴ型VRMMOのデビューすら果たせていない僕は特にフラストレーションが溜まっていたのだ。
それだけではない、更に大きな要因であるのが廃人ゲーマー兼女子中学生の妹の存在である。
実の妹ではなく親が養子として引き取った義妹、というやつだ。
仲は、普通としか言いようがない。お互い違う学校で妹は私学の名門中学に、おれは公立の高校に通いそもそもあまり顔を合わせることもない。
休日も妹はVRMMOに明け暮れている始末でなんでそれで成績優秀なのかが不思議だった。
もちろん違う部屋とはいえひとつ屋根の下で暮らしているため嫌でも妹のゲーマーっぷりに目がいかないはずもない。攻略本だとかゲームの公式グッズ...etc。そそられるアイテムはいくらでも部屋にある。
俺もやりたい、何度そう思ったことか。
そういった意味ではかなり過酷な環境を過ごしてきたと言える。
そして今回、それにトドメを指すようにAEOがリリースされ俺は耐えることを辞めた。
一目散にゲームショップへ向かい人が押し寄せる中、ギリギリのところで手に入れることができた。
リリースから3日で5000万本、既に売れているらしく次世代のVRMMOとして様々なメディアでも注目されている。
妹はリリース当日に買いにいったらしく一足はやくダイヴしているようだ。
ちょっとだけプレイして勉強に戻ればなんの心配もない。
そうして今、設定AIに手解きされながらダイヴ機〈スフィアゴーグル〉の初期設定を終えた。
スフィアゴーグルは目のライン1周を覆うゴツイ機械で視覚、聴覚、感覚、味覚、嗅覚といった五感からその他多岐に渡る数十あまりの感覚を専用ハードを用いて現実世界と遮断し、ゲーム内の仮想神経と同期させる。
この開発にどれだけの気力が注がれたことだろう。
「...よし」
妹とはゲーム内で落ち合う予定になっていた。
俺は生体認証を終えたことを確認すると遂に夢の世界へと〈ダイヴ〉する。
目の前が暗転し 仮想世界へと行く準備が始まったらしい。
ゲームは日々進化しているのだ。
もはやそれは娯楽ではなくもうひとつの世界として。
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