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第四章 驚天動地のアレ事件
凶行に出ようとするシロと彼の力
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「…ああ、君。何もかも失って、少しは己を省みるかと思ったのだが」
「…君は、本当に己の過ちを認めたり、あの子に謝らないのだね」
「…それどころか、そんな事をしようと考えるとは」
「…私も、もう見切りをつけるべきなのかもしれない」
「…だが、あと少しだけは見守ろうか」
みなが過去を転校生くんちゃんに打ち明けた日の夜、てうてう達の部屋にて。
「…これは」
「…千里、何か見えたの?」
「…ううん、大丈夫。大した事じゃ無いよ。…ごめん隊長、少し外の空気を吸って来るね」
「うん、気を付けて」
僕は平静を装い、静かに自室を後にした。
「…隊長は本当に優しいから、やっぱり今度も出来ないだろうね」
「…でも、思い出して嫌いになったとはいえ、これをクロに頼むのは酷すぎる」
「…そうしたら、後は彼しかいないか」
少し後、学園の敷地内の広場にて。
「…ああ、みな君。こんな夜分に呼び出してごめんね」
「いえ、お気遣い無く。…それで、俺に頼みとは何でしょうか」
「…うん、君には申し訳無いのだけれど。実はね」
翌日、シロの自室にて。
「おーっし、そろそろあいつらあそこにクソ企画で集まってるよね。んじゃ行くか」
「僕を散々バカにしてくれたクソ共、覚悟しろよー♪」
同日朝、カズサ達の教室にて。
「あ、そういえば1時間目終わった後、例の強制ユニット名変更計画のクソな名前を全校生徒皆で考える緊急集会あるんだってさ」
「おー、良いね。うーん私そんなにアレな名前すぐには思いつかないなー。アレな子とはいえあんまり下品なワードは使いたく無いし」
「あー、流石にいくらあいつとはいえあまりに公序良俗に反するようなネーミングはまずいから、そういうのにギリ触れない程度にアレな名前で頼むだってさ」
「ああ、アレな国の学園とはいえ最低限の節度はあるからな」
「だよね。事情知らない学園外の人達がそんなアレなユニット名聞いたら引いちゃうよね」
「うーんんじゃどうしようかなー。やっぱ難しいなあ」
「ああ、代行から計画を聞いた俺や佐紀さんを保護研究していた研究機関も急遽ユニット名を考えているようだ」
「うわー、あの研究機関が考えたら確実に超アレなネーミングになるよね」
「今回ばかりはアレなネーミングセンスに感謝だね」
「あと、最近大体察してるとはいえ強制アレ事件知らない普通の生徒の子達もその集会参加させて大丈夫なの?」
「あーうん。流石に詳細は言えないけど、裏政府から許可もらって代行が可能な限りでクロに相当な事したってのは伝えて、それで出来る範囲で制裁を与えてやりたいってのは説明してるから大丈夫だよ」
「あー、そうなんだ。うん、なら大丈夫だね」
「うん。それにやっぱりあの子常日頃アレな言動だったから、元々一般生徒にもかなり嫌われてたしね」
「だよね。そりゃそうなるよね」
そしてアレな授業を終え、私達はアレな緊急集会が開かれる体育館へと向かった。
「あれ、みーなどこ行くの?」
「…ああ、少しトイレを済ませて来る。…悪いが、皆先に行っていてくれ」
「うん、分かった。じゃあ行ってるね」
「……」
そして私達はやっぱりアレな強化処置が施された体育館へ集まった。
「皆、来てくれてありがとう。以前も伝えたように、クロ君にひどい事をしたシロ君に合法的に制裁を与えたくてね。公序良俗に反しない程度に彼が怒りそうな良いユニット名を考えてあげてね」
「「「はーい」」」
「はいはーい、んじゃまずは僕から!」
「うん、ゆういちクン。どんな案かな?」
「うん、《三日三晩常温放置したサバ》で!」
「あー、良いね良いね」
「あーじゃあ僕もいい?ゆういちクンと方向性被っちゃうけど」
「うん、幸野君どうぞ」
「《カビの生え切ったおにぎり》とかどうかなー」
「あー、あの子ブチ切れそうだね」
「ううん。僕はビンタとかはしますがあまり汚い言葉は使いたくないので、難しい所ですね」
「あー、だよね。しんら君すごく礼儀正しい子だもんね」
「まあ、じゃあ《吐き気を催す邪悪》とかにしておきましょうか」
「あー、それもアリだね」
「実際あいつその通りだしね」
「……」
「…あー、クロ君は思い出してあの子の事大嫌いになったとはいえ、やっぱ複雑だよね。ごめんね」
「…ううん、良いよ。僕も汚い言葉使うのは嫌いだけど、ちょっと嬉しいから」
「そっか、なら良かった。まあクロ君は考えなくて良いから聞いてなよ」
「あー、俺も育ちは悪いが基本汚い言葉は使いたくねえんだがなー。まああいつなら心置きなく罵倒できるし良いか。うーんどうすっかなー。まな兄何か良い案ある?」
「そうだね、僕も生まれは同じだけどやっぱり汚い言葉は使いたくないから難しいね。皆の意見を聞きながら考えようかな」
「……」
「…あ、やっぱ隊長もそういうの嫌いだし複雑っすよね。何かすいません」
「…ああ、気にしないで。やっぱりこれだけひどい事を言われても仕方ないくらいの事を、彼はしでかしたからね」
「ですよねー。まあ隊長や千里もそういうの嫌いでしょうし、傍観で良いんじゃないっすかね」
「…」
「あれ、千里。眼帯外してどうしたの?疲れるでしょう」
「…ああ、少し考え事をするし集中したくって。たまになので平気だよ、隊長」
「…うん、それなら良いんだけど。…何かあったら、言ってね」
「…うん、ありがとう」
「んー、みーな遅いなー。大でももう終わってるはずなのに。お腹壊したのかな」
「あー、そうだね。でも彼もてうてうの人達と同じって事は体強いはずなのに変だね」
「うん、実際あいつ普通の体になってからは全然病気とかしてないし」
「だよね、身体能力もかなり高いしね。僕様子見に行こうかな」
「…ああ、愛君。彼ならもうじき来るのが見えたから、ここで待っていて」
「え、千里さんそうなんですか。じゃあ待ってますね。教えてくれてありがとうございます」
「…うん、気にしないで」
僕は誰にも聞こえないような小さい声で呟いた。
「…どうか頼むよ、みな君」
「よーっし、学校のクソ共皆まとめてぶっ狂わせるぞー。怪獣映画みたいに飛んで襲来してやりたいけどそれやっちゃうと目立ちすぎるし、勝てるけど金目とかに迎撃されたらウザいから仕方なく徒歩だけどー」
僕は意気揚々とクソ共が集まっている体育館に向かっていた。
「…そうはさせない」
「あー?誰だよ邪魔すんなクソが」
体育館の影から現れたのは、クソ生意気な新鋭ユニットの一人だった。
「…千里さんの言う通りだったな。反省するどころかここまで極端に走るとは」
「あーあのクソ予知しやがったのか、あいつ余計な告げ口しやがって。ってかお前戦うの嫌いなクソ平和主義者だろ」
「確かにそうだが、仲間が危険に晒されているのなら別だ。…たとえお前とはいえ、ここまでの愚行は侵させるわけにはいかない」
「あーまあどうせ生まれて間もないクソ若造なんか瞬殺だし良いけどさ。でも僕にんな事したらお前確実に極刑だろ、ほんと身の程知らないバカだなお前」
「…お前にだけは言われたくない。お前とはいえこれは正当防衛だろうし、千里さんがたとえ狂わせても罪に問われないよう出来る限り取り計らうと約束してくれた」
「ほんとあいつも目障りなクソだな。あいつもそういう強権使うの嫌いなくせにこういう時だけ立場利用しやがって」
「…それも人道的に当然の事だろう。お前を無力化し次第代行にもこの事は伝える。代行も理解してくれるだろう」
「あーもう本当この学園一同クソだな。まあだから皆まとめてぶっ狂わせて、クロだけまたがっつり洗脳して僕大好きにさせてどっかに適当に逃げようとこの計画思いついたんだけどさ」
「…お前は、どこまで行っても外道なのだな。力を使いたくは無いし極刑に処されてカズサ達を悲しませたくは無かったから今まで我慢していたが、…千里さんという後ろ盾を得たからには、もう容赦はしない」
そう言って生意気なクソ若造はふわりと飛びあがり、青く輝く羽を開いた。
「ふーん、お前モルフォチョウだったんだ。クソ新鋭のくせに僕より派手なのクソウザいんだけどー」
「…生まれ持っての姿だし仕方ないだろう。行くぞ、覚悟しろ」
クソ派手で生意気な新鋭が鱗粉を振り撒き始めたので僕は羽を開き、鱗粉を出して応戦した。
だが、次第に僕の出す鱗粉は押されて行った。
「…な、なんだよお前。確かに佐紀と同じクソ状態スタートとは言え実戦経験ほとんど無いクソ若造のくせに、何で年季入ったショタジジイの僕より強いんだよ」
「…確かに実戦経験や年季の差では敵わないが、カズサに夢を与えられてからはカズサを守るために力の開発や強化に仮想空間で日々励んでいた。間もなく一時的に顕現する事も出来るようになったし、力ではお前を上回っている自信がある」
「…本当に、クッソウザい友情ごっこばっかしやがって。今時友情パワーとか古すぎだし痛すぎだろ」
「何とでも言え。お前も俺より遥かに生きているのに誰一人友人が出来ないのは哀れだな。全て自業自得だが」
「…お前も口数少ない方の癖してレスバだけ達者なのクソウザいんだけど。てめえみたいなクソ新鋭に負けてたまるか」
僕はクソムカつきながら鱗粉を力の限り振り撒いたが、どんどんクソ友情厨の鱗粉は僕に近づいてきた。
「…い、いやお前みたいなド平民で友情厨のクソ新鋭に狂わされるとか屈辱過ぎるんですけど」
「お前にはそのくらい無様な最後がお似合いだ。…とどめだ、死ね」
「…みな、やめて」
「…え」
僕とクソ新鋭が振り向くと、そこには悲しそうなクロがいた。
「…クロ、なぜここにいる。千里さんがずっと様子を見ていたはずなのに」
「…悪いけど、隙を突いて抜け出した。…千里さん、明らかに様子がおかしかったから」
「…そうか、お前は聡い奴だものな。…だが見ての通りこいつはお前もろとも全校生徒に最低な事をしようとした。流石に捨て置けない」
「…うん、そうだね。…だから」
「…え、クロ」
クロは悲しそうに僕の方を見て、美しい黒い羽を開いた。
「…僕が、方を付けるよ」
「…そ、そんな、ひどい」
「…ひどいのは、君の方だよ。僕だけじゃ無く、学園の皆にこんな事をするなんて」
「…う。…で、でもお前僕とおんなじじゃん。お前じゃ互角止まりだろ」
「…君に手足アレされただけじゃなく、体もめちゃめちゃにされたから。…たぶん、君より僕の方が強いよ」
「…そ、そんな、やだ」
「…それもこれも、こいつに最低な事をした報いだ」
「…そうだね。じゃあ、悪いけどいくよ」
「や、やだ。やめて」
「クロ、今回は遠慮してもらえるかい」
その時、また背後から声がかかった。
そこには、代行が立っていた。
「…代行さん。どうしてここにいるの」
「うん、やっぱり千里君の様子が明らかにおかしかったし、あと監視カメラの映像を見た金目からも連絡があってね」
「…そうか、ならば分かるだろう。こいつをこれ以上野放しにはしておけない」
「そうだね。…とはいえ相当な事をしかけたとは言っても学園内で廃人は出来る限り出したくないから、今回は僕に任せて君達は引いてくれないかい」
「…どういう処遇をするつもりだ」
「まあ即刻この事は裏政府に報告させてもらうとして、退学処置も視野に入れた上でひとまず向こう数週間程度は自室に謹慎かな。気の毒すぎるしその間ユニット名の強制変更は保留にしておいてあげるよ。そもそも今後もユニット活動継続できるかも怪しいしね」
「…いや、マジお前クソ過ぎ」
「うーん、僕も汚い言葉は使いたくは無いけれど。この世界に君ほどのクソもいないと思うよ?」
「ああ、俺も同感だ」
「…そうだね」
「そういう訳でシロ君、すぐに自室に戻り待機するように。食事は調理師さんが作った物を運ばせるから。ああ、逃げたり空を飛んで抜けだそうとしたら金目が即刻捕まえるから無駄だよ」
「…ほんと、もうこの学園何から何までクソ」
シロは全てを呪うような顔で吐き捨て去って行った。
「…まあ、被害が出なくて良かった」
「…うん、そうだね」
「みな君、クロ君。この学園の危機を救ってくれてありがとうね。もちろん今回の件は正当防衛という事で、一切罪に問わないと学園長代行権限で判断するから大丈夫だよ」
「…いえ、お構いなく」
「…はい、どういたしまして」
「うん、じゃあ二人とも体育館に戻ろうか。まあ、たぶん主要な生徒達は皆察してると思うけど一応この件はしばらく内緒にしておいてね。裏政府から許可が出たら僕から公表するから」
「ええ、分かりました」
「…はい、お願いします」
そうしてアレな強化処置の施された体育館に、俺達は静かに戻って行った。
「…あ、みーな。遅かったね。あんまり無いけど具合悪かったの?」
「…いや、少し野暮用が出来てな。心配かけてすまなかった」
「そっか。…あのさ、みーな」
「…何だ」
「…あいつ、やらかしかけたの?」
「…ああ。まだ公表は出来ないから、黙っておいてくれ」
「そっか、分かった。…みーなが無事でいてくれて、良かった」
「ああ、俺もカズサ達が無事でいてくれて良かった」
他の強制アレ事件を知る生徒達も、聞きはしないが大体察したのか心配そうに俺とクロを見ていた。
「…千里。やっぱりあの子はまたひどい事を考えていたんだね」
「…うん。…隊長に頼むのは酷だと思って、黙っててごめんね」
「良いよ、気を遣ってくれてありがとう。…でも僕もね、最近とうとうあの子を許せなくなってきているんだ」
「…そっか。ここまで来ても謝らないし、そうかもね」
「…うん、そうだね。僕も変わる時が来たのかもしれない。…あの人にも、してやりたいんだけどね」
「…君は、本当に己の過ちを認めたり、あの子に謝らないのだね」
「…それどころか、そんな事をしようと考えるとは」
「…私も、もう見切りをつけるべきなのかもしれない」
「…だが、あと少しだけは見守ろうか」
みなが過去を転校生くんちゃんに打ち明けた日の夜、てうてう達の部屋にて。
「…これは」
「…千里、何か見えたの?」
「…ううん、大丈夫。大した事じゃ無いよ。…ごめん隊長、少し外の空気を吸って来るね」
「うん、気を付けて」
僕は平静を装い、静かに自室を後にした。
「…隊長は本当に優しいから、やっぱり今度も出来ないだろうね」
「…でも、思い出して嫌いになったとはいえ、これをクロに頼むのは酷すぎる」
「…そうしたら、後は彼しかいないか」
少し後、学園の敷地内の広場にて。
「…ああ、みな君。こんな夜分に呼び出してごめんね」
「いえ、お気遣い無く。…それで、俺に頼みとは何でしょうか」
「…うん、君には申し訳無いのだけれど。実はね」
翌日、シロの自室にて。
「おーっし、そろそろあいつらあそこにクソ企画で集まってるよね。んじゃ行くか」
「僕を散々バカにしてくれたクソ共、覚悟しろよー♪」
同日朝、カズサ達の教室にて。
「あ、そういえば1時間目終わった後、例の強制ユニット名変更計画のクソな名前を全校生徒皆で考える緊急集会あるんだってさ」
「おー、良いね。うーん私そんなにアレな名前すぐには思いつかないなー。アレな子とはいえあんまり下品なワードは使いたく無いし」
「あー、流石にいくらあいつとはいえあまりに公序良俗に反するようなネーミングはまずいから、そういうのにギリ触れない程度にアレな名前で頼むだってさ」
「ああ、アレな国の学園とはいえ最低限の節度はあるからな」
「だよね。事情知らない学園外の人達がそんなアレなユニット名聞いたら引いちゃうよね」
「うーんんじゃどうしようかなー。やっぱ難しいなあ」
「ああ、代行から計画を聞いた俺や佐紀さんを保護研究していた研究機関も急遽ユニット名を考えているようだ」
「うわー、あの研究機関が考えたら確実に超アレなネーミングになるよね」
「今回ばかりはアレなネーミングセンスに感謝だね」
「あと、最近大体察してるとはいえ強制アレ事件知らない普通の生徒の子達もその集会参加させて大丈夫なの?」
「あーうん。流石に詳細は言えないけど、裏政府から許可もらって代行が可能な限りでクロに相当な事したってのは伝えて、それで出来る範囲で制裁を与えてやりたいってのは説明してるから大丈夫だよ」
「あー、そうなんだ。うん、なら大丈夫だね」
「うん。それにやっぱりあの子常日頃アレな言動だったから、元々一般生徒にもかなり嫌われてたしね」
「だよね。そりゃそうなるよね」
そしてアレな授業を終え、私達はアレな緊急集会が開かれる体育館へと向かった。
「あれ、みーなどこ行くの?」
「…ああ、少しトイレを済ませて来る。…悪いが、皆先に行っていてくれ」
「うん、分かった。じゃあ行ってるね」
「……」
そして私達はやっぱりアレな強化処置が施された体育館へ集まった。
「皆、来てくれてありがとう。以前も伝えたように、クロ君にひどい事をしたシロ君に合法的に制裁を与えたくてね。公序良俗に反しない程度に彼が怒りそうな良いユニット名を考えてあげてね」
「「「はーい」」」
「はいはーい、んじゃまずは僕から!」
「うん、ゆういちクン。どんな案かな?」
「うん、《三日三晩常温放置したサバ》で!」
「あー、良いね良いね」
「あーじゃあ僕もいい?ゆういちクンと方向性被っちゃうけど」
「うん、幸野君どうぞ」
「《カビの生え切ったおにぎり》とかどうかなー」
「あー、あの子ブチ切れそうだね」
「ううん。僕はビンタとかはしますがあまり汚い言葉は使いたくないので、難しい所ですね」
「あー、だよね。しんら君すごく礼儀正しい子だもんね」
「まあ、じゃあ《吐き気を催す邪悪》とかにしておきましょうか」
「あー、それもアリだね」
「実際あいつその通りだしね」
「……」
「…あー、クロ君は思い出してあの子の事大嫌いになったとはいえ、やっぱ複雑だよね。ごめんね」
「…ううん、良いよ。僕も汚い言葉使うのは嫌いだけど、ちょっと嬉しいから」
「そっか、なら良かった。まあクロ君は考えなくて良いから聞いてなよ」
「あー、俺も育ちは悪いが基本汚い言葉は使いたくねえんだがなー。まああいつなら心置きなく罵倒できるし良いか。うーんどうすっかなー。まな兄何か良い案ある?」
「そうだね、僕も生まれは同じだけどやっぱり汚い言葉は使いたくないから難しいね。皆の意見を聞きながら考えようかな」
「……」
「…あ、やっぱ隊長もそういうの嫌いだし複雑っすよね。何かすいません」
「…ああ、気にしないで。やっぱりこれだけひどい事を言われても仕方ないくらいの事を、彼はしでかしたからね」
「ですよねー。まあ隊長や千里もそういうの嫌いでしょうし、傍観で良いんじゃないっすかね」
「…」
「あれ、千里。眼帯外してどうしたの?疲れるでしょう」
「…ああ、少し考え事をするし集中したくって。たまになので平気だよ、隊長」
「…うん、それなら良いんだけど。…何かあったら、言ってね」
「…うん、ありがとう」
「んー、みーな遅いなー。大でももう終わってるはずなのに。お腹壊したのかな」
「あー、そうだね。でも彼もてうてうの人達と同じって事は体強いはずなのに変だね」
「うん、実際あいつ普通の体になってからは全然病気とかしてないし」
「だよね、身体能力もかなり高いしね。僕様子見に行こうかな」
「…ああ、愛君。彼ならもうじき来るのが見えたから、ここで待っていて」
「え、千里さんそうなんですか。じゃあ待ってますね。教えてくれてありがとうございます」
「…うん、気にしないで」
僕は誰にも聞こえないような小さい声で呟いた。
「…どうか頼むよ、みな君」
「よーっし、学校のクソ共皆まとめてぶっ狂わせるぞー。怪獣映画みたいに飛んで襲来してやりたいけどそれやっちゃうと目立ちすぎるし、勝てるけど金目とかに迎撃されたらウザいから仕方なく徒歩だけどー」
僕は意気揚々とクソ共が集まっている体育館に向かっていた。
「…そうはさせない」
「あー?誰だよ邪魔すんなクソが」
体育館の影から現れたのは、クソ生意気な新鋭ユニットの一人だった。
「…千里さんの言う通りだったな。反省するどころかここまで極端に走るとは」
「あーあのクソ予知しやがったのか、あいつ余計な告げ口しやがって。ってかお前戦うの嫌いなクソ平和主義者だろ」
「確かにそうだが、仲間が危険に晒されているのなら別だ。…たとえお前とはいえ、ここまでの愚行は侵させるわけにはいかない」
「あーまあどうせ生まれて間もないクソ若造なんか瞬殺だし良いけどさ。でも僕にんな事したらお前確実に極刑だろ、ほんと身の程知らないバカだなお前」
「…お前にだけは言われたくない。お前とはいえこれは正当防衛だろうし、千里さんがたとえ狂わせても罪に問われないよう出来る限り取り計らうと約束してくれた」
「ほんとあいつも目障りなクソだな。あいつもそういう強権使うの嫌いなくせにこういう時だけ立場利用しやがって」
「…それも人道的に当然の事だろう。お前を無力化し次第代行にもこの事は伝える。代行も理解してくれるだろう」
「あーもう本当この学園一同クソだな。まあだから皆まとめてぶっ狂わせて、クロだけまたがっつり洗脳して僕大好きにさせてどっかに適当に逃げようとこの計画思いついたんだけどさ」
「…お前は、どこまで行っても外道なのだな。力を使いたくは無いし極刑に処されてカズサ達を悲しませたくは無かったから今まで我慢していたが、…千里さんという後ろ盾を得たからには、もう容赦はしない」
そう言って生意気なクソ若造はふわりと飛びあがり、青く輝く羽を開いた。
「ふーん、お前モルフォチョウだったんだ。クソ新鋭のくせに僕より派手なのクソウザいんだけどー」
「…生まれ持っての姿だし仕方ないだろう。行くぞ、覚悟しろ」
クソ派手で生意気な新鋭が鱗粉を振り撒き始めたので僕は羽を開き、鱗粉を出して応戦した。
だが、次第に僕の出す鱗粉は押されて行った。
「…な、なんだよお前。確かに佐紀と同じクソ状態スタートとは言え実戦経験ほとんど無いクソ若造のくせに、何で年季入ったショタジジイの僕より強いんだよ」
「…確かに実戦経験や年季の差では敵わないが、カズサに夢を与えられてからはカズサを守るために力の開発や強化に仮想空間で日々励んでいた。間もなく一時的に顕現する事も出来るようになったし、力ではお前を上回っている自信がある」
「…本当に、クッソウザい友情ごっこばっかしやがって。今時友情パワーとか古すぎだし痛すぎだろ」
「何とでも言え。お前も俺より遥かに生きているのに誰一人友人が出来ないのは哀れだな。全て自業自得だが」
「…お前も口数少ない方の癖してレスバだけ達者なのクソウザいんだけど。てめえみたいなクソ新鋭に負けてたまるか」
僕はクソムカつきながら鱗粉を力の限り振り撒いたが、どんどんクソ友情厨の鱗粉は僕に近づいてきた。
「…い、いやお前みたいなド平民で友情厨のクソ新鋭に狂わされるとか屈辱過ぎるんですけど」
「お前にはそのくらい無様な最後がお似合いだ。…とどめだ、死ね」
「…みな、やめて」
「…え」
僕とクソ新鋭が振り向くと、そこには悲しそうなクロがいた。
「…クロ、なぜここにいる。千里さんがずっと様子を見ていたはずなのに」
「…悪いけど、隙を突いて抜け出した。…千里さん、明らかに様子がおかしかったから」
「…そうか、お前は聡い奴だものな。…だが見ての通りこいつはお前もろとも全校生徒に最低な事をしようとした。流石に捨て置けない」
「…うん、そうだね。…だから」
「…え、クロ」
クロは悲しそうに僕の方を見て、美しい黒い羽を開いた。
「…僕が、方を付けるよ」
「…そ、そんな、ひどい」
「…ひどいのは、君の方だよ。僕だけじゃ無く、学園の皆にこんな事をするなんて」
「…う。…で、でもお前僕とおんなじじゃん。お前じゃ互角止まりだろ」
「…君に手足アレされただけじゃなく、体もめちゃめちゃにされたから。…たぶん、君より僕の方が強いよ」
「…そ、そんな、やだ」
「…それもこれも、こいつに最低な事をした報いだ」
「…そうだね。じゃあ、悪いけどいくよ」
「や、やだ。やめて」
「クロ、今回は遠慮してもらえるかい」
その時、また背後から声がかかった。
そこには、代行が立っていた。
「…代行さん。どうしてここにいるの」
「うん、やっぱり千里君の様子が明らかにおかしかったし、あと監視カメラの映像を見た金目からも連絡があってね」
「…そうか、ならば分かるだろう。こいつをこれ以上野放しにはしておけない」
「そうだね。…とはいえ相当な事をしかけたとは言っても学園内で廃人は出来る限り出したくないから、今回は僕に任せて君達は引いてくれないかい」
「…どういう処遇をするつもりだ」
「まあ即刻この事は裏政府に報告させてもらうとして、退学処置も視野に入れた上でひとまず向こう数週間程度は自室に謹慎かな。気の毒すぎるしその間ユニット名の強制変更は保留にしておいてあげるよ。そもそも今後もユニット活動継続できるかも怪しいしね」
「…いや、マジお前クソ過ぎ」
「うーん、僕も汚い言葉は使いたくは無いけれど。この世界に君ほどのクソもいないと思うよ?」
「ああ、俺も同感だ」
「…そうだね」
「そういう訳でシロ君、すぐに自室に戻り待機するように。食事は調理師さんが作った物を運ばせるから。ああ、逃げたり空を飛んで抜けだそうとしたら金目が即刻捕まえるから無駄だよ」
「…ほんと、もうこの学園何から何までクソ」
シロは全てを呪うような顔で吐き捨て去って行った。
「…まあ、被害が出なくて良かった」
「…うん、そうだね」
「みな君、クロ君。この学園の危機を救ってくれてありがとうね。もちろん今回の件は正当防衛という事で、一切罪に問わないと学園長代行権限で判断するから大丈夫だよ」
「…いえ、お構いなく」
「…はい、どういたしまして」
「うん、じゃあ二人とも体育館に戻ろうか。まあ、たぶん主要な生徒達は皆察してると思うけど一応この件はしばらく内緒にしておいてね。裏政府から許可が出たら僕から公表するから」
「ええ、分かりました」
「…はい、お願いします」
そうしてアレな強化処置の施された体育館に、俺達は静かに戻って行った。
「…あ、みーな。遅かったね。あんまり無いけど具合悪かったの?」
「…いや、少し野暮用が出来てな。心配かけてすまなかった」
「そっか。…あのさ、みーな」
「…何だ」
「…あいつ、やらかしかけたの?」
「…ああ。まだ公表は出来ないから、黙っておいてくれ」
「そっか、分かった。…みーなが無事でいてくれて、良かった」
「ああ、俺もカズサ達が無事でいてくれて良かった」
他の強制アレ事件を知る生徒達も、聞きはしないが大体察したのか心配そうに俺とクロを見ていた。
「…千里。やっぱりあの子はまたひどい事を考えていたんだね」
「…うん。…隊長に頼むのは酷だと思って、黙っててごめんね」
「良いよ、気を遣ってくれてありがとう。…でも僕もね、最近とうとうあの子を許せなくなってきているんだ」
「…そっか。ここまで来ても謝らないし、そうかもね」
「…うん、そうだね。僕も変わる時が来たのかもしれない。…あの人にも、してやりたいんだけどね」
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