8 / 8
魔物集うダンスパーティー 〜オベロン王のカジノケーキ〜
しおりを挟む
ウィル・オー・ウィスプ
月の笑う夜、ハロウィンの日にだけ開かれる魔物だけのダンスパーティーを主催する魔物
物静かで理知的、謎めいている
お菓子作りは好きだが得意とは言えない腕前
ベフェーナ
イタリアに住む不老長寿の魔女
お姉さん気質で面倒見がいい
ウィルとは数世紀来の親友
手先が器用でお菓子作りもお手のもの
オリバー
物腰柔らかいヴァンパイア
お菓子作りが趣味で毎年ハロウィンの日に開かれる「魔物だけのダンスパーティー」に手作りお菓子を持参している
メアリー
負けん気の強いダンピール
自称「魔物のパティシエール」でお菓子作りでは右に出る者はいないと自負している
オリバーのことを勝手にライバル視している
オベロン
全ての妖精を束ね、統治する妖精の王
少年のような容貌だが、大人のように狡賢く、享楽的
誤解を招く物言いが多く、そのせいで妻とは喧嘩が絶えないようだ
ティターニア
全ての妖精を支配し、服従させる妖精の女王
プライドが高く、高圧的。オベロンよりも「王」としての威厳がある
オベロンの妻
ジーク
魂を刈り取る妖精・デュラハン
雌雄混同体で、決まった性別がない妖精
口数が少なく実直な性格。思ったことはズカズカというタイプ
+++
妖精界・オベロン王の居城
ジーク「我らが妖精の主人にして統治者・オベロン王。デュハランのジーク、御前に参じました」
オベロン「よく来てくれた、ジーク。楽にして良い」
ジーク「私に何かご用でしょうか?」
オベロン「うむ。近頃、闇の季節になると、魔物たちがパーティーを開くという話を聞いたが真(まこと)か?」
ジーク「はい。彼らは闇の季節の到来、ハロウィンを祝し、夜通しでパーティーを開いていると聞きます」
オベロン「ほぉ。闇の季節の到来を祝福するか」
ジーク「闇の季節は彼ら魔物にとって過ごしやすい季節。光の季節では魔物は力を発揮できませんから」
オベロン「なるほどな…。闇の季節、ハロウィン、か…」
ジーク「オベロン王、如何しましたか?」
オベロン「ジーク。そなたは闇に属する妖精だったな」
ジーク「はい」
オベロン「その魔物だけのパーティーを主催する者を知っているか?」
ジーク「はい、存じています」
オベロン「そうか、そうか!それは僥倖(ぎょうこう)!では、その者に伝えよ。妖精界の王・オベロンが闇の季節の到来、魔物だけのハロウィンパーティーに出向くとな!」
+++
ウィル・オー・ウィスプの居城・ウィルの部屋
ベフェーナ「オベロン王がパーティーに出席するですって!?」
ウィル「ベフェーナ!声が大きいですよ!」
ベフェーナ「…どうするのよ。そんな大物が魔物だけのパーティーに参加するなんて…」
ウィル「わたしが聞きたいです…。思った以上に厄介なことになりました…」
ベフェーナ「オベロン王がパーティーの存在をどこで知ったのか、とかそんなこと言ってる場合じゃないわね」
ウィル「ええ。こちらに出向くと言っている以上、追い返す訳にも行きません…」
ベフェーナ「どうするの?例年通りのダンスパーティーにする訳にはいかないでしょう」
ウィル「そうですよね…。相手はあのオベロン王。相応のおもてなしをしなければ」
ベフェーナ「はぁ…ただ各自でお菓子を持ち寄って踊るだけのパーティーなのに、どうしてこうなったのかしら」
ウィル「…言わないでください。とにかく、当日のもてなしプランを決めなければ」
+++
メアリー「オベロン王がパーティーに出席する!?」
オリバー「それはまた…急な話ですね。もうパーティーの2週間前だと言うのに」
ウィル「ええ。それで少々困っていまして…元々、ハロウィンのダンスパーティーは大人しい魔物ばかりが参加する、身内向けのパーティーだったので…大物の来賓が来ることを想定していなくて…」
メアリー「事情は分かりました、Mr.ウィル。私とオリバー様を呼んだのはなにか手伝って欲しいことがあるから、ですよね?」
ウィル「はい。お二人に来賓用のケーキの作成をお願いしたいのです」
オリバー「来賓用のケーキ、ですか?」
ウィル「妖精界の王をお招きするにあたって、普段通りのパーティーにするわけにもいきません。なにかしら、特別なお菓子をお出ししなければと思いまして」
オリバー「なるほど。それで、お菓子作りが得意な僕とメアリーを呼んだというわけですね」
ウィル「左様です。私が作ることも検討したのですが…その…」
ベフェーナ「私が止めたの。パーティーの主催をして、来賓の相手、それからお菓子を用意して…なんて、いくらなんでも首が回らないもの」
オリバー「ごもっともですね」
メアリー「そういう事なら、いくらでも協力しますわ!魔物のパティシエールの名が伊達じゃないこと、見せてあげましょう!」
オリバー「微力ながら、お手伝いさせていただきます」
ウィル「助かります、お二人とも」
ベフェーナ「それじゃあ、私もサポートに回ろうかしら」
ウィル「いいのですか?ベフェーナ」
ベフェーナ「もちろん。毎年パーティーに招待してもらっているお礼よ」
ウィル「皆さん…感謝いたします」
+++
妖精界・オベロン王の居城
オベロン「ほお、わざわざ招待状を送ってくるとは、随分律儀なやつだな。ウィル・オー・ウィスプという魔物は」
ジーク「妖精界の王が出向くのですから、招待状くらい送らねば不敬になると思ったのでしょう」
オベロン「ふふっ、魔物とはいえ、わきまえているようで結構。して、ジークよ。魔物だけのダンスパーティーとは、どのようなパーティーだ?」
ジーク「どのような…と言われましても。普通のダンスパーティーですよ。菓子を各自で持ち寄ってビュッフェスタイルで楽しむだけです」
オベロン「…ふぅむ。ただ踊って菓子をつまむだけか。面白みがないな」
ジーク「面白み、ですか?」
オベロン「ハロウィンなのだろう?人間の世界では「Trick and Treat」と言って、お菓子を貰った相手にイタズラをするそうじゃないか」
ジーク「恐れながらオベロン王。イタズラは合っていますが、少々誤解があります。正しくは「Trick or Treat」お菓子を貰ったら、貰った相手にはイタズラが出来ないというルールです」
オベロン「む。そうなのか。…パーティーの参加者も主催も魔物。だというのに、イタズラの一つもしないというのか?」
ジーク「ウィル・オー・ウィスプが招待する魔物は、総じて大人しい者達ばかりで、イタズラを仕掛けるものはいないそうですよ」
オベロン「そうか…。それはつまらんなぁ。妖精ならば、喜んでイタズラするというのに。……ハロウィン…イタズラ…くっ、ふふっ…」
ジーク「どうかされましたか?」
オベロン「いやなに…。楽しいことを思いついただけだ」
ジーク「…もしや、イタズラですか?」
オベロン「ああ。魔物が仕掛けぬなら、妖精である予が仕掛けるのも一興かと思うてな。菓子は各自で持ち寄りだったな。ならば、予もとっておきのものを用意せねば、妖精王の名が廃れてしまう」
ティターニア「随分楽しそうですわね。あなた」
オベロン「おお、ティターニア。ジャム作りはひと段落したのかな?」
ティターニア「ええ。今年の洋梨はどれも瑞々しく甘くて、とても良い出来ですわ。紅茶にも合いそうです」
オベロン「ほぉ。出来上がるのが待ち遠しいな。…そうだ、ティターニア。そなたもハロウィンパーティーに出席するのはどうだ?」
ティターニア「ハロウィンパーティー?闇の季節のパーティーですか?」
オベロン「ああ。ウィル・オー・ウィスプが主催する魔物だけのダンスパーティーだ。面白そうなので出席しようと思うてな」
ティターニア「まぁ。魔物だけの…とは。随分狭量ね。魔物以外呼ばないと公言しているようなものじゃない」
オベロン「だから予が出席するのだ。ハロウィンは光の季節から闇の季節に移り変わる特別な日。昼と夜の境目。闇の季節の間、魔物共が幅を利かせぬよう、妖精界の王として牽制してやろうと思うてな」
ティターニア「頼もしいこと。けれど、あなたのことだもの。建前はそれで、実際はパーティーに乗じてイタズラでも企んでいるのではなくて?」
オベロン「先程の話、聞いていたな?」
ティターニア「ほんの少しだけですわ。…そうね、あなたが出席するのなら私もそのパーティーに行ってみようかしら」
オベロン「決まりだな。ジーク」
ジーク「かしこまりました。主催のウィル・オー・ウィスプに伝えてまいります」
+++
後日。
ウィル・オー・ウィスプの居城
ウィル「…いま、なんとおっしゃいました?」
ジーク「ティターニア女王がパーティーに出席される。粗相のないようにしろ」
ウィル「…………」(頭を抱えている)
ジーク「聞こえなかったのか?ティターニア女王が…」
ウィル「分かってます!もういいです!2度も言わないでください!」(ジークの言葉に被せるように)
ジーク「…顔色が一段と悪くなったな、ウィル・オー・ウィスプ。少しやつれたか?」
ウィル「…誰のせいだと思って……」
ジーク「我らのせいだと言いたいのか?」
ウィル「パーティーの1週間前に言われる身にもなってください!こっちは大変なんですよ!」
ジーク「…急な出席になったことは、女王に代わって詫びよう。申し訳ない。…パーティーの準備は進んでいるのか?」
ウィル「大体終わりました。けれど、急な来賓が決まりましたから、もう一度パーティーの内容を見直さなければいけません」
ジーク「…例年通りのダンスパーティーにすればいいだろう。何か問題でも?」
ウィル「大いにあるでしょう!例年通りのパーティーで、オベロン王とティターニア女王のご機嫌を損ねたらどうすれば…下手したら、もうパーティーが開催できなくなるかもしれません…」
ジーク「……確かに、夫婦揃って気まぐれだからな、何をするか分からない。パーティーが開催できなくなるだけで済めばいいが、最悪、この城が無くなるかもしれない」
ウィル「……ジーク殿、協力してもらえないでしょうか?」
ジーク「……協力って、パーティーの内容についてか?」
ウィル「はい。オベロン王とティターニア女王が喜びそうな催しを一緒に考えて欲しいんです。魔物と妖精の価値観は違います。ぜひ、妖精の視点からパーティーに関する意見を頂きたい」
ジーク「協力したいのは山々だが…私も仕事があるからな…」
ウィル「そこをなんとか!」
ジーク「……妖精は、陽気でイタズラ好きな者が多い。それは、王と女王も変わらない」
ウィル「えっと…それで?」
ジーク「オベロン王は此度のハロウィンパーティーでイタズラを仕掛けると言っていた。どんな内容かは知らないが、いずれにしてもイタズラで返してやればお喜びになるだろう」
ウィル「イタズラ…ですか?」
ジーク「ああ。危険のない可愛げなイタズラならば、あの方々も笑って許してくれるだろう」
ウィル「えっと…危険のない可愛げなイタズラ…?というと…グロテスクなものはダメってことですか?」
ジーク「…むしろ何故いいと思った」
ウィル「我々は魔物ですよ?それ以外に理由がありますか?」
ジーク「…端的かつ明確な理由をどうも」
ウィル「それに、パーティーのビュッフェには参加者が仕留めた獲物の料理やスイーツが並びますから、グロテスクじゃないのは難しいかと」
ジーク「…参考程度に聞いておくが…どんなものが並ぶんだ?」
ウィル「まず血のワインは欠かせませんし、新鮮な生レバーや胃袋の野菜蒸し。スイーツならアイボールショコラやバターフィンガー、舌のキャラメリゼなど、色々出ますね」
ジーク「……どれも癖がありそうだな。まぁ、その点は王も女王も受け入れてくれるだろう、多分…」
ウィル「いま、多分って言いました?」
ジーク「気のせいだ。…私が助言できるのはここまで。あとはそちらで頑張ってもらいたい」
ウィル「そんな!中途半端なヒントだけ寄越されても困りますよ!もっと具体的に教えてください!」
ジーク「…危険のない可愛げのあるイタズラだと言ったが?」
ウィル「それが何か分からないから困ってるんです!可愛げのあるイタズラってなんですか?」
ジーク「来賓の頭をロバに変えたり、惚れ薬を盛ったり…」
ウィル「そんなことしたら、不敬になりませんか?」
ジーク「…なるな」
ウィル「……どうすれば」(頭を抱えている)
ジーク「…アイディア出しくらいは手伝う」
ウィル「ありがとうございます…」
+++
ハロウィンパーティー当日
ウィル・オー・ウィスプの居城
ウィル「オベロン王。ティターニア女王。ようこそ魔物だけのハロウィンパーティーへ。私は今宵のパーティーの主催、ウィル・オー・ウィスプと申します」
オベロン「そなたがウィル・オー・ウィスプか。此度のパーティーへの招待、感謝する」
ウィル「とんでもございません。どうぞ、闇の季節の到来、昼と夜の境目を、楽しめますように」
+++
ウィル・オー・ウィスプの居城
ダンスホール
メアリー「オリバー様!いらっしゃいましたよ、妖精王と女王!…遠くから見るだけでもすごいオーラ…。さすがは、光に属する妖精の長ですわね」
オリバー「…そうですね。あまりにも強い力でなんだか闇が霞んでしまいそうです」
メアリー「オリバー様…?大丈夫ですか?顔色が…」
オリバー「…失礼。レディの前で情けないところを…。どうもあの光のオーラに当てられたらしくて…。…もう大丈夫です」
メアリー「それならいいのですが、ご無理はなさらぬよう」
オリバー「ありがとうございます。…Mr.ウィルに任されましたから、今宵のパーティー、妖精王、女王も驚くような良きものにしましょう」
メアリー「はい!」
+++
ティターニア「魔物のダンスパーティーと聞いていたから、どんなものかと思っていましたけど、案外普通ですのね」
オベロン「うむ。ジークの話通りだな。一般的なダンスパーティーと変わらぬ。…面白みがない」
ティターニア「あなた、例のものは仕込んできたのでしょう?時期は待つべきではなくて?」
オベロン「無論、そのつもりだ。機は熟してからがTrickの鉄則だ」
オベロン、ティターニアの元へベフェーナが歩み寄る。
ベフェーナ「オベロン王、ティターニア女王。お初にお目にかかります。イタリアの魔女・ベフェーナと申します。パーティーは楽しめていますか?」
ティターニア「初めまして、ベフェーナ。癖のある料理が多いけれど、とても面白く楽しめているわ」
ベフェーナ「それはよかった。このあと、来賓用のケーキをお持ちするので、楽しみにしていてください」
オベロン「何、ケーキだと?そのようなものを用意してくれたのか」
ベフェーナ「ええ。一流のパティシエールのケーキです。見た目も華やかなので、じっくりと味わってください」
オリバーとメアリーがケーキの乗ったキッチンカートを運んでくる
オリバー「Ms.ベフェーナ。後は我々が」
ベフェーナ「ええ。後はお願いするわ。…では、どうぞパーティーを楽しんで」
オリバー「お初にお目にかかります。妖精王、妖精女王。私は、ヴァンパイアのオリバーと申します」
メアリー「初めまして。妖精王様、女王様。私は、ダンピールのメアリーと申します。オリバー様と一緒にお二人のケーキをお作りしました。どうぞお召し上がりください」
オリバー、ケーキに被せられたクロッシュをとる
オベロン「これは…カジノケーキか!」
ティターニア「まぁ…なんて可愛らしいの。ベリー色の渦巻き模様で、とても愛らしいわ」
オベロン「ケーキの上にあるのは薔薇の形をしたマジパンか。色も美しい紅色で、ほのかに薔薇のジャムが香ってくる。見た目も華やかで美しい」
オリバー「お気に召したようで、光栄です」
メアリー「薔薇のカジノケーキのほかに、こちらもどうぞ。名付けて『パンプキン・クインテッド』です」
ティターニア「あら、こちらも可愛らしい。ジャック・オー・ランタンのお菓子の上に楽器が乗っているわ」
オベロン「これは…フルート、ギター、ハープ、ブズーギ、フィルド(ヴァイオリンのこと)だな。どれも細かいな」
オリバー「そして、こちらも。『パンプキン・クインテッド』と対になっています。『アイリッシュ・ダンス』と名付けたケーキです」
ティターニア「まぁ…!小さなお人形が笑顔でダンスを踊っているわ!」
オベロン「ほぉ…見ていると、こちらまで気持ちが楽しくなってくるな」
メアリー「では、ここでさらに魔法をかけましょう!」
オリバー「かぼちゃよ、かぼちゃ。美しい音楽を奏でたまえ」
メアリー「花よ、踊り子よ。美しく舞い、見るものを魅了したまえ」
オリバー・メアリー「Trick and Treat!」
魔法が発動し、ケーキたちが動き出す
オベロン「おお…!これは…なんということだ!かぼちゃに乗った楽器たちが、音楽を奏でている!」
ティターニア「こちらもすごいわ!ケーキの上のお人形が、くるくると宙で踊っているのよ!薔薇の香りも先ほどよりずっと甘く香ってくるわ」
オベロン「なるほど。これがそなた達の『Trick and Treat』というわけだな?」
オリバー「はい」
メアリー「お気に召しましたか?」
ティターニア「ええ、とても」
オベロン「うむ!最高なTrick!実に満足だ!」
+++
バルコニーからそっと見守るウィルとベフェーナ。
ウィル「うまくいったようですね、よかった…。ありがとうございます、ベフェーナ。おかげで助かりました」
ベフェーナ「あれくらいの魔法ならお安い御用よ。それに、私はオリバーとメアリーにコツを教えただけだもの」
ウィル「後であのお二人にもお礼を言っておかねば」
ベフェーナ「そうね」
ジーク「パーティーは楽しめているか?」
暗がりからジークが現れる。
ウィル「ジーク殿!どうしてこちらに?パーティーには出席できないと言っていませんでしたか?」
ジーク「ロビン・グッドフェローから至急の要件を言い渡されて、ここに寄らせてもらった。もうすぐ行かなければいけない」
ベフェーナ「至急の要件って…その手に抱えているケーキボックスのこと?」
ジーク「ああ。…オベロン王が用意したものだ」
ウィル「え…勝手に回収していいんですか?」
ジーク「むしろ、回収しなきゃダメなものだ」
ウィル「はい…?それって、どういう…」
ジーク「あまり話している時間はない。これで失礼する。…今度はゆっくり茶でも飲みにくる」
ジーク、暗がりの中へ消えていく
ウィル「…行ってしまいました…。なんだったんでしょう。回収しなきゃダメなものって。ベフェーナは何か知っていますか?」
ベフェーナ「さぁ?」
+++
ジーク「妖精の鱗粉が使われたケーキなんて、危なすぎる。瞼に塗るのであれば一日で解毒できるほれ薬だが、魔物が口にすれば何が起こるかわからないぞ…。オベロン王…恐ろしい人だ」
+++
ウィル「その後、オベロン王は持参したケーキを参加者に振る舞い、しばらくダンスホールを眺め、どこか不思議そうに首を傾げている姿を見かけた」
オベロン「おかしいな…今頃、妖精の鱗粉の効果で、ダンスホールにいる魔物達全員が恋に色めきたつ頃だというのに…誰にもその様子がない…不思議だな」
ウィル「たまたま聞こえてきたオベロン王の言葉。私は真っ先に今度のお茶会にジーク殿を招待しようと心に決めたのだった」
「完」
月の笑う夜、ハロウィンの日にだけ開かれる魔物だけのダンスパーティーを主催する魔物
物静かで理知的、謎めいている
お菓子作りは好きだが得意とは言えない腕前
ベフェーナ
イタリアに住む不老長寿の魔女
お姉さん気質で面倒見がいい
ウィルとは数世紀来の親友
手先が器用でお菓子作りもお手のもの
オリバー
物腰柔らかいヴァンパイア
お菓子作りが趣味で毎年ハロウィンの日に開かれる「魔物だけのダンスパーティー」に手作りお菓子を持参している
メアリー
負けん気の強いダンピール
自称「魔物のパティシエール」でお菓子作りでは右に出る者はいないと自負している
オリバーのことを勝手にライバル視している
オベロン
全ての妖精を束ね、統治する妖精の王
少年のような容貌だが、大人のように狡賢く、享楽的
誤解を招く物言いが多く、そのせいで妻とは喧嘩が絶えないようだ
ティターニア
全ての妖精を支配し、服従させる妖精の女王
プライドが高く、高圧的。オベロンよりも「王」としての威厳がある
オベロンの妻
ジーク
魂を刈り取る妖精・デュラハン
雌雄混同体で、決まった性別がない妖精
口数が少なく実直な性格。思ったことはズカズカというタイプ
+++
妖精界・オベロン王の居城
ジーク「我らが妖精の主人にして統治者・オベロン王。デュハランのジーク、御前に参じました」
オベロン「よく来てくれた、ジーク。楽にして良い」
ジーク「私に何かご用でしょうか?」
オベロン「うむ。近頃、闇の季節になると、魔物たちがパーティーを開くという話を聞いたが真(まこと)か?」
ジーク「はい。彼らは闇の季節の到来、ハロウィンを祝し、夜通しでパーティーを開いていると聞きます」
オベロン「ほぉ。闇の季節の到来を祝福するか」
ジーク「闇の季節は彼ら魔物にとって過ごしやすい季節。光の季節では魔物は力を発揮できませんから」
オベロン「なるほどな…。闇の季節、ハロウィン、か…」
ジーク「オベロン王、如何しましたか?」
オベロン「ジーク。そなたは闇に属する妖精だったな」
ジーク「はい」
オベロン「その魔物だけのパーティーを主催する者を知っているか?」
ジーク「はい、存じています」
オベロン「そうか、そうか!それは僥倖(ぎょうこう)!では、その者に伝えよ。妖精界の王・オベロンが闇の季節の到来、魔物だけのハロウィンパーティーに出向くとな!」
+++
ウィル・オー・ウィスプの居城・ウィルの部屋
ベフェーナ「オベロン王がパーティーに出席するですって!?」
ウィル「ベフェーナ!声が大きいですよ!」
ベフェーナ「…どうするのよ。そんな大物が魔物だけのパーティーに参加するなんて…」
ウィル「わたしが聞きたいです…。思った以上に厄介なことになりました…」
ベフェーナ「オベロン王がパーティーの存在をどこで知ったのか、とかそんなこと言ってる場合じゃないわね」
ウィル「ええ。こちらに出向くと言っている以上、追い返す訳にも行きません…」
ベフェーナ「どうするの?例年通りのダンスパーティーにする訳にはいかないでしょう」
ウィル「そうですよね…。相手はあのオベロン王。相応のおもてなしをしなければ」
ベフェーナ「はぁ…ただ各自でお菓子を持ち寄って踊るだけのパーティーなのに、どうしてこうなったのかしら」
ウィル「…言わないでください。とにかく、当日のもてなしプランを決めなければ」
+++
メアリー「オベロン王がパーティーに出席する!?」
オリバー「それはまた…急な話ですね。もうパーティーの2週間前だと言うのに」
ウィル「ええ。それで少々困っていまして…元々、ハロウィンのダンスパーティーは大人しい魔物ばかりが参加する、身内向けのパーティーだったので…大物の来賓が来ることを想定していなくて…」
メアリー「事情は分かりました、Mr.ウィル。私とオリバー様を呼んだのはなにか手伝って欲しいことがあるから、ですよね?」
ウィル「はい。お二人に来賓用のケーキの作成をお願いしたいのです」
オリバー「来賓用のケーキ、ですか?」
ウィル「妖精界の王をお招きするにあたって、普段通りのパーティーにするわけにもいきません。なにかしら、特別なお菓子をお出ししなければと思いまして」
オリバー「なるほど。それで、お菓子作りが得意な僕とメアリーを呼んだというわけですね」
ウィル「左様です。私が作ることも検討したのですが…その…」
ベフェーナ「私が止めたの。パーティーの主催をして、来賓の相手、それからお菓子を用意して…なんて、いくらなんでも首が回らないもの」
オリバー「ごもっともですね」
メアリー「そういう事なら、いくらでも協力しますわ!魔物のパティシエールの名が伊達じゃないこと、見せてあげましょう!」
オリバー「微力ながら、お手伝いさせていただきます」
ウィル「助かります、お二人とも」
ベフェーナ「それじゃあ、私もサポートに回ろうかしら」
ウィル「いいのですか?ベフェーナ」
ベフェーナ「もちろん。毎年パーティーに招待してもらっているお礼よ」
ウィル「皆さん…感謝いたします」
+++
妖精界・オベロン王の居城
オベロン「ほお、わざわざ招待状を送ってくるとは、随分律儀なやつだな。ウィル・オー・ウィスプという魔物は」
ジーク「妖精界の王が出向くのですから、招待状くらい送らねば不敬になると思ったのでしょう」
オベロン「ふふっ、魔物とはいえ、わきまえているようで結構。して、ジークよ。魔物だけのダンスパーティーとは、どのようなパーティーだ?」
ジーク「どのような…と言われましても。普通のダンスパーティーですよ。菓子を各自で持ち寄ってビュッフェスタイルで楽しむだけです」
オベロン「…ふぅむ。ただ踊って菓子をつまむだけか。面白みがないな」
ジーク「面白み、ですか?」
オベロン「ハロウィンなのだろう?人間の世界では「Trick and Treat」と言って、お菓子を貰った相手にイタズラをするそうじゃないか」
ジーク「恐れながらオベロン王。イタズラは合っていますが、少々誤解があります。正しくは「Trick or Treat」お菓子を貰ったら、貰った相手にはイタズラが出来ないというルールです」
オベロン「む。そうなのか。…パーティーの参加者も主催も魔物。だというのに、イタズラの一つもしないというのか?」
ジーク「ウィル・オー・ウィスプが招待する魔物は、総じて大人しい者達ばかりで、イタズラを仕掛けるものはいないそうですよ」
オベロン「そうか…。それはつまらんなぁ。妖精ならば、喜んでイタズラするというのに。……ハロウィン…イタズラ…くっ、ふふっ…」
ジーク「どうかされましたか?」
オベロン「いやなに…。楽しいことを思いついただけだ」
ジーク「…もしや、イタズラですか?」
オベロン「ああ。魔物が仕掛けぬなら、妖精である予が仕掛けるのも一興かと思うてな。菓子は各自で持ち寄りだったな。ならば、予もとっておきのものを用意せねば、妖精王の名が廃れてしまう」
ティターニア「随分楽しそうですわね。あなた」
オベロン「おお、ティターニア。ジャム作りはひと段落したのかな?」
ティターニア「ええ。今年の洋梨はどれも瑞々しく甘くて、とても良い出来ですわ。紅茶にも合いそうです」
オベロン「ほぉ。出来上がるのが待ち遠しいな。…そうだ、ティターニア。そなたもハロウィンパーティーに出席するのはどうだ?」
ティターニア「ハロウィンパーティー?闇の季節のパーティーですか?」
オベロン「ああ。ウィル・オー・ウィスプが主催する魔物だけのダンスパーティーだ。面白そうなので出席しようと思うてな」
ティターニア「まぁ。魔物だけの…とは。随分狭量ね。魔物以外呼ばないと公言しているようなものじゃない」
オベロン「だから予が出席するのだ。ハロウィンは光の季節から闇の季節に移り変わる特別な日。昼と夜の境目。闇の季節の間、魔物共が幅を利かせぬよう、妖精界の王として牽制してやろうと思うてな」
ティターニア「頼もしいこと。けれど、あなたのことだもの。建前はそれで、実際はパーティーに乗じてイタズラでも企んでいるのではなくて?」
オベロン「先程の話、聞いていたな?」
ティターニア「ほんの少しだけですわ。…そうね、あなたが出席するのなら私もそのパーティーに行ってみようかしら」
オベロン「決まりだな。ジーク」
ジーク「かしこまりました。主催のウィル・オー・ウィスプに伝えてまいります」
+++
後日。
ウィル・オー・ウィスプの居城
ウィル「…いま、なんとおっしゃいました?」
ジーク「ティターニア女王がパーティーに出席される。粗相のないようにしろ」
ウィル「…………」(頭を抱えている)
ジーク「聞こえなかったのか?ティターニア女王が…」
ウィル「分かってます!もういいです!2度も言わないでください!」(ジークの言葉に被せるように)
ジーク「…顔色が一段と悪くなったな、ウィル・オー・ウィスプ。少しやつれたか?」
ウィル「…誰のせいだと思って……」
ジーク「我らのせいだと言いたいのか?」
ウィル「パーティーの1週間前に言われる身にもなってください!こっちは大変なんですよ!」
ジーク「…急な出席になったことは、女王に代わって詫びよう。申し訳ない。…パーティーの準備は進んでいるのか?」
ウィル「大体終わりました。けれど、急な来賓が決まりましたから、もう一度パーティーの内容を見直さなければいけません」
ジーク「…例年通りのダンスパーティーにすればいいだろう。何か問題でも?」
ウィル「大いにあるでしょう!例年通りのパーティーで、オベロン王とティターニア女王のご機嫌を損ねたらどうすれば…下手したら、もうパーティーが開催できなくなるかもしれません…」
ジーク「……確かに、夫婦揃って気まぐれだからな、何をするか分からない。パーティーが開催できなくなるだけで済めばいいが、最悪、この城が無くなるかもしれない」
ウィル「……ジーク殿、協力してもらえないでしょうか?」
ジーク「……協力って、パーティーの内容についてか?」
ウィル「はい。オベロン王とティターニア女王が喜びそうな催しを一緒に考えて欲しいんです。魔物と妖精の価値観は違います。ぜひ、妖精の視点からパーティーに関する意見を頂きたい」
ジーク「協力したいのは山々だが…私も仕事があるからな…」
ウィル「そこをなんとか!」
ジーク「……妖精は、陽気でイタズラ好きな者が多い。それは、王と女王も変わらない」
ウィル「えっと…それで?」
ジーク「オベロン王は此度のハロウィンパーティーでイタズラを仕掛けると言っていた。どんな内容かは知らないが、いずれにしてもイタズラで返してやればお喜びになるだろう」
ウィル「イタズラ…ですか?」
ジーク「ああ。危険のない可愛げなイタズラならば、あの方々も笑って許してくれるだろう」
ウィル「えっと…危険のない可愛げなイタズラ…?というと…グロテスクなものはダメってことですか?」
ジーク「…むしろ何故いいと思った」
ウィル「我々は魔物ですよ?それ以外に理由がありますか?」
ジーク「…端的かつ明確な理由をどうも」
ウィル「それに、パーティーのビュッフェには参加者が仕留めた獲物の料理やスイーツが並びますから、グロテスクじゃないのは難しいかと」
ジーク「…参考程度に聞いておくが…どんなものが並ぶんだ?」
ウィル「まず血のワインは欠かせませんし、新鮮な生レバーや胃袋の野菜蒸し。スイーツならアイボールショコラやバターフィンガー、舌のキャラメリゼなど、色々出ますね」
ジーク「……どれも癖がありそうだな。まぁ、その点は王も女王も受け入れてくれるだろう、多分…」
ウィル「いま、多分って言いました?」
ジーク「気のせいだ。…私が助言できるのはここまで。あとはそちらで頑張ってもらいたい」
ウィル「そんな!中途半端なヒントだけ寄越されても困りますよ!もっと具体的に教えてください!」
ジーク「…危険のない可愛げのあるイタズラだと言ったが?」
ウィル「それが何か分からないから困ってるんです!可愛げのあるイタズラってなんですか?」
ジーク「来賓の頭をロバに変えたり、惚れ薬を盛ったり…」
ウィル「そんなことしたら、不敬になりませんか?」
ジーク「…なるな」
ウィル「……どうすれば」(頭を抱えている)
ジーク「…アイディア出しくらいは手伝う」
ウィル「ありがとうございます…」
+++
ハロウィンパーティー当日
ウィル・オー・ウィスプの居城
ウィル「オベロン王。ティターニア女王。ようこそ魔物だけのハロウィンパーティーへ。私は今宵のパーティーの主催、ウィル・オー・ウィスプと申します」
オベロン「そなたがウィル・オー・ウィスプか。此度のパーティーへの招待、感謝する」
ウィル「とんでもございません。どうぞ、闇の季節の到来、昼と夜の境目を、楽しめますように」
+++
ウィル・オー・ウィスプの居城
ダンスホール
メアリー「オリバー様!いらっしゃいましたよ、妖精王と女王!…遠くから見るだけでもすごいオーラ…。さすがは、光に属する妖精の長ですわね」
オリバー「…そうですね。あまりにも強い力でなんだか闇が霞んでしまいそうです」
メアリー「オリバー様…?大丈夫ですか?顔色が…」
オリバー「…失礼。レディの前で情けないところを…。どうもあの光のオーラに当てられたらしくて…。…もう大丈夫です」
メアリー「それならいいのですが、ご無理はなさらぬよう」
オリバー「ありがとうございます。…Mr.ウィルに任されましたから、今宵のパーティー、妖精王、女王も驚くような良きものにしましょう」
メアリー「はい!」
+++
ティターニア「魔物のダンスパーティーと聞いていたから、どんなものかと思っていましたけど、案外普通ですのね」
オベロン「うむ。ジークの話通りだな。一般的なダンスパーティーと変わらぬ。…面白みがない」
ティターニア「あなた、例のものは仕込んできたのでしょう?時期は待つべきではなくて?」
オベロン「無論、そのつもりだ。機は熟してからがTrickの鉄則だ」
オベロン、ティターニアの元へベフェーナが歩み寄る。
ベフェーナ「オベロン王、ティターニア女王。お初にお目にかかります。イタリアの魔女・ベフェーナと申します。パーティーは楽しめていますか?」
ティターニア「初めまして、ベフェーナ。癖のある料理が多いけれど、とても面白く楽しめているわ」
ベフェーナ「それはよかった。このあと、来賓用のケーキをお持ちするので、楽しみにしていてください」
オベロン「何、ケーキだと?そのようなものを用意してくれたのか」
ベフェーナ「ええ。一流のパティシエールのケーキです。見た目も華やかなので、じっくりと味わってください」
オリバーとメアリーがケーキの乗ったキッチンカートを運んでくる
オリバー「Ms.ベフェーナ。後は我々が」
ベフェーナ「ええ。後はお願いするわ。…では、どうぞパーティーを楽しんで」
オリバー「お初にお目にかかります。妖精王、妖精女王。私は、ヴァンパイアのオリバーと申します」
メアリー「初めまして。妖精王様、女王様。私は、ダンピールのメアリーと申します。オリバー様と一緒にお二人のケーキをお作りしました。どうぞお召し上がりください」
オリバー、ケーキに被せられたクロッシュをとる
オベロン「これは…カジノケーキか!」
ティターニア「まぁ…なんて可愛らしいの。ベリー色の渦巻き模様で、とても愛らしいわ」
オベロン「ケーキの上にあるのは薔薇の形をしたマジパンか。色も美しい紅色で、ほのかに薔薇のジャムが香ってくる。見た目も華やかで美しい」
オリバー「お気に召したようで、光栄です」
メアリー「薔薇のカジノケーキのほかに、こちらもどうぞ。名付けて『パンプキン・クインテッド』です」
ティターニア「あら、こちらも可愛らしい。ジャック・オー・ランタンのお菓子の上に楽器が乗っているわ」
オベロン「これは…フルート、ギター、ハープ、ブズーギ、フィルド(ヴァイオリンのこと)だな。どれも細かいな」
オリバー「そして、こちらも。『パンプキン・クインテッド』と対になっています。『アイリッシュ・ダンス』と名付けたケーキです」
ティターニア「まぁ…!小さなお人形が笑顔でダンスを踊っているわ!」
オベロン「ほぉ…見ていると、こちらまで気持ちが楽しくなってくるな」
メアリー「では、ここでさらに魔法をかけましょう!」
オリバー「かぼちゃよ、かぼちゃ。美しい音楽を奏でたまえ」
メアリー「花よ、踊り子よ。美しく舞い、見るものを魅了したまえ」
オリバー・メアリー「Trick and Treat!」
魔法が発動し、ケーキたちが動き出す
オベロン「おお…!これは…なんということだ!かぼちゃに乗った楽器たちが、音楽を奏でている!」
ティターニア「こちらもすごいわ!ケーキの上のお人形が、くるくると宙で踊っているのよ!薔薇の香りも先ほどよりずっと甘く香ってくるわ」
オベロン「なるほど。これがそなた達の『Trick and Treat』というわけだな?」
オリバー「はい」
メアリー「お気に召しましたか?」
ティターニア「ええ、とても」
オベロン「うむ!最高なTrick!実に満足だ!」
+++
バルコニーからそっと見守るウィルとベフェーナ。
ウィル「うまくいったようですね、よかった…。ありがとうございます、ベフェーナ。おかげで助かりました」
ベフェーナ「あれくらいの魔法ならお安い御用よ。それに、私はオリバーとメアリーにコツを教えただけだもの」
ウィル「後であのお二人にもお礼を言っておかねば」
ベフェーナ「そうね」
ジーク「パーティーは楽しめているか?」
暗がりからジークが現れる。
ウィル「ジーク殿!どうしてこちらに?パーティーには出席できないと言っていませんでしたか?」
ジーク「ロビン・グッドフェローから至急の要件を言い渡されて、ここに寄らせてもらった。もうすぐ行かなければいけない」
ベフェーナ「至急の要件って…その手に抱えているケーキボックスのこと?」
ジーク「ああ。…オベロン王が用意したものだ」
ウィル「え…勝手に回収していいんですか?」
ジーク「むしろ、回収しなきゃダメなものだ」
ウィル「はい…?それって、どういう…」
ジーク「あまり話している時間はない。これで失礼する。…今度はゆっくり茶でも飲みにくる」
ジーク、暗がりの中へ消えていく
ウィル「…行ってしまいました…。なんだったんでしょう。回収しなきゃダメなものって。ベフェーナは何か知っていますか?」
ベフェーナ「さぁ?」
+++
ジーク「妖精の鱗粉が使われたケーキなんて、危なすぎる。瞼に塗るのであれば一日で解毒できるほれ薬だが、魔物が口にすれば何が起こるかわからないぞ…。オベロン王…恐ろしい人だ」
+++
ウィル「その後、オベロン王は持参したケーキを参加者に振る舞い、しばらくダンスホールを眺め、どこか不思議そうに首を傾げている姿を見かけた」
オベロン「おかしいな…今頃、妖精の鱗粉の効果で、ダンスホールにいる魔物達全員が恋に色めきたつ頃だというのに…誰にもその様子がない…不思議だな」
ウィル「たまたま聞こえてきたオベロン王の言葉。私は真っ先に今度のお茶会にジーク殿を招待しようと心に決めたのだった」
「完」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
愛する義兄に憎まれています
ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。
義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。
許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。
2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。
ふわっと設定でサクっと終わります。
他サイトにも投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる