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リリス・スノーホワイト・フォン・レアノスティア

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 聖域内においても、殊更に奥まった場所へと所在している、その最奥たる祭壇が設けられている同所にて。



 先程まで身を置いていた大浴場を後としたアイを筆頭とした面々は、礼拝堂へと赴いていた。



 無論同所へと訪れているのは彼等彼女等面々だけでなく、広々とした屋内には大勢の人々が詰めて見受けられる。



 今し方足を踏み入れた入口に面した手前の箇所に設けられた長椅子には、両手を組んだ姿で祝詞を捧げている者達の姿が見て取れる。



 それとは別に、教会内における一番最奥たる石像が誂えられている真正面から向かい合う様にして一人、一般の信徒等とは趣きを異とする装いの少女の姿が窺える。



 地面に両膝をついた体勢で、恭しくも大仰なまでに謙った姿勢を晒している彼女は、何処か厳かな雰囲気さえ呈して思われた。



「おはよう御座います」



 そして、今し方アイの眼前にて巨大な石像に対し傅き、祝詞の台詞を捧げている姿が見て取れる彼女こそがそう─


「リリスお母様」


 即ち、宗教国家レアノスティア聖王国が頂点の最高権力者にして女教皇、リリス・スノーホワイト・フォン・レアノスティアその人である。



「はい、ユキリス。おはよう御座います。ですが‥少しばかり時間が押していますね。何か不都合がありましたか?」



 その極めて仰々しいまでの肩書きに違わず、実質この国において最上位の権威を有する彼女は、酷く毅然とした美貌を覗かせた。



 与えられた言葉に応じては粛々とした立ち振る舞いで面貌を挙げた彼女。



 自身の娘であるユキリスから今し方与えられた挨拶へと頷きを返す。



 神秘的なまでに美しい相貌が見て取れるリリスは、女教皇として相応しい凛とした面持ちを晒して居室を睥睨する。



 常日頃から日々大聖堂に詰めている修道女等と共に、同所へと赴いたユキリスを筆頭とした面々を、怜悧な眼差しで一線。



 切長の美しい瞳に称えられた鋭い眼光が、同所へと居合わせている者達へと注がれる。



 既に齢においては成人を超えているにも関わらず、依然として歳幼くさえ見受けられる、極めて美しい容貌を誇る女教皇リリス。



 しかしながら確かにその見目麗しい顔立ちからは、何処か成熟した女性としての魅力に満ち溢れても窺える。



 ユキリスと同様に前方へと突き出て見受けられる程に豊満な長乳と称しても差し支えないまでの柔肉が殊更に存在感を呈していた。



 無論それを支える下半身も然るべくして豊満な肉付きの良い身体をして見て取れる。



 女性としての極上に柔らかな臀部を修道服へと包み込んで窺えるリリスであるがしかし、その形の良い尻肉を鮮明としていた。



 あまりに豊満な、極めて強烈な色香漂わせる、極上の雌としての肉体を誇るが故に、身に纏う衣装が卑猥にさえ見受けられる。



 これを支えるむっちりとしたスリットの隙間から窺える、張りのある純白の太腿は、殊更に眩いばかりの肌を露わとしていた。



 そしてそれを包み込む、その肌と同色の生地で誂えられているオーバーニーソックスは、極めてぴっちりとした張り付きを見せていた。



 その様にして雌として極上に淫らな肉付きを誇る肉体とは対称的に引き締まった腹部と比較して、些か不釣り合いな肉体を包む衣装。



 あまつさえ、腹部を経由して脇腹にかけてまで露わとなっているレオタード状の前掛け衣装は、最早殊更なまでに淫猥にさえ見て取れる。



 極めて見目麗しいユキリスと同色の、白金の長髪の毛先は、むっちりとした柔肉を見せつけている尻たぶにサラサラと流れる様にして覆っていた。



 まるで金糸の如き絹の触り心地を誇るプラチナブロンドの穂先は、地面に垂れる寸前といった所。



 しかしながら、彼女の傍らへと侍るシスターの少女等の面々が手中へと納めるそれを鑑みれば特段散髪をする必要性などは皆無。




 何故ならその理由は偏に、教皇足るリリスの傍らには、大勢の侍女として仕えるシスターの少女等が控えているが所以。



 恭しくも、ただリリスの長髪を持ち上げるためだけに傍付きとして控えている見目麗しい少女達からは、凡そ人間味が窺えない。



 何処かシスターセラと酷似して見受けられるシスターの少女達面々は、やはりその容貌も似通って見受けられる。



 そんな見目麗しい修道女等の中にあって、彼女等をも霞ませてしまう程に、群を抜いて突出した美貌を誇って見受けられるリリスという少女。



 女教皇という権威の頂点に位置する立場における地位に座する彼女は、極めて異質とも見て取れる存在。



 そんなリリスという絶大なる美貌と権威を兼ね備えた彼女の圧倒的なまでの身に纏う威圧感。



 これには、ほかに同所へと居合わせている見目美しく年若い少女といえど到底足元にも及ばない塵芥と形容しても何ら不自然ではない程。



 女教皇リリスと肩を並ばせたのであればその少女は、すぐさま彼女の魅力をより一層引き立てるだけの道具として成り下がる。



 如何な大国の美姫といえど、世界が誇る宗教国家レアノスティア聖王国の頂点の座に君臨する女教皇、リリス・スノーホワイト・フォン・レアノスティアと比較しては見劣りも甚だしい限り。



 それ程に麗しい彼女の顔の造形は最早、完膚なきまでに完成されている程の美の極致と称してしまっても、なんら差し支えのない様にさえ見受けられる。



 同所へと居合わせている誰もが一切の例外なく、それこそ実の娘でさえも気圧されてしまう程に、類い稀なる美貌を誇るのが彼女であった。



 そんな彼女に漏れなく圧倒されているアイは、自らの母親であるユキリスの背へと隠れて、様子を窺っている姿が見て取れる。



「いいえ、ただアイがまた愚図りましたので、少しばかり戸惑ってしまいました」



 まるで自身を盾にするかの様な、依然として稚拙な振る舞いが見受けられるアイの姿を見て取って、嘆きながらも受け応えるユキリス。



「そうですか。それは一体何故でしょうか?」



 これを目の当たりとしても何ら咎める様子が見受けられないリリスは、酷く穏やかな調子の声色で疑問を呈して窺える。



「どうやらアイは、大聖堂の外へ出て、学園に通いたい様です。殿方のお友達が欲しいとのことで御座います」



 与えられた自身の母親からの問い掛けに対し、極めて淀みない語り草にて返答するユキリス。



「お友達‥ですか」


 そうして返された回答を受けるに応じて、何処か思案する様にして瞼を伏せるリリスは、暫しの沈黙を見せた。



 しかしながら、途端に張り詰めた雰囲気を身に纏うリリスは、その怜悧な美貌をアイへと呈して見せた。


「‥それはあなたにとって本当に必要なのですか?」



「‥は、はい。リリス様」



 何処か冷然とした立ち振る舞いが見受けられる彼女の鋭い眼光を称える切長の瞳を向けられてはまるで、自身の胸中を見透かされてしまった様な心地に陥る羽目となるアイだろうか。



 お陰で自然と返す言葉も何処かしどろもどろとした声色にて、狼狽を露わとする彼である。



「わかりました。それに関しての御話の回答は、後日また場を改めて、わたくしの下した結論を伝えましょう。ですからアイ、もう少しあなたの御顔をわたくしに、良く見せてくださいませんか?」



 そんな彼の、些か緊張に強張らせた面持ちを見て取ったリリスは、アイを見下ろしたままに言葉を続ける。



 その流暢な淀みない流れる様な語りにて、同所へと響いては聞こえる美声は、極めて耳とする者達を萎縮させるだけの威圧感を伴って窺える。



「アイ、その様に畏まらなくても構いませんよ。わたくしのことはどうか、リリスとお呼びください」



「い、いや。それは‥」



 そんな彼女から思いがけずして与えられた砕けた物言いに対し、酷く困惑の面持ちを呈して見受けられるのがアイ。



 本来であれば聖職者の階層組織のおいては頂点に座する、極めて高位なる権威を誇る彼女から直接言葉を賜る事例は、極めて稀である。



 それはユキリスの息子であるアイとて例外ではなく、故に今し方与えられた口上は殊更に驚愕に値する提案として見受けられる。



「ですが」



 そんな心底から困惑を呈して窺えるアイの無様な姿を見て取ったリリスが、更なる言葉を紡ぐ。



「どうやらあなたとわたくしの関係は、あまり上手くありませんね‥。それはとても嘆かわしきことです。これもわたくし自身の不徳が致す所でしょう」



 そうして一方的に語られたのは、女教皇である彼女自身自らを憂うかの様な言葉。



 美しい白金の眉毛に彩られている研ぎ澄まされた鋭利な双眸に翳を帯びさせて見受けられる。



 重厚な石造りにて誂えられている、巨大な石像を背として、悠然と佇む彼女は、殊更なまでに強烈な存在感を見せつけていた。



「アイ、此方へきなさい」



 その様にして自身が他者に与える影響に対し、なんら構った様子が見受けられない超然とした振る舞いが見受けられる彼女。



 有無を言わせぬ圧迫感を伴う声色で言い放つリリスは、アイを迎え入れる様にして自らの両腕を広げて見せたのであった。
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