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第二章 二度目の異世界
23.第一王子(改訂版)
しおりを挟む22~23話を書き直しました。(11/24)
お手数おかけしますが、前話も読んでからこちらをお読みください。
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「……っ」
俺は必死に声を抑え込んだ。
あの瞳からは妖精たちの憎悪が滲み出ている。なんで?どうして?そればかりが頭の中を駆け巡る。
全員が言葉を失った中、王妃が口を開いた。
「陛下、これで何も躊躇する必要はありませんわ」
「………躊躇するとはなんだ」
「もちろん王位継承ですわ!此奴が王の色を持っていたため、本来持つはずであった由緒正しい血筋のディルバルドを跡継ぎに指名出来ないのはさぞお辛かったことでしょう」
王妃は扇子で口もとを隠し憎しみの籠った目でユリウスを見た。
「………」
ユリウスは気にしていないようで、じっと王妃たちを見据えていた。が、第一王子はずっとニヤニヤと見下した顔で見ていた。
「お前は何を言っているんじゃ?」
陛下が怪訝そうに言う。
「そうですよ。父上、そもそもこいつに王の色が出たこと事態がおかしいのです」
第一王子も王妃に同調するようにユリウスを指差して言った。
「ディアバルドの言う通りですわ!さぁ陛下、ディアバルドの王位継承を貴族、国民達に発表をしてくださな」
「お前たちは……」
陛下の声など聞こえていないのだろう。2人はお披露目はいつだとか、パーティは盛大にしようなどで興奮した表情で話していた。
俺はその異様な光景を隠れて見ていると、第一王子のディアバルドが俺の方へ視線を向けた。
(っ! もしかして気付かれた?)
ユリウスが俺も元へ行こうと一歩前に出たが
「やぁ、オーウェン。聞いてた通りだ。それでもまだあいつの側に居るのか?」
「はい。私の気持ちは変わりません」
「ちっ おい、最後のチャンスだ。俺の元で仕えろっ、これは命令だ!」
どうやらオーウェンさんに話しかけるため近いたようだ。
「申し訳ございません。前にもお断りさせていただきましたが、私はユリウス殿下に剣を捧げております。ですので私の主人はユリウス殿下ただお一人です」
そう言ってオーウェンさんは頭を下げた。
「っ!何故だ!なぜ俺じゃなくてあいつを選ぶんだっ」
第一王子は興奮しオーウェン後ろ、俺が隠れている大きな壺を思いっきり蹴った。
「っ!?」
危うく声を上げそうになった。
「おい……いい加減にしろよ」
ユリウスが2人に近づいて第一王子の肩を掴んだ。
「無礼者!穢れた血の分際で俺に触れるなっ」
ユリウスの手を払い落とした。
「黙れ。父上の御前にも関わらず、やりたい放題しているお前たちの方が無礼者だ」
殺気のこもった声。こんなユリウスの声初めて聞いた。
「……っ、お、俺は代々由緒正しい貴族の血を引き、王家の血も引いている尊い存在なんだ!お前のような卑しい孤児の血が混じったやつとは格が違うんだぞっ」
第一王子が興奮した様子で大声を上げてユリウスに詰め寄った。
「母上を侮辱するな」
「っ、事実だろう!俺は高貴な存在なんだっ」
第一王子は唾を飛ばしながら怒鳴った。
「血筋しか誇れるものがない奴ほどよく吠える」
「な、貴様ああああああっ」
第一王子の手から黒くてモヤのようなものが集まりそれをユリウスめがけて放った。
あれは嫌なものだ。そう思った俺は
「ユリウスっ」
思わず2人の前に飛び出した。
「シュウっ!」
ユリウスも咄嗟に魔法を使い第一王子の攻撃を相殺した。
「なっ、俺の魔法が」
驚愕した顔をする第一王子。
「シュウ!いきなり飛び出したら危ないじゃないかっ」
ユリウスが俺の肩を掴み焦った表情で言った。
「ご、ごめんね。ユリウスが攻撃されたと思ったら居ても立っても居られなくて……」
「シュウ……あの時もそうだったけど、今の俺は大丈夫だ。だから身を挺して俺を守らなくていい」
「でも……」
「お願いだ。もうあの時の様になってほしくない」
ユリウスは辛そうな顔で言った。
「……うん」
俺はこれ以上の事は言えなかった。
「おいお前、まさか人間?」
「チッ」
ユリウスは俺を抱きしめた。
「下等な生き物が何故ここにいる?お前のおもちゃか?」
ニタニタと笑いながら近づいてくる。
「シュウはおもちゃではないっ、これ以上侮辱するなら………殺す」
ユリウスの体から金色の光が纏い、身を刺すような殺気が第一王子を襲った。
「っ、卑しい血の分際で」
まさに一触即発だった。
「静まれっ」
今にも殺し合いをしそうな2人に陛下はついに
「静まれ、ユリウス」
「……申し訳ございません」
ユリウスは我にかえり陛下に頭を下げた。
「ち、父上! あいつは俺を殺そうとしました。罰を!!」
「そうですわ!あの愚か者に罰をお願いしますわっ」
王妃と第一王子がユリウスに罰を与えてほしいと陛下に懇願した。しかし
「愚か者なのはお前たちだ!王妃とディルバルドには2週間の謹慎を申しつける。近衞騎士たちよ、この愚か者の二人を部屋に戻せ」
陛下の怒りは頂点にいったようで、騎士たちに王妃たちを追い出すよう命令した。
「そんな、父上!」
「ちょっと、私に触らないでっ!陛下、何故私たちが謹慎されないといけないのですかっ!納得できませんわ!陛下っ」
「おい、汚い手で俺に触れるなっ!俺は王なる尊い存在なんだぞっ」
ぎゃあぎゃあと2人は騎士たちによって部屋から連れ出された。
「はぁ……」
陛下はソファに座り直した。
「……父上。感情的になってしまい、申し訳ないございません」
「……シューヤ殿が危険な目に遭いそうになったんじゃ。仕方ない……だがユリウス、あまり感情的になるな。大切なものを失うぞ」
「はい……」
「陛下!元はと言えば俺が2人の間に入ってしまったことが原因で「シュウのせいじゃない」
それ以上ユリウスは俺に言わせてくれなかった。
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物語の進展や盛り上がりにかけていたので書き直しました。
長くなったので、ここで一度きります。
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