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第一章:新人類
第3話:我、天啓を得たり
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現在の雷志の心境を表すならば、それはたった二言に尽きよう。
驚愕――これ以外に相応しい形容詞を雷志は知らない。
「まさか、そんなことが……」と、雷志は唖然とした。
「ライシさん……」
「無理もないわユウカちゃん。私たちだって未だ信じられていないんだから……」
「そう、ですよね。まさかこの世界がライシさんにとっては1000年後の世界なんですから」
ユウカの口から改めてその事実を耳にし、雷志は頭を抱えるしかなかった。
本土である異変が起きた。鉄隕石の飛来は多大な被害を生んだだけに留まらなかった。
未知の流行り病によって次々と人は死に絶えた。恐るべきは、それは故郷だけではないということ。
世界各地でも同様のことが発生し、結果として人類は発症からたったの二年で絶滅した。
訪れるはずの泰平の世は、絶望に染まっていたのである。
雷志は運よく、あの無人島にいたことで難を逃れた――だが、ここで一つの謎が浮上する。
(どうして俺だけが、この1000年後の世界にいるんだ……?)
仮に死を免れたとしても、島ごと未来に流れるなどありえない。
なんの因果か。もし神仏の類が本当にいるのだとしたら、自分はその気まぐれによって救われたに違いない。
「今だけは、感謝しておいてもいいか……」
雷志は内心でそっと合掌した。
「まさか、ライシさんがずっと昔の人だったなんて……」
「ハナミライシ……この名前を聞いた時、どこかで見たことがあるって思ったの。古代遺跡から発掘された資料を興味本位で見たのを憶えていたのね」
「そ、それでライシさんはどんな人だったんですか!?」
ユウカの目がきらきらと輝く。
好奇心旺盛のようだ。そして、これより先真実を知ることなる。
果たしてその時、今のように瞳を輝かせていられるだろうか。
資料が後世にある以上、もはや隠す意味もなし。正直に真実を告げるべきだ。
雷志は自嘲気味に小さく笑った後――
「罪人だった」
と、端的に答えた。
「ざ、罪人……?」と、ユウカの顔にははっきりと恐怖の色が濃く滲む。
至極当然の反応だ。罪人を前にして心穏やかにするほうが難しいというもの。
軽蔑されたとしても致し方ない。だが、未来なのだから真実を語るべきだ。自分にはその権利と自由がある。
「……罪状は城崩し。早い話が大名とそいつに加担する家臣を全員斬った」
「ど、どうして……」
「まぁ、きな臭いとは思ってはいたんだがな。俺が斬った大名の腹の中は真っ黒だったんだよ」
大名という立場にありながら、私腹を肥やす卑しい男だった。
民草を大事にせず、なににおいても自分をまず優先する。
絵に描いたような自己中心的ぶりはやがて民草から多大は反感を買った。
そんなある日、村々で若い娘が忽然と姿を消す事件が起きた。
犯人は、その大名だった。あろうことか人身売買という非道に走った大名は、外国と密約していたのだった。
到底許せるはずもなし。すでに売られてしまった娘たちには、過酷な運命が待ち受けているだろう。
二度と戻らないと知った家族の悲しみは計り知れず。ついに雷志は大名を討つ決意をした。
人道から外れる者、それ等しく外道という。外道に生きる資格はなし。
「そして俺は、斬った。やったことは正しかっただろうし、今でも間違っているとも俺は思っていない」
「それはそうですよ! ライシさんは間違ってません!」
自分のことのように怒るユウカ。
この娘はとても心優しい性格の持ち主のようだ。将来はさぞいい女になるだろう。
「優しいんだな」と、雷志は口角をそっと緩めた。
「そ、そんなことは……」と、謙遜するユウカ。彼女の頬はほんのりと赤い。
「俺は当然捕らえられた。一応やったことは大罪だからな。だが、俺は死罪じゃなく流刑となった――こいつがまたひどい話でな、幕府の人間が絡んでいたんだ。だから秘密が暴露されるのを恐れたんだろうな」
雷志はそっと息を吐いた。
「もしもあそこで俺が打ち首に処されたら民草からの反発を買うのは必然。それに俺の手元には、その繋がりを示す証拠がある。となれば連中、下手に殺すよりも追放するほうが都合がよかったんだろう。さっさと殺せばよかったものを……」
最初こそ、この決定に雷志は大いに困惑した。
大罪人とわかっていながら、何故かような処罰を下したのか。
すべては体裁を守るため。下手に露見したものならばたちまち幕府はその機能を失う。
そうなれば泰平の世は再び戦国の世へと戻ってしまう。それは彼らとて望む形ではなかった。
実に都合がよすぎる話だ。雷志は深く溜息を吐いた。
「まったく、世の中っていうのは本当になにが起きるかわからないな」
雷志は小さく鼻で一笑する。未来にいった、などと果たして誰がこの話を信じようものか。
とうとう気でも違ったか、とこう揶揄されるのがオチだろう。そも元の時代に帰れるかどうかさえも怪しいところだ。
現時点において雷志は、元の時代に帰りたいなどという願望はこれっぽっちもなかった。
人による戦はもう終わった。ならば次は怪物相手に刀を振るってみるのも悪くはない。
きっとそっちのほうがもっと楽しそうだ。雷志はそう判断した。
「その事実は今のところ資料では発見されてないわ。でも、まさかそんなことが……」
「まぁ、今となってはもう済んだことだからな。それよりも、今度はそっちのことを色々と教えてくれ」
「え、えぇ。それじゃあ、旧人類が絶滅したその後からでいいかしら――まぁ、こればかりは謎も多くて確定というわけではないけれど」
「構わない」と、雷志はそう返した。
「よかったらどうぞ」と、ユウカが茶を出した。
湯呑の中を満たす緑茶の香りは、雷志を懐古の情に浸らせた。
「おぉ、ありがたい」と、雷志は早速茶をすすった。ほんのりとした苦みが口腔内に広がった。
うまい。時代が変わろうと茶の味は同じだった。
――人類が絶滅した後、世界は急速に変化した。
細菌による存在は、動植物にも著しい影響を及ぼした。
そうして年月と共に急激な進化を遂げたのが、この時代を生きる新人類である。
「大まかにわけると私たちは新人類。モンスターというのは、先祖に当たる動植物が細菌によって独自の進化を遂げたもの。基本的に獰猛だから人類にとっては討伐対象となっているわ」
「ちなみに、モンスターから採取できる素材は私たちの生活や装備なんかにも役立っているんですよ」
「なるほど。怪物を素材にした武器か、それはちょっと興味があるな」
「後で案内してあげますね」
「そしてもう一つ、モンスターよりもより厄介で私たちアイドルがもっとも恐れ根絶せんとする天敵……それがレギオンよ」
「そうだ。そのレギオンとやらはいったいなんなんだ?」と、雷志は今度は茶菓子に手を出しながら尋ねる。
ふわふわとした触感に、口を入れればさっと溶ける程よい甘みに舌鼓を打つ。
「カステラっていうんですよ。おいしいですか?」
「あぁ! 俺は基本甘味はあまり食さないほうだったが、こいつはうまい」と、雷志はにっと笑みを返した。
「レギオンは元々実態のない怪物。元を正せば人や獣に残留思念のようなもの、それも負の感情をたっぷりと込めた念ね」
「負の感情……?」と、雷志ははて、と小首をひねる。
人の執念とは時に、それまでの常識を大きく覆す。
それほどまでに思念というものには、途方もない力が宿っている。
怒りや憎しみ……負の感情が強ければ強いほどその者を鬼へと変えるように。
すさまじい怨念による集合体、それがレギオンの正体だとヒメコはいう。
「でも……」と、ヒメコは顔に難色を示した。
「あの配信は私も見ていたけど、あんなレギオンは生まれてはじめて見るわ」
「それは、私も思いました。あんな人に近い形をしたレギオンは特に……」
「そんなに珍しいのか?」と、雷志は尋ねた。
たくさんあったはずのカステラはもうない。最後の一つは今正に、雷志の口に運ばれようとしている。
「珍しいもなにも、おそらく史上初と言っても過言ではないかもね」
「そんなにか」
人型ではないレギオンというものにも興味が俄然湧いた。
機会があるのならば是非とも斬りたい。雷志は内心で不敵に笑った。
「あの姿、まるで資料にあるサムライにそっくりだったわね」と、不意にヒメコが口にした。
「侍、か。確かにそうかもな。だがあれは実力でいえば足軽にすぎん」と、雷志は返した。
「足軽ってなんですか?」
ユウカがはて、と小首をひねった。
「足軽っていうのは、侍の階級みたいなもんだ。将棋でいえば歩、つまり雑兵ってことだ」
「雑兵……あの強さなのに下級ってことなんですか!?」
信じられない、とでも今にも言いそうな顔のユウカ。ヒメコも彼女と同様の反応を示している。
二人してひどく驚愕しているものだから、雷志は怪訝な眼差しを返した。
(そんなに驚くことのものかね?)
この世界とあの世界とでは感覚が違うのだろう。雷志はそう思うことにした。
「……ライシさん」と、不意にヒメコが口火を切った。相変わらず表情は真剣そのものだ。
「あなたはこれからどうするつもりですか?」
「俺か? そうだなぁ」と、雷志は顎をくしゃりと撫でた。
「さぁ、わからんな」と、あっけらかんと返した。
天涯孤独の身であるがために、行く当てなど当然どこにもない。
だが、こうして生きているからには生きる責務がある。
せっかく拾った命だ。自ら手放すような愚行に走るつもりは毛頭ない。
なにがなんでも生きる。そのためであればどのようなことだってする。雷志は固く決意をした。
これらを実行するためにもまず、衣食住の確保が最優先事項だろう。
(とはいえ、俺みたいな奴にできる仕事なんてあるのか?)
その時――
「……そうだ」
と、雷志はハッとした。
剣の腕前を生かした仕事がたった一つだけあった。
可能性のほうはともかくとして、やるだけの価値はある。
「なぁヒメコ。少し尋ねたいんだが……確か、ユウカは“だんじょん”配信とやらをしているんだったな?」
「え? えぇ、そうですけど……」
「それ、俺でもできないか?」
「……へ?」と、ユウカとヒメコ。彼女たちの口からは揃って素っ頓狂な声がもれた。
驚愕――これ以外に相応しい形容詞を雷志は知らない。
「まさか、そんなことが……」と、雷志は唖然とした。
「ライシさん……」
「無理もないわユウカちゃん。私たちだって未だ信じられていないんだから……」
「そう、ですよね。まさかこの世界がライシさんにとっては1000年後の世界なんですから」
ユウカの口から改めてその事実を耳にし、雷志は頭を抱えるしかなかった。
本土である異変が起きた。鉄隕石の飛来は多大な被害を生んだだけに留まらなかった。
未知の流行り病によって次々と人は死に絶えた。恐るべきは、それは故郷だけではないということ。
世界各地でも同様のことが発生し、結果として人類は発症からたったの二年で絶滅した。
訪れるはずの泰平の世は、絶望に染まっていたのである。
雷志は運よく、あの無人島にいたことで難を逃れた――だが、ここで一つの謎が浮上する。
(どうして俺だけが、この1000年後の世界にいるんだ……?)
仮に死を免れたとしても、島ごと未来に流れるなどありえない。
なんの因果か。もし神仏の類が本当にいるのだとしたら、自分はその気まぐれによって救われたに違いない。
「今だけは、感謝しておいてもいいか……」
雷志は内心でそっと合掌した。
「まさか、ライシさんがずっと昔の人だったなんて……」
「ハナミライシ……この名前を聞いた時、どこかで見たことがあるって思ったの。古代遺跡から発掘された資料を興味本位で見たのを憶えていたのね」
「そ、それでライシさんはどんな人だったんですか!?」
ユウカの目がきらきらと輝く。
好奇心旺盛のようだ。そして、これより先真実を知ることなる。
果たしてその時、今のように瞳を輝かせていられるだろうか。
資料が後世にある以上、もはや隠す意味もなし。正直に真実を告げるべきだ。
雷志は自嘲気味に小さく笑った後――
「罪人だった」
と、端的に答えた。
「ざ、罪人……?」と、ユウカの顔にははっきりと恐怖の色が濃く滲む。
至極当然の反応だ。罪人を前にして心穏やかにするほうが難しいというもの。
軽蔑されたとしても致し方ない。だが、未来なのだから真実を語るべきだ。自分にはその権利と自由がある。
「……罪状は城崩し。早い話が大名とそいつに加担する家臣を全員斬った」
「ど、どうして……」
「まぁ、きな臭いとは思ってはいたんだがな。俺が斬った大名の腹の中は真っ黒だったんだよ」
大名という立場にありながら、私腹を肥やす卑しい男だった。
民草を大事にせず、なににおいても自分をまず優先する。
絵に描いたような自己中心的ぶりはやがて民草から多大は反感を買った。
そんなある日、村々で若い娘が忽然と姿を消す事件が起きた。
犯人は、その大名だった。あろうことか人身売買という非道に走った大名は、外国と密約していたのだった。
到底許せるはずもなし。すでに売られてしまった娘たちには、過酷な運命が待ち受けているだろう。
二度と戻らないと知った家族の悲しみは計り知れず。ついに雷志は大名を討つ決意をした。
人道から外れる者、それ等しく外道という。外道に生きる資格はなし。
「そして俺は、斬った。やったことは正しかっただろうし、今でも間違っているとも俺は思っていない」
「それはそうですよ! ライシさんは間違ってません!」
自分のことのように怒るユウカ。
この娘はとても心優しい性格の持ち主のようだ。将来はさぞいい女になるだろう。
「優しいんだな」と、雷志は口角をそっと緩めた。
「そ、そんなことは……」と、謙遜するユウカ。彼女の頬はほんのりと赤い。
「俺は当然捕らえられた。一応やったことは大罪だからな。だが、俺は死罪じゃなく流刑となった――こいつがまたひどい話でな、幕府の人間が絡んでいたんだ。だから秘密が暴露されるのを恐れたんだろうな」
雷志はそっと息を吐いた。
「もしもあそこで俺が打ち首に処されたら民草からの反発を買うのは必然。それに俺の手元には、その繋がりを示す証拠がある。となれば連中、下手に殺すよりも追放するほうが都合がよかったんだろう。さっさと殺せばよかったものを……」
最初こそ、この決定に雷志は大いに困惑した。
大罪人とわかっていながら、何故かような処罰を下したのか。
すべては体裁を守るため。下手に露見したものならばたちまち幕府はその機能を失う。
そうなれば泰平の世は再び戦国の世へと戻ってしまう。それは彼らとて望む形ではなかった。
実に都合がよすぎる話だ。雷志は深く溜息を吐いた。
「まったく、世の中っていうのは本当になにが起きるかわからないな」
雷志は小さく鼻で一笑する。未来にいった、などと果たして誰がこの話を信じようものか。
とうとう気でも違ったか、とこう揶揄されるのがオチだろう。そも元の時代に帰れるかどうかさえも怪しいところだ。
現時点において雷志は、元の時代に帰りたいなどという願望はこれっぽっちもなかった。
人による戦はもう終わった。ならば次は怪物相手に刀を振るってみるのも悪くはない。
きっとそっちのほうがもっと楽しそうだ。雷志はそう判断した。
「その事実は今のところ資料では発見されてないわ。でも、まさかそんなことが……」
「まぁ、今となってはもう済んだことだからな。それよりも、今度はそっちのことを色々と教えてくれ」
「え、えぇ。それじゃあ、旧人類が絶滅したその後からでいいかしら――まぁ、こればかりは謎も多くて確定というわけではないけれど」
「構わない」と、雷志はそう返した。
「よかったらどうぞ」と、ユウカが茶を出した。
湯呑の中を満たす緑茶の香りは、雷志を懐古の情に浸らせた。
「おぉ、ありがたい」と、雷志は早速茶をすすった。ほんのりとした苦みが口腔内に広がった。
うまい。時代が変わろうと茶の味は同じだった。
――人類が絶滅した後、世界は急速に変化した。
細菌による存在は、動植物にも著しい影響を及ぼした。
そうして年月と共に急激な進化を遂げたのが、この時代を生きる新人類である。
「大まかにわけると私たちは新人類。モンスターというのは、先祖に当たる動植物が細菌によって独自の進化を遂げたもの。基本的に獰猛だから人類にとっては討伐対象となっているわ」
「ちなみに、モンスターから採取できる素材は私たちの生活や装備なんかにも役立っているんですよ」
「なるほど。怪物を素材にした武器か、それはちょっと興味があるな」
「後で案内してあげますね」
「そしてもう一つ、モンスターよりもより厄介で私たちアイドルがもっとも恐れ根絶せんとする天敵……それがレギオンよ」
「そうだ。そのレギオンとやらはいったいなんなんだ?」と、雷志は今度は茶菓子に手を出しながら尋ねる。
ふわふわとした触感に、口を入れればさっと溶ける程よい甘みに舌鼓を打つ。
「カステラっていうんですよ。おいしいですか?」
「あぁ! 俺は基本甘味はあまり食さないほうだったが、こいつはうまい」と、雷志はにっと笑みを返した。
「レギオンは元々実態のない怪物。元を正せば人や獣に残留思念のようなもの、それも負の感情をたっぷりと込めた念ね」
「負の感情……?」と、雷志ははて、と小首をひねる。
人の執念とは時に、それまでの常識を大きく覆す。
それほどまでに思念というものには、途方もない力が宿っている。
怒りや憎しみ……負の感情が強ければ強いほどその者を鬼へと変えるように。
すさまじい怨念による集合体、それがレギオンの正体だとヒメコはいう。
「でも……」と、ヒメコは顔に難色を示した。
「あの配信は私も見ていたけど、あんなレギオンは生まれてはじめて見るわ」
「それは、私も思いました。あんな人に近い形をしたレギオンは特に……」
「そんなに珍しいのか?」と、雷志は尋ねた。
たくさんあったはずのカステラはもうない。最後の一つは今正に、雷志の口に運ばれようとしている。
「珍しいもなにも、おそらく史上初と言っても過言ではないかもね」
「そんなにか」
人型ではないレギオンというものにも興味が俄然湧いた。
機会があるのならば是非とも斬りたい。雷志は内心で不敵に笑った。
「あの姿、まるで資料にあるサムライにそっくりだったわね」と、不意にヒメコが口にした。
「侍、か。確かにそうかもな。だがあれは実力でいえば足軽にすぎん」と、雷志は返した。
「足軽ってなんですか?」
ユウカがはて、と小首をひねった。
「足軽っていうのは、侍の階級みたいなもんだ。将棋でいえば歩、つまり雑兵ってことだ」
「雑兵……あの強さなのに下級ってことなんですか!?」
信じられない、とでも今にも言いそうな顔のユウカ。ヒメコも彼女と同様の反応を示している。
二人してひどく驚愕しているものだから、雷志は怪訝な眼差しを返した。
(そんなに驚くことのものかね?)
この世界とあの世界とでは感覚が違うのだろう。雷志はそう思うことにした。
「……ライシさん」と、不意にヒメコが口火を切った。相変わらず表情は真剣そのものだ。
「あなたはこれからどうするつもりですか?」
「俺か? そうだなぁ」と、雷志は顎をくしゃりと撫でた。
「さぁ、わからんな」と、あっけらかんと返した。
天涯孤独の身であるがために、行く当てなど当然どこにもない。
だが、こうして生きているからには生きる責務がある。
せっかく拾った命だ。自ら手放すような愚行に走るつもりは毛頭ない。
なにがなんでも生きる。そのためであればどのようなことだってする。雷志は固く決意をした。
これらを実行するためにもまず、衣食住の確保が最優先事項だろう。
(とはいえ、俺みたいな奴にできる仕事なんてあるのか?)
その時――
「……そうだ」
と、雷志はハッとした。
剣の腕前を生かした仕事がたった一つだけあった。
可能性のほうはともかくとして、やるだけの価値はある。
「なぁヒメコ。少し尋ねたいんだが……確か、ユウカは“だんじょん”配信とやらをしているんだったな?」
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