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異端審問3
しおりを挟む依然として壮絶な惨状さながらの現状を晒す同所にて身を留めているアイは、未だ視界を覆い隠されるがままに、立ちすくんでいた時分の出来事である。
「ふ、ふふっ‥まさかこのわたしが‥、こんな無様を‥」
そうして姉の腕の中に抱かれて佇む最中、突如として弱々しいながらも響いては聞こえたのは、そんな悪態を吐く様な呪詛の含まれて窺える言葉だろうか。
都合上、自ずとこれを耳としたアイの眼差しが、自身の瞳に対して覆い被された五指の隙間から眇められる。
その様にして与えられた声色の出所を求めた途端に彼は自然と、自らの目とした壮絶なる光景を目の当たりとする羽目と相成った。
お陰でそれを前として、緊張を露わとしたアイは、自身の肉体に対して強張りを見せるに伴い、失禁を果たす憂き目と遭うこととなる。
何故ならばその理由は偏に、塞がれた視線の向かう先には、例え視界が限定された只中でありながらも、奇跡的にその範囲に納められている血溜まりの最中倒れ伏すレメラの姿が捉えられたが所以。
それ故にこれを見て取った側の当の本人である、最早純粋無垢と称してしまってもなんら差し支えないアイはといえば、心底から衝撃を受ける他にない様子で、動揺を隠せない面持ちを露わとして窺える。
一方で、そんな有様を晒す始末なアイであるが故に、その様にして狼狽した面持ちを無様にも晒すこれを見咎めるマリアの姿が見て取れる。
どうやら今し方に、惨めな振る舞いを呈するアイがこれに加えて粗相をした事実に対し、心底から業腹に思う次第の彼女である。
それ故に、応じる彼女から続けられた台詞はといえば、最早死に体の姿を呈しているレメラに対して触れる様子も皆無。
「ちょっと‥。もしかしなくとも、わたしからの忠告を破った様ね。はぁ、それだからあなたは駄目だと言っているのだけれど、未だに自らの愚かな振る舞いに対して、及びがついていないというのかしら‥。だから言ったでしょう?わたしの言うことは素直に受け入れておいた方が身の為だと‥。先程も言い聞かせたのだから、これの意味する所をよくよく理解したものだと思っていたわ。全く‥幾度となくわたしは貴方に教育を施してきたつもりなのだけれど、どうやらその様子だと依然としてそれは及んでいない様ね。それなら即刻聖域へと戻り次第、お仕置きをするしかなくなるのだけれど‥」
都合上、瀕死の彼女に対してなんら意を介さないマリアは、極めて切実なる心中の吐露を見せる。
そのあまりに長ったらしい長広舌はまるで、依然として恐怖に彩られた面持ちを露わとしているアイの脳髄へと注ぎ込まれるかの様。
その極めて一方的に窺える口上は、何処か熱の籠る声音も相まって、心底から述べたマリアの胸中を物語る。
お陰で、この口上を受けるに際したアイは、極めて戦々恐々とした様子にて、これまた酷く狼狽する他にない。
「う、うぅ‥マリアお姉ちゃん‥ごめんなさい」
そうして自身の姉から振る舞いを窘められたアイは、自らの非に対してどうやら及びがついた模様。
それ故にマリアに向き直るアイは、素直に謝罪の意を呈するに伴い殊勝ながらも、深々と頭を下げて見せた。
だからその様にして自らの惨めを甘んじて受け入れるアイを見て取れるに応じるマリアの対応は自ずと、柔和な振る舞いとなる。
「そう‥。漸く自らの愚行に及んだ様ね。であればその無能を正しく理解して、改善を試みなさいな。曲がりなりにもわたしの弟であるのだから、少なからずその資質は持ち合わせている筈よ」
つい今し方まで剣呑な雰囲気を帯びていた美貌からは一転、至極機嫌も上々といった具合の塩梅となるマリアからは、平素にも増して傲岸不遜な姿が見て取れる。
どうやら先程まで鮮明にも苛立ちを露わとしていた彼女ではあるがしかし、アイの健気な態度を受けるに際しては、それもなりをひそめている模様。
であるからして、自ずと柔和な微笑みを伴い受け応えて見せる彼女はといえば、穏やかな手付きで、アイの頭を撫でている様子が窺える。
それは、平素から他者に対する当たりが強いマリアでありながらも、唯一持ち合わせている自らの弟に対しての慈愛に他ならない。
一方で、そんなやり取りを交わし合う二人の様相とは対称的に、特段様子を異として窺えるのが、依然として戦闘を繰り広げるリリーとエメルの両名だ。
「ちょっとぉ、リリーにだけ面倒事を押し付けてないで、お姉ちゃんも手伝ってほしいなぁ。なんだか、思ったよりもこの子の魔眼が強力でぇ、とってもやりずらいよぉ」
それ故に先んじて声を挙げたのは、今し方に応戦を余儀なくされているリリーであり、奇しくも今現在に至っては、攻守逆転の憂き目と遭っている様子が窺える。
「レメラ、貴方も早く術を使いなさいッ。でないと手遅れになるわよッ」
であるからして先手を取られていた時分とは異なる戦闘の最中、これ幸いとここぞとばかりに機を見計らって、これでもかと相手方を責め立てるエメルだろうか。
都合それに際しては、深紅の煌めきを帯びた双眸を見開いたままに、リリーの肉体へと接敵している様子が見受けられる。
どうやら自らの奥の手であると同時に切り札の、リリー曰く魔眼と思しき術を用いての力技を繰り出している次第のエメルだ。
何故ならば、自らが前者を圧倒しない限り、レメラが戦線に復帰する可能性は最早皆無と成り果ててしまうが所以に他ならない。
であるが故に、今し方にレメラに対してそれを促したエメルは、酷く必死な形振り構わない様相を呈して見て取れる。
「ッとぉ、んんっ、うそぉ、まさかわたしをここまで手こずらせるなんて、意外と手練なんだぁ。でもでもぉ、この程度ならやっぱりリリー様には到底及ばないかなぁ。少しだけ強いからって、調子に乗らないよぉにねぇ」
しかしながら、その様にして自らの鬼札を切った後者の全力を伴う振る舞いとは対称的に、前者のそれはその限りではない模様。
一見してエメルがリリーに対して至極一方的な攻防を繰り広げている様に見受けられる現状でありながらも、これに応戦するリリーの美貌からは、多分に余裕の面持ちが見て取れる。
お陰でそんな彼女と現在進行形にて相見える側の当の本人であるエメルはといえば、酷い焦燥も露わとした表情を露呈して見受けられる。
「‥随分と余裕みたいだけれど、本当は今にも屈してしまいそうなのではないかしら?貴方を前とするわたしには、その身に余る情動が手に取る様にして理解できるわ。邪な欲望をとても辛く思っているのではなくて?仮にそうであるなら、今の貴方の振る舞いは懸命な判断とは到底思えないのだけれど?だってそうでしょう?もしもわたしを殺してしまったら、その甘美な衝動は貴方の以後の人生において、一生を通しても再び教授することは叶わないのだから。だからそれに及んで尚、わたしを殺すというのであれば、今後のあなたの生においてその情動を味わうことは無くなってしまうけれど?本当にそれで構わないとでも言うのかしら?よくよくそれを理解したのであれば、今すぐ矛を納めなさい」
それ故にエメルが応じるに際して、続けられた台詞は自ずと、何処か相対するリリーに対して気圧されている様な節が耳として聞こえる。
しかしながら、それにも増してより顕著に様子異として窺えるのは、その心境に倣う様にして響いては聞こえた声色からに他ならない。
無論依然としてリリーから与えられる刺突の連撃を未だに軽やかな身のこなしにて、交わし続けている次第のエメルである。
だがしかしそれも彼女の類い稀なる突出した身体能力があってこその、常人離れした芸当に他ならない。
とはいえ、流石のエメルとてその人外染みた振る舞いを延々と継続する体力など、最早リリーを前としている現状、到底残されている筈もない。
何故ならばそれは、一対一で真正面からリリーと相見える憂き目と遭っているが故の現状の戦闘に気圧されているが所以。
であるからしてこれは、互いの力量の差は如実に思われる程に、後者に対して前者が鮮明に圧倒している証左に他ならなかった。
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