はーとふるクインテット

kromin

文字の大きさ
51 / 129
第三章 アレな波乱の幕開け

ちょうちょう

しおりを挟む
「…ちょうちょ、ちょうちょ、菜の葉にとまれ」

「クロ、その歌好きだよね」

「…うん、この歌可愛くて優しいし、僕好き。僕達も蝶々だし」

「そうだねー。あーでもさ、桜の花の栄ゆる御代にって愛国歌みたいで僕ちょっと嫌」
「…うん、そうかもね」


「まあこの国大昔からアレだし仕方ないけど。この組織もネーミングセンスクソ過ぎだしさ」
「…そうなんだ」
「…あーほら、御名とかさ。あと言えないけど聞いた時ドン引きした名前もあるし。今は結構好きだけど」
「…ふうん、そうなんだ」

「でも流石にどんだけクソな国でも時代が変われば価値観も少しは変わると思うし。この嫌な歌詞もそのうち改定されるんじゃない?」
「…うん、そうだと良いね」

「あー、あとさ。僕スカウトされてクソな実家出る時、初めて庭に出たんだけどさ。当然クソな家のクソな庭だから嫌いだったんだけど、その時庭の花に止まる本物の蝶々初めて見てさ。まあかなり地味なモンキチョウだったんだけど、でも可愛くて綺麗で、僕それから蝶々もっと好きになったんだよね」
「…そうなんだ。それは良かったね」


「クロもさ、自分の髪の色と同じだから好きじゃ無いと思うけど、その黒い羽綺麗で僕は大好きだよ。ちょっと機械が混じってるのが残念だけどさ」
「…うん、ありがとう。最近シロがそう言ってくれるから、嫌いじゃなくなってきた」

「…いつかは完璧に綺麗な羽になればいいんだけどね。…もしかしたら、これやればいけるんじゃないかなーって方法はあるんだけどさ。それやったらお前が可哀想だし、やっぱ出来ないや」
「…そうなんだ」

「うん、僕クロ大好きだし、愛してるしさ。あ、出撃だって。行こ」
「うん、行こう」


「………」
「…すー。あー、クロ。愛してるよー」

「……愛されたく、ないな」


翌日。

「…は?クロ今なんて??」

「…うん、たまには、てうてうの人達と組んでライブしたいなと思って」

「いや無理、絶っっっっ対無理。お前何言ってんの。撤回しろよ」
「…ごめん、撤回できない」

「…いやなんであんなクソ共と組まなきゃいけないの。お前頭いかれてるにしても最近いかれ過ぎでしょ。あーもう前野クソウザくて会いたくないから、お前一人でさっさと行って来いよ」

「…うん、そうする。…たぶん検査相当時間かかると思うから、僕しばらく保健室に泊まるね。ごめん」
「あーもう勝手にしろよ。お前最近ウザすぎてちょっと顔見たくなくなってきたし。まあ授業とかライブの時は仕方ないけどさー」
「…そうだね」

「あー、入学の時強権振りかざして代行にお願いして、クロと同じクラスにしてもらったけど。正直最近ちょっと後悔してる」
「…そっか。じゃあ僕行くから。寝坊しないよう気を付けて」

「あークソボケてるお前にんな心配されたく無いっての。僕超上級国民だから多少寝坊しようと余裕だしー」
「…そうだね」

そう言ってクロは静かにクソウザく出て行った。


「…そういう訳で、悪いけどしばらくここに泊めさせて」
「おう、いくらでも泊ってきな。夕飯とかはどうにでもなるし、出前取ったりしてやっから」
「…うん、ありがとう」

「あー、でもここ寝具は良い物使うよう気を遣ってるが、お前ずっとここで寝てたら昔の事思い出してしんどいだろ」
「…そうだね、ここ病院みたいなものだし。でも仕方ないよ」
「そうか。あー、ならちっと不便だが周辺に部屋借りたりホテルとかしばらく手配してやろうか。お前の身分ならどうにでもなるだろ」

「…ううん、それは悪いし良いよ」
「まあ気を遣わなくてもいいんだぞ。お前昔から相当気遣いしてたんだし。あー、ならたまにはエターナルとかはこべの部屋とかに泊めてもらえよ。他の周辺に住んでる奴らもお前なら喜んで泊めてくれるだろうしよ」

「…うん、そうしてみる」


その日の放課後。

「クロ君、君がここに来るなんて珍しいね。話とは何だい?」

「…代行さん。少しで良いので、てうてうの人達とレッスンさせてもらえませんか。ライブはシロが嫌がるのでいいです」

「ああ、構わないよ。昔のよしみで彼等ともたまには付き合いたいもんね。すぐ手配するから」
「…はい、ありがとうございます」


クロがぺこりとお辞儀をし、静かに学園長室を出て行こうとした時。

「…あー、あのさ、クロ」
「…うん、何?振子」

「…お前さ、最近色々やってるよね。僕もすごく良いと思うよ」
「うん、ありがとう」

「…知ってると思うけどさ。僕達全員、シロの事大嫌いなんだよね。あいつ元々相当クズだし、トップシークレットだけど絶対許せない事してるし。…僕、それ知った時本気で殺意が湧いた」
「…そんなに許せないんだ」

「うん、僕も代行様の護衛で色々クズ野郎は見て来たけど、あれ程のクズは知らないね。まあ僕造られて7年くらいだけど、たぶん未来永劫あれを超えるクズはいないと思うね」
「…そっか」


「…シロ好きなお前には悪いんだけどね。ボロクソ言ってごめんね」
「…うん、いい。最近シロの事、ちょっと好きじゃなくなってきたから」

「…あー、そうなんだ。まあ潮時なのかもね。代行様」
「…そうだね。どんな聖人君子だって、心変わりはするものだから」

「…ありがとう。じゃあ、失礼します」


そうして今度こそクロは出て行った。

「…彼、気付き始めているのかもしれないね」
「ですねー。前野がちょっと前データ見せてくれたけど、洗脳解け始めてるらしいし」

「まあ、どれだけ強い洗脳でも、これ程長年かけ続けていたら耐性が付いてしまうだろうしね。仕方ないよ」

「…思い出しちゃったら、相当辛いでしょうけどね。…本当あいつ、可哀想だな」

「…そうだね。僕も彼には、本当にお遊び程度の事しか出来ないな」


「…ああ、そうだ。良い事思いついた。こういうのはどうかな」

「あー、良いですねそれ。まあ政府もその程度なら許してくれるでしょ」

「うん、じゃあ早速政府にも打診して、承認されたらアレな業者さんに連絡しよう」
「はーい、日程決まったら皆にはこっそり伝えとくんで教えてくださいねー」


その翌日。

「ああ、クロ。代行から話は聞いたよ。君と久しぶりにゆっくり会えて嬉しいよ」
「…うん、僕も」

「おー、お前最近あいつから離れて色々やってるしな。良いと思うぞ」
「そうだね。色々な子と交流するのも大事だよ」
「ええ、やっぱり見分を広めるのは大切ですから」

「…うん、ありがとう」

「じゃあ早速曲流すから踊ろうね。クロは見慣れてないだろうし、出来る範囲でいいから」
「…うん。保健室いる時に、スマホとかで見たからたぶん大丈夫」


少し後。

「はい、ここまでにしようか。クロも上手かったよ」
「…ありがとう。皆と踊れて楽しかった」

「そうだね。組織にいた頃もたまに歌ったり踊ってたもんね。…桃太以外は、満足に踊れなかったけどさ」
「…うん、そうだよね」

「…ずっと辛かったけど、やっぱり耐えて良かったよね。最後はちゃんとした体貰えたし」
「…そうだね。良かった。…でもさ」
「うん、どうしたの?」


「…あの時はそれ程悩まずシロと同じ体にしてもらったけど。…最近少し、間違えたかなって思ってるんだ」
「…ああ、そうなんだ」

「…まあ、生体移植とかは無理だけど、サイボーグとかならどうにかなるし。今からでも考えて良いんじゃないかな」
「おう、似合うと思うしな。お前なら速攻で作ってくれるだろ」
「…うん、考えてみる。じゃあ次の授業あるから、またね」

「うん、お疲れさま」

「…あ、そうだ」

「ん、どうしたの?」


「…あのさ。もしかしたら僕の覚えてない事で、何かシロ大変な事しちゃったりしたの?」

「…うーん。ごめんね。心当たり無いな」
「…うん、僕も無いや。ごめんね」
「…あー、俺も無いな。わりいな」
「…そうだね。千里眼でも見えないや」

「…そっか。変な事聞いちゃってごめんね。じゃあ、ばいばい」


クロは静かにレッスン室を出て行った。

「…教えてあげたいんだけどね」
「…うん。たぶんもうそろそろ、自分で思い出すと思うけどね」
「…仕方ないけど、本当に可哀想だな」
「…ああ。その時が来たら皆で支えてやらねえとな」


「…ちょうちょ、ちょうちょ。菜の葉にとまれ。…菜の葉にあいたら、桜にとまれ」


「…僕、菜の葉に飽きちゃったのかな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...