「白い世界で」

夕霧

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アンリとセシルー吸血種と人類ー

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アンリ
「白い世界」で戦う吸血種バンプの少年。
クールで無口。旧時代の遺跡で一人生活しているため、他人との関わり方を知らない。
魔物イヴィルを狩ることに長けていて、刀を使いこなす。
刀の他にも多彩な武器を使いこなす強靭な身体能力の持ち主。

セシル
「白い世界」で自警団「黒い翼」の副団長を務める人間の青年。
明朗快活とした性格で、細身の体に見合わない大食漢。カレーパンが好物。
動いている物体に干渉する魔法を使いこなす。
「対象を必ず射抜く」魔法を施した銃を使う。

テオ
自警団「黒い翼」の団長を務める青年。セシルの双子の片割れ。
クールで思慮深く、慎重派。慎重すぎるが故に機を逃すこともしばしば。
止まっている物体に干渉する魔法を使いこなす。
「対象を必ず射抜く」魔法を施した銃を使う。

吸血種バンプ
「白い世界」において魔法を使えない唯一の種族で魔物イヴィルに最も近いと言われている。
血を吸わなくても生きていられるが、その寿命は短命。吸血することで寿命を伸ばす。
心臓を刺されても死ぬことはない。腕や足を切断されてもそこから新しい腕や足が再形成されると言う強靭な再生能力を誇る。
寿命以外で死ぬことがないため他種族から蔑まれ、疎まれる対象となっている。

※役名がない文章はテオ役の人がナレーション(ト書)として読む。

+++

セシル「かつて高度な文明が栄えていたこの世界は、未曾有の大災害によって文明の全てが消失し、僅かに機械などの技術が残った。それまで人類のみが地上を支配していたが、大災害の後、人類に匹敵する、獣人ビースト竜人ドラゴニュート吸血種バンプ、エルフなどの種族が現れるようになった。これらの種族は独立し、人類と敵対、領地を争うようになった。そしてどの種族にも属さない、およそ人とは呼べない異形のもの、魔物イヴィルが蔓延り、これを退治する自警団や討伐隊が各種族に存在した」

アンリ「大災害の後、かつての文明で栄えた建造物が全て塩と化し、常時白く分厚い雲が空を覆い隠していることから、人々はこの世界を「白い世界」と呼ぶようになった。やがて領地争いが激化し、300年に渡る大きな戦争が起こった。終戦を迎えたのが創期そうき510年。今から40年前の出来事だった。それ以降、他種族の間で共存が求められるようになった。これは、人類と他種族の共存の物語」

+++

 「白い世界」人類の領地 自警団「黒い翼」の本拠地

セシル「魔物イヴィルの減少?」

テオ「ああ、自警団員の報告で、最近領地内に侵入する魔物イヴィルが少ないらしい」

セシル「ふーん。それで、今度旧時代の遺跡に行って調査するってわけね」

テオ「ああ。遺跡は魔物イヴィルの巣窟だ。減少した理由が何かわかるかもしれない」

セシル「……てか、減少ってそんな問題?魔物イヴィルが減るっていいことじゃん?」

テオ「弱い魔物イヴィルが減るとそれを食糧にしている大型の魔物イヴィルが現れるかもしれない。そういう被害を出さないように調査が必要だ」

セシル「ガッテン承知のすけ。で、肝心の調査っていつごろやんの?」

テオ「1週間後だ。3日後に獣人ビーストとの大事な会合がある。獣人ビーストの長がきて、我々の長と今後のことを話し合う。その警護に半数の自警団員が駆り出されるからな」

セシル「ああ、そっか。………じゃあ少人数で調査隊組んで行くってのはどう?」

テオ「大型の魔物イヴィルが現れた時どうする?少人数では戦闘からの離脱も難しいだろ」

セシル「考えすぎじゃない?大型の魔物イヴィルなんて、そんなホイホイでるもんじゃないでしょ」

テオ「万が一ということもある。…くれぐれも一人で軽率な行動はするなよ?」

セシル「わかってるよ」

+++

  翌日 旧時代の遺跡

セシル「……って言われて大人しくしてる俺じゃないんだよなぁ、これが」

  旧時代の遺跡を一人で探索するセシル

セシル「(旧時代、大災害が起こる前の時代。その時代のことは誰にもわからない。機械でできた街があったとか、夜中でも昼間のように明るかったとか、そんな御伽話のような話があるだけで、本当のところは誰にもわからない。当然だな。長寿の竜人ドラゴニュートでさえ、旧時代のことは何一つ知らないんだから。大災害がどんなものだったのかもわからない。ただ、少数の人類が生き残り、その後に他種族が現れたってことくらい)」

セシル「うーん?遺跡の奥の方まできたけど、全然いないじゃん魔物イヴィル

セシル「(遺跡とは旧時代の建物が連なっている土地のことだ。ここは魔物イヴィルの巣窟。弱いものから強いものまでいて、人は絶対に近寄らない)」

 探索を続けるセシル。その時、獣のような咆哮が聞こえた。

セシル「…っ!?(息を呑む)なんだ?魔物イヴィルの、叫び声?あっちからか!」

 セシルは叫び声がした方へ走り出した。

セシル「はぁ……はぁ……(走った息を整える)ここら辺だよな?……うお!?」

 後ずさるセシル。そこにはおびただしい数の魔物イヴィルが地面に転がっていた。

セシル「魔物イヴィルの……死体?こんなにたくさん……どうして?」

 またも叫び声が上がる。随分近くからだ。
 足早に近づくセシル。そこには倒れ伏した大型魔物イヴィルと一人の少年がいた。

セシル「君は………」

アンリ「………あんた、誰…?」

セシル「それはこっちのセリフだよ。君、なんでこんなところにいるの?その魔物イヴィルは君が倒したの?」

アンリ「……だとしたら?」

セシル「ありえないよ、君みたいな子供が、一人で魔物イヴィルを倒すなんて……」

アンリ「……子供じゃない、もう12だ」

セシル「いや、十分子供でしょ。とにかく、ここを離れた方がいいよ。家は?親はどこにいるの?」

アンリ「……なぜ教えなきゃいけない?」

セシル「そりゃ、心配だからに決まってるでしょ」

アンリ「家は近くだし、心配してもらう必要なんてない」

 少年はそれだけ言うと立ち去ってしまった。

セシル「あっ、ちょっと!……うそ、もういない……。なんだったんだ、あの子」

+++

自警団「黒い翼」の本拠地に戻ってきたセシルはその晩、テオに遺跡で出会った謎の少年のことを話した

テオ「……本拠地に姿がないと思ったら一人で遺跡に行っていたとはなぁ……。軽率な行動は慎むように言ったはずだが?」

セシル「テオ…痛い、痛いから…!頭ぐりぐりしないで!俺の頭蓋骨壊れちゃう!」

テオ「これ以降、軽率な行動はしないか?」

セシル「しません!隊長!!」

テオ「団長だ!」

セシル「イエッサー!団長!!」

テオ「よろしい」

セシル「はぁ……はぁ……ほ、本気で骨が砕けるかと思った……」

テオ「…遺跡に住む謎の少年だったか、その少年が一人で大型の魔物イヴィルを退治したのか?」

セシル「えー…俺のことは無視ですか……。うん、あの子が持っていた刀には魔物イヴィルの血が付着していたし、側に倒れていた魔物イヴィルを確認したら、太刀傷があったんだ」

テオ「12歳の少年が一人で魔物イヴィルを倒すとは……その少年に他種族の特徴はなかったか?」

セシル「全然。パッと見たかぎり、獣人ビーストとエルフの特徴はなかった、肌に鱗もなかったし竜人ドラゴニュートでもないと思うんだよね」

テオ「だとすると同じ人類か?……1人で遺跡に暮らしているようなことも言っていたんだな?」

セシル「うん。遺跡の奥の方で会って、家は近くだって言ってたから、やっぱり遺跡のどこかを根城にしてるんじゃないかな?」

テオ「セシル。明日になったら自警団を何人か派遣してその少年の保護に向かうぞ」

セシル「え?明日?」

テオ「魔物イヴィルを退治できる力があるとはいえ、このまま放置しておくことはできない。同じ人類ならなおさらだ」

セシル「そうだね。遺跡に向かう自警団の指揮は俺がとるよ。テオは万が一のために基地に残ってて」

テオ「そうさせてもらう。明日、気をつけろよ」

セシル「わかってる」

+++

 翌日、セシルは数人の自警団員をともなって遺跡へと向かった
 しかし、遺跡の奥に足を踏み入れてすぐ、大型の魔物イヴィルに襲われてしまう。他の自警団員を先に逃し、自身も目眩しなどを使いギリギリのところで戦闘から離脱した。

セシル「くそっ……他の団員とはぐれた……どうする…?通信器はさっきの戦闘で壊れて使えない……。遺跡の入り口まで戻るか……」

 思案するセシルの耳に魔物イヴィルの雄叫びが届いた。
 慌てて戦闘の態勢をとり、周囲を警戒するセシル。
 白い建造物の後ろから、魔物イヴィルの死体を肩に担いだ、少年が姿を現した

セシル「君は…!昨日の…!」

アンリ「あんた、また来たのか」

セシル「よかった!君を探していたんだ」

アンリ「探していた…?」

セシル「君を保護しにきた。遺跡にいたら魔物イヴィルに襲われるだろ?安全な領地にいた方が君のためだ」

アンリ「余計なお世話」

セシル「なっ…!余計なお世話って…!」

アンリ「俺はここで5年以上暮らしてる。今さらどこかの領地に行くつもりはない」

セシル「5年!?いや、今までそれでよかったかもしれないけど、君1人で対処できない魔物イヴィルが現れたらどうするつもりなんだ」

アンリ「その時はその時だ」

セシル「君ねぇ……!」

少年に詰め寄るセシル。その時、建物を薙ぎ倒しながら大型の魔物イヴィルが現れる

セシル「さっきの魔物イヴィル!」

アンリ「キマイラか……あんた、あれに狙われてんの?」

セシル「…どうやらそうみたい」

アンリ「……あんたのこと助けてやってもいいよ」

セシル「え?」

アンリ「そのかわり、俺に関わるな」

少年は肩に担いだ魔物イヴィルを下ろし刀を抜いた
そして目にも止まらぬ速さでキマイラに切り掛かる
一瞬の出来事、気づけば少年はキマイラの背後で刀を鞘へおさめた
程なくして、キマイラが地面に倒れ伏す

セシル「な………」

アンリ「そのキマイラ、好きにしなよ。俺はワームがあればいい」

そう言って少年は魔物イヴィルを再び肩に担ぎ、セシルに背を向けて歩き出した

セシル「ま、待って!やっぱり君は領地にくるべきだ!こんな危険なところにいたら、いつか……」

アンリ「死なないよ、俺は……吸血種バンプだから」

そう言い残した少年は今度こそ、背を向けて立ち去った。

セシル「吸血種バンプ……?うそだろ?あの子が……?」

+++

遺跡の入り口に戻り、はぐれた団員たち全員と合流できたセシルは、領地へと戻った
そして、自らを吸血種バンプだと明かした少年のことをテオに報告したのだった

テオ「吸血種バンプ、だと?」

セシル「本人はそう言ってたよ。でも、吸血種バンプだって言うなら、あの人間離れした動きにも納得がいく」

テオ「吸血種バンプは領地をもたず、群れることを嫌う種族。まさか遺跡に住み着いていたとはな…」

セシル「魔物イヴィルが減少したのも、彼が倒していたからかもしれない。…ねぇ、これからどうする?」

テオ「しばらく様子を見よう…。保護してやりたいところだが、彼自身がそれを望んでいないし、吸血種バンプだと人類に知られればもしかしたら……」

セシル「やばいかもね……。吸血種バンプって、体の構造は魔物イヴィルに近いんだよね?それで疎まれるって、聞いたことはある」

テオ「ああ。どの種族からも冷遇され、数は少ないと言われている。昔、エルフの領地では吸血種バンプ狩りもあったらしい」

セシル「……あのさ、吸血種バンプの少年くんのこと、俺に任せてくれないかな?」

テオ「どうするつもりだ?」

セシル「領地で保護するのは難しいかもしれないけど、放っておけないし、ちょくちょく様子を見に行こうと思って」

テオ「1人で行く気か?」

セシル「大人数で行くより、1人で行ったほうが少年くんも警戒しないでしょ?」

テオ「……好きにしろ。魔物イヴィルに気をつけろよ」

セシル「了解、隊長」

テオ「団長、だ」

セシル「イエッサー、団長!」

+++

翌日、セシルは朝早くから霧が立ち込める遺跡へと向かった

セシル「えっと……確か、この辺りのはず……」

遺跡の奥まで来たセシル。辺りを見回していると物陰から少年が姿を現した。

アンリ「……懲りないな、あんた。また来たのか」

セシル「やあ、少年くん」

アンリ「領地に来いって話は断ったはずだが?」

セシル「ああ、今日はその話をしに来たんじゃないよ。食料を渡しに来たんだ」

アンリ「…………………いらない」

セシル「目が泳いでるよ、少年くん。お腹空いてるんじゃない?」

アンリ「…………食料って、何持ってきたんだ?」

セシル「日持ちする携帯食料と、砂糖とかの調味料だよ。遺跡に住んでるから塩は簡単に手に入るかと思って」

アンリ「…………来い」

セシル「え?」

アンリ「家まで案内する。ついでになんか食わせてやるよ」

セシル「いいのかい?…ん?ていうか、食わせる…?」

アンリ「一応食料はある。が、もらえるもんはもらっておく」

連れてこられたのは遺跡の更に奥地にある白いトンネルだった。どうやら少年はここを根城にしているらしい。

セシル「へぇ、雨風も凌げるし、中々いいところに住んでるね、少年くん」

アンリ「…食料は適当なところに置いてくれ。なんか持ってくる」

セシル「手伝おうか?」

アンリ「いらない。すぐ食べられる」

セシル「ああ、そう?」

アンリ「お待たせ」

セシル「ず、ずいぶん大きな肉の燻製だね…。これはなんの肉なんだい?」

アンリ「昨日獲ったワーム」

セシル「………ワーム?」

アンリ「魔物イヴィルだよ。全長は3から6メートル。黒光りする鱗に覆われてて胴体が太い、焼き料理は不味いけど、燻製にすると美味い」

セシル「………………魔物イヴィルの肉なの?」

アンリ「……文句あるなら食べなくていい」

セシル「い、いや!食べる!い、いただきます…(恐る恐る燻製を食べる)ん!美味しい!程よく塩味が効いてて、パンチもある!うわぁ、これパンに挟んで食べたい!」

アンリ「…分けてやろうか?」

セシル「え!?ほんと、いいの!?」

アンリ「…最近獲りすぎて、処理に困ってたし」

セシル「…獲りすぎって…やっぱりここ最近の魔物イヴィル減少の原因って君なの?」

アンリ「俺じゃない」

セシル「じゃあ、何?」

アンリ「最近、ワームの卵が一斉に孵化したらしい。それで弱い魔物イヴィルを狙って食べてる」

セシル「どうしてそう言い切れるんだい?」

アンリ「ワームの数が異常に多い。それも卵から孵化したばかりの小さなワームだ」

セシル「…生まれたばかりの魔物イヴィル…なるほど。そいつらが原因だったんだ」

アンリ「ちなみに、その燻製肉は孵化したばかりのワームだ」

セシル「え?……俺、すごいもの食べてるんだな…」

アンリ「…魔物イヴィルの減少した原因を調べてるのか?」

セシル「ああ。弱い魔物イヴィルを食糧にしている奴が領地に現れる可能性もある。未然に防げるならそうしたい」

アンリ「……それなら魔物イヴィル避けを作ればいい」

セシル「魔物イヴィル避け?」

アンリ「ワームもそうだが、魔物イヴィルは匂いに敏感な個体が多い。領地の侵入されやすいところに刺激臭を発生させるものを置いておけば自然とこなくなる」

セシル「……刺激臭って…それ、下手したら公的テロじゃないかい?」

アンリ「不満があるなら、ワームを1体ずつ倒していくしかないな。最も孵化したワームを食糧にしている魔物イヴィルもいるからあまりおすすめしないけど」

セシル「…少年くんは魔物イヴィルにずいぶん詳しいんだね」

アンリ「…遺跡で魔物イヴィルに囲まれて生活してれば嫌でも知識はつく。退治の仕方とか、調理法とか」

セシル「少年くん、君は嫌がるかもしれないけど、またこうやって君の様子を見にくるよ。他種族だとしてもこれからの時代、助け合っていかないとね」

アンリ「………お節介なやつ」

セシル「あ、そうだ。俺ね、セシルって言うんだ。気軽にシスって呼んでいいからね」

アンリ「呼ばない」

セシル「つれないなぁ…」

+++

セシル「じゃあ、俺はそろそろ行くよ。燻製、ありがとね」

アンリ「…あの」

セシル「ん?」

アンリ「食料と調味料、ありがとう」

セシル「どういたしまして。また来るね、少年くん」

アンリ「アンリ」

セシル「え?」

アンリ「アンリ、それが俺の名前」

セシル「いい名前だね。また来るよ、アンリ!」

アンリ「…うん」

「完」
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