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第1話~別れと出会い
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「ママ…?」
少女は大人しかった。
泣くとママが怒るから。
必要以上に話せばママが怒るから。
だから、無視をされても泣かなかった。
ひっぱたかれても泣かなかった。
髪をちぎられても泣かなかった。
ママに捨てられても泣かなかった。
少女は生まれつき片目が見えなかった。
中絶に失敗したから。
中絶にはお金がかかるわ。
もう一度中絶をするには余裕がなかった。
仕方なく産んだのよ。
もう嫌だわ。
いっそ殺してよ。
「み…ず?」
少女は8歳。
外に出たことなんて、一度もなかった。
今日、初めて外に出た。
初めて見た空はどんより黒くて、水を落としていた。
少女は空を見上げ、胸いっぱいに息をすった。
鼻に水が入って、むせる。
少女は古びたドアを開けて、薄汚れた布で顔をふいた。
そこにある靴は、少女のものだけ。
少女は一人だった。
ここもいずれ追い出される。
それでも、少女は泣かなかった。
少し体が冷えただろうか。暖炉に火をつける。
髪の毛を乾かしつつ、カチカチのパンをかじる。
まずいとか、そんなことは思わなかった。
少女にとって、これが当たり前だった。
水が落ちてこなくなったと思ったら、それと同時に青くて澄んだ空が出てきた。
外に出る。
見上げると、爽やかにグラデーションされた水色がみえる。
何かがこみ上げてくる。
視界が滲み、あわてて頬を叩く。
すると、背後から焦げ臭いにおいがした。
振り返ると、家が燃えていた。
少女は、ただ唖然としているしかなかった。
さっきの暖炉だったのだろうか。
真っ青な空に真っ黒な煙が立ち込める。
激しくあがった炎が少し綺麗に見える。
少女が絶望することはなかった。
いつかはこの家にいられなくなる日はくる。
それが今日であったとしても、なんら不思議でもなかった。
騒ぐ人々を背後に、少女は駆け出した。
誰もいないところに行くために。
誰にも迷惑をかけずに死ぬために。
気がつくと、もう日が暮れていた。
ワンピースを一枚着ているだけだと、少し寒い。
薄暗い道には、誰も歩いていない。
ふと空を見上げると、小さな光が見えた。思わずため息がでる。
少しここで休もう。朝がきたら、また歩こう。
誰にも見られない場所に腰をかけると、体を丸めて目をつむった。
すると、近くで足音がした。
だんだんこちらに向かっている。
ゆっくり目を開け、周りを見回す。
すると、少し向こうに男が2人歩いているのが見えた。
慌ててしゃがみ込み、息を潜める。
こんな時間に歩いているなんて、絶対やばい。
見つかったら殺される。
死ぬために歩いていたのに、改めて死を身近に感じると、怖い。
何をされるかわからない。心臓が破裂しそうだ。
足音がとまる。汗はとまらない。
「はぁ~…なんもねーな…これじゃ帰れねぇ…」
「おい、今子供がいなかったか?」
「あぁ?ガキ?知るかよ」
「こんな時間に子供が歩いているのはおかしい」
「…だから何だってんだよ?」
「探そう」
「…見つけてどうする」
「ほっておくのは可哀想だろ」
「ボスにはなんて言うんだ」
「それは後で考えるさ。嘘をつく必要があるか?」
「男ならまだしも、女だったらどうすんだ?」
「レベッカが喜んで引き受けるだろ」
「はぁ…」
彼らは何を話しているのだろう?引き受ける?何を?
やっぱり私は殺されるのか?
「おい、いたぞ」
「あ…」
少女は大人しかった。
泣くとママが怒るから。
必要以上に話せばママが怒るから。
だから、無視をされても泣かなかった。
ひっぱたかれても泣かなかった。
髪をちぎられても泣かなかった。
ママに捨てられても泣かなかった。
少女は生まれつき片目が見えなかった。
中絶に失敗したから。
中絶にはお金がかかるわ。
もう一度中絶をするには余裕がなかった。
仕方なく産んだのよ。
もう嫌だわ。
いっそ殺してよ。
「み…ず?」
少女は8歳。
外に出たことなんて、一度もなかった。
今日、初めて外に出た。
初めて見た空はどんより黒くて、水を落としていた。
少女は空を見上げ、胸いっぱいに息をすった。
鼻に水が入って、むせる。
少女は古びたドアを開けて、薄汚れた布で顔をふいた。
そこにある靴は、少女のものだけ。
少女は一人だった。
ここもいずれ追い出される。
それでも、少女は泣かなかった。
少し体が冷えただろうか。暖炉に火をつける。
髪の毛を乾かしつつ、カチカチのパンをかじる。
まずいとか、そんなことは思わなかった。
少女にとって、これが当たり前だった。
水が落ちてこなくなったと思ったら、それと同時に青くて澄んだ空が出てきた。
外に出る。
見上げると、爽やかにグラデーションされた水色がみえる。
何かがこみ上げてくる。
視界が滲み、あわてて頬を叩く。
すると、背後から焦げ臭いにおいがした。
振り返ると、家が燃えていた。
少女は、ただ唖然としているしかなかった。
さっきの暖炉だったのだろうか。
真っ青な空に真っ黒な煙が立ち込める。
激しくあがった炎が少し綺麗に見える。
少女が絶望することはなかった。
いつかはこの家にいられなくなる日はくる。
それが今日であったとしても、なんら不思議でもなかった。
騒ぐ人々を背後に、少女は駆け出した。
誰もいないところに行くために。
誰にも迷惑をかけずに死ぬために。
気がつくと、もう日が暮れていた。
ワンピースを一枚着ているだけだと、少し寒い。
薄暗い道には、誰も歩いていない。
ふと空を見上げると、小さな光が見えた。思わずため息がでる。
少しここで休もう。朝がきたら、また歩こう。
誰にも見られない場所に腰をかけると、体を丸めて目をつむった。
すると、近くで足音がした。
だんだんこちらに向かっている。
ゆっくり目を開け、周りを見回す。
すると、少し向こうに男が2人歩いているのが見えた。
慌ててしゃがみ込み、息を潜める。
こんな時間に歩いているなんて、絶対やばい。
見つかったら殺される。
死ぬために歩いていたのに、改めて死を身近に感じると、怖い。
何をされるかわからない。心臓が破裂しそうだ。
足音がとまる。汗はとまらない。
「はぁ~…なんもねーな…これじゃ帰れねぇ…」
「おい、今子供がいなかったか?」
「あぁ?ガキ?知るかよ」
「こんな時間に子供が歩いているのはおかしい」
「…だから何だってんだよ?」
「探そう」
「…見つけてどうする」
「ほっておくのは可哀想だろ」
「ボスにはなんて言うんだ」
「それは後で考えるさ。嘘をつく必要があるか?」
「男ならまだしも、女だったらどうすんだ?」
「レベッカが喜んで引き受けるだろ」
「はぁ…」
彼らは何を話しているのだろう?引き受ける?何を?
やっぱり私は殺されるのか?
「おい、いたぞ」
「あ…」
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