1 / 24
第1話~別れと出会い
しおりを挟む
「ママ…?」
少女は大人しかった。
泣くとママが怒るから。
必要以上に話せばママが怒るから。
だから、無視をされても泣かなかった。
ひっぱたかれても泣かなかった。
髪をちぎられても泣かなかった。
ママに捨てられても泣かなかった。
少女は生まれつき片目が見えなかった。
中絶に失敗したから。
中絶にはお金がかかるわ。
もう一度中絶をするには余裕がなかった。
仕方なく産んだのよ。
もう嫌だわ。
いっそ殺してよ。
「み…ず?」
少女は8歳。
外に出たことなんて、一度もなかった。
今日、初めて外に出た。
初めて見た空はどんより黒くて、水を落としていた。
少女は空を見上げ、胸いっぱいに息をすった。
鼻に水が入って、むせる。
少女は古びたドアを開けて、薄汚れた布で顔をふいた。
そこにある靴は、少女のものだけ。
少女は一人だった。
ここもいずれ追い出される。
それでも、少女は泣かなかった。
少し体が冷えただろうか。暖炉に火をつける。
髪の毛を乾かしつつ、カチカチのパンをかじる。
まずいとか、そんなことは思わなかった。
少女にとって、これが当たり前だった。
水が落ちてこなくなったと思ったら、それと同時に青くて澄んだ空が出てきた。
外に出る。
見上げると、爽やかにグラデーションされた水色がみえる。
何かがこみ上げてくる。
視界が滲み、あわてて頬を叩く。
すると、背後から焦げ臭いにおいがした。
振り返ると、家が燃えていた。
少女は、ただ唖然としているしかなかった。
さっきの暖炉だったのだろうか。
真っ青な空に真っ黒な煙が立ち込める。
激しくあがった炎が少し綺麗に見える。
少女が絶望することはなかった。
いつかはこの家にいられなくなる日はくる。
それが今日であったとしても、なんら不思議でもなかった。
騒ぐ人々を背後に、少女は駆け出した。
誰もいないところに行くために。
誰にも迷惑をかけずに死ぬために。
気がつくと、もう日が暮れていた。
ワンピースを一枚着ているだけだと、少し寒い。
薄暗い道には、誰も歩いていない。
ふと空を見上げると、小さな光が見えた。思わずため息がでる。
少しここで休もう。朝がきたら、また歩こう。
誰にも見られない場所に腰をかけると、体を丸めて目をつむった。
すると、近くで足音がした。
だんだんこちらに向かっている。
ゆっくり目を開け、周りを見回す。
すると、少し向こうに男が2人歩いているのが見えた。
慌ててしゃがみ込み、息を潜める。
こんな時間に歩いているなんて、絶対やばい。
見つかったら殺される。
死ぬために歩いていたのに、改めて死を身近に感じると、怖い。
何をされるかわからない。心臓が破裂しそうだ。
足音がとまる。汗はとまらない。
「はぁ~…なんもねーな…これじゃ帰れねぇ…」
「おい、今子供がいなかったか?」
「あぁ?ガキ?知るかよ」
「こんな時間に子供が歩いているのはおかしい」
「…だから何だってんだよ?」
「探そう」
「…見つけてどうする」
「ほっておくのは可哀想だろ」
「ボスにはなんて言うんだ」
「それは後で考えるさ。嘘をつく必要があるか?」
「男ならまだしも、女だったらどうすんだ?」
「レベッカが喜んで引き受けるだろ」
「はぁ…」
彼らは何を話しているのだろう?引き受ける?何を?
やっぱり私は殺されるのか?
「おい、いたぞ」
「あ…」
少女は大人しかった。
泣くとママが怒るから。
必要以上に話せばママが怒るから。
だから、無視をされても泣かなかった。
ひっぱたかれても泣かなかった。
髪をちぎられても泣かなかった。
ママに捨てられても泣かなかった。
少女は生まれつき片目が見えなかった。
中絶に失敗したから。
中絶にはお金がかかるわ。
もう一度中絶をするには余裕がなかった。
仕方なく産んだのよ。
もう嫌だわ。
いっそ殺してよ。
「み…ず?」
少女は8歳。
外に出たことなんて、一度もなかった。
今日、初めて外に出た。
初めて見た空はどんより黒くて、水を落としていた。
少女は空を見上げ、胸いっぱいに息をすった。
鼻に水が入って、むせる。
少女は古びたドアを開けて、薄汚れた布で顔をふいた。
そこにある靴は、少女のものだけ。
少女は一人だった。
ここもいずれ追い出される。
それでも、少女は泣かなかった。
少し体が冷えただろうか。暖炉に火をつける。
髪の毛を乾かしつつ、カチカチのパンをかじる。
まずいとか、そんなことは思わなかった。
少女にとって、これが当たり前だった。
水が落ちてこなくなったと思ったら、それと同時に青くて澄んだ空が出てきた。
外に出る。
見上げると、爽やかにグラデーションされた水色がみえる。
何かがこみ上げてくる。
視界が滲み、あわてて頬を叩く。
すると、背後から焦げ臭いにおいがした。
振り返ると、家が燃えていた。
少女は、ただ唖然としているしかなかった。
さっきの暖炉だったのだろうか。
真っ青な空に真っ黒な煙が立ち込める。
激しくあがった炎が少し綺麗に見える。
少女が絶望することはなかった。
いつかはこの家にいられなくなる日はくる。
それが今日であったとしても、なんら不思議でもなかった。
騒ぐ人々を背後に、少女は駆け出した。
誰もいないところに行くために。
誰にも迷惑をかけずに死ぬために。
気がつくと、もう日が暮れていた。
ワンピースを一枚着ているだけだと、少し寒い。
薄暗い道には、誰も歩いていない。
ふと空を見上げると、小さな光が見えた。思わずため息がでる。
少しここで休もう。朝がきたら、また歩こう。
誰にも見られない場所に腰をかけると、体を丸めて目をつむった。
すると、近くで足音がした。
だんだんこちらに向かっている。
ゆっくり目を開け、周りを見回す。
すると、少し向こうに男が2人歩いているのが見えた。
慌ててしゃがみ込み、息を潜める。
こんな時間に歩いているなんて、絶対やばい。
見つかったら殺される。
死ぬために歩いていたのに、改めて死を身近に感じると、怖い。
何をされるかわからない。心臓が破裂しそうだ。
足音がとまる。汗はとまらない。
「はぁ~…なんもねーな…これじゃ帰れねぇ…」
「おい、今子供がいなかったか?」
「あぁ?ガキ?知るかよ」
「こんな時間に子供が歩いているのはおかしい」
「…だから何だってんだよ?」
「探そう」
「…見つけてどうする」
「ほっておくのは可哀想だろ」
「ボスにはなんて言うんだ」
「それは後で考えるさ。嘘をつく必要があるか?」
「男ならまだしも、女だったらどうすんだ?」
「レベッカが喜んで引き受けるだろ」
「はぁ…」
彼らは何を話しているのだろう?引き受ける?何を?
やっぱり私は殺されるのか?
「おい、いたぞ」
「あ…」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる