26 / 33
第二章 二度目の異世界
24.花嫁
しおりを挟む22~23話大幅に修正してます。
お手数おかけしますが、一度読んでからこちらをお読みください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺たちはソファに座り直して先程の第一王子について話した。
「父上、ディルバルドの瞳はなんだったのですか?まさか本当に……」
〈いいえ、アレは偽物、紛い物だわ〉
「ルル殿の言う通り、アレは紛い物じゃ」
「………もしかしてアレが王妃が犯した禁忌ですか?」
ユリウスは恐る恐る聞いた。
「あぁ……そうじゃ。恐らくあの瞳は精霊力を使って手に入れたのだろう」
「なんて愚かな……」
ユリウスの悲痛な声。
「あの……王家の色ってなんですか?」
俺は陛下に聞いた。
「なんじゃ、シューヤ殿はユリウスに教えてもらっておらぬのか?」
陛下がユリウスを見る。
「すみません。まずシュウの身体に浸透しきってから話すつもりでした」
ばつの悪そうな顔で答えるユリウス。
(浸透?)
「全くお前は……そういうところがわしとそっくりじゃな」
陛下が苦笑いしてユリウスに言った。そして俺と向かい合い
「シューヤ殿。王の色というのは、この瞳の事じゃ」
そう言って陛下はご自分の眼を指さした。
「ユリウスも同じ金色の瞳ですね。それが王家特有のものなのですね」
「そうじゃ、いやはやシューヤ殿は頭が良いな」
「いえ…そう言うわけでは」
(その手のノベライズをたくさん読んだからなんて言えない)
「しかし、王家だからといって必ず出る色ではない。 今から話す事は王家の秘密、この事を知っているのはここに居るわしとセドブルだけじゃ」
「オーウェン」
「はい」
「お前はユリウスの剣となり盾となるとこの先何があってもその誓いを違えぬと誓うか?」
「はい。偉大なる母、女神に誓って」
オーウェンさんは片膝付き、騎士の礼をした。
「あ、あの!王家の秘密って俺、聞いてしまっていいんでしょうか?」
「シュウにも関係あることだから聞いてほしい」
ユリウスは俺の手を両手で握って真剣な表情で言った。少し震えていた。
「……わかった」
俺はソファに座り直し国王と向き合った。
「シューヤ殿はユリウスは何の獣人だと思う?」
「?(あれ王家の秘密について話すんじゃないの?)耳の形から推測すると犬……ではないのですか?」
「うむ。我がガルシアン王国の始祖は神獣フェンリルなのじゃ」
「え?それってつまり陛下とユリウスはフェンリル、ということですか?」
「そうじゃ。そして王になる者は皆、フェンリルの姿と力、神聖力と言われておるものと金色の瞳を持って生まれてくる」
「では先程第一王子の王の色が出たというお話は彼もフェンリルだからですか?」
(あれ?でもあの耳と尻尾は王妃と同じで狐だったと思うんだけど)
俺がうーん、と考えていると
「いや、ディルバルドはフェンリルではない。仮に王の色が出たとしても先程も話した通り、それは偽物、紛い物じゃ」
「どうしてそう言い切れるのですか?」
「ふむ。まずこの話からせぬとな。シューヤ殿は “花嫁” についてどこまで聞いておるのじゃ?」
「はな、よめ……ですか?」
(確かユリウスが俺を異世界に呼んだ方法が花嫁としてって言ってたけど)
「ユリウスが俺をここに呼ぶために花嫁として召喚したと、聞きました」
「うむ……ユリウスはまだ全て話しておらぬようじゃな」
「はい……」
陛下はユリウスを見た。ユリウスは少し気まずそうに視線をそらした。
「?」
「花嫁とは言葉通り、伴侶となる者のことじゃ」
「はんりょ………………え?伴侶ってあの!?」
「父上、ここからは俺が話します」
ユリウスが真剣な表情で俺を見た。
「そうだ。俺たち王族は特殊で自分の生涯の伴侶を呼び寄せることができるんだ」
「え?一体どういうこと?てかなんで俺なの?」
「シュウが唯一の番だからだ」
「つがい?」
(え?番ってあの狼が生涯で一匹のメスを大切にし最期まで添い遂げるっていう、あの??)
俺は頭の中がパンクしそうだった。
「ちなみにわしの番はユリウスの母、アトラじゃ」
「アトラさんも……」
「20年前アトラはわしの元へ召喚された」
「召喚って、誰がくるかわかるの?」
「いいや、わからない。始祖フェンリルが選んだ者が召喚されると言い伝えるられている。そして俺たち王族は花嫁しか愛さないし、子も作れない」
「花嫁しか愛さない……」
「王族は皆、花嫁にゾッコンなんだ。それは始祖フェンリルが人に恋をし生涯大切にし、心から愛したからだと言われている」
(始祖フェンリルは溺愛タイプなのか)
と、他人事のように思っていたが
「え?ちょっと待って?じゃあユリウスも?」
「あぁ、そうだ。俺は一生涯シュウしか愛さない」
ユリウスは俺の手を取り指先にキスをした。
「っ」
俺の顔は今、茹でタコのように真っ赤だろう。
(ん?あれ?でも俺が番だとユリウスは)
「で、でも!俺、男だよ??子ども産めないよ??」
「問題ない。ねぇ、父上」
「うむ。安心せよシューヤ殿」
「いや、安心とかそういう話ではなくてですね……」
俺は頭を抱えた。
「アトラも最初戸惑っておったよ。いや、全力で拒否しておったなぁ……あやつは魔法研究命じゃったから、中々わしを受け入れてくれなくてのぉ……でもわしは諦めんかった!必死に来る日も来る日も口説いて最後はアトラが折れてくれたんじゃ」
陛下は遠い目をしていた。
(アトラさん……どんだけ拒否したんだ?)
「彼は優秀な東のグランティス王国の魔法使いじゃったから当時の国王から無理を言って連れてきたからのぉ」
「そうだったんですね~ ………ん?彼?」
「どうしたの?シュウ」
「ねぇ、ユリウスのお母さんって……女性だよね?」
「? いや、男だが」
ここにきてまさかの衝撃真実ーーーーーーーっ!!!!
「シュウ?」
「シューヤ殿?」
「え?えええ??ちょっと待って、アトラさん男性なのになんでユリウスを産めたの???」
「「花嫁だから(じゃ)な」」
そんな当たり前みたいに言わないでえええええ泣
◇◆◇
「すみません、あまりのことにびっくりして取り乱しました」
「よいよい。アトラも同じ反応しておったわ」
ほっほっと陛下は笑った。
「ユリウス、後でちゃんと説明してよね」
俺はジト目ユリウスを見た。
「わかった」
「殿下……」
オーウェンさんの顔が若干引き攣っていたのは気のせいだと思いたい。
俺は陛下の向かい合い疑問に思った事を聞いた。
「でも何故アトラさんしか愛せない上、子どもも作れないのにどうして陛下は王妃を娶ったのですか??」
「うむ……」
陛下は少し沈黙した後ゆっくりと口を開いた。
「これはわしの罪じゃ……全てわしの責任なのじゃ」
「陛下のせいではございません。どうかご自分を責めないでください」
セドブルさんが悲痛な声で言った。
「いいや、そもそも王妃……あの女を王妃にしてしまったことが、最初の間違い。しかし当時のわしにはそれを否定する力がなかった」
「先程のお話が本当なら第一王子のディルバルドさんはもしかして」
「そうじゃ、ディルバルドは……わしの子ではない」
王妃の息子、第一王子が陛下の子供ではない。それは国を揺るがすとんでもないの秘密だった。
「そしてこの金の瞳は王の色。つまり次期王は皆、この金の瞳を持って生まれてくる」
「王……つまりユリウスは、次の国王というわけですね……」
「そうじゃ」
陛下がコクリと頷いた。
(ユリウスが次の王様……)
なら王妃と第一王子は王位を自分たちのものにするために妖精たちを犠牲にしてあの瞳を手に入れたということだろう。
◇◆◇
王宮内のある豪華な一室。
ドンッ、ドカッ、ガンッ!!!!
「くそ、くそ、くそっ!!!なんで俺が謹慎されなちゃならないんだっ!!」
はぁはぁと肩で息をし、床と壁はボロボロ、家具はめちゃくちゃになっていた。
「元はと言えば、あいつが悪いんだっ」
頭を掻きむしり
「俺が欲しいものを全部手に入れて……気に食わない」
ガジガジと指と爪を噛み、ハッと何かを思い出す。
「そういえばあの人間……やけに大切にしてたな。それにあの黒髪と黒い瞳、そして色白な肌……」
ペロッ舌舐めずりをした。
「あいつから奪うのもいいな……殺すのは簡単だが、それだと面白くないな」
くっくっと笑い。
「あいつの目の前であの人間を犯したら、いつもスカした顔が一体どんな風に歪むんだろうかぁ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
仕事でバタバタして中々更新出来ずすみません。
12
あなたにおすすめの小説
黒豹陛下の溺愛生活
月城雪華
BL
アレンは母であるアンナを弑した獣人を探すため、生まれ育ったスラム街から街に出ていた。
しかし唐突な大雨に見舞われ、加えて空腹で正常な判断ができない。
幸い街の近くまで来ていたため、明かりの着いた建物に入ると、安心したのか身体の力が抜けてしまう。
目覚めると不思議な目の色をした獣人がおり、すぐ後に長身でどこか威圧感のある獣人がやってきた。
その男はレオと言い、初めて街に来たアレンに優しく接してくれる。
街での滞在が長くなってきた頃、突然「俺の伴侶になってくれ」と言われ──
優しく(?)兄貴肌の黒豹×幸薄系オオカミが織り成す獣人BL、ここに開幕!
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
大好きな獅子様の番になりたい
あまさき
BL
獣人騎士×魔術学院生
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
カナリエ=リュードリアには夢があった。
それは〝王家の獅子〟レオス=シェルリオンの番になること。しかし臆病なカナリエは、自身がレオスの番でないことを知るのが怖くて距離を置いてきた。
そして特別な血を持つリュードリア家の人間であるカナリエは、レオスに番が見つからなかった場合彼の婚約者になることが決まっている。
望まれない婚姻への苦しみ、捨てきれない運命への期待。
「____僕は、貴方の番になれますか?」
臆病な魔術師と番を手に入れたい騎士の、すれ違いラブコメディ
※第1章完結しました
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
長編です。お付き合いくださると嬉しいです。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
【完結済み】騎士団長は親友に生き写しの隣国の魔術師を溺愛する
兔世夜美(トヨヤミ)
BL
アイゼンベルク帝国の騎士団長ジュリアスは留学してきた隣国ゼレスティア公国の数十年ぶりのビショップ候補、シタンの後見となる。その理由はシタンが十年前に失った親友であり片恋の相手、ラシードにうり二つだから。だが出会ったシタンのラシードとは違う表情や振る舞いに心が惹かれていき…。過去の恋と現在目の前にいる存在。その両方の間で惑うジュリアスの心の行方は。※最終話まで毎日更新。※大柄な体躯の30代黒髪碧眼の騎士団長×細身の20代長髪魔術師のカップリングです。※完結済みの「テンペストの魔女」と若干繋がっていますがそちらを知らなくても読めます。
「禍の刻印」で生贄にされた俺を、最強の銀狼王は「ようやく見つけた、俺の運命の番だ」と過保護なほど愛し尽くす
水凪しおん
BL
体に災いを呼ぶ「禍の刻印」を持つがゆえに、生まれた村で虐げられてきた青年アキ。彼はある日、不作に苦しむ村人たちの手によって、伝説の獣人「銀狼王」への贄として森の奥深くに置き去りにされてしまう。
死を覚悟したアキの前に現れたのは、人の姿でありながら圧倒的な威圧感を放つ、銀髪の美しい獣人・カイだった。カイはアキの「禍の刻印」が、実は強大な魔力を秘めた希少な「聖なる刻印」であることを見抜く。そして、自らの魂を安定させるための運命の「番(つがい)」として、アキを己の城へと迎え入れた。
贄としてではなく、唯一無二の存在として注がれる初めての優しさ、温もり、そして底知れぬ独占欲。これまで汚れた存在として扱われてきたアキは、戸惑いながらもその絶対的な愛情に少しずつ心を開いていく。
「お前は、俺だけのものだ」
孤独だった青年が、絶対的支配者に見出され、その身も魂も愛し尽くされる。これは、絶望の淵から始まった、二人の永遠の愛の物語。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる